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はてなキーワード: プロトタイプとは

2025-03-04

秋葉原の高架下には焼けた基板の匂いと、汗ばむ路地の湿気があった

秋葉原の高架下は、いつものように湿った電子部品匂いが満ちていた。ジャンク屋の脇をすり抜けるたび、基板にこびりついたホコリの粒が照明に舞う。

無造作に積まれガラクタの山に手を突っ込むと、錆びついたコンデンサや焦げたトランジスタが指先に引っかかる。

「これは……いけるな」

指で弾くようにして埃を払い、光に透かす。どんな部品も、適切な処理を施せば蘇る。基板の損傷具合を確認しながら、ついでに使えそうなネジやヒートシンクも拾い上げる。

……駄目だ。これはクズだな。

手の中のガラクタを放り出すと仰ぐように空を見上げた。

酸化した銅の匂いLEDが点滅するモジュール、古びた基盤。ここにはありとあらゆるデータが詰まっている。

まるで俺の過去の記録のように。


趣味は?」

PC組むのが好きで、あとレトロゲーム集めてる」

「あ、私も。MSXとか、動くの家にあるよ」

彼女はそう言って笑った。

髪は肩につくくらいの長さ、白いブラウスの襟元に小さなアクセが揺れていた。

爪は短く、キーボードを叩く指に慣れた手つき。

男ばかりの場で、こんなに話が合う相手出会うのは珍しい。

「連絡先、交換しない?」

俺はスマホ差し出し、彼女も応じた。

二次会には、俺たちは二人だけでバーへ向かった。

薄暗い店内、カウンター席。グラスに残る氷が静かに揺れた。

「……手、大きいね

彼女はそう言って、俺の手を取った。

テーブルの下、指を絡めてくる。俺は唾を飲み込む。

脈ありだ。

店を出るころには、彼女はすっかり出来上がっていた。

俺は彼女を支えながらタクシーを拾い、自然な流れでホテルへと向かった。

部屋に入るなり、彼女はベッドに沈み込んだ。

酔いに頬を染めながら、目を細める。

「……シャワー、先に浴びる?」

「いや、いい」

俺は彼女の上に覆いかぶさり、ブラウスボタンを外した。

手が滑るスカートの中へ指を伸ばし、下着の端に触れる──そのとき、指先に違和感があった。

金属の、冷たい感触

よく見れば、彼女の腰にはしっかりとした鋼鉄の枠が巻かれていた。

南京錠複数ロック機構、複雑なヒンジ。間違いない、貞操帯だ。

やれやれ……

俺はベッドから降り、スマホを取り出した。ロックを解除するにはパスコードがいる。

通常なら無理だろうが、俺は自信があった。

「さて…」

俺はポータブルデッキを取り出し、彼女ウエストに巻かれたデバイスの近くにセット。

生体認証が絡んでいる可能性が高い。

無理に解除しようとすれば、彼女の体にダメージが入るリスクもある。慎重にいかねばならない。

デッキを起動すると、視界に仮想空間が開かれる。

俺の意識ゆっくりサイバーネットへとダイブする。

そこは光の海、揺れるライン、数値が流れ、無数のファイアウォール要塞のように立ちふさがっている。

……なるほどな

こいつはガチ企業製だ。個人用の貞操帯ってレベルを超えている。

おそらく、某セキュリティ企業が開発した軍用プロトタイプの流用品。

こんなものを装着している時点で、彼女の素性がただのOLなんかじゃないことは明白だった。

俺は冷静にアクセスの隙を探る。

まずはファームウェアバージョンを特定するために、周辺のデータパケットを解析。

だが一筋縄はいかない。リアルタイム暗号化が施されている。

「クソッ……」

セキュリティ想像以上に堅牢だった。

通常のリバースエンジニアリングでは数時間、いや数日かかるレベルだろう。

しかし、俺は悠長に構えている暇はない。

からこそ強硬手段に出る。

俺はカスタムメイドAIワームスネークバイト」を展開する。

これは内部構造を直接解析し、最も脆弱ポイント自動ハッキングするツールだ。

理論上はどんなセキュリティ突破できる。

頼むぜ……

スネークバイト侵入を開始する。

データ洪水が視界を埋め尽くし、暗号が次々と解かれていく。

だが突然、警告音が鳴り響いた。

アクセ拒否。異常な侵入を検知。対抗措置を発動』

「マズい……!」

防衛プログラム作動した。俺の意識ネットワークから排除しようとしている。

電撃のようなフィードバックが走り、デッキ火花を散らした。

俺は慌てて接続を切る。汗が額を伝い、荒い息が漏れる。

間違いない、これを解除するには本格的なサイバーテロレベル技術必要だ。俺の手に負える代物じゃない。

俺は視界を戻し、横に目をやる。

「……俺を試してるのか?」

彼女は薄く笑って目を閉じる。まるで、俺がどこまでやれるのか見定めているかのように。

くそっ。

突破はできなかった。時間もない。

俺は諦めてベッドに戻り、彼女の髪を撫でながら声をかけた。

「……なんでこれ、してるの?」

彼女はふっと笑い、「さあ?」とだけ答えた。

彼女は無邪気な寝顔のまま、静かに眠りはじめた。まるで何も知らない子供のように。

俺はゆっくり背中をベッドに沈める。

結局、侵入できなかった。

……どちらにも。

2025-02-23

プリキュアシリーズキャラ被りを避けるのは大変か?

アニメ漫画ではデフォルメによってパーツが現実よりも単純化される以上、現実以上に作品間でそっくりさんが見受けられる。

黒髪ロングの紺セーター。

こうした属性キーワードを見たとき浮かんでくるキャラに、見た目としてかなり似通っていないかと改めて思わされるキャラがいるのではないだろうか。

それらを集めたものが無個性集団に見えることもあるだろうし、見えないこともあるとすれば、それはそのキャラが持っている性格バックストーリー差異も込みで消費者の印象に投影されているからということだと思う。

ところでプリキュア子供向けなのでストーリー性格の幅に制限がかかる。

不適切人格を持ったキャラなどはランチさんのように無かったことにされたりする(でも、あれが許されないなら、らんまはアリなのか?と議論がややこしくなりそうである)。

子供理解力・読解力を念頭に置くので、設定等に大人の鑑賞を想定したものほどの深みを持たせることもできないことも、制約として効いてくるだろう。

鳩ノ巣論法イメージでいけば、与えられる設定も、見た目のパーツも、「消費者にとって同じようなものに思えてしまうか」という意味で有限なら、いずれ過去シリーズキャラそっくりさんを作り上げてしまうことになるだろう。

デザインプロトタイプを作り上げたときに注意深く過去キャラと突き合わせて、全てのキャラそっくりでないか確認していく作業を挿入することで、その可能性を下げることはできる。

ただ、これからシリーズが何百と続くのであれば、いずれは組み合わせ論的に制約からひねり出せる情報やパーツから作り出せるすべてのバリエーションを世に出して切ってしまう、ということが起こり得るのではないか、ということは思った。

そういえば最近プリキュアガチャを置いてあるのが見たが、なんかそれはおジャ魔女どれみキャラたちに似ているようだった。

もはや消費者プリキュアだけでなく過去東映魔女っ娘シリーズを通してキャラに対する印象を形成している可能性があるのである

dorawiiより

2025-02-16

機動戦士Zガンダムまでに登場するMS開発企業 について

ツィマッド社(ZIMMAD)

まず、ジオンMSメーカーの中でもめちゃくちゃ影の立役者なのがツィマッド社 だ!

「え、ジオンMSってだいたいツィマッドが作ってるんじゃないの?」と思ったやつ、違う!!

ジオンの主力MSジオニック社のものほとんどで、ツィマッドザクに負けた会社って言った方が通りがいい。

ツィマッド社はドム系列を開発したのが最大の功績!

試作MS EMS-04 ヅダを開発してMS-05 ザクIの開発コンペでジオニック社と競ったが、 機体が爆散するという致命的な欠陥があって敗北。

その後、「重MS時代が来る!」と考えて開発したのがYMS-09 プロトタイプドムで、それが後のMS-09 ドムに繋がる。

さら地上戦仕様MS-09F/TROP ドムトロペンや、統合整備計画によるMS-09R-2 リック・ドムIIなんかもツィマッド社の成果!

ただし ゲルググジオニック社の機体なので、結局ツィマッド社はジオニック社の後塵を拝することになる。

ちなみに アクシズMS開発にも協力している っぽいが、Zガンダム時点では目立った成果はない!


ジオニック社(ZEONIC)

ジオン公国のMS開発の絶対王者

言わずと知れたザクシリーズの開発元であり、 一年戦争象徴とも言えるMS-06 ザクIIを生み出した。

ザクI(MS-05)をベースにしたMS-06 ザクIIは宇宙仕様地上戦仕様指揮官機、重装型、狙撃型などのバリエーション豊富

さらYMS-14(試作ゲルググ)→ MS-14 ゲルググ連邦のRGM-79 ジムに対抗できる高性能MSを開発するも、時すでに遅し!

さらヤバいのが、ジオニック社は 地球連邦軍に吸収される ということ!

そう、戦後地球連邦軍ジオニック社の技術者を取り込んで、 RGM-79ジムを開発するんだよ!!

まりジムザク技術を流用した機体ってわけ!!

その後、元ジオニック社の技術者たちはエゥーゴのカラバにも関わるし、アクシズハマーン軍にも合流して MS-09R-4 ギャビー・ハザード専用リック・ドムなんかを開発してる。


アナハイム・エレクトロニクス(AE)

Zガンダム時代MS開発の覇者 にしてヤバい企業 No.1

元々はコロニー建設宇宙企業だったのに、 一年戦争後に連邦からMS開発を一手に請け負うことに成功

なんでそんなことになったのか?

連邦軍が戦後MS開発会社統合ジオニックの技術者を取り込んだから!!

アナハイムガンダムMk-IIを開発するティターンズに協力してたけど、 エゥーゴとも裏で繋がっているというダブルスパイ企業だった。

結果として MSA-003 ネモMSZ-006 Zガンダムなんかをエゥーゴ提供するわけだが、ティターンズが負けたら今度は地球連邦軍の主流派グリプス戦役後の連邦)に擦り寄る。

ちなみにガンダム試作機(GPシリーズ)もアナハイム製で、 GP02Aなんかは核バズーカを搭載する超ヤバい機体!

結局アクシズMS開発を本格化するまでアナハイム地球MS市場を独占することになる!

サナリィSNRI

Zガンダム時点ではほぼ出てこないが、連邦内の次世代MS開発機関として宇宙世紀0100年代に台頭する企業

ここの技術F91以降の小型MS を生み出すんだが、Zガンダム時点ではまだ 地球連邦軍内で試作機を作ってるだけで目立った成果はない。

まとめ

ジオニック社 vs ツィマッド社 → 一年戦争ジオニック社が圧勝するが、戦後連邦技術を吸収

連邦軍はアナハイムMS開発を一任 → そのせいでアナハイムMS市場を牛耳る

エゥーゴ vs ティターンズ → どっちにもアナハイムが絡んでるので、 どっちが勝ってもアナハイムが儲かる

ZガンダムMSはほぼアナハイム製! → エゥーゴ用のZガンダムも、ティターンズ用のガンダムMk-IIも、結局アナハイム!!

結局、 戦争MSメーカーが潰れたり統合されたりしながらも、アナハイム漁夫の利を得て巨大化するという流れだ!

ジオニック社もツィマッド社も、 Zガンダム時代では歴史の一部になってしまったが、技術は今も生きている!!

MSメーカー覇権争い、ロマンがあるよね!!!

