台湾統一支持の毎日新聞―検証:日本の「台湾総統選挙」報道(下)
2020/01/18/Sat
ブログランキング参加中
台湾支持運動拡大のため、よければクリックをお願いします。→
モバイルはこちら→http://blog.with2.net/link.phplink.php
*****************************************************************
1月11日に投開票が行われた台湾の総統選挙では反中国の蔡英文総統が再選された。従来、中国の「一つの中国」(台湾は中国領土)宣伝をも受け入れてきた日本の各紙が、これを好意的に報じたのは、中華覇権主義がかつてなく顕在化する今日、それから自由と民主を守りたいとする台湾の有権者の思いに突き動かされたからか。
もっともその一方で、中国の顔色を見ながら書いたとしか思えない記事も相変わらず見られた。12日の毎日新聞朝刊に載った「中台関係 焦り禁物」と題する記事がそれだ。執筆は浦松丈二・中国総局長。何が目的でこんなのを書いたのか。
■中国人を台湾人の「同胞」と位置づける毎日
冒頭にはこうある。
―――歴史的な総統選の開票速報にわく台湾人を中国大陸の同胞はどう見たのだろうか? 北京の友人に聞いたが、中国中央テレビは映像を流していなかった。
私はこの部分を読んだだけで、この記者は中国に媚びた人物だと感じた。なぜなら中国人を台湾人の同胞と位置付けているからだ。
「大陸反攻」が叫ばれた数十年前の国民党独裁時代ならともかく、今の台湾で中国人を「同胞」と思う者は、中国出身のお年寄りや、「中国統一」を求める極少数の政治勢力くらいではないのか。台湾の友人に確認したら、「そんな人は、今はほとんどいない」との回答だった。少なくとも記事が触れたところの蔡英文の勝利に「わく」台湾人のほとんどは、自分は中国人とは異なるという意識だろう。
一方、中国は台湾人を台湾同胞と呼ぶ。たとえば国内メディアは、台湾人を「台湾民衆」「台湾人民」、あるいは「台湾同胞」と呼称するよう指導を受けている。また中国については、台湾に関わる報道の際には「中国大陸」と呼ばなければならない。いずれも「一つの中国」宣伝に基づく統制なのだ。
「中国大陸の同胞」と書いた今回の記事は、まさにこの中国の言論統制に従うものではないのか。
■なぜ「台湾統一はいけない」と書かないのか
この記事は、決して蔡総統が再任されたのを批判するものではない。そればかりか、以下のように中国に対し台湾の民意を尊重しろと訴える内容でもある。
―――台湾総統選は1996年から直接選挙で実施されてきた。今回で7回目、24年間にわたって、台湾の人々は民主的な選挙でトップを選んだことになる。中国の習近平指導部は「1国2制度」による台湾統一を目指す姿勢を鮮明にしている。そうならば、台湾同胞の民意を正面から受け止める時期だろう。
―――台湾の民意が「現状の1国2制度へのノー」であることは明らかだ。……台湾では1国2制度への拒否感は強く、歴代最も中国寄りだった国民党の馬英九前総統ですら拒絶していた。
それにしても、意味の取りにくい書き方だ。習近平指導部は「『1国2制度』による台湾統一を目指す姿勢を鮮明」にする以上、「台湾同胞の1国2制度への拒否感」は「正面から受け止める」べきだとする論理がわからない。
「『1国2制度』による台湾統一を目指す姿勢」は間違っている、とはっきり書けばいいのではないか。しかし中国に気兼ねし、それを敢えてしないから、こんな矛盾する変な文章になったのではないか。
ところで、こんなことも書いている。
―――中国への危機感の高まりの背景には台湾人意識の高まりがある。台湾の政治大学が19年1月に発表した世論調査で「中国人ではなく台湾人」と回答したのは56・9%」。
ちなみにこの調査で、自分は「中国人」だと回答したのは3・6%。それでも毎日は、台湾人にとり中国人は同胞だというのか。
■捨てることができない中国従属の姿勢
中国への配慮がもたらす内容の矛盾はまだある。
記事は中国に対し、統一を拒否する台湾の民意の尊重を呼びかけるポーズを見せる一方で、しっかりと統一を支持しているのである。以下を見よう。
―――「放置すれば台湾は永遠に祖国の懐に帰ってこない」。北京で何度も聞かされた中国共産党幹部の懸念である。台湾を訪れて、その懸念は現実になりつつあると感じる。だが、中国語にも「急がば回れ」という格言がある。焦りは禁物だ。
どう見ても統一を応援しているではないか。
そしてその上で、最後はこのように書くのである。
―――総統選後、台湾に安定政権が発足すれば、現状の1国2制度の代わる新たなアイデアが浮上するかもしれない。社会制度は違っても台湾、香港、そして中国の民意は成熟していくはずだ。総統選後の台湾情勢から、目が離せなくなってきた。
いったい何の民意がどう「成熟していく」というのか。統一を拒否する台湾の民意は成熟していないというのか。
