産経掲載の岡本行夫論文は中国の代弁か
2008/11/30/Sun
■田母神論文を批判するのは中国シンパの故か
産経新聞(十一月三十日)で外交評論家・岡本行夫氏のコラム欄「人界観望楼」を読み出して、「おや」と思った。
「先週、外務省の依頼で中国に講演にいった」と書き出すこの文章によると、岡本氏は聴衆から「どうして田母神さん(前空幕長)のような認識の人が軍の最高位につけるのですか」と質問され、答えに困ったのだと言う。「実を言うと僕も田母神氏に賛成できないから」だそうだ
同氏は田母神論文に関してこう言う。
―――「中国に駐留していた日本軍は、安保条約の下で日本にいる米軍と同じ」、「太平洋戦争はルーズベルトの仕掛けた罠(わな)、戦わなければいまごろ日本は白人国家の植民地」といった主張が、検証に耐えられない論拠で綴られた「論文」…
「検証に耐えられない論拠で綴られた」と断じるが、この人は本当に「検証」してみたのだろうか。いずれにせよこの批評の軽々しさから、歴史への疎さも感じたが、たぶん「侵略」否定の言論への拒否反応なのだろう。それなら戦後教育の影響を蒙った人たちには珍しいことではない。
ただここで直感したのは、この人は中国シンパではないかと言うこと。「侵略」肯定論者はしばしばなぜ中国シンパに走るが、中国シンパゆえに「侵略」肯定に走るケースもあったり…。
■武力行使を放棄しない中国人のどこが「穏やか」
読み進むうちに、やはり岡本氏は好ましからざる中国シンパだと思えてきた。書いていることがあまりにも「典型的」なのだ。
書き忘れたが今回のタイトルは「中国は穏やかになってきた」。これだけを見ても中国シンパ典型の情感がにじみ出ているようだ。では何を以って「穏やかになった」と言うかだが、先ずこうある。
―――僕は靖国を参拝した小泉純一郎元首相の心情も説明した。「どうぞ小泉さんを嫌いにならないでください」と結んだら、聴衆から期せずして拍手が起こって、こっちが驚いた。
中国人の聴衆から拍手を受けるなど、岡本氏はいったいどのような話をしたのか。耳障りのいい話をしておけば、中国の民衆は、たとえ歴史問題であっても寛容なものだが、きちんと中国側の内政干渉への批判はしたのだろうか。そう言ったものを抜きにして、あの問題の本質は語れないはずだが。
しかしそれはまだまだ小さな問題。それより看過できないのは次だ。
―――福建省の廈門(アモイ)大学で、日米安保と台湾の関係について講義した。…台湾への武力進攻の可能性は常に残すという中国の国是への反対論に対しても、ひと昔前とは違って、中国側の反応は理性的で穏やかだった。「賛成はしないけど日本の立場は理解します」
その中国人はあくまでも武力行使への反対論に「賛成しない」と言っているのに、どこが「理性的で穏やか」なのか。ナチス・ドイツによる周辺諸国の併呑政策を評価するネオナチと出会っても、岡本氏は「穏やか」などだと、公の場で評価できるのか。
これは言いがかりでも何でもない。台湾問題とは中国による台湾侵略の問題なのだ。
■牽強付会の中国賛美は意味不明にして事実誤認
さらに、中国シンパ特有の意味不明な中国賛美(牽強付会の賛美)も見える。次だ。
―――廈門市は台湾の対岸にある。金門島が泳いでいけそうな距離に見える。…1996年の台湾海峡ミサイル危機の直後、僕は逆に金門島から廈門を眺めた。台湾軍に巨大な要塞を案内され、社会主義中国を眼前にした最前線の緊張感を感じた。貧しい中国は何をするか分からないと何度も聞かされた。それから10年以上。時代は変わった。…中国は猛烈な速度で豊かになり、…豊かになって余裕をもった中国人が金門島を見る目は穏やかだ。勝負はついた感がある。
この「勝負はついた感がある」とは何のことか。
台湾の民主的な総統選挙を妨害するため、中国が一方的にミサイル恫喝を行ったと言うのが九六年の「ミサイル危機」だが、当時台湾側が「貧しい中国は何をするか分からない」と言っていたものの、中国が豊かになった今は緊張が緩和されているとして、「勝負あり。中国の勝ち」と称える岡本氏の論法は、本当に意味がよく分からない。
