fc2ブログ

準共有株式の株式売渡請求?


【 同族会社株式の相続:株式の準共有と会社法 】

 


 本日は、昨日の著者・仲卓真氏の添付資料からの一部抜粋。

 


京都大学博士(法学)(当時)仲卓真
株式の準共有関係と会社法106条に関する規律―主に事業承継の場面を中心に―(Digest_要約)
2018-03-26(出所:https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/232193/2/ghogk00215.pdf)

研究課題名:同族会社の株式の相続に関する会社法上の諸制度の検討
(出所:https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-19K20854/19K20854seika.pdf)

 


1.株式が共同相続された場合における当該株式の帰趨

 まず、株式が共同相続された場合に、当該株式が、複数の共同相続人間で準共有されるのか、当然に分割されるのかという議論を扱う。この議論についての本論文の立場は、この場合に当該株式が複数の共同相続人間で準共有されるというものである。

 

 その理由は、次の2点にある。第1に、少なくとも権利帰属の客体としては一株の株式が単位となり、その一株の株式ごとに共同相続されることになるところ、その一株の株式は、株式の不可分性によると、複数の共同相続人間で分割されることはない。第2に、共同相続された株式を遺産分割の対象に含めることを優先するべきである。

 


2.会社法106条の目的
 準共有者による一体的な権利行使の確保、および、準共有者間の内部関係の不明確性からの会社の保護であると考えられる。

 


3.各準共有者による不統一行使
 複数の準共有株式についての議決権が、同一の準共有関係の下で全体として集合的に取り扱われることを前提として、そのような議決権については、民法264条による準用の際に、原則として、民法252条は適用されず、民法249条に基づいて準共有持分の割合に応じた使用をすることができる。そして、各準共有者は、このような準共有者間の内部関係の規律に基づいて権利行使者に対して不統一行使の指図をすることによって、権利行使者を通じて会社に対して議決権を不統一的に行使することができる。

 


4.今後の課題
 相続人等に対する株式売渡請求制度は、相続人等に株式の売渡しを請求することによって株主構成に変更をもたらすことになるものであるところ、そのような制度について検討するためには、同族会社にとってどのような株主構成が望ましいのか、同族会社の支配権を誰に与え、どのように分配するべきなのかというような点を検討することが必要である。

 


民法
(共有物の使用)
第二百四十九条
 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

 

(共有物の管理)
第二百五十二条
 共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

 

(準共有)
第二百六十四条
 この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。

 


会社法(共有者による権利の行使)
第百六条
 株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

 


<感想>
同族会社の準共有株式について、有力な不統一行使説をベースに、株式売渡請求制度等の活用が有効であるように思われる。

 

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HP http://tsuruichi.blog.fc2.com/
同Twitter https://mobile.twitter.com/tsuruichipooh
----------------------------------------------------------------------

準共有株式の不統一行使説


【 株式の相続:株式の準共有 】

 


 日本証券業協会のWebサイトに、添付資料が掲載されていた。
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/202310nakayouyaku2.pdf

 以下は一部抜粋。

 


2023年10月
「株式の相続―株式の準共有を中心に」
第8期 客員研究員 大阪公立大学大学院法学研究科 准教授 仲 卓真

 


1.準共有株式についての権利の行使を規律する会社法106条本文の適用範囲について

 

最高裁は、会社訴訟を提起する権利についても会社法106条本文が原則として適用されると判示しているものの、従来の学説では、会社訴訟を提起する権利については会社法106条本文が適用されないという見解も主張されていた。

 

これに対して、近時の会社法理論では、このような従来の学説の理由づけが説得的ではないことが示されるとともに、会社訴訟を提起する権利が裁判所を介して行使されるという理由から、この権利について会社法106条本文を適用する必要がないことを基礎づけることができるということが明らかにされた。

 


2.会社法106条にいう権利行使者の指定の方法について

 

従来、準共有者の全員一致によってのみ権利行使者を指定できるという見解も主張されていたものの、判例および多くの論者は、準共有者の準共有持分の過半数によって権利行使者を指定できると考えてきた。

 

これに対して、近時の会社法理論では、共有物の保存行為に準じて各準共有者が単独で権利行使者を指定できるという見解が主張されている。この見解に対しては、単独での権利行使者の指定が競合した場合にはどの指定が優先すると考えるのかというような疑問もあるものの、この見解は、準共有株式についての議決権の不統一行使の実効性を確保する方途の一つを示すものとして今後更に検討されるべき可能性を有している。

 


3.準共有者の権利行使に係る意思決定の方法について

 

従来は、民法の共有に関する規定がそのまま適用され、例えば、準共有株式についての議決権の行使に係る意思決定は、 特段の事情のない限り、民法252 条1項により、準共有者の準共有持分の過半数で決すると考えられてきたものの、準共有株式についての議決権の行使に係る意思決定において各準共有者がその準共有持分の割合に応じた不統一行使を主張できるという見解(以下「不統一行使説」という)も主張されていた。

 