そして一体、今後どんな統一に向けた「新たなアイデア」が出される可能性があるというのか。「1国2制度」以外では「1国1制度」が考えられるが、まさかそれを「成熟」した考えだといっているわけではあるまい。もし中華連邦のようなものを思い描いたのなら、そのようなものは中共が受け入れるはずなく、不可能だ。
このように矛盾の多い無責任な内容なのである。何が「総統選後の台湾情勢から、目が離せなくなってきた」だろう。何が言いたいことがよくわからない駄文である。
結局、日本は民主主義国家だから、記事も台湾の民意尊重を訴える内容にせざるを得ないのだが、しかしそれでは中国に叱られかねないと懸念した浦松という中国総局長は、「台湾統一 焦り禁物」と献策するスタイルをとったのだろう。
このように中国に対し、批判の代わりに献策を行い、結局中国の側に立ち続けるという報道パターンは、実は日本ではよくあるのである。読者には迷惑だし有害だ。
「統一は不法な侵略。習近平は台湾への野心を捨てよ」とまではっきり訴えることのできる報道機関は日本にはまだない。今回の選挙は、まさにそれを行う絶好の機会だったのだが残念である。
【ご登録を】 メルマガ「台湾は日本の生命線!」を創刊
このほど、無料メルマガ「台湾は日本の生命線!」を「まぐまぐ!」にて創刊しました。
これまで「メルマ!」で配信していましたが、1月末にサービスが停止されるため、配信元を切り替えた次第です。「メルマ!」で登録されている方は、ご面倒ですがこちらへご移行ください。
本ブログの記事のほか、台湾支持運動などの情報もお届けしますので、ぜひご登録のほどお願いいたします。
台湾支持運動拡大のため、よければクリックをお願いします。→
モバイルはこちら→http://blog.with2.net/link.phplink.php
*****************************************************************
1月11日に投開票が行われた台湾の総統選挙では反中国の蔡英文総統が再選された。従来、中国の「一つの中国」(台湾は中国領土)宣伝をも受け入れてきた日本の各紙が、これを好意的に報じたのは、中華覇権主義がかつてなく顕在化する今日、それから自由と民主を守りたいとする台湾の有権者の思いに突き動かされたからか。
もっともその一方で、中国の顔色を見ながら書いたとしか思えない記事も相変わらず見られた。12日の毎日新聞朝刊に載った「中台関係 焦り禁物」と題する記事がそれだ。執筆は浦松丈二・中国総局長。何が目的でこんなのを書いたのか。
■中国人を台湾人の「同胞」と位置づける毎日
冒頭にはこうある。
―――歴史的な総統選の開票速報にわく台湾人を中国大陸の同胞はどう見たのだろうか? 北京の友人に聞いたが、中国中央テレビは映像を流していなかった。
私はこの部分を読んだだけで、この記者は中国に媚びた人物だと感じた。なぜなら中国人を台湾人の同胞と位置付けているからだ。
「大陸反攻」が叫ばれた数十年前の国民党独裁時代ならともかく、今の台湾で中国人を「同胞」と思う者は、中国出身のお年寄りや、「中国統一」を求める極少数の政治勢力くらいではないのか。台湾の友人に確認したら、「そんな人は、今はほとんどいない」との回答だった。少なくとも記事が触れたところの蔡英文の勝利に「わく」台湾人のほとんどは、自分は中国人とは異なるという意識だろう。
一方、中国は台湾人を台湾同胞と呼ぶ。たとえば国内メディアは、台湾人を「台湾民衆」「台湾人民」、あるいは「台湾同胞」と呼称するよう指導を受けている。また中国については、台湾に関わる報道の際には「中国大陸」と呼ばなければならない。いずれも「一つの中国」宣伝に基づく統制なのだ。
「中国大陸の同胞」と書いた今回の記事は、まさにこの中国の言論統制に従うものではないのか。
■なぜ「台湾統一はいけない」と書かないのか
この記事は、決して蔡総統が再任されたのを批判するものではない。そればかりか、以下のように中国に対し台湾の民意を尊重しろと訴える内容でもある。
―――台湾総統選は1996年から直接選挙で実施されてきた。今回で7回目、24年間にわたって、台湾の人々は民主的な選挙でトップを選んだことになる。中国の習近平指導部は「1国2制度」による台湾統一を目指す姿勢を鮮明にしている。そうならば、台湾同胞の民意を正面から受け止める時期だろう。
―――台湾の民意が「現状の1国2制度へのノー」であることは明らかだ。……台湾では1国2制度への拒否感は強く、歴代最も中国寄りだった国民党の馬英九前総統ですら拒絶していた。
それにしても、意味の取りにくい書き方だ。習近平指導部は「『1国2制度』による台湾統一を目指す姿勢を鮮明」にする以上、「台湾同胞の1国2制度への拒否感」は「正面から受け止める」べきだとする論理がわからない。
「『1国2制度』による台湾統一を目指す姿勢」は間違っている、とはっきり書けばいいのではないか。しかし中国に気兼ねし、それを敢えてしないから、こんな矛盾する変な文章になったのではないか。
ところで、こんなことも書いている。