台湾と中国との間の現実を言おう。たしかに九六年以降、中国は年々豊かになっているが、その一方で台湾侵攻のための軍備拡張のスピードも、まさにその年から加速されているのである。台湾に照準を合わせたミサイルの基数も増強される一方で、いまだに歯止めがかからない。この現状を知らないはずのない岡本氏は、それでも中国の台湾に対する姿勢は「穏やかだ」と言うのか。
中国が「穏やか」に見えるには、台湾側がその恫喝に屈して宥和路線に傾いているからなのだ。たしかに「勝負あり」と言うなら勝負はあった。ただしそれは中国の恫喝の勝利であって、断じて「穏やか」なものではないのである。
これでは平和統一(併呑)を正当化する中国の微笑宣伝攻勢への加担となってしまう。
台湾に照準を合わせる中国のミサイルは年々
増強の一方。2001年は300基だったが、2008年
には1300~1400基に達している。どこが「穏や
か」になったと言うのか
■朝日社説の如しー信用できない中国翼賛の書き物
岡本氏は最後にこう書く。
―――日本の対中感情は良くない。中国にケチをつけるのが流行になった。村山談話を修正しろという議論も増えた。「私たちは輝かしい日本の歴史を取り戻さなければならない」と。過去の過ちを認めた途端に、今の日本に誇りを持てなくなるのか。
―――日本は成熟した国だ。そろそろ中国の悪口を言うのも、過去の話ばかりするのも止めて、前を見ないか。中国とも余裕をもって向き合うときだと思うのだが。
これもまた歴史問題を契機とした日本人の反中感情の高まりを恐れる中国の代弁だろうか。
「過去より未来を」と説いているが、歴史問題は、中国にとっても、そして日本にとっても「過去」の問題ではなく「現在」「未来」の問題なのだ。
そもそも贖罪意識に犯された日本人がこの問題で反中感情を高めたのは、中国側の常軌を逸した内政干渉のためなのだ。この主権侵害と言う中国の「未来」に向けた反日戦略に対し、日本人は「未来」に対する危機感を高め、ナショナリズムを高揚させているのが実情である。
それに加えて、日本人の暮らしを脅かす中国の「輸出品」、つまり中国人犯罪、有毒食品等々への反発、危機感も加わり、さらにはチベット人、ウイグル人への残虐な迫害、弾圧にも怒りが抱かれるに至っているのではないのか。
民族浄化の危機にさらされるチベット人、ウイグル人が岡本氏のこの一文を読んだら、「中国が穏やかになったなどとんでもない」と反論することだろう。「穏やかさの裏にある中国の邪悪さを知らないのか」と。
中国シンパの書くことはかくも信用できない。産経新聞が、中国の微笑外交を翼賛するような朝日新聞の社説の如き文章を第一面に掲載してしまったことは遺憾である。
【人界観望楼】外交評論家・岡本行夫 中国は穏やかになってきた
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081130/plc0811300247001-n1.htm
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中国傾斜が際立つ台湾情勢を受け、東アジアの前途に不安が高まる中、日台共栄を目指す本会の研究・言論活動もさらなる前進が求められています。そうした中、来年に向けての英気を養うべく、12月の定例会は恒例の忘年会とします。なお当日は特別ゲストとして日本ウイグル協会のイリハム・マハムティ会長をお迎えします。大勢の方にご参加いただき、同志の輪を固めてまいりたく存じますので、奮ってご参加ください。
■特別スピーチ イリハム・マハムティ氏(日本ウイグル協会会長)
「ウイグル人による日本、台湾への連帯アピール」
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【日 時】 12月6日(土) 午後5時 ~ 7時30分
【場 所】 新宿・三平酒寮別館4階 (03-3352-5351)
http://www.shinjukuku-town.com/map/sj020250/
【交 通】 JR新宿駅:東口 徒歩3分 アルタ裏(1階はゲームセンタ―)