そして、近時の会社法理論では、このような不統一行使説がより円滑な事業承継の実現という観点からも基礎づけられると主張されているとともに、不統一行使説を実現するための法的構成として2つの見解が主張されている。

 


民法
(共有物の変更)
第二百五十一条
 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)を加えることができない。

 

(共有物の管理)
第二百五十二条
 共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

 

(準共有)
第二百六十四条
 この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。

 


会社法(共有者による権利の行使)
第百六条
 株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

 


<感想>
近時の会社法理論では、準共有株式について、不統一行使説が有力なようなので、50%超押さえれば問題ない(議決権100%行使可能)という考えは危ういように思われる。

 

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HP http://tsuruichi.blog.fc2.com/
同Twitter https://mobile.twitter.com/tsuruichipooh
----------------------------------------------------------------------

事業を承継しない長男が創業者株式を相続?


【 船井電機、創業者の株式を長男が相続 】


 2017/8/17の日経新聞に、掲題記事が掲載されていた。

 以下は、変更報告書(大量保有)からの一部抜粋(一部追記)。
 

【変更報告書提出事由】(出所:http://www.kabupro.jp/edp/20170817/S100B6UN.pdf
 実父である船井哲良が平成29年7月4日に逝去し、平成29年8月8日に相続の手続きが完了した為、保有株式数が1%以上増加するので変更報告を提出致します。 

第2【提出者に関する事項】
(1)【提出者の概要】
 【提出者(大量保有者)】
  個人・法人の別 個人 
  氏名又は名称 船井哲雄  
  住所又は本店所在地 北海道旭川市 
 【個人の場合】
  職業 医師 
  勤務先名称 旭川十条病院 
  勤務先住所 北海道旭川市9条通21丁目2番8号

(2)【保有目的】
 船井電機の創業者の実子(長男)であり、安定株主として長期保有を目的としております。

(5)【当該株券等の発行者の発行する株券等に関する最近60日間の取得又は処分の状況】
 年月日  数量     割合    市場内  取得/処分 単価 
 H29/8/8 12,359,288  34.21(%) 市場外  取得    相続

(7)【保有株券等の取得資金】
 【取得資金の内訳】
  自己資金額(千円) 15,857,737(相続による取得のため、相続前(保有株数1,079,492株)時点から変化なし。相続後の単価:1,180円/株)


[ 追記 ]
 その他、本人の既保有分が発行済株式数の2.99%、共同保有者として資産管理会社2社(有限会社エフツー、有限会社T&N)で各1.30%×2保有
 ⇒ 発行済株式数の39.80%保有

(ご参考)No.4632 上場株式の評価(出所:https://www.nta.go.jp/taxanswer/hyoka/4632.htm
 上場株式は、その株式が上場されている金融商品取引所が公表する課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)の最終価格によって評価します。
 ただし、課税時期の最終価格が、次の三つの価額のうち最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額により評価します。
1 課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
2 課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
3 課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額


<感想>
 本件は、発行済株式総数の1/3超を保有する船井電機創業者(取締役相談)が逝去し、事業を承継しない医者の長男が全株を相続したケース。創業者亡き後、今後も経営を安定的に運営できることになるのか。当面は株式を継続保有することになろうが、株主総会特別決議で拒否権を持つ株式の将来の行方が大いに気になる。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------

ハウスメーカーが信託機能を活用?


【 積水ハウスの管理信託 】


 2017/7/27、積水ハウスから添付内容のプレスリリースが発表された。

『賃貸住宅オーナー様の資産管理・円滑な承継をサポート 「積水ハウス信託株式会社」営業開始』
https://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/datail/__icsFiles/afieldfile/2017/07/27/20170727_1.pdf


<想定概要(例)
1.関係者
(1)委託者兼当初(第一)受益者:土地所有者
(2)受託者兼マスターリース賃貸人:積水ハウス信託
(3)第二受益者(第三受益者):土地所有者の子供達(孫達)
(4)建物施工者:積水ハウス
(5)マスターリース賃借人兼サブリース賃貸人:積和不動産

2.契約内容
(1)信託の目的:土地・(竣工後の)建物の管理運営
(2)遺言代用(受益者連続型)特約の内容:当初(第二)受益者が死亡した場合は、特約(第二(第三)受益者の受益権割合を予め規定)に基づいて、第二(第三)受益者に受益権が移転する


<感想>
 不動産(土地・建物)という「現物」に代わり、信託受益権という「みなし有価証券」を活用した「相続税対策」を切り口とした積水ハウスの営業戦略。土地所有者にとっても、信託契約を解除しなければ、(1)税務面(受益者変更の登録免許税:千円/件。不動産の登録免許税:不動産の価額×0.3~0.4%。http://www.nomura-un.co.jp/explanation_trust/)と、(2)資産承継のし易さ(受益権所有割合の移転)のメリットあり。今後、ハウスメーカー各社が追随する可能性も。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------