2025-02-14

AI生成記事

九州大学病院オブジェクト指向システム導入の記録

序章:革新的システムへの期待

1990年代半ば、九州大学病院(九大病院)は病院情報システムの全面刷新計画していた。従来の断片化したシステム統合し、最先端オブジェクト指向技術を全面採用した次世代システムに生まれ変わらせるという大胆な構想である

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。入札条件にも「純粋オブジェクト指向技術で実現すること」を掲げ、業界内でも前例の少ない大規模プロジェクトに挑むことになった​

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。この計画応札した日本IBMは、開発言語にSmalltalk採用し、社内外からオブジェクト指向開発の専門家を総動員する。日本IBM自身のチームに加え、Smalltalk豊富経験を持つ多数のシステムインテグレータ各社が協力企業として参画し、一時期は約200名もの技術者が開発に従事する巨大プロジェクトとなった​

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医療現場からは「21世紀を先取りするシステムになる」という期待の声が上がり、IBM側も「国内最高峰病院に最新技術を投入できる」と意気込んでいた。誰もが、この試みに大きな希望を抱いていたのである

1996年プロジェクト始動曖昧要件定義

プロジェクト1996年、本格的に動き始めた。九大病院情報システム担当者たちは、院内各部からシステムへの要望ヒアリングし、「新システムへの要望リスト」を作成して日本IBM提示した。しかし、その内容は具体性に欠けていたと言われる。「実現したい業務全体像がはっきりしていなかった」のだ。病院側は約1,400床を擁するマンモス病院ゆえ、部門ごとの意見をまとめ上げ全体方針を打ち出すことが難しく、提出された要件定義書は「中身はほとんどなかった」と関係者は振り返る。一方の日本IBMも、その不十分な要件定義を十分詰め直すことなく開発を進めようとし、この問題放置してしまった。プロジェクト序盤から、実は大きな不安の種が芽生えていたのである

それでも当初の計画は極めて野心的だった。フェーズごとに順次システムを稼働させる計画で、第1次カットオーバー最初の稼働開始)は1997年1月と定められていた​

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。限られた時間の中、日本IBMと協力各社の開発チームはオブジェクト指向の新手法に挑みつつ、多数のサブシステムを並行開発するという難事業に取り組み始めた。しか要件曖昧さは各所で影響を及ぼす。開発メンバーの一人は後に「実際にはオブジェクト指向入り口にさえたどり着けなかった」と語っており、肝心の新技術を活かす以前に基本事項の詰め直しに追われる状況だったという。

1997年初頭:見えてきた遅れとすれ違う思惑

年が明けて1997年になると、第1次稼働予定の目前になっても開発は難航していた。結局、日本IBM1996年10月末になって九大病院側に「当初予定の1997年1月にはシステム稼働が間に合わない」と突然伝えることになる。これは病院側にとって青天の霹靂であった。代替策として「一部機能範囲を絞れば1月稼働も可能」といった提案すら無く、一方的に延期が告げられたことに、病院担当者たちは強い不信感を抱いたという。プロジェクトマネージャー同士の密なコミュニケーションも欠如しており、延期決定前から両者の意思疎通は十分でなかったようだ。これが最初の綻びとなった。第1次稼働時期は当初計画より9カ月遅れ1997年10月へと大幅に後退する​

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この延期表明を境に、現場は混乱に陥る。病院側は日本IBMだけに任せておけないとの思いから、一部の協力会社と直接組んで独自プロトタイプ開発に乗り出すなど、プロジェクト体制は分裂気味になった。一方、日本IBM側の士気も下がり始める。ある協力会社メンバーは「これほど求心力のないプロジェクトも珍しい」と当時を振り返り、リーダーシップ不足だったIBM姿勢に驚いている。複数の外部企業(延べ10社以上)が関与する巨大プロジェクトでありながら、日本IBM1997年10月頃まで一貫して主導権を握れずにいた、と多くの関係者が指摘する。誰がハンドルを取っているのかわからないまま巨艦だけが突き進む――そんな不安定な状況であった。

事態を重く見た九大病院日本IBMは、1997年2月から6月にかけて要件定義のやり直しに着手する。一度作成した要件定義書を更地に戻し、業務フローも含めてゼロから整理し直す作業だ。しかしこのリカバリーにも時間を要し、プロジェクトの遅延はさらに広がっていった。「ようやく問題点に光を当て始めたかに見えたが、時すでに遅し。気づけば頭上に厚い雲が垂れ込めていた」と語る関係者もいる​

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プロジェクトは先の見えないトンネルに入り込み、関係者の心にも次第に不安が募っていった。

1997年春:一筋の光明オブジェクト指向データベースの導入

混迷を極めるプロジェクトに光が差し込んだのは、1997年春のことである要件定義の立て直しと並行して、日本IBMシステム技術基盤を強化すべく重大な決断を下した。従来のリレーショナルDBではなく、米国GemStone Systems社のオブジェクト指向データベース(ODB)「GemStone」を採用する方針を固めたのだ​

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。GemStoneはSmalltalkとの相性が良いことで知られ、オブジェクト指向開発との親和性が高い製品である

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。この採用決定に伴い、GemStone社から複数名のコンサルタント来日プロジェクトに参加。停滞していた開発体制の再整備が行われた​

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経験豊富専門家の助言により設計も見直され、チームはようやく開発の目処を掴み始めたのである

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病院側もこの動きを歓迎した。長引く遅延に業を煮やしていたものの、最新のODB導入で性能や拡張性の課題解決されるならばと期待を寄せた。協力各社の技術者たちも「ようやくトンネルの先に光が見えた」と胸をなでおろした​

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現場には久々に前向きな空気が漂う。遅れを取り戻すべく、再結集した開発チームはスパートをかけた。システム全体のアーキテクチャをGemStone前提に再設計し、失われた時間を埋めるため懸命な努力が続けられる。巨大プロジェクトは今、再び軌道に乗ろうとしていたかに見えた。

1997年夏:GemStone契約交渉の決裂、暗雲の再来

しかし、その光は長くは続かなかった。1997年7月初旬、プロジェクトに再び試練が訪れる。日本IBMとGemStone社との契約交渉が突如決裂し、参画していたGemStone社コンサルタント陣が全員帰国してしまったのだ。肝心のGemStone製品も利用不能となり、頼みの綱を断たれた開発チームは一瞬にして暗闇に放り込まれた。まさに「悪夢のような出来事」であった。

7月20日になって、日本IBMはようやく協力各社を集め緊急説明会を開いた。日本IBM側の説明によれば、「GemStoneとの交渉決裂は企業日本IBM)の根幹に関わる問題による」という。詳しい理由として、契約書の条項に**「システムユーザー等が何らかの理由でGemStone社を訴えた場合、メイン・コントラクタである日本IBMが全ての法的対応を負わねばならない」といった内容が盛り込まれており、日本IBMはこの重い責任リスクを受け入れられなかったのだという。さらに料金面でも折り合わず、3カ月間におよぶコンサルタント8名の派遣ソフトライセンス料などに数億円近い費用**を要求されたことも判明した。法的リスクコスト高騰――企業として譲れぬ一線を越える契約条件に、日本IBMは最終的に「ノー」を突きつけた形だ。だが、それは即ちプロジェクト生命線を断つことを意味していた。

この報に接した開発現場は騒然となった。GemStoneを中核に据えて進めてきたアーキテクチャ設計を一から練り直す必要が生じたためである。ある協力会社関係者は「この時点でプロジェクトの失敗を覚悟した」とまで語っている。大黒柱を失ったチームには動揺と失望が広がった。折しも夏本番を迎え、福岡の空は照りつける日差しに覆われていたが、プロジェクトには再び厚い雲が垂れ込め始めた。

1997年8~9月代替案への賭けと懸命の設計変更

GemStone脱落という非常事態に対し、日本IBMと九大病院必死リカバリーを図る。1997年8月上旬、急遽代替のODB製品としてフランスA.D.B社の「Matisse」を採用する決断が下された。Matisseは国内では知名度の低いODBだが、日本でも過去Smalltalkアプリケーションデータベース採用された実績があり、「何とか使えるめどは立つ」と判断されたのである

しか代替とはいえGemStoneとMatisseでは機能に大きな違いがあった。GemStoneで可能だったサーバ側でのSmalltalk処理実行がMatisseではできず、セキュリティ機能も貧弱だったため、開発チームは不足分を自前で作り込む必要に迫られた。この結果、システム全体の設計クライアント中心処理へ大幅に変更せざるを得なくなり、再び設計の手戻り作業が発生した。炎天下での再出発であるエンジニアたちは寝食を忘れ、懸命にコードを書き直した。

その甲斐あってか、1997年9月末の時点で第1次開発の主要部分を年内に実現できる見通しが立ったという。一度は暗転したプロジェクトにも、わずかながら光明が見えた。病院側も「何としても年内稼働を」という思いで支援を続ける。だが、このとき水面下では別の動きが進んでいたことを、現場の多くは知らなかった。

1997年10月:小さな後退、大きな決断

1997年10月9日、事態は最終局面を迎えた。この日開かれた会議で、日本IBMSmalltalkによる開発断念と、マイクロソフト社のVisual BasicVB)への全面的方針転換を突如宣言したのである晴天の霹靂とも言えるこの決断に、現場は凍りついた。幾多の苦難を乗り越えようやく目指してきた最先端技術での構築を諦め、当時広く普及していたVBという「オブジェクト指向ではない」開発ツールで作り直すというのだ。九大病院が当初求めた**「純粋オブジェクト指向」**という条件にVB合致するかは議論の分かれるところだが​

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病院ももはや背に腹は代えられない。最優先すべきはシステム稼働そのもの――この苦渋の転換を受け入れる以外になかった。

実はこの決断に至る伏線存在した。日本IBM1997年4月からかにVB採用可能性を九大病院に打診しており、さら8月からは段階的にSmalltalk担当エンジニア現場から引き上げ始めていたという。ある協力会社メンバーは「裏ではVBによる開発をすでに進めていたようだ」と振り返っている。つまりGemStone交渉決裂後、表向きはMatisseによる巻き返しを図る一方で、日本IBM本体は別動隊でVBシステムの構築に乗り出していた可能性が高い。振り返れば、日本IBMにはSmalltalk固執しない理由もあった。同社は翌98年2月長野冬季オリンピック向けシステムSmalltalkで構築しようとして失敗し、結局VBで作り直したという“前歴”もあったと伝えられる。アトランタ五輪1996年)では自社Smalltalkツール(VisualAge)を投入したものの、国内の大型案件では苦戦が続いた経緯があった*4。豊富人材がいるVBなら「最後人海戦術で何とかできる」という計算も働いたようだ。GemStoneとの契約不成立も、IBMにとっては結果的Smalltalkを断念する良い口実になったのではないか――協力会社メンバーの一人はそんな憶測さえ口にする。

方針転換の発表とほぼ同時に、Smalltalkで開発を担っていた協力会社の大部分はプロジェクトから撤退することになった​

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10月中旬には、多くの外部技術者が病院を後にしている。自ら招いた転換とはいえ日本IBMにとっても苦渋の決断であった。投入したリソース費用は莫大で、一からVBで開発し直すのは会社としても大きな後退だ。しかし背に腹は代えられない状況まで追い詰められていたことも事実であろう。IBM現場責任者は病院側に深々と頭を下げ、「必ずや残された方法で間に合わせます」と約束したという。九大病院担当者も沈痛な面持ちで頷き、「形はどうあれ、患者さんに影響を及ぼす前にシステムを動かしてほしい」と絞り出すように告げた。

以降、日本IBMは自社内のVB技術者や、自社が持つ病院向けオーダリングシステムパッケージ製品*5などを総動員してシステム構築を続行した​

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データベースも、当初IBM提案していながら見送っていた自社のリレーショナルDBDB2」を採用する公算が高まった​

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目標は「年度内(1998年3月まで)の第1次稼働」​

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。もはやオブジェクト指向の夢を追う余裕はない。現実的かつ確実に動く仕組みを、一刻も早く届ける――プロジェクトはその一点に向け再編成された。かつて200名近くいた開発陣は大幅に縮小され、構成メンバーも一変する。病院看護師スケジュール管理など一部のサブシステムは、撤退しなかった協力会社が細々とSmalltalk開発を続けていたが、その姿はもはや主流から外れた存在となっていった​

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。ある古参の協力技術者は去り際に「全力を出して戦う前に、白旗を上げてしまったという感じがする」と寂しげに語ったという。こうして九大病院プロジェクトの第1フェーズ――オブジェクト指向技術による野心的挑戦のフェーズは幕を下ろしたのであった。

1997年末:現場への波紋と社会的注目

VBへの方針転換後、九大病院現場には複雑な空気が流れていた。病院スタッフにとってシステム刷新は長らく待ち望んだ悲願だったが、その中身は当初聞いていた「最新技術結晶から一転して、従来型の技術で作られるものになってしまった。「結局、夢物語に終わったのか」という落胆の声も一部にはあった。しかし同時に、「多少古くてもいい、とにかく業務改善する仕組みを早く動かしてほしい」という切実な声も強まっていた。目指すゴールは変われど、一日でも早く新システムを稼働させ、慢性的業務負荷を軽減することが現場の切実な願いとなったのだ。プロジェクトチームは日夜作業を続け、簡易な操作研修なども始めながら、年明けまでの稼働に向け突き進んだ。

そんな中、1997年11月3日付の西日本新聞朝刊一面にこのプロジェクトに関する記事掲載される。タイトルは「九大病院システム未完 巨額費用批判」。内容は「九大病院システム未完成にもかかわらず日本IBMに月額4,250万円を支払い続けており、税金無駄遣いとの指摘が出ている」という衝撃的なものだった。同日、このニュース地元RKB毎日放送東京ではTBS)のテレビニュースでも報じられ、九大病院プロジェクト社会問題として一気に世間の注目を浴びることとなった。院内では「患者そっちのけで何をしているのか」といった批判も耳に入るようになり、大学本部所管官庁からの問い合わせも相次いだ。追い打ちをかけるように外部から視線が厳しくなる中、病院IBMはただひたすら開発を前に進めるしかなかった。

結末:プロジェクトの結末と残された教訓

1998年初頭、紆余曲折を経た九大病院の新システムは、当初の構想とは似ても似つかない形でようやく一部稼働に漕ぎつけた。日本IBMは多数のVBプログラマを投入して力技でシステムを完成させ、旧来システムの置き換えを順次進めていった。最終的に納入されたのはSmalltalkでもオブジェクト指向DBでもなく、Visual BasicリレーショナルDBによるシステムだった。かくして九大病院の「純粋オブジェクト指向システム」への挑戦は事実上の敗北に終わった。現場医師職員は、当初期待された華々しい先端技術恩恵を受けることはなかったが、ひとまず業務に支障のない情報システムが手に入ったことで安堵するより他なかった。プロジェクトは当初の理念を捨てて現実路線へ舵を切ることで、なんとか沈没だけは免れたと言えるだろう。

振り返れば、この失敗の背景には最新技術への挑戦ゆえの困難もあったが、それ以上に古典的とも言えるプロジェクト運営上のPermalink | 記事への反応(0) | 21:29

2025-02-05

生成AIによる地獄はこれからが本当の始まり 〜上司迎合する日経新聞誕生

今はまだ生成AIが使い物にならないので大丈夫だが、概ね1年半後に地獄が訪れるだろう。

出力と理解度がチグハグなので卒論指導に困る、というのは非常に上澄みの意見だと思う。インフルで熱に浮かされていてもわかる。良い環境だよ。

大切なことなので強調しておきたいが、この悩みが出るということは、とても良い環境研究されている、真面目で真摯な方なのだろう。頭がさがる。

こういった研究室やゼミ所属できた人は幸運だと思う。その幸運を活かすことなく、ただ漫然と生成AIを使うのはとても勿体無いことだとも思う。

https://anond.hatelabo.jp/20250203224000

とはいえ地獄が訪れるのはこれからだ。今から準備しておきたい。

生成AIがなぜ使い物にならないか

現状の生成AIは「(嘘を嘘と見抜ける人でないと)使うのが難しい」からだ。

数学問題がどれだけ解けるか、というのはベンチマークとして使われているからで、実用的とは言い難い。

また、何が欲しいのかがよくわかっていないまま曖昧な内容を入れて、欲しい出力物が得られるほど、コーディング能力も高くはない。

話題沸騰中のDeep Researchも、何をどう調査したくてどんな限界があるのかわかり、かつ、それが正しいか確認できる人にしか使えない。

卒論指導話題も、ある意味で「どうやってググればお目当てのソースコードが探せるか」だけに特化した学生が増えた、と類似話題で現状の延長線上と言える。

(逆説的に、卒論レベルコーディングで詰まる学生が出るということは、生成AIはまだ使い物になっていない、ということだ)

生成AI活用しているのは誰なのか

今の生成AI界隈で猛烈に進んでいることは、「アインシュタインタイプライターを打たせるな」という状況だ。

アインシュタインの方がタイプライターを早く打てたとしても、秘書タイピングさせた方が良い。

(絶好調なら)自分の方が絶対に上手くやれるが、まあ生成AIでもそこそこやるやないか、という人は今でも十分使えている。

その代わり、タイピングみたいに頭空っぽにしてやれていた息抜き仕事がなくなって、常に自分しかできないことを要求されるようになるわけだけど…

どうやって生成AIによる地獄が訪れるのか

生成AIが使い物になり出してから地獄だ。性能的には半年〜1年程度で到達すると思う。

そして、日本企業予算のつかないポッと出のものに即応できるほど柔軟な裁量を持っていないので、導入が決定された次の半期からスタートになる。

(多くの日本企業の次の上半期に話題になり、下半期に検証が行われ、次の上半期に根回しが行われて、その次の下半期からスタート

場合によっては、ソフトバンクパッケージ導入、という形がとられても何ら不思議ではない。

そこで見られるのは、繰り返し繰り返し現場が苦渋を舐めさせられてきた、コンサルタントへの対応だ。

管理職それぞれに専属コンサルタントがつく地獄

コンサル有効機能する現場を見た人もいると思うが、共通するのは「外部の権威を導入することで、スムーズ物事を運ぶ」ではなかっただろうか?

これ、「実現したいことは明確だけど社内政治でうまく行かねえからゴリ押ししたい」って、社内に主導者が居た場合で、コンサル主導ではなかったはずだ。

コンサル主導で迷走するのは、そもそも何をしたいのかも良くわかっていないし、何ができたらゴールなのかも定義できないからだ。

今後、何のビジョン専門性もない数多くの管理職ゲートキーパーが、生成AIという専属コンサルタントを盲信するようになる。

それ、ChatGPTは違うこと言ってるけど?

現時点では「Grokはこう言っていた」とか「ChatGPTはこう言っている」という指摘の仕方をするのは馬鹿扱いされている。

情報が古いし、間違いもあるし、そもそも幻視作話)するから適切な使い方ができない人にとっては使い物にならない。

でも、もう人類の大半よりは賢いし、コーディング能力も高く、辻褄を合わせるのも上手だ。

そして残念ながら日本企業管理職専門性が最も優れた人がなるわけではないので、管理職よりも専門性に優れて間違えない生成AIは生まれしまう。

彼ら彼女らにとって、自分よりも賢く正しいことを言うのであれば、そこを区別するのは出力物の量だけになる。

Geminiにやらせれば良いんだから簡単でしょ?

今でも専門性を軽視し、人頭いくらしか計算しない管理職は山ほどいる。

コンサル意見鵜呑みにし、まずはやってみようという軽い言葉で、大量の今後使わない仕事が生まれるのも良く見る光景だ。

それでもまだ現場が耐えられたのは、概ねコンサルもどブラックで、ゴリゴリ書類やらパワポやらを持ってくる超馬力を見ていたからだ。

あれだけクソミソに叩かれた電通が(叩かれる理由同意できるし擁護はできないが)現場一定の信頼が置かれるのは、彼らは絶対にケツを持ったからだ。

認めたくないが、そこには超人的な仕事量をこなすサラリーマンに対する畏敬の念があった。

それが、低コストかつ(人間に比べれば)即時回答する、コンサルタントが常に横につくようになるわけだ。

管理職は今後気軽に言い放つようになる。

「これ、生成AIが出してきたアイデアなんだけど、それぞれ資料ちゃんと作ってきてよ。Geminiにやらせればすぐでしょ。明日までね」

上司迎合する日経新聞誕生

ある朝出勤前に、調査検索系の生成AIに「XX業界における現在トレンドと、今後の展望、注力すべき事業分野についてまとめて」と指示を出す。

日経新聞では私の履歴書だけ読んで、職場についてコーヒーを淹れて自席に戻ったら、生成AIの結果に目を通して、事業分野の気になった点をピックアップする。

そして、部下にこう言えば良い。

「XXという事業分野が有望そうで、アイデア3つほど選んでおいたから、事業計画と取れそうな市場の規模、売上高黒字化までのストーリー作ってきて」

地獄である

(尚この地獄は、上から下まで満遍なく発生する)

そんなんぜんぶ上司が生成AIでやったら良いじゃん

今後ベンチャーではそういう人材が大いに増える。

何の誇張もなく、今でもそういうベンチャー大勢あるが、極端に増える。

人当たりが良くどんなに酒を飲んでも酔わず、あたかもすでに儲かっているかのように皮算用をしてみせる資金調達ビジョナリーと、

生成AIを始めとするあらゆる自動化ツールを使って事業を形にするワンマンアーミーとのタッグでのベンチャーが急増すると思う。

(実際には「バグだらけだけど一応動くプロトタイプ」を生成AIで作って資金調達成功し、そこに群がるギークたちがAIが書いたコードを延々メンテデバッグする光景だと思うが)

でも、既存日本企業はそんなに組織体系を大きく変えない(変えられない)ので、それを実施するのは部下になるのだ。

でも、部下も生成AIを使えるようになるでしょ?

日本企業では不思議なことに、資料作成者資料に対して責任を負う。

その資料採用した人も、その資料採用して方針を決めた人も、その資料採用して決めた方針GOを出した人も、責任を問われることはない。

常に責任は、資料を作った人に帰結するのだ。

から、生成AI作成した資料を取りまとめて上司に提出する人間が、常に最終的な責任を負う。そう、キミやワタシだ。

いやいや、俺らだって業受とか派遣かに資料作ってもらったりするじゃん。そうだね。

でも彼らの責任を問うても無駄だ。だって俺たちが率先して切ったりするじゃん。今更責任だけ負えとは言えない。

まとめ

まともな人間であれば、レビューはきちんと行うし、レビュー漏れレビュー実施者の責任だと理解している。

そういう常識的上司がいれば理想的だ。でもそんな理想郷ばかりじゃない。

そう言った職場では、地獄が発生する。防ぐ方法は無い。

より一層、言質をとって記録に残すのが重要になる。

記録をどう共有し、誰が認識していて、誰がそれを使ってくれそうかを把握する必要がある。

それをシステムと呼ぶのか政治と呼ぶのかは、人それぞれだろうと思う。

anond:20250205071948

プロトタイプを作り、仕上げるノウハウ

フルスクラッチ時代エンジニアけが実務経験と共に持っているもので「AIがいればプログラマ不要!!」とまでいわれるこのご時世に、みすみすITの金の匂いに釣られただけの愚かな若造や、食いっぱぐれてITならいけると舐めプしてくる中途にタダで教えたり、手放すとは思えないので。

 

まりどうなるかというと

 

AIで出力するだけでどうにもならず「ITコンサルです()」「カスタマーサクセスエンジニアです(虚構)」みたいな若手と

 

「これができればITエンジニア!!」つってAIで出力したソースコードだけを動画教材として荒稼ぎするベテランだけになる、ウケる

anond:20250203224000

最近AIアシストコードを書く世界についての考察を読んだけれど、AIを使うには使いこなせるだけの能力必要なんだよなって思った。

AIアシスト時代になってからスクラッチコードを書く必要はなくなったけれど、プロトタイプ製品に仕上げる知識技術は依然として必要なんだよね。

逆に、それを身につけてないし、身につける気もない学生さんはこの業界に進むのはやめとけって思う。

願わくばプログラミングと全く関わらない仕事で、その人が理解できる範囲内でAI使って生きていく方がよいと思うんだな。

閑話休題

まあ、こういう面倒な学生はさっさと卒業させておさらばしたいだろうからAIが助けてくれない箇所を教員が助けてあげることに結局なるんだろうな。

の子の将来は知らんって感じで。

2025-01-29

生成AIでなんかやれと言われる皆さんへ(DeepSeekとばっちり編)

コンバンハ、オイソギデスカ

今日上司の思いつきで無茶振りされる皆さんお疲れ様です。

DeepSeekみたいな話題日経新聞に載るたびに新規事業になるんじゃ無いかとかプロトタイプをもってこいみたいなこと言われると災難ですよね。

何がどうなってて、何はできないんですよみたいなのまとめておいたから、俺の屍を越えてゆけ

まず前提から

確実なこと

ほぼ確実なこと

まだ明らかになっていないこと

面倒な上に、揉めそうなところ

ここまでは前提な。こっからが、まとめ。

技術的にもコスト的にも可能そうなところ

蒸留済みの生成AIモデルローカルで動かして、性能検証すること

外に出したく無いデータがあるからAzureAPIも使いたく無いんだよね、みたいな職場では朗報

いまんところモデルのものに変なものは仕掛けられていないし、QwenやLlamaよりもまあまあできる印象。

技術的には可能だが、コストは要相談なところ

かい生成AIモデルローカルで動かして、性能検証すること

できなくは無いけど、まっさら状態だと稟議通すの無理じゃ無いかな、という金額を載せざるを得ない。

すでにでけえGPUとかで生成AI用の環境を組んでるところなら、できるよね。

蒸留済みの生成AIモデルを、自前のデータを使ってさら蒸留すること

できなくは無いけど(以下略

既にQwenやLlamaを使って自前でなんかやっているところなら、後追いで強化学習のみでいけるか追試するなんてのはできる。

(こういう設備が既にあるなら、特にDeepSeekが出たから新しく、というわけじゃ無いけどね)

技術的にも(お前が雇えるような技術者とコストでは)無理ですね

DeepSeekの論文を読んで、生成AIを安く作れ

無理ですね。そもそも強化学習改善するのだってJTCなら部長決済で済まないでしょ。(外資ならワンチャンあるのか!?

そもそもベースの生成AIモデルを作るの、特に強化学習オンリーじゃなくてTransformerベースのよくある作りで作ってあるみたいだし。

生成AIモデルを自社向けに改良しろ

無理ですね。蒸留する(ベンチマーク用の性能改善ならいざ知らず、自社向けの定義データも揃わないでしょ。

ルールベースでやりくりした方がマシ。

技術的には可能かもしれないけど、まだやめといた方が良いこと

オープンな生成AIモデルを組み込んでプロダクトを作れ

プロトタイプならあり。ビジネスに組み込むつもりなら、少なくともDeepSeekの蒸留モデルは(まだ)使えない。

QwenやLlama派生モデル扱いなんだったら、MITライセンスになるわけがないので、かなりグレー。

同様に、(流石に多分大丈夫だと思うけど)DeepSeekの改善前のベースの生成AIモデルが、適法じゃなかった時揉めそう。

なお、これは別にDeepSeekに限ったリスクではなくて、QwenやLlamaも同じなんで、基本全部同じリスクを抱えてると思った方が良い。

余談

元になるベースの生成AIモデル作るところまでは、既存の作り方と同じなのでビックテック優位変わらず。

が、雑にベースの生成AIモデル作っても、わりあいお安く性能改善できるんで追いつけるね、というのは、多分正しそう。

なんで研究資料とかオープンにしてんの?というのは、多分2つくらい理由があって、その方が話題になって儲かるから、というのと、オープンにしておけば転職しても使えるから、というもの

カントリーリスクは相変わらずあるので、Web版とかAPIで使うなら、趣味の大っぴらにしてるプログラミングの補助で使うとか、ゲーム用になんかするとか、じゃないかな。

ローカルで使うって言っても、余程のことがない限りAPI使ってお支払いした方が、パソコン新調するよりはお安いのではないでしょうか。

低性能なの使ってもあんま楽しくないし、思いつくユースケースは、趣味コストをかけずにゲームに生成AI組み込みたいんで無限ローカル試行錯誤したい、くらいじゃないかな。

オープンソースになったんだからコモディティ化(?)して、生成AIは誰でも作れるようになる!みたいな言説はまだまだお花畑ですね。

設備投資もランニングコストも、日本ベンチャーとかじゃまともな勝負にはならんでしょ。

メモリ16GBノートPCで動く1GiBサイズでChatGPT-4oレベルの超蒸留モデルが出てから出直してきてくださいというところ。

そんな超絶技巧のスモールサイズAIよりは、AGIの方が先にきそうだけど。

まとめ

仕事で生成AIでなんかしろって言われたら、事実上選択肢は3つだけです。

  • Azure経由でChatGPT使う
  • GCP経由でGemini使う
  • AWS経由でSonnet使う

別に組み合わせても良いけど、これ以外の選択肢はいまんとこ取れないですね。

2025-01-28

米国AI戦略の岐路──Deepseekの衝撃と「利益なきバブル」の行方

序章:AI覇権競争パラドックス

2023年、生成AIを搭載した検索エンジンの登場は世界に衝撃を与えた。米国政府国家戦略として掲げるAI開発競争は、技術的優位性の確保と経済的リターンの獲得という二重の課題に直面している。OpenAIGPT-4が示した驚異的な言語理解能力は、軍事技術から医療診断まで幅広い応用可能性を予感させた。しかし、黎明期熱狂が冷めつつある今、業界関係者の間で囁かれる疑問は「この技術は本当に金を生むのか」という現実的な問いへと移行している。

第1章:米国AI戦略光と影

国家戦略としてのAI投資

米国政府2021年AI研究開発予算を32億ドルに設定し、国防高等研究計画局DARPA)主導で軍事転用可能AI技術の開発を加速している。量子コンピューティングとの融合や、半導体製造技術国内回帰(CHIPS法)など、ハードウェア面での基盤整備に注力する姿勢は鮮明だ。特にNVIDIAGPU需要国防契約と連動し、同社の株価過去5年で1,200%超の上昇を記録している。

民間セクタージレンマ

大手テック企業の動向は矛盾に満ちている。MicrosoftはOpenAIに130億ドル投資しながら、実際のAzure AIサービス収益予測の60%を下回る。GoogleのBard統合検索では広告収入モデルの再構築に苦慮し、AmazonのBedrockプラットフォームAWS顧客の3%未満しか採用していない。生成AIコスト構造が明らかになるにつれ、1クエリ当たり0.006ドルという処理費用収益化の壁として立ちはだかっている。

第2章:LLMビジネスモデル根本課題

幻想現実乖離

ChatGPTの月間アクティブユーザー数が18億を突破する中、OpenAIの年間損失額は5.4億ドルに達する。主要収入であるAPI利用では、企業顧客の80%がプロトタイプ段階で開発を中止している現実がある。Microsoft 365 Copilotの事例が示すように、生産性向上ツールとしての価値認知と実際の支払意思の間には深い溝が存在する。ある調査では、Copilotユーザーの67%が「月30ドル以上の価値を感じない」と回答している。

半導体市場の歪み

AIチップ需要過熱が生んだ半導体バブル特筆すべき現象だ。NVIDIA時価総額2023年に1兆ドル突破した背景には、H100 GPU価格製造原価の800%を超える事実がある。TSMCの3nmプロセス需要の70%がAI関連に集中する異常事態は、半導体産業全体のリソース配分を歪めている。しかし、Cerebras Systemsの新型Wafer Scale Engineが示すように、ハードウェア進化速度がソフトウェア最適化を上回る逆転現象が発生しつつある。

第3章:Deepseekが突きつける現実

コスト革命の衝撃

中国のDeepseek-R1がGPT-4の性能を1/10コストで実現した事実は、業界常識根本から覆した。同モデル採用した「動的ニューロン活性化アルゴリズムは、不要パラメータ計算を85%削減する画期的手法だ。これにより、従来1回の推論に要した0.2kWhの電力を0.03kWhまで圧縮することに成功している。Deepseekの事例が証明したのは、計算資源多寡が必ずしも性能優位を保証しないという逆説である

オープンソースの脅威

Llama 3やMistralの進化が加速する中、独自モデルを保持する企業競争優位性は急速に失われつつある。Hugging Faceのプラットフォームでは、1週間ごとに新しいLLMアーキテクチャが発表され、ファインチューニング自動化ツールが普及している。特に中国発のモデルGitHubで急増する傾向は顕著で、2024年上半期だけで3,200件の新規リポジトリ登録された。この状況は、初期投資の回収を前提としたビジネスモデルの存続自体を危うくしている。

第4章:アルゴリズム戦争と人的資本

中国数学的優位性

国際数学オリンピック(IMO)の過去10年間で、中国チームが9回の優勝を達成している事実は軽視できない。特に2023年北京大会では、金メダル6個中5個を中国国籍学生が独占した。米国チームの実態を見ると、参加者の62%が中国系移民の子弟で構成されており、本質的人材育成力の差が浮き彫りになっている。DeepMindの元チーフサイエンティフが指摘するように、「Transformerアーキテクチャ革新には組合せ最適化の深い理解が不可欠」であり、この領域中国研究者が圧倒的な論文数を誇っている。

教育システム比較

清華大学AI特別クラスでは、学生高校時代からGANsや強化学習数学的基礎を学ぶカリキュラム採用している。これに対し、MITコンピューターサイエンス学部では、学部2年次まで微分方程式の必修科目が存在しない。教育省の統計によれば、中国トップ30大学AI関連専攻を選択する学生の数は、米国アイビーリーグの3倍に達する。人的資本の蓄積速度の差が、5年後の技術格差に直結する可能性が高い。

第5章:AIエコノミー未来

コモディティ化の波

LLM市場が直面する最大のリスクは、電気自動車バッテリー太陽光パネルと同じ道を辿る可能性だ。BloombergNEFの予測によれば、2027年までにLLMの性能差が実用レベルで感知できなくなり、1トークン当たりのコスト現在の1/100にまで低下する。この状況下では、MicrosoftのCopilotのような高額サブスクリプションモデルの持続性が疑問視される。逆に、LINEWhatsAppのようなメッセージングアプリへの基本機能組み込みが主流となるシナリオが有力視されている。

地政学リスク顕在

AI技術民主化が進むほど、国家間の競争ハードウェア規制データ主権を巡る争いに移行する。米商務省が2024年に発動したAIチップ輸出規制は、中東諸国向けのGPU販売を34%減少させた。一方、中国が推進する「東数西算」プロジェクトでは、内陸部に分散したデータセンター群が国家標準モデルの訓練基盤として機能し始めている。技術優位性よりも、地政学的な影響力が市場支配する時代が到来しようとしている。

終章:バブル崩壊のシナリオ

現状のAIバブルがはじけるトリガー複数存在する。第一に、2025年をメドに予想される「生成AI特許訴訟の多発」が挙げられる。Getty ImagesがStability AI提訴した事例のように、著作権問題技術普及の足かせとなる可能性が高い。第二に、エネルギーコストの急騰だ。アイルランドデータセンター群ですでに発生しているように、LLM運用必要な電力需要地域送電網の容量を超えつつある。

最も深刻なシナリオは「技術進化の減速」である。Transformerアーキテクチャ以降、根本的なブレイクスルー10年間発生していない事実看過できない物理学者の間では、現在ニューラルネットワークチューリング完全性の限界に近づいているとの指摘もある。もし2020年代後半までに新しいパラダイムが登場しなければ、数千億ドル規模の投資不良債権化する危機現実のものとなる。

結語:人類史上最大の技術賭博

米国AI戦略行方は、単なる経済競争を超えた文明史的挑戦と言える。Deepseekが示したように、技術優位性は絶対的ものではなく、常に相対的な優劣でしかない。重要なのはAIが生み出す付加価値本質を見極めることだ。仮に生成AIが期待通りの経済効果を生まなくとも、その研究過程で得られた副産物分散学習アルゴリズムや省電力チップ設計技術など)が次の技術革命の種となる可能性がある。

最終的に問われるのは、短期的な株価維持ではなく、長期的な技術蓄積をいかに持続可能な形で進化させるかという課題である中国の人的資本戦略米国投資戦略が衝突する中で、第三極としての欧州連合AI法案)やインドデジタル公共財戦略)の動向が新たな可能性を開くかもしれない。AI開発競争は、国家の命運をかけた「静かなる戦争」として、これからさらに激化していくであろう。

2025-01-19

[]1月3週記録

1月3週(1月13日~1月19日)

崩壊スターレイルで大きなアプデが来たので土日はほぼそれをやってた。

平日は未来少年コナン見ながら漫画読んでたら終わった。

年始ムードが終わって仕事が忙しくなってきてるから平日遊んでられる時間ドンドン減ってきてる。

時間が空いたらやろうとしてたフリーゲームとかあったけど、それの出番はもうちょい先かもなあ。

特に語りたいもの

崩壊スターレイル

オンパロス編が始まったけど、思ったより古の楽園で「おいおいこれってもしかして、アレやコレも含めて古の楽園何じゃねえだろうな?」という不安が襲ってくる。

自分としてはスタレ最大のアイドルキャラであるヘルタがこの話にどう絡んでくるのかが気になる。いやゆーてヘルタが本格的に絡んできたらもう完全に古の楽園なんだけど……古の楽園なんかなやっぱ……。古の楽園だったらなにか問題が有るのかって言われると、単に「古の楽園っぽい話はもう散々見たから次は別の話をやって欲しい」っていう個人的な都合でしかないんだけど、自分個人としてはこの材料を別の形で料理して欲しいかなと。

未来少年コナン

冒頭の2008年で地球が滅ぶというあらすじが「終末時計もその辺で爆発するはずだった気がするなあ」という感じ。人類の往生際の悪さを感じる。

全26話なのもあってテンポは案外早いのだが味付けはちょっと薄い印象。雑味は薄いけど刺激は弱くて旨味はそこそこ。

面白いまらないよりも「アナログ作画でこんだけ描くの大変だろうな」という感想が先に来る。

天地創造デザイン

前にアニメもやってたな~ぐらいの感じで読み始めたけど話が進むにつれて展開がこなれてきて面白い。てっきりネタ切れになって縮小気味になっていると思っていたのでいい方向に裏切られた。正解に段々近づけながらも微妙にぼやけた状態がずっと維持されていてクイズ番組のような楽しさが有るし、製造過程で出てくるプロトタイプゲキヤバ生物も見てて面白い。6巻37話のリレーオーダー回とかそういう要素てんこ盛りで楽しかった。

主な無料消費コンテンツ

ソシャゲ

崩壊スターレイル

漫画

ピッコマ

・悪役令嬢おじさん

コミックDAYS

天地創造デザイン

動画

Youtube

未来少年コナン

2025-01-07

anond:20250107210301

それはそう。弱者男性存在しない。

弱者男性プログラミングでいうところのクラスプロトタイプのようなもの

それが具現化したインスタンス存在するが、彼らは別に弱者男性です、って名乗ったりはしない。

実在人物を元に、その人が弱者男性かを判定するのは困難だし曖昧で、ほぼ意味がない。

弱者男性というイメージ議論の中でだけ輝く。

2024-12-31

男と女ではガンダム見た時の感想が全く違うんだよね

男はヅダみたいな「ピーキーな性能で自爆特攻するようなプロトタイプ」が好きだけど、

女はゼクスみたいな「ピーキーな性能のプロトタイプを華麗に操るイケメンパイロット」が好きになるんだよね。

2024-12-04

anond:20241204150940

機動戦士ガンダムジークアクス」なんだから流石にガンダムだろ

ただシュウジかいうやつが乗ってるのがノーマルガンダム

ジークアクスは姉妹機なのかプロトタイプなのかそういうのっぽいが

2024-10-24

増田Apple Vision Proサードインプレッション

何者にもなれないことを心に刻みつつ感想を述べる。

セカンドインプレッションanond:20240730201430

結局、外付けレンズを購入することにした。

もともとVision Proを使うにあたり、外付けレンズを購入するか、それともこれを機にコンタクトレンズにするかを悩んで、コンタクトにしてみたのだった。

しかし、いざコンタクトを使ってみると、眼が乾燥して、毎日使うのが非常につらかった。

日によってコンタクトを付けたり付けなかったりしていると「今日コンタクトをしていないかVision Proは使えない」みたいな制限が生まれしまう。

それが外付けレンズだと、めちゃくちゃ気軽にVision Proを使えるようになった。大満足している。

ついでに、なぜかアイトラッキングの精度も高くなった。

もとから日常的にコンタクトを使っている人でなければ、素直に外付けレンズを買ったほうがいい、というのが結論である

ノーズパッドも買ってみた。

https://booth.pm/ja/items/5910120

このノーズパッドは3Dプリンタで出力しただけの非常に粗雑なもので、鼻に当たる部分がかなり痛い。クッションが必要である

どこかのブログで見かけたやり方で、100均の靴擦れ防止ジェルシールを貼り付けてみたが、あまり効果はなかった。

いろいろ探してみたが、こういうシリコン製の外反母趾サポーターが良さそうである

https://www.monotaro.com/p/1906/4316/

ライトシールを外し、ノーズパッドで支える形はわりと安定していて、これが正解なのではないか、という気がしてくる。

めちゃくちゃデカくて重いメガネをかけているような感覚である

後継機では鼻で支える形になってもいいかもしれない。

少なくともライトシールは無くしていく方向でお願いしたい。

Sketchfabというサイトでは、かなりの量の3Dモデルを「USDZ」形式ダウンロードできる。

このUSDZ形式ピクサーが開発したとかで、Appleが推進しており、Safariで開くだけでAR的に展開できる。

これはvisionOS標準のクイックルックの機能なので何かのアプリなども必要ない。

部屋に置いておくと3Dフィギュアのようで楽しいのでオススメである

ただ、複数3Dモデルが重なると干渉して透明化してしまったりするのが残念である

意図的挙動なのだろうが、普通にクルージョンしてほしい。

これに限らずVision Proは総じて「やりたいことの80%くらいまでは出来るが完璧ではない」ということが多い。

Xbox Cloud GamingやPS Remote Playはやはりカクカクする。

回線速度は200〜300Mbpsくらいは出ているはずなのだが。

そもそもPS Remote Playは同一Wi-Fi内で使うならインターネットは経由しないのでは?

と思うのだが、なにか回線ルーター問題があるのか、Vision Pro側の問題なのかわからない。

Wi-Fiルーターの新調は検討したのだが、Vision ProはWi-Fi7はもちろん6Eにも対応してないんだよな。

Vision Proには、さまざまな映像ミラーリングしていくことが求められるので、Wi-Fi7への対応死活問題だ。

後継機に期待したい。

一部では「キラーアプリがない」などと言われているが、実のところキラーアプリなんて必要がない。

Vision Proの強みは、既存作業環境をそのまま空間に展開できることである

既存iOSアプリを平面のまま表示すればいいだけなのだ

まあ、そのiOSアプリVision Pro向けに配信されないのが本当に歯がゆいのだが…。

AppStoreでの配信時にチェックを一つ入れるだけなのに…。

それもまた残りの20%の不満の一つである

先日、AppleTV+で『Submerged(沈没へのカウントダウン)』というイマーシブ短編映画が公開された。

要するに8Kの180度VR動画だ。映像的にはなかなか面白かった。

だが8Kでも解像度が足りていないと感じる。

もちろん四角いウィンドウの中で普通3D映画として観れば十分なのだが。

やはり超解像化が必要になるか。

Metaの動向を観ていても、VR的なコンテンツを用意するために生成AIを利用する、というのは既定路線だろう。

visionOSへのApple Intelligenceの統合もまだまだ予定段階なのでなかなか難しいだろうが。

と、いろいろ書いてみたが、ファーストセカンドで書いたことを、ほとんど繰り返しているだけだな。

まだまだマニア向けのプロトタイプしかないので足りないところがあるのも当たり前である

価格」という最大の問題も残っている。

ただVision Proは完全に実用的な製品であり「買えば使える」ということは言える。

いくつかの不満も、順調にアップデートを重ねれば解消できるであろうことばかりである

60万円なんて出せないという方々(言うまでもないがそのほうがマトモである)も数年後を期待していてほしい。

2024-10-20

anond:20241019134813

GRoM 600の発売日に関する公式情報は、現時点では発表されていません。

なぜ発売日情報不明確なのか

モデルチェンジ計画: ホンダがGRoM 600の開発を正式に発表しているか、今後のモデルチェンジ計画に含まれいるか不明確です。

市場調査や開発段階: 新しいモデルの発売は、市場調査プロトタイプの開発、テストなど、多くの段階を経て行われます。そのため、発売までには長い時間がかかることが一般的です。

競合他社の動向: 競合他社の動向や市場の状況なども、発売時期に影響を与える可能性があります

どのように情報を得るか

最新の情報を得るためには、以下の方法が考えられます

ホンダ公式サイト: ホンダ公式サイトやニュースリリースを定期的にチェックする。

バイク専門誌やウェブサイト: バイク専門誌やウェブサイト新車情報を探してみる。

バイクショップへの問い合わせ: 近くのバイクショップに問い合わせてみる。

SNS: ホンダバイク関連のSNSアカウントフォローして、最新情報をチェックする。

まとめ

GRoM 600の発売日は、現時点では不明です。最新の情報を入手するためには、上記方法を試してみてください。

注意点

インターネット上には、必ずしも正確な情報ばかりとは限りません。複数情報から情報を集め、総合的に判断することが重要です。

発売日に関する噂や憶測は、頻繁に流れます。確実な情報かどうかを慎重に判断してください。

2024-10-15

anond:20241014105447

RX-12からRX-50へ飛びすぎだなあとやっぱり思ったので会話を続けてもう少し埋めてもらいました。

もう一個「RX-12からRX-50への変遷をもう少し掘り下げて教えてください。」というプロンプトを間に挟んでます個別の型番についての言及がなかったので省きます

(総括が途切れてますがそこで力尽きたようです)

プロンプト

RX-13からRX-49までの変遷を推測してください。

回答

RX-12からRX-50への進化に至るまでに、どのような技術や開発が行われたか想像しながら、RX-13からRX-49の各機体について、その特徴と進化過程を推測します。この架空歴史は、移動手段から人型ロボット、そして最終的にはRX-78のような戦闘モビルスーツへと至る技術革新の道を想定しています

RX-13: 高度な飛行技術自律操縦の導入

RX-13は、RX-12の空飛ぶスポーツカーの後継機として、完全自律飛行技術が導入されました。AIを使った自動操縦機能安全システムが充実しており、都市間の高速移動がさら効率化されました。また、個人だけでなく、貨物輸送や緊急救命用に特化したモデルも登場し、幅広い用途で利用されました。

RX-14: 垂直離着陸機能進化

RX-14は、垂直離着陸(VTOL機能が大幅に強化され、狭い都市空間でも自由に発着できるようになりました。この技術により、ビークル運用範囲が拡大し、個人ドローン車両実用化が進みました。RX-14のエアタクシー版も登場し、都市交通革命の一端を担います

RX-15: 人型への移行前夜

RX-15は、空中移動車両としての最終形態に近づきつつ、人型への移行の準備段階となります。このモデルでは、脚部の簡易的な機能が導入され、着地後に短距離歩行が可能になっています。これは、限られたスペースでの移動や複雑な地形での操作に便利で、未来の人型ロボット技術の基礎を築きました。

RX-16: 二足歩行試験

RX-16は、完全な二足歩行ロボット技術の初期試験機です。歩行能力が大幅に向上し、人間に近い動作可能になりました。主に都市部での警備や物流、救助活動に利用され、狭い場所での作業可能な汎用ロボットとして評価されました。この段階で、移動手段から作業補助ロボット」への変化が始まりました。

RX-17: ロボティクスとAIの融合

RX-17では、AIによる自律行動の精度が大幅に向上し、複雑な指示や状況に応じて即座に判断・行動できるようになりました。この機体は人間パイロット必要なくなり、救助活動工事現場での作業活用されるようになりました。自律型でありながら、状況に応じて人間遠隔操作することも可能です。

RX-18: 初期型パワードスーツ

RX-18は、作業パワードスーツとして開発されました。従来の二足歩行ロボット技術を取り入れながら、個々の作業員が装着して作業能力拡張するための装備として使用されました。特に建設現場危険環境での作業使用され、力を増強する機能が搭載されています

RX-19: 軍事用途の拡大

RX-19は、軍事用途に適したパワードスーツとして開発されました。個々の兵士戦闘力を飛躍的に向上させるため、強力な装甲と火力が追加されました。地上戦闘において、戦車ヘリコプターに代わる新たな兵器として登場し、兵士の機動性と防御力を高めました。

RX-20: 初期戦闘ロボット

RX-20は、無人戦闘ロボットプロトタイプであり、直接戦闘に投入される初の二足歩行ロボットです。従来の兵器システム連携し、地上戦の主力兵器としての可能性を試験的に評価されました。遠隔操作自律型の戦闘アルゴリズムが搭載され、複雑な戦闘シナリオにも対応できるようになっています

RX-21からRX-29: 戦闘ロボット進化

RX-21〜RX-29シリーズでは、戦闘ロボット技術が大きく進化していきます。主な進化は以下の通りです:

RX-30からRX-39: 宇宙戦闘の本格化

RX-30〜RX-39シリーズは、宇宙戦闘を主眼においたモビルスーツの開発が進み、以下の技術的な進化が見られます

RX-40からRX-49: 高度汎用モビルスーツ

RX-40〜RX-49シリーズは、地球連邦軍の主力兵器としての役割を担い、戦闘だけでなく探索や開発、さらには救助活動まで多用途使用できる汎用モビルスーツへと進化します。

総括

RX-13からRX-49までの進化は、移動手段としての機能から作業用、軍事用、そして宇宙戦闘モビルスーツへと段階的に進化する過程を反映しています。それぞれの世代で新たな技術が導

感想

  • 飛ぶまでが早すぎない?
  • 人型になるのも早すぎない?
  • 平和な世の中を望む(軍事転用も早すぎない?)。

軍事転用や宇宙への対応など元の変遷と前後するものもありますが、この辺は紆余曲折あったんだろうなと想像させられます

ガンダムに詳しい人たちのコメント、参考になりました。

2024-10-14

anond:20241014105447

ChatGPT 4oだとまたちょっと違うな。

同じプロンプトでやってみたよ。

人型モビルスーツでもしばらくロータリーエンジンで頑張っているのが面白い

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RX-7からRX-78への進化想像すると、これはフィクションの要素が含まれ機械技術進化ストーリーを考えることが必要です。以下は、RX-7からRX-78に至るまでの進化過程として、RX-9からRX-77までの各機体を空想上で設定したものです。

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RX-9: 高性能スポーツカーから新たなモビルテクノロジーへ**

RX-7の後継として、RX-9はさら進化したスポーツカーであり、軽量ボディと高回転ロータリーエンジン継承していますしかし、RX-9は地球連邦軍事的な関心を引き、単なるスポーツカーではなく、運搬や戦場での素早い移動が可能な汎用モビリティシステム採用。この段階で、車両に防御力や簡易兵器の搭載が見られ、軍事技術への転用が始まります

RX-15: 次世代スポーツカーモビルアーマーの先駆け**

RX-15は自動車の形状から脱却し、装甲強化とホバリング機能が追加され、地上戦闘だけでなく、空中での短距離移動も可能な新技術を導入。この時点で、ロータリーエンジンを利用した推進力がより強化され、モビルアーマーへの技術移行が加速します。

RX-20: 二足歩行モビルビークルプロトタイプ**

RX-20では、完全に車体から脱却し、モビルスーツの原型となる二足歩行ビークルが開発されますRX-20スポーツカーの優れた操作性を踏襲しつつ、人型機動兵器の基礎を築く重要ステップとなります。この段階ではまだ実験段階であり、戦闘テストが行われます

RX-25: モビルスーツ初号機**

RX-25は、ついに完全な人型モビルスーツの形を持つ初のモデルであり、地球連邦軍によって開発が進められました。ロータリーエンジンを応用したエネルギーシステムを搭載し、格闘戦と銃撃戦の両方に対応できる設計が行われます。乗員は専用コクピットに搭乗し、スポーツカードライビングフィーリングベースとした高い機動性を実現します。

RX-40: モビルスーツ量産型**

RX-40は、地球連邦が戦力を強化するために量産化したモビルスーツで、RX-25の技術さらに洗練させたモデルです。これにより、機動性が向上し、より軽量化されたアーマーと武装バランスが取れたデザインが特徴です。RXシリーズの中では、量産機として戦場で広く使われます

RX-55: コアファイター技術の導入**

RX-55では、初めてコアファイターシステム採用されます。これは、搭乗者が危機的状況で脱出するための分離機能を備えた航空機モードです。これにより、パイロット生存率が大幅に向上し、戦場での柔軟な戦術運用可能となります

RX-70: 高度AI搭載モビルスーツ**

RX-70では、AIが搭載され、自律的判断と操縦をサポートするシステムが導入されます。これにより、パイロットが直接操作しなくても戦闘可能となり、複数の敵機に対処できる高度な戦術対応可能となりますロータリーエンジンから派生した新しいエネルギーシステム実装され、エネルギー効率が飛躍的に向上します。

RX-77: 高性能重装甲モビルスーツ**

RX-77は重装甲を持つモビルスーツで、特に防御力と火力が強化されたモデルです。RXシリーズの中でも、重装甲ユニットとしての役割を果たし、戦場での前線突破拠点防衛に適していますコアファイター機能も改良されており、非常時には安全脱出可能です。

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RX-78: 地球連邦の決定版モビルスーツ**

最終的にRX-78は、これまでの技術集大成となり、初代ガンダムとして完成します。スポーツカーの機動性やエンジン技術は、完全にモビルスーツ技術へと転換され、コアファイターシステムAIサポート、重装甲がバランスよく組み込まれた究極の戦闘兵器となります

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この仮説的な進化ストーリーは、RX-7自動車技術が徐々に軍事用のモビルスーツに変化し、その過程で新しい技術が導入され、最終的にRX-78に至るまでの過程を描いています

2024-09-28

昔Cの入門書で#include <stdio.h>をおまじないだと思ってくださいとか書いてる入門書がよく叩かれてた。

ちゃん説明しろとか。

でもhello worldの段階でいきなり、stdio.hにはマクロプロトタイプ宣言があって、マクロとはーとか、プロトタイプ宣言がなぜ必要かと言うと分割コンパイルというのがあって、みたいな説明をすんのかって思ってた。

2024-09-20

anond:20240920214415

任天堂ハード&関連機器黒歴史度合いだと、

64DDモバイルアダプタ>サテラビューバーチャルボーイ

くらいか

サテラビューは一応2000年までサービスが続いてたし、スーファミ本体とともにミニチュアが出るくらいだけど、64DDに関しては一切話題が触れられないしガチ黒歴史感がある。任天堂が率先してネタにしてるバーチャルボーイ黒歴史とはレベルが違う。

64DD任天堂しからぬクリエイティブソフトが出てたり、メイドインワリオプロトタイプみたいなゲームもあったから、それなりに話題にはしやすそうなのにな。 

64DDには「キャベツ」だの「ウォール街」だのタイトルからして謎のソフトが発売予定リストにあったけど、結局何のゲームわからんまま消えちゃったよ。

2024-08-30

anond:20240830155140

実は肌に電子回路を貼る技術はすでにあるんだけど

ディスプレイとなるとちょっと難しいみたいね

一応3年前の時点で東大大日本印刷プロトタイプを作ってはい

https://realsound.jp/tech/2021/06/post-801142.html

ただ商用化領域まではいってないし、一昔前は曲面ディスプレイを用いた腕輪状の全面スマートウォッチみたいなののコンセプトモデルもよく出てたけど

今は曲面ディスプレイは折りたたみスマホ中韓メーカーの上位モデル普通に存在して洗練されてきてるくらいの技術進歩具合だな

2024-08-04

東浩紀伝2

非モテ論壇は、小谷野敦の「もてない男」 (1999年)に始まり本田透に引き継がれるが、ものすごく盛り上がっているというほどでもなかった。本田消息が分からなくなり、小谷野2017年から売れなくなった。ツイッターでは雁琳のような第三波フェミニズムに応対できる論者が主流となっているが、そういうのの影に隠れたかたちであろう。大場博幸「非モテ独身男性をめぐる言説史とその社会的包摂」(2021年教育雑誌 (57) 31-43)というレビュー論文がある。ロスジェネ論壇も盛り上がった印象はない。氷河期世代はそれどころではなかったのだろうか。雑誌ロスジェネ」は迷走してしまい、第3号は「エロスジェネ」で、第4号で終刊した。

東のゼロ年代ゼロアカ道場で幕を閉じる。東チルドレンを競わせるという企画であり、ゼロアカとは「アカデミズムゼロになる」という意味らしい(「現代日本批評2001-2016」、講談社、101頁)。彼らは東浩紀しか参照していないので、アカデミズムとしてはゼロなのかもしれない。ここで台頭したのが藤田直哉であり、ザクティ革命と称して、飲み会動画を無編集でアップした。ゲンロンのプロトタイプかもしれない。藤田はwokeしたが、東チルドレンでそちらに行ったのは彼くらいではないか

3 ゲンロン

ニコニコ動画に「動ポノムコウ」(2020)というMADがあるが、ゼロ年代の東は輝いていたものの、震災後は落ちぶれてしまったという史観編集されていた。落ちぶれたかどうかはともかく、震災前後に断絶があることは疑いない。東は移動を躊躇わないところがあり、90年代末に批評空間を離れたように、震災後に自らが立ち上げた動ポモ論壇からも離れてしまう。

ゲンロンの前身である合同会社コンテクチュアズ2010年4月6日創業された。2009年の秋の飲み会アイデアが出たそうである宇野常寛濱野智史、浅子佳英(建築家)、李明喜空間デザイナー)との飲み会であった。「ゲンロン戦記」(2020年)では李はXとされているが、ウィキペディアには実名で出てきている。李はコンテクチュアズ代表就任したものの、使い込みを起こして、2011年1月末日付で解任されている。代わって東が代表就任し、李から使い込んだ金を回収した。ちょうど震災前のことで、震災後だと回収は難しかたかもしれないらしい(「ゲンロン戦記」、42頁)。この頃には、宇野や濱野は去っており、浅子が右腕だったが、その浅子も2012年には退任する。

一般意志2.0」は震災前に雑誌「本」に連載されていた。2009年12月から2011年4月号まで連載されていて、4月号は3月頭に出るものなので、ちょうど震災が起こる直前に終わったことになる。「ゲンロン戦記」には「その原稿2010年代に書かれたのですが、出版震災後の2011年11月になりました」(22頁)とあるが、ゼロ年代に連載が始まっているし、出版されたのも2010年代なので、おかしな文である。「震災前に書かれた」と直すべきところであろう。「一般意志2.0」はゼロ年代パラダイムに属している。デジタル民主主義の本であるが、ちょっとひねって、ニコニコ動画のようなもの民意をくみ上げようというものであるゲンロンもニコニコ動画でやられているので、その所信表明でもあるのであろう。ゼロ年代ゲンロンをつなぐ蝶番的な書物ではあった。

サイバースペース」「情報自由論」は一冊の本として刊行されることはなかったのであるが、「一般意志2.0」は刊行された。すっきりとした構想だったからだろうか。東はネット草創期のアングラさのようなものを後光にして輝いていたのであるが、この本を最後に、アーキテクチャを本格的に論じることを止める。ニコニコ動画2ちゃんねる動画版のようなところがあったが、ツイッターをはじめとするSNSネットの中心が移り、ネットはもはや2ちゃん的ではなくなり、東の想定していたアーキテクチャではなくなってきたのかもしれない。東はツイッターも使いこなしているが、かつてほどの存在感はない。

一般意志2.0」の次の主著は「観光客哲学」(2017年であるが、サブカルチャー批評することで「ひとり勝ち」した東が観光客を論じるのは意外性がある。娘が生まれからアニメゲームに関心を失い、その代わり観光が好きになったとのことで、東の関心の移動を反映しているようである。「観光客哲学 増補版」第2章によると、観光客二次創作するオタクに似ている。二次創作するオタク原作の好きなところだけつまみ食いするように、観光客住民暮らしなどお構いなしに無責任観光地をつまみ食いしていく。このように観光客現実二次創作しているそうである

福島第一原発観光地化計画思想地図β vol.4-2)」(2013年)は、一万部も売れなかったそうである。ふざけていると思われたのだろうか。観光に関心を持っていたところに、福島第一原発事故があり、ダークツーリズム対象にできないかと閃いたのであろう。もともと観光に関心がなければ、なかなか出てこないアイデアではないかと思われる。東によると、ダークツーリズム二次創作への抵抗である(「観光客哲学 増補版」第2章)。それなりの歴史のある土地であっても、しょせんは無名なので、原発事故のような惨事が起こると、そのイメージだけで覆い尽くされることになる(二次創作)。しかし、そういう土地観光に出かけると、普通場所であることが分かり、にもかかわらず起こった突然の惨事について思いをはせる機会にもなるそうである二次創作への抵抗)。

社会学者開沼博福島第一原発観光地化計画に参加して、前掲書に寄稿しているのにもかかわらず、これに抗議した。東と開沼は毎日新聞ウェブ版で往復書簡を交わしているが、開沼の主張は「福島イコール原発事故イメージを強化する試みはやめろ」というものであった(「観光客哲学 増補版」第2章)。原発事故を語りにくくすることで忘却を促すというのが政府戦略のようであるが、これは成功した。開沼は2021年東京大学大学院情報学環准教授就任している。原発事故への応答としては、佐藤嘉幸・田口卓臣脱原発哲学」(2016年)もあるが、こちらはほとんど読まれなかった。ジュディス・バトラー佐藤博論(「権力抵抗」)の審査委員の一人であり、佐藤バトラーに近い(竹村和子亡き後、バトラー著作邦訳を担っている)。「脱原発哲学」にもそれっぽい論法が出てくるのが、こちらは功を奏しなかった。資本主義と真っ向から対立するような場面では効かないのだろう。ちなみに佐藤博論には東も登場しており、バトラーも東の名前は知っているものと思われる。

観光客哲学」はネグリハート帝国」を下敷きにしているが、そこでのマルチチュードは、共通性がなくても集まればいいという発想で集められているものであり、否定神学であるとして、郵便マルチチュードとしての観光客対置する。東は原発事故後の市民運動に対して否定的であり、SEALDsなどを毛嫌いしていた。第二次安倍政権は次々と「戦後レジーム」を否定する法案を提出しており、それに対抗する市民運動は盛り上がっていたが、負け続けていた。しかし、Me too運動が始まってからというものリベラルマイノリティ運動に乗り換え、勝ち続けるようになる。「観光客哲学」は市民運動が負け続ける状況に応答しているが、「訂正可能性の哲学」(2023年)はマイノリティ運動が勝ち続ける状況に応答している。小熊英二こたつぬこ木下ちがや)はSEALDsの同伴者であったが、マイノリティ運動に与した共産党には批判である。小熊の「1968」(2009年)は絓秀実革命的なあまり革命的な」(2003年)のマイノリティ運動に対する評価をひっくり返したものなので、こういう対応は分からなくはない。東も「革あ革」を評価していない。「絓さんの本は、ぼくにはよくわからなかった。六八年の革命は失敗ではなく成功だというのだけれど、その理由が明確に示されないまま細かい話が続いていく。どうして六八年革命成功していることになるのか」(「現代日本批評2001-2016」、講談社、71頁)。論旨そのものは分かりやすい本なので、かなりの無理解であろう。

東はアベノミクスには何も言っていない。政治には入れ込んでいるが、経済は分からないので口を出さないという姿勢である経済について分かっていないのに口を出そうとしてリフレ派に行ってしまった人は多い。宮﨑哲弥が典型であろうが、北田もそうであるブレイディみかこ松尾匡と「そろそろ左派は<経済>を語ろう――レフト3.0の政治経済学」(2018年)という対談本を出している。リベラルが負け続けているのは、文化左翼路線だけでは大衆に支持されることはなく、経済についても考える必要があるという主張であるが、リベラルマイノリティ運動で勝ちだしてからはこういうことは言わなくなった。北田2023年から刊行されている「岩波講座 社会学」の編集委員代表を務めている。

観光客哲学」の次の主著は「訂正可能性の哲学であるこちらも郵便本の続編といっていいのであろうが、そこに出てきた訂正可能性(コレクタビリティ)という概念がフィーチャーされている。政治的な正しさ(ポリティカル・コレクトネス)を奉じている者がそうしているように、理想を固定したものとして考えるのではなく、誤りをコレクトするという姿勢大事であるということらしい。駄洒落のようであると言われることもある。森脇によると、東は状況に合わせてありきたりの概念意味を変えるという「再発明」の戦略を採っているが、この「再発明」の戦略を言い換えたものが訂正可能なのだという(森脇「東浩紀批評アクティヴィズムについて」)。そうだとすると、訂正可能性は郵便本では脇役であったが、これが四半世紀後に主役になることには必然性があったということであろうか。

こうして現在2024年7月)まで辿りついたのであるが、東は多くの人と関係を断ってきたため、周りに人がいなくなっている。東も自身気質自覚している。「ぼくはいつも自分で始めた仕事自分で壊してしまう。親しい友人も自罰的に切ってしまう。「自己解体境界侵犯欲望」が制御できなくなってしまう。だからぼくには五年以上付き合っている友人がいない。本当にいないのだ」(東浩紀桜坂洋キャラクターズ」、2008年、73頁)。一人称小説の語り手の言葉であるものの、現実の東と遠からものと見ていいであろう。ここからは東の決裂を振り返る。

宇野常寛は東を批判して「ゼロ年代の想像力」(2008年)でデビューしたのであるが、東に接近してきた。ゲンロンは宇野のような東に近い若手論客結集する場として企画されたそうである。東によると、宇野を切ったのは、映画「AZM48」の権利宇野要求してきたかららしい。「東浩紀氏の告白・・・AZM48をめぐるトラブルの裏側」というtogetterに東のツイートが集められている。2011年3月10日から11日を跨ぐ時間帯に投稿されたものであり、まさに震災直前である。「AZM48」は「コンテクチュアズ友の会」の会報「しそちず!」に宇野が連載した小説である映画原作なのだろう)が、宇野ウィキペディアには書かれていない(2024年7月27日閲覧)。円堂都司昭は「ゼロ年代論点」(2011年)の終章で「AZM48」を論じようと企画していたが、止めておいたそうである。「ゼロ年代批評をふり返った本の終章なのだから2010年代を多少なりとも展望してみましょうというパートなわけだ。批評家たちのホモパロディを熱く語ってどうする。そこに未来はあるのか?」(「『ゼロ年代論点』に書かなかった幻の「AZM48」論」)。

濱野智史は「アーキテクチャ生態系」(2008年)でデビューしているが、アーキテクチャ論こそ「「ゼロ年代批評」の可能性の中心」(森脇、前掲論文)であった。東の右腕的存在だったこともあり、「ised情報社会倫理設計」を東と共編している。濱野は東と決裂したというより、壊れてしまった。その頃、AKB48などのアイドル流行りつつあり、宇野は、東をレイプファンタジーなどと批判していたのにもかかわらず、アイドル評論を始めたのであるが、濱野もそちらに付いていってしまった。「前田敦子はキリストを超えた 宗教としてのAKB48」(2012年)を刊行する。これだけならよかったものの、アーキテクチャ論を実践すべく、2014年アイドルグループPlatonics Idol Platform (PIP)をプロデュースするも大失敗してしまい、精神を病んでしまった。行方が分からなくなっていたが、「『豪の部屋』濱野智史社会学者)が経験したアイドルプロデュース真相」(2022年)に出演して、東に「ぐうパワハラされた」ことを明かした。

千葉雅也の博論本「動きすぎてはいけない」(2013年)には、浅田彰東浩紀が帯を書いていて、「構造と力」や「存在論的、郵便的」を承継する構えを見せていた。郵便本をきちんと咀嚼した希な例ということらしい。東がイベント千葉ゲイであることをアウティングしたのであるが、その場では千葉は黙っていたものの、「怒っている。」などとツイートする(2019年3月7日、「男性性に疲れた東浩紀何をいまさらと怒る千葉雅也」)。これに反応して、東は「千葉との本は出さないことにした。仕事も二度としない。彼は僕の人生全否定した」などと生放送で二時間ほど怒涛の千葉批判を行った。こうして縁が切れたわけであるが、千葉くらいは残しておいても良かったのではないかと思われる。國分は数年に一度ゲンロンに登壇するようであるが、このくらいの関係でないと続かないということだろうか。

大澤聡も切ったらしいのであるが、「東浩紀突発#110 大澤聡さんが5年ぶりにキタ!」(2023年10月16日)で再会している。どうして切ったのかはもはやよく分からないが、それほどの遺恨はなかったのだろう。

福嶋亮大は向こうから去って行ったらしい。鼎談現代日本批評」の第1回、第2回に参加しながら、第3回に参加することを拒んだらしい。東も理由はよく分からないようである。珍しいケースといえよう。

津田大介とは「あずまんのつだっち大好き・2018年猛暑の巻」(2018年8月17日)というイベントが開催されるほど仲が良かった。津田2017年7月17日にアイチトリエンナーレ2019の芸術監督就任し、東は2017年10月企画アドバイザー就任する。しかし、企画展「表現不自由展・その後」に政治的圧力が加えられ、2019年8月14日、東は企画アドバイザーを辞任する。この辞任はリベラルから顰蹙を買い、東はますますリベラル嫌いになっていく。批評家は大衆に寄り添わざるを得ないので、こういう判断もあり得るのだろうか。

東は2018年12月18日にツイッターゲンロン解散を発表するが、上田洋子らに説得されて、

東浩紀

東浩紀の伝記を書く。ゼロ年代に二十代を過ごした私たちにとって、東浩紀特別存在であった。これは今の若い人には分からいであろう。経験していないとネット草創期の興奮はおそらく分からいかである。たしかにその頃は就職状況が悪かったのであるが、それはまた別にインターネットは楽しかったのであり、インターネットが全てを変えていくだろうという夢があった。ゼロ年代代表する人物を3人挙げるとすれば、東浩紀堀江貴文ホリエモン)、西村博之ひろゆき)ということになりそうであるが、彼らはネット草創期に大暴れした面々である。今の若い人たちはデジタルネイティブであり、それこそ赤ちゃんの頃からスマホを触っているそうであるが、我々の小さい頃にはスマホはおろか携帯電話すらなかったのであるファミコンはあったが。今の若い人たちにはネットがない状況など想像もできないだろう。

私は東浩紀の主著は読んでいるものの、書いたもの網羅的に読んでいるというほどではなく、酔っ払い配信ほとんど見ていない。しかし、2ちゃんねる(5ちゃんねる)の東浩紀スレ古参ではあり、ゴシップ的なことはよく知っているつもりである。そういう立場から彼の伝記を書いていきたいと思う。

1 批評空間

東浩紀は71年5月9日まれである。「動ポモ」でも援用されている見田宗介時代区分だと、虚構時代のちょうど入り口で生を享けたことになる。國分功一郎は74年、千葉雅也は78年生まれである。國分とはたった3歳しか離れていないが、東が早々にデビューしたために、彼らとはもっと年が離れていると錯覚してしまう。

東は中流家庭に生まれたらしい。三鷹市から横浜市引っ越した。東には妹がおり、医療従事者らしい(医者ではない)。父親金沢出身で、金沢二水高校を出ているそうである(【政治番組東浩紀×津田大介×夏野剛×三浦瑠麗が「内閣改造」について大盛り上がり!「今の左翼新左翼左翼よりバカ!」【真実幻想と】)。

東は日能研でさっそく頭角を現す。模試で全国一桁にいきなり入った(らしい)。特別栄冠を得た(らしい)。これに比べたら、大学予備校模試でどうとかいうのは、どうでもいいことであろう。

筑駒筑波大学附属駒場中学校)に進学する。筑駒在学中の特筆すべきエピソードとしては、おニャン子クラブ高井麻巳子福井県実家訪問したことであろうか。秋元康結婚したのは高井であり、東の目の高さが分かるであろう。また、東は中学生時代うる星やつらファンクラブを立ち上げたが、舐められるのがイヤで年を誤魔化していたところ、それを言い出せずに逃げ出したらしい(5ちゃんねる、東浩紀スレ722の555)。

もう一つエピソードがあって、昭和天皇が死んだときに、記帳に訪れたらしい。

東は東大文一に入学する。文三ではないことに注意されたい。そこで柄谷行人の講演を聞きに行って何か質問をしたところ、後で会おうと言われ、「批評空間」に弱冠21歳でデビューする。「ソルジェニーツィン試論」(1993年4月であるソルジェニーツィンなどよく読んでいたなと思うが、新潮文庫ノーベル賞作家を潰していくという読書計画だったらしい。また、残虐記のようなのがけっこう好きで、よく読んでいたというのもある。三里塚闘争についても関心があったようだ。「ハンスが殺されたことが悲劇なのではない。むしろハンスでも誰でもよかったこと、つまりハンスが殺されなかったかも知れないことこそが悲劇なのだ」(「存在論的、郵便的」)という問題意識で書かれている。ルーマン用語でいえば、偶発性(別様であり得ること)の問題であろうか。

東は、教養課程では、佐藤誠三郎ゼミ所属していた。佐藤村上泰亮公文俊平とともに「文明としてのイエ社会」(1979年)を出している。共著者のうち公文俊平だけは現在2024年7月)も存命であるが、ゼロ年代に東は公文グロコムで同僚となる。「文明としてのイエ社会」は「思想地図」第1号で言及されており、浩瀚な本なので本当に読んだのだろうかと思ったものであるが、佐藤ゼミ所属していたこから学部時代に読んだのだろう。

東は94年3月東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科を卒業し、同4月東京大学大学総合文化研究科超域文化科学専攻に進学する。修士論文バフチンで書いたらしい。博士論文ではデリダを扱っている。批評空間に94年から97年にかけて連載したものをまとめたものである私たち世代は三読くらいしたものである博論本「存在論的、郵便的」は98年に出た。浅田彰が「東浩紀との出会いは新鮮な驚きだった。(・・・)その驚きとともに私は『構造と力』がとうとう完全に過去のものとなったことを認めたのである」という帯文を書いていた。

郵便本の内容はウィキペディアの要約が分かりやすく、ツイッター清水高志が褒めていた。「25年後の東浩紀」(2024年)という本が出て、この本の第3部に、森脇透青と小川歩人による90ページにわたる要約が付いている。森脇は東の後継者と一部で目されている。

東の若いころの友達阿部和重がいる。阿部ゲンロンの当初からの会員だったらしい。妻の川上未映子は「ゲンロン15」(2023年)に「春に思っていたこと」というエッセイ寄稿している。川上早稲田文学市川真人によって見出されたらしく、市川渡辺直己の直弟子である市川鼎談現代日本批評」にも参加している。

東は、翻訳家小鷹信光の娘で、作家ほしおさなえ1964年まれ)と結婚した。7歳年上である不倫だったらしい。98年2月には同棲していたとウィキペディアには書かれていたのであるが、いつのまにか98年に学生結婚と書かれていた。辻田真佐憲によるインタビュー東浩紀批評家が中小企業経営するということ」 アップリンク問題はなぜ起きたか」(2020年)で「それは結婚の年でもあります」と言っており、そこが根拠かもしれないが、明示されているわけではない。

そして娘の汐音ちゃん生まれる。汐音ちゃん2005年6月6日まれであるウィキペディアには午後1時半ごろと、生まれ時間まで書かれている。名前クラナドの「汐」と胎児聴診器心音ちゃんから取ったらしい。ツイッターアイコンに汐音ちゃん写真を使っていたものの、フェミに叩かれ、自分写真に代えた。汐音ちゃんは「よいこのための吾妻ひでお」 (2012年)のカバーを飾っている。「日本科学未来館世界の終わりのものがたり」展に潜入 "The End of the World - 73 Questions We Must Answer"」(2012年6月9日)では7歳になったばかりの汐音ちゃんが見られる。

96年、コロンビア大学大学入試に、柄谷の推薦状があったのにもかかわらず落ちている。フラタニティ的な評価によるものではないかと、どこかで東は推測していた。入試について東はこう言っている。「入試残酷なのは、それが受験生合格不合格に振り分けるからなのではない。ほんとうに残酷なのは、それが、数年にわたって、受験生家族に対し「おまえの未来合格不合格かどちらかだ」と単純な対立を押しつけてくることにあるのだ」(「選択肢無限である」、「ゆるく考える」所収)。いかにも東らしい発想といえよう。

2 ゼロ年代

東の次の主著は「動物化するポストモダン」で、これは2001年刊行される。98年から01年という3年の間に、急旋回を遂げたことになる。「サイバースペースはなぜそう呼ばれるか」はその間の論考である

東はエヴァに嵌っており、「庵野秀明はいかにして八〇年代日本アニメを終わらせたか」(1996年)などのエヴァ論も書いている。その頃に書いたエッセイは「郵便不安たち」(1999年)に収められた。エヴァ本をデビュー作にすることも考えたらしいが、浅田彰に止められたらしい。だからサブカル本を出すというのは、最初から頭の中にあったのだろう。

「いま批評場所はどこにあるのか」(批評空間第Ⅱ期第21号、1999年3月)というシンポジウムを経て、東は批評空間と決裂するが、それについて25年後に次のように総括している。「ぼくが考える哲学が『批評空間』にはないと思ってしまった。でも感情的には移転があるから、「お前はバカだ」と非難されるような状態にならないと関係が切れない」(「25年後の東浩紀」、224-5頁)。

動ポモ10万部くらい売れたらしいが、まさに時代を切り拓く書物であった。10万部というのは大した部数ではないようにも思われるかもしれないが、ここから動ポモ論壇」が立ち上がったのであり、観客の数としては10万もいれば十分なのであろう。動ポモフェミニストには評判が悪いようである北村紗衣も東のことが嫌いらしい。動ポモ英訳されている(Otaku: Japan's Database Animals, Univ Of Minnesota Press. 2009)。「一般意志2.0」「観光客哲学」も英訳されているが、アマゾンのglobal ratingsの数は動ポモが60、「一般意志2.0」が4つ、「観光客哲学」が3つと動ポモが圧倒的である2024年8月3日閲覧)。動ポモ海外論文でもよく引用されているらしい。

次の主著であるゲーム的リアリズムの誕生――動物化するポストモダン2」までは6年空き、2007年に出た。この間、東は「情報自由論」も書いていたが、監視否定する立場から肯定する立場へと、途中で考えが変わったこともあり、単著としては出さず、「サイバースペース」と抱き合わせで、同じく2007年に発売される(「情報環境論集―東浩紀コレクションS」)。「サイバースペース」は「東浩紀アーカイブス2」(2011年)として文庫化されるが、「情報自由論」はここでしか読めない。「サイバースペース」と「情報自由論」はどちらも評価が高く、この頃の東は多作であった。

この頃は北田暁大と仲が良かった。北田は東と同じく1971年まれである。東と北田は、2008年から2010年にかけて「思想地図」を共編でNHK出版から出すが、3号あたりで方針が合わなくなり、5号で終わる。北田は「思想地図β」1号(2010年)の鼎談には出てきたものの、今はもう交流はないようである北田はかつてツイッターで活発に活動していたが、今はやっていない。ユミソンという人(本名らしい)からセクハラ告発されたこともあるが、不発に終わったようである結婚して子供もできて幸せらしい。

その頃は2ちゃんねるネットの中心であったが、北田は「嗤う日本の「ナショナリズム」」(2006年)で2ちゃん俎上に載せている。北田は「広告都市東京」(2002年)で「つながりの社会性」という概念を出していたが、コミュニケーションの中身よりも、コミュニケーション接続していくことに意味があるというような事態を表していた。この概念を応用し、2ちゃんでは際どいことが言われているが、それはネタなので心配しなくていいというようなことが書かれていた。2ちゃん分析古典ではある。

東は宮台真司大澤真幸とも付き合っているが、彼らは北田のように鋭くゼロ年代を観察したというわけではなく、先行文献の著者である。宮台は98年にフィールドワークを止めてからは、研究者というよりは評論家になってしまった。大澤は日本ジジェクと称されるが、何を論じても同じなのもジジェクと同様である動ポモは彼らの議論を整理して更新しているのであるが、動ポモも「ゲーム的リアリズムの誕生」も、実際に下敷きになっているのは大塚英志であろう。

宮台や大澤や北田はいずれもルーマンであるが、ルーマンっぽいことを言っているだけという印象で、東とルーマンも似ているところもあるというくらいだろう。しかし、ルーマン研究者馬場靖雄2021年逝去)は批評空間に連載されていた頃から存在論的、郵便的」に注目しており、早くも論文正義門前」(1996)で言及していた。最初期の言及ではないだろうか。主著「ルーマン社会理論」(2001)には東は出てこないが、主著と同年刊の編著「反=理論のアクチュアリティー」(2001)所収の「二つの批評、二つの社会」」ではルーマンと東が並べて論じられている。

佐々木敦ニッポン思想」(2009年)によると、ゼロ年代思想は東の「ひとり勝ち」であった。額縁批評などと揶揄される佐々木ではあるが、堅実にまとまっている。類書としては、仲正昌樹「集中講義日本現代思想 ポストモダンとは何だったのか」 (2006)や本上まもる「 “ポストモダンとは何だったのか―1983‐2007」 (2007)があったが、仲正は今でも読まれているようである。本上は忘れられているのではないか。この手の本はこれ以後出ていない。需要がないのだろうか。

佐々木の「ひとり勝ち」判定であるが、そもそもゼロ年代思想土俵を作ったのは動ポモであり、そこで東が勝つというのは当たり前のことであった。いわゆる東チルドレンは東の手のひらで踊っていただけなのかもしれない。懐かしい人たちではある。

北田によると、東の「情報技術公共性をめぐる近年の議論」は、「批評が、社会科学的な知――局所から全体を推測する手続きを重視する言説群――を媒介せずに、技術工学的知と直結した形で存在する可能性の模索である」(「社会批評Introduction」、「思想地図vol.5」、81-2頁)ということであるが、ゼロ年代の東はこういう道を歩んでいた。キットラーに似ており、東チルドレンでは濱野智史がこの道を歩んだのであるが、東チルドレンが全てそうだったわけでもなく、社会学でサブカルを語るというような緩い営みに終始していた。宇野常寛などはまさにこれであろう。

佐々木ニッポン思想」と同じ2009年7月に、毛利嘉孝ストリート思想」が出ている。文化左翼歴史をたどっているのであるが、この頃はまだ大人しかった。ポスコロ・カルスタなどと揶揄されていた。しかし、テン年代佐々木命名から勢いが増していき、今や大学メディア大企業裁判所を押さえるに至っている。しかし、ゼロ年代において、動ポモ論壇と比較できるのは、非モテ論壇やロスジェネ論壇であろう。

非モテ論壇は、小谷野敦の「もてない男」 (1999年)に始まり本田透に引き継がれるが、ものすごく盛り上がっているというほどでもなかった。本田消息が分からなくなり、小谷野2017年から売れなくなった。ツイッターでは雁琳のような第三波フェミニズムに応対できる論者が主流となっているが、そういうのの影に隠れたかたちであろう。大場博幸「非モテ独身男性をめぐる言説史とその社会包摂」(2021年教育Permalink | 記事への反応(14) | 17:44

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