【参加費】 3500円(飲み放題)
【申込み】 12月 4日まで下記へ。
Eメール [email protected] FAX 03-3626-1520
【問合せ】 090-4138-6397
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産経新聞(十一月三十日)で外交評論家・岡本行夫氏のコラム欄「人界観望楼」を読み出して、「おや」と思った。
「先週、外務省の依頼で中国に講演にいった」と書き出すこの文章によると、岡本氏は聴衆から「どうして田母神さん(前空幕長)のような認識の人が軍の最高位につけるのですか」と質問され、答えに困ったのだと言う。「実を言うと僕も田母神氏に賛成できないから」だそうだ
同氏は田母神論文に関してこう言う。
―――「中国に駐留していた日本軍は、安保条約の下で日本にいる米軍と同じ」、「太平洋戦争はルーズベルトの仕掛けた罠(わな)、戦わなければいまごろ日本は白人国家の植民地」といった主張が、検証に耐えられない論拠で綴られた「論文」…
「検証に耐えられない論拠で綴られた」と断じるが、この人は本当に「検証」してみたのだろうか。いずれにせよこの批評の軽々しさから、歴史への疎さも感じたが、たぶん「侵略」否定の言論への拒否反応なのだろう。それなら戦後教育の影響を蒙った人たちには珍しいことではない。
ただここで直感したのは、この人は中国シンパではないかと言うこと。「侵略」肯定論者はしばしばなぜ中国シンパに走るが、中国シンパゆえに「侵略」肯定に走るケースもあったり…。
■武力行使を放棄しない中国人のどこが「穏やか」
読み進むうちに、やはり岡本氏は好ましからざる中国シンパだと思えてきた。書いていることがあまりにも「典型的」なのだ。
書き忘れたが今回のタイトルは「中国は穏やかになってきた」。これだけを見ても中国シンパ典型の情感がにじみ出ているようだ。では何を以って「穏やかになった」と言うかだが、先ずこうある。
―――僕は靖国を参拝した小泉純一郎元首相の心情も説明した。「どうぞ小泉さんを嫌いにならないでください」と結んだら、聴衆から期せずして拍手が起こって、こっちが驚いた。
中国人の聴衆から拍手を受けるなど、岡本氏はいったいどのような話をしたのか。耳障りのいい話をしておけば、中国の民衆は、たとえ歴史問題であっても寛容なものだが、きちんと中国側の内政干渉への批判はしたのだろうか。そう言ったものを抜きにして、あの問題の本質は語れないはずだが。
しかしそれはまだまだ小さな問題。それより看過できないのは次だ。
―――福建省の廈門(アモイ)大学で、日米安保と台湾の関係について講義した。…台湾への武力進攻の可能性は常に残すという中国の国是への反対論に対しても、ひと昔前とは違って、中国側の反応は理性的で穏やかだった。「賛成はしないけど日本の立場は理解します」
その中国人はあくまでも武力行使への反対論に「賛成しない」と言っているのに、どこが「理性的で穏やか」なのか。ナチス・ドイツによる周辺諸国の併呑政策を評価するネオナチと出会っても、岡本氏は「穏やか」などだと、公の場で評価できるのか。
これは言いがかりでも何でもない。台湾問題とは中国による台湾侵略の問題なのだ。
■牽強付会の中国賛美は意味不明にして事実誤認
さらに、中国シンパ特有の意味不明な中国賛美(牽強付会の賛美)も見える。次だ。
―――廈門市は台湾の対岸にある。金門島が泳いでいけそうな距離に見える。…1996年の台湾海峡ミサイル危機の直後、僕は逆に金門島から廈門を眺めた。台湾軍に巨大な要塞を案内され、社会主義中国を眼前にした最前線の緊張感を感じた。貧しい中国は何をするか分からないと何度も聞かされた。それから10年以上。時代は変わった。…中国は猛烈な速度で豊かになり、…豊かになって余裕をもった中国人が金門島を見る目は穏やかだ。勝負はついた感がある。
この「勝負はついた感がある」とは何のことか。
台湾の民主的な総統選挙を妨害するため、中国が一方的にミサイル恫喝を行ったと言うのが九六年の「ミサイル危機」だが、当時台湾側が「貧しい中国は何をするか分からない」と言っていたものの、中国が豊かになった今は緊張が緩和されているとして、「勝負あり。中国の勝ち」と称える岡本氏の論法は、本当に意味がよく分からない。
台湾と中国との間の現実を言おう。たしかに九六年以降、中国は年々豊かになっているが、その一方で台湾侵攻のための軍備拡張のスピードも、まさにその年から加速されているのである。台湾に照準を合わせたミサイルの基数も増強される一方で、いまだに歯止めがかからない。この現状を知らないはずのない岡本氏は、それでも中国の台湾に対する姿勢は「穏やかだ」と言うのか。
中国が「穏やか」に見えるには、台湾側がその恫喝に屈して宥和路線に傾いているからなのだ。たしかに「勝負あり」と言うなら勝負はあった。ただしそれは中国の恫喝の勝利であって、断じて「穏やか」なものではないのである。
これでは平和統一(併呑)を正当化する中国の微笑宣伝攻勢への加担となってしまう。
台湾に照準を合わせる中国のミサイルは年々
増強の一方。2001年は300基だったが、2008年
には1300~1400基に達している。どこが「穏や
か」になったと言うのか
■朝日社説の如しー信用できない中国翼賛の書き物
岡本氏は最後にこう書く。
―――日本の対中感情は良くない。中国にケチをつけるのが流行になった。村山談話を修正しろという議論も増えた。「私たちは輝かしい日本の歴史を取り戻さなければならない」と。過去の過ちを認めた途端に、今の日本に誇りを持てなくなるのか。
―――日本は成熟した国だ。そろそろ中国の悪口を言うのも、過去の話ばかりするのも止めて、前を見ないか。中国とも余裕をもって向き合うときだと思うのだが。
これもまた歴史問題を契機とした日本人の反中感情の高まりを恐れる中国の代弁だろうか。
「過去より未来を」と説いているが、歴史問題は、中国にとっても、そして日本にとっても「過去」の問題ではなく「現在」「未来」の問題なのだ。
そもそも贖罪意識に犯された日本人がこの問題で反中感情を高めたのは、中国側の常軌を逸した内政干渉のためなのだ。この主権侵害と言う中国の「未来」に向けた反日戦略に対し、日本人は「未来」に対する危機感を高め、ナショナリズムを高揚させているのが実情である。
それに加えて、日本人の暮らしを脅かす中国の「輸出品」、つまり中国人犯罪、有毒食品等々への反発、危機感も加わり、さらにはチベット人、ウイグル人への残虐な迫害、弾圧にも怒りが抱かれるに至っているのではないのか。
民族浄化の危機にさらされるチベット人、ウイグル人が岡本氏のこの一文を読んだら、「中国が穏やかになったなどとんでもない」と反論することだろう。「穏やかさの裏にある中国の邪悪さを知らないのか」と。
中国シンパの書くことはかくも信用できない。産経新聞が、中国の微笑外交を翼賛するような朝日新聞の社説の如き文章を第一面に掲載してしまったことは遺憾である。
【人界観望楼】外交評論家・岡本行夫 中国は穏やかになってきた
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中国傾斜が際立つ台湾情勢を受け、東アジアの前途に不安が高まる中、日台共栄を目指す本会の研究・言論活動もさらなる前進が求められています。そうした中、来年に向けての英気を養うべく、12月の定例会は恒例の忘年会とします。なお当日は特別ゲストとして日本ウイグル協会のイリハム・マハムティ会長をお迎えします。大勢の方にご参加いただき、同志の輪を固めてまいりたく存じますので、奮ってご参加ください。
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【日 時】 12月6日(土) 午後5時 ~ 7時30分
【場 所】 新宿・三平酒寮別館4階 (03-3352-5351)
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【交 通】 JR新宿駅:東口 徒歩3分 アルタ裏(1階はゲームセンタ―)
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