「元税務署長が教える さげる相続税 さがる相続税」③



「元税務署長が教える さげる相続税 さがる相続税」(五十嵐徹夫著、エクスナレッジ)より


  第2章 生前に不動産で大きくさげる相続税

  3-4 賃貸不動産は生前の贈与がお勧め

  贈与をするなら現金よりも不動産


 不動産を贈与する場合には、通常の取引価額である一般的な「自家」と比べて低く評価されている価額が贈与税の課税価格となり、その結果、現金で贈与する場合に比べて贈与税額も少なくて済むのです。また、不動産を贈与することにより贈与者の財産が減少し、将来贈与者が死亡した際の相続税も節税できます。


  不動産でも賃貸物件がいい

 贈与する財産が賃貸している不動産の場合には、今まで説明した評価額の算出方法に、借地権割合や借家権割合を考慮して評価することになりますので、さらに評価額が下がることになります。

 例えば、借地権割合が70%の地域の貸家の敷地であれば、その敷地の評価額は、「1600万円×(1―70%×30%)=1264万円」となり、贈与税額は271万6000円となります。貸家でない税額と比較すると134万4000園も現象するのです。

 また、賃貸不動産を贈与した場合には、贈与した後の賃料収入が受贈者に帰属することになるため、贈与者の収入はその分だけ減少し、贈与者が死亡した際の相続財産を増やさないという効果も生まれます。

 さらに、受贈者の収入(所得)が贈与者の収入(所得)より少なく、所得税の実効税率が低い場合には、所得税対策にもつながります。

 このように、不動産の贈与、特に賃貸不動産の贈与は、贈与税対策および相続税対策として大きな効果をもたらします。しかし、不動産の贈与を実行するためには、贈与契約の締結ととともに、名義変更のための所有権移転登記をすることになります。この登記のためには、登記済み権利証などの書類の準備が必要となるとともに、登録免許税を納付しなければなりません。この登記手続きを司法書士に依頼すると、司法書士への報酬等の支払いも発生します。さらに、登記完了から約半年後には不動産取得税の支払いも必要となります。

 不動産の贈与に際しては、このような費用負担も伴い、また、一度贈与してしまうと簡単に名義を元に戻すことができません。

 したがって、不動産の贈与に際しては、メリットやデメリットを十分に検討した上で、結論を出す必要があるでしょう。


  4-5 小規模宅地等の特例が適用できるか否かを見極める
 
  土地の評価が80%もさがる特例


 小規模宅地等の特例は、個人が、相続または遺贈により取得した財産のうえい、その相続の開始の直前において被相続人等の事業に使われていた宅地等または被相続人等の居住用に使われていた宅地等のうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分について、一定の割合が減額になるとされています。、ここでいう被相続人等とは、被相続人や被相続人と整形を一にしていた被相続人の親族をいいます。

 対象となる宅地は、特定事業用宅地等、特定居住用宅地等、特定同族会社事業用宅地等および貸付事業用宅地等のいずれかに該当する宅地等です。


  4-6 小規模他宅地等の特例① 特定居住用宅地等のケース

  特定居住用宅地等とは?


 相続開始の直前において被相続人等の居住用に使われていた宅地等で、区分に応じ、それぞれに掲げる要件に該当する被相続人の親族が相続または遺贈により取得したものをいいます。


  特定居住用宅地等の適用要件(一部)

被相続人と生計を一にする被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等:330㎡まで80%減額
⇒被相続人と生計を一にしていた親族:相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで有している人

  
  4-7 小規模宅地等の特例② 特定事業用地等のケース

  特定事業用地等とは?


 相続開始の直前において被相続人等の事業(貸付事業を除く)のために使われていた宅地等で、それぞれに掲げる要件のすべてに該当する被相続人の親族が相続または遺贈により取得したものをいいます。

 被相続人等の事業の用に供されていた宅地等
 ⇒貸付事業用宅地等に該当する宅地等:200㎡まで50%減額


  4-12 遺留分を考えて遺産分割を!

  遺留分の割合と遺留分の減殺請求


 遺留分を有する者を遺留分権利者といいます。遺留分権利者になれる者は、被相続人の子供(代襲相続人を含む)、配偶者および直系尊属です。兄弟姉妹にはありません。

遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと、時効によって消滅します。また、相続開始の時から10念を経過した時も時効によって消滅します。

相続争いを確実に防ぐ方法はありませんが、相続人の間で遺留分を考慮した遺産分割を行うことにより、相続争いを起こしにくくすることはできると思います。当然のことではありますが、遺言書を作成する時には、遺留分を考慮した遺言書を作成するすることが、相続人の間の争いを防止することになります。



  付録 元税務署長が教える税務調査の注意点

 自分がこの世を去った後、残した財産がもめ事のタネとなり、家庭が険悪な仲になってしまうなど、誰もが望まないことではないでしょうか!ただこのようなことが相続の現場にはいくらでもあり、これまで多くの人を目にしてもきました。

 自身が残す財産が、家族の皆を幸せにする。そんな財産の残し方ができればこんなに素晴らしいことはないと考えています。


>>誰しも相続人の皆を幸せにする財産の残し方を考えておく必要がある

FC2プロフ
プロフィール
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
CEO (4)
夢 (8)
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR