日中防衛首脳会談で日本敗れるー危険な「信頼醸成」の道
2007/08/31/Fri
■朝日新聞が代弁する中国の真意
昨三十日、高村正彦防衛相と来日した中国の曹剛川国防相による防衛首脳会談が行われ、多くのメディアは日中間の「信頼醸成」に期待を寄せているが、日本はどのようにすれば中国に「信頼」されるかについては、つねに中国の代弁者になっている朝日新聞に聞くといい。
朝日の三十一日の社説はこう書く。
「日本は安倍首相の価値観外交といい、近く行われる米印豪などとの軍事演習への参加といい、中国牽制を意図したかのような動きが目立つ。だが、本筋の外交はあくまで中国との相互信頼づくりであることを忘れてはならない」
つまり「中国を警戒する動きを止めろ」と言うことだ。中国から信頼されるには、価値観外交も、日米安保体制も放棄する以外にないのだと。これはまさに一〇〇%の中国の代弁である。中国は中ソ対立のために日米に歩み寄った七〇、八〇年代を除いては、一貫して台湾併呑の障害である日米安保体制の解体を求めている国だ。
産経新聞もそうした中国の考えはわかっているらしい。だから同日の社説では「日本は対話を通じて中国との信頼醸成に努めつつ、あくまで日米同盟を基軸とすべきことはいうまでもない」と強調し、中国のペースに乗るなと、暗に訴えている。
このように、中国から「信頼」を受けると言うことは、日本の安全を危険にさらすと言うに等しいのだ。ところが、それでもその「信頼」を受けたいと言うのが、ほかならぬこれまでの日本政府なのである。そしてその姿勢は、やはり今回の防衛首脳会談で出てしまったのだ。
■本音を語る中国・議論を避けた日本
朝日の社説はなぜか触れていないが、たしかに今回の会談で、日本側は今までになく、中国側に遠慮のない要求を行っている。
たとえば「国防費の透明性のレベルを高めてもらいたい」と訴えている。中国の軍事費の不透明さとは、その秘密性だ。公表額には外国からの兵器の購入費、研究開発費と言った肝心の金額が含まれておらず、実際には公表の二、三倍に上るとされている。そのような状況での軍事費の十九年連続の二桁台の急速な伸びに日本側も、懸念を表明せざるを得なくなっているわけだ。これは中国の反撥を避けるため、「中国の脅威」に目をつぶってきた日本の、近年の大きな姿勢転換である。
そこで曹剛川中国側は、軍事費増強の説明をせざるを得なくなり、例によって例のごとく、「軍事費の急速な伸びは、軍人の給与や軍服の費用、そして兵器の近代化によるものだ」との詭弁を弄した以外には、さらにはこのようにも明言した。「軍事費増加の主要原因は台湾問題である」と。
これこそが誰もがわかりきっている中国の本音である。中国がロシアなどから先進的な兵器を購入し、あるいは兵器の開発に勤しんでいるのは、あくまでも台湾侵攻と、それに対する米軍の介入を阻止するためである。そしてその動きこそが、日本の平和と安全を大きく脅かしているわけだ。
そのとき曹剛川は「台湾問題は中国の核心利益に関わっている」と説明した。日本側から見てもこの問題は、自国の安全に大きく関わる問題である。そこで、ここでこそ大いに議論を展開するべきだったが、しかし日本側はここでそれをせず、口を噤んでしまったようなのだ。
■「三つの政治文書」で口をつぐんだ日本側
曹剛川から「日本はその高度な敏感性を認識し、日中間の三つの政治文書で受け入れた一つの中国の意原を守るように」と要求され、さらに「台湾とはいかなる政府往来もしてはならない」と念を押されると、高村氏は、「日本は三つの政治文書で表明した立場を堅持し、台湾独立を支持しない」と誓約したのである。つまり「一つの中国」の原則を守れと要求されて、「はい、そうします」と答えて中国側に納得してもらい、話がそれで終わると言う、いつものお決まりのパターンが、やはり防衛首脳会談にも出てしまったのだ。こうしたことを、中国のメディアなどは大きく報道している。それは当然だろう。これは中国側の大きな成果だ。
「軍の仕事、それは台湾との戦争」(胡錦濤)と明言する中国が、国家戦略の上で日本に最も求めているのは、「台湾併呑を阻害しないこと」。日米安保体制の解体を求めるのもそのためだ。その要求を日本側が呑まないかぎり、中国としては日本を「信頼」することなどできないのである。だから国防相である曹剛川の来日での最大任務も、その要求を突きつけることであったはずだ。
そこで問題になるのが、「三つの政治文書」とは何かである。それは日中共同声明、日中友好平和条約、そして日中共同宣言のことだ。それらを通じて日本政府は、「中華人民共和国は中国の唯一の合法政府」と認めていることから、中国はそれを拡大解釈し、「日本は台湾を中国領土と認めた」と宣伝し、その証文としてこの三つの外交文書をつねに突きつけ、日本に「台湾を支援するな」と圧力をかけてくるのである。
しかしそれらの文書のどこを探しても、「日本は台湾を中国領土と承認する」などとは書いていない。しかし日本がそう反論しては「中国の核心利益」を損ない、日中関係に大きなダメージが生じる。そこで日本はつねに、こうした中国の圧力に屈してしまうのだ。そしてまるで台湾が中国領土であるかのごとく、その独立を支持しないと表明してしまうのである。
■「任務」を完了した中国国防相
政府がこの問題で、以下に中国の怒りを恐れているかを示すエピソードがある。昨年鈴木宗男議員は政府に対し、「日中共同声明のどこから、我が国は台湾独立を支持しないとの立場が導き出されるのか」と質問したところ、政府の回答は「我が国は日中共同声明に基づいて、台湾独立を支持しない立場だ」と言うものだった。
だがこれでは答えになっていない。つまり答えられないのである。政府の「台湾独立は支持しない」との立場は、三つの文書なるものに基づいたものではなく、中国の圧力に屈してのものなのだ。もちろんこうした属国さながらの事実は、政府が隠しているから、国民一般は知らないでいる。
高村氏などは、「国防費の透明性を高めよ」と要求する一方で、「台湾問題は中国の内政問題。我が国は関知しません」とのメッセージを、中国に送ったようなものなのである。これで曹剛川などは、さぞ「任務完了」と安心したことだろう。そして上機嫌で艦船の相互訪問や緊急連絡用のホットラインの設置などで日本側と合意したのではないだろうか。
これではいったい何のための防衛首脳会談なのか。
中国にとり、台湾併呑と言う「民族の大業」が成し遂げればそれでいい。そうなれば中国の軍事勢力は自ずと南支那海、東支那海、そして西太平洋へと広がり、日本も自ずと中国の影響下に転がってくると見ている。
朝日の社説のタイトルは「日中防衛交流―待ちわびた再始動」。「これで日中友好関係は大丈夫だ」と言わんばかりの嬉々とした内容だが、こうした国内の親中政治勢力は、日本が中国に従属し、パックスシニカ(中華秩序)の下で平和を謳歌したいと考えているように思えてならない。中国に臣属するなど、恐ろしいことである。
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昨三十日、高村正彦防衛相と来日した中国の曹剛川国防相による防衛首脳会談が行われ、多くのメディアは日中間の「信頼醸成」に期待を寄せているが、日本はどのようにすれば中国に「信頼」されるかについては、つねに中国の代弁者になっている朝日新聞に聞くといい。
朝日の三十一日の社説はこう書く。
「日本は安倍首相の価値観外交といい、近く行われる米印豪などとの軍事演習への参加といい、中国牽制を意図したかのような動きが目立つ。だが、本筋の外交はあくまで中国との相互信頼づくりであることを忘れてはならない」
つまり「中国を警戒する動きを止めろ」と言うことだ。中国から信頼されるには、価値観外交も、日米安保体制も放棄する以外にないのだと。これはまさに一〇〇%の中国の代弁である。中国は中ソ対立のために日米に歩み寄った七〇、八〇年代を除いては、一貫して台湾併呑の障害である日米安保体制の解体を求めている国だ。
産経新聞もそうした中国の考えはわかっているらしい。だから同日の社説では「日本は対話を通じて中国との信頼醸成に努めつつ、あくまで日米同盟を基軸とすべきことはいうまでもない」と強調し、中国のペースに乗るなと、暗に訴えている。
このように、中国から「信頼」を受けると言うことは、日本の安全を危険にさらすと言うに等しいのだ。ところが、それでもその「信頼」を受けたいと言うのが、ほかならぬこれまでの日本政府なのである。そしてその姿勢は、やはり今回の防衛首脳会談で出てしまったのだ。
■本音を語る中国・議論を避けた日本
朝日の社説はなぜか触れていないが、たしかに今回の会談で、日本側は今までになく、中国側に遠慮のない要求を行っている。
たとえば「国防費の透明性のレベルを高めてもらいたい」と訴えている。中国の軍事費の不透明さとは、その秘密性だ。公表額には外国からの兵器の購入費、研究開発費と言った肝心の金額が含まれておらず、実際には公表の二、三倍に上るとされている。そのような状況での軍事費の十九年連続の二桁台の急速な伸びに日本側も、懸念を表明せざるを得なくなっているわけだ。これは中国の反撥を避けるため、「中国の脅威」に目をつぶってきた日本の、近年の大きな姿勢転換である。
そこで曹剛川中国側は、軍事費増強の説明をせざるを得なくなり、例によって例のごとく、「軍事費の急速な伸びは、軍人の給与や軍服の費用、そして兵器の近代化によるものだ」との詭弁を弄した以外には、さらにはこのようにも明言した。「軍事費増加の主要原因は台湾問題である」と。
これこそが誰もがわかりきっている中国の本音である。中国がロシアなどから先進的な兵器を購入し、あるいは兵器の開発に勤しんでいるのは、あくまでも台湾侵攻と、それに対する米軍の介入を阻止するためである。そしてその動きこそが、日本の平和と安全を大きく脅かしているわけだ。
そのとき曹剛川は「台湾問題は中国の核心利益に関わっている」と説明した。日本側から見てもこの問題は、自国の安全に大きく関わる問題である。そこで、ここでこそ大いに議論を展開するべきだったが、しかし日本側はここでそれをせず、口を噤んでしまったようなのだ。
■「三つの政治文書」で口をつぐんだ日本側
曹剛川から「日本はその高度な敏感性を認識し、日中間の三つの政治文書で受け入れた一つの中国の意原を守るように」と要求され、さらに「台湾とはいかなる政府往来もしてはならない」と念を押されると、高村氏は、「日本は三つの政治文書で表明した立場を堅持し、台湾独立を支持しない」と誓約したのである。つまり「一つの中国」の原則を守れと要求されて、「はい、そうします」と答えて中国側に納得してもらい、話がそれで終わると言う、いつものお決まりのパターンが、やはり防衛首脳会談にも出てしまったのだ。こうしたことを、中国のメディアなどは大きく報道している。それは当然だろう。これは中国側の大きな成果だ。
「軍の仕事、それは台湾との戦争」(胡錦濤)と明言する中国が、国家戦略の上で日本に最も求めているのは、「台湾併呑を阻害しないこと」。日米安保体制の解体を求めるのもそのためだ。その要求を日本側が呑まないかぎり、中国としては日本を「信頼」することなどできないのである。だから国防相である曹剛川の来日での最大任務も、その要求を突きつけることであったはずだ。
そこで問題になるのが、「三つの政治文書」とは何かである。それは日中共同声明、日中友好平和条約、そして日中共同宣言のことだ。それらを通じて日本政府は、「中華人民共和国は中国の唯一の合法政府」と認めていることから、中国はそれを拡大解釈し、「日本は台湾を中国領土と認めた」と宣伝し、その証文としてこの三つの外交文書をつねに突きつけ、日本に「台湾を支援するな」と圧力をかけてくるのである。
しかしそれらの文書のどこを探しても、「日本は台湾を中国領土と承認する」などとは書いていない。しかし日本がそう反論しては「中国の核心利益」を損ない、日中関係に大きなダメージが生じる。そこで日本はつねに、こうした中国の圧力に屈してしまうのだ。そしてまるで台湾が中国領土であるかのごとく、その独立を支持しないと表明してしまうのである。
■「任務」を完了した中国国防相
政府がこの問題で、以下に中国の怒りを恐れているかを示すエピソードがある。昨年鈴木宗男議員は政府に対し、「日中共同声明のどこから、我が国は台湾独立を支持しないとの立場が導き出されるのか」と質問したところ、政府の回答は「我が国は日中共同声明に基づいて、台湾独立を支持しない立場だ」と言うものだった。
だがこれでは答えになっていない。つまり答えられないのである。政府の「台湾独立は支持しない」との立場は、三つの文書なるものに基づいたものではなく、中国の圧力に屈してのものなのだ。もちろんこうした属国さながらの事実は、政府が隠しているから、国民一般は知らないでいる。
高村氏などは、「国防費の透明性を高めよ」と要求する一方で、「台湾問題は中国の内政問題。我が国は関知しません」とのメッセージを、中国に送ったようなものなのである。これで曹剛川などは、さぞ「任務完了」と安心したことだろう。そして上機嫌で艦船の相互訪問や緊急連絡用のホットラインの設置などで日本側と合意したのではないだろうか。
これではいったい何のための防衛首脳会談なのか。
中国にとり、台湾併呑と言う「民族の大業」が成し遂げればそれでいい。そうなれば中国の軍事勢力は自ずと南支那海、東支那海、そして西太平洋へと広がり、日本も自ずと中国の影響下に転がってくると見ている。
朝日の社説のタイトルは「日中防衛交流―待ちわびた再始動」。「これで日中友好関係は大丈夫だ」と言わんばかりの嬉々とした内容だが、こうした国内の親中政治勢力は、日本が中国に従属し、パックスシニカ(中華秩序)の下で平和を謳歌したいと考えているように思えてならない。中国に臣属するなど、恐ろしいことである。
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