―――中国への危機感の高まりの背景には台湾人意識の高まりがある。台湾の政治大学が19年1月に発表した世論調査で「中国人ではなく台湾人」と回答したのは56・9%」。
ちなみにこの調査で、自分は「中国人」だと回答したのは3・6%。それでも毎日は、台湾人にとり中国人は同胞だというのか。
■捨てることができない中国従属の姿勢
中国への配慮がもたらす内容の矛盾はまだある。
記事は中国に対し、統一を拒否する台湾の民意の尊重を呼びかけるポーズを見せる一方で、しっかりと統一を支持しているのである。以下を見よう。
―――「放置すれば台湾は永遠に祖国の懐に帰ってこない」。北京で何度も聞かされた中国共産党幹部の懸念である。台湾を訪れて、その懸念は現実になりつつあると感じる。だが、中国語にも「急がば回れ」という格言がある。焦りは禁物だ。
どう見ても統一を応援しているではないか。
そしてその上で、最後はこのように書くのである。
―――総統選後、台湾に安定政権が発足すれば、現状の1国2制度の代わる新たなアイデアが浮上するかもしれない。社会制度は違っても台湾、香港、そして中国の民意は成熟していくはずだ。総統選後の台湾情勢から、目が離せなくなってきた。
いったい何の民意がどう「成熟していく」というのか。統一を拒否する台湾の民意は成熟していないというのか。
そして一体、今後どんな統一に向けた「新たなアイデア」が出される可能性があるというのか。「1国2制度」以外では「1国1制度」が考えられるが、まさかそれを「成熟」した考えだといっているわけではあるまい。もし中華連邦のようなものを思い描いたのなら、そのようなものは中共が受け入れるはずなく、不可能だ。
このように矛盾の多い無責任な内容なのである。何が「総統選後の台湾情勢から、目が離せなくなってきた」だろう。何が言いたいことがよくわからない駄文である。
結局、日本は民主主義国家だから、記事も台湾の民意尊重を訴える内容にせざるを得ないのだが、しかしそれでは中国に叱られかねないと懸念した浦松という中国総局長は、「台湾統一 焦り禁物」と献策するスタイルをとったのだろう。
このように中国に対し、批判の代わりに献策を行い、結局中国の側に立ち続けるという報道パターンは、実は日本ではよくあるのである。読者には迷惑だし有害だ。
「統一は不法な侵略。習近平は台湾への野心を捨てよ」とまではっきり訴えることのできる報道機関は日本にはまだない。今回の選挙は、まさにそれを行う絶好の機会だったのだが残念である。
【ご登録を】 メルマガ「台湾は日本の生命線!」を創刊
このほど、無料メルマガ「台湾は日本の生命線!」を「まぐまぐ!」にて創刊しました。
これまで「メルマ!」で配信していましたが、1月末にサービスが停止されるため、配信元を切り替えた次第です。「メルマ!」で登録されている方は、ご面倒ですがこちらへご移行ください。
本ブログの記事のほか、台湾支持運動などの情報もお届けしますので、ぜひご登録のほどお願いいたします。
検証:日本の「台湾総統選挙」報道(上)―やはりメディアも中国より台湾が好きか
2020/01/15/Wed
ブログランキング参加中
台湾支持運動拡大のため、よければクリックをお願いします。→
モバイルはこちら→http://blog.with2.net/link.phplink.php
*****************************************************************
1月11日に投開票が行われた台湾総統選挙は蔡英文候補が勝利。それについては日本の各紙が翌日の朝刊で詳報しているが、それらを読んで気が付いたのは、記者たちも最近はちょっと台湾について勉強しているようだ、ということだ。
そう思うのは、これまで各紙とも「民進党の蔡英文総統」と書く時、たいてい「(中国からの)独立志向の民進党の蔡英文」といった感じの誤った表現を使っていたのだが(中国領土ではない台湾が、どうして中国から独立できるというのか)、この日はそうした中国の虚構宣伝に迎合、従属した表現が減ったからである。
ちなみに中国の虚構宣伝とは、「一つの中国」原則なるものに基づき、いわゆる中国統一を拒絶するという民進党を「台湾独立分裂」勢力と位置づけ、トラブルメーカー扱いにして、国際社会で孤立させようとするものだが、そういったものの受け入れを止めたというなら、これで読者も危険な誤解をせずに済むので、高く評価すべきである。
良い変化が見られた日本各紙の台湾選挙報道
例えば毎日新聞は「中国と対立する民進党」と書き、朝日新聞は「中国統一を拒否する与党民進党」とし、産経新聞は「中国の圧力に抵抗する姿勢を示してきた民主進歩党」と書き、日本経済新聞は対中強硬路線をとる与党・民主進歩党」としていて、これらならどれも間違っていない。
また日経はさらに「(蔡政権は)党が持つ独立志向を封印する立場をとる」と書いているが、この「独立」は「中華民国の独立」という正しい意味で用いられている。
今後各紙はどうしても「独立志向」という言葉を使いたいなら、このように「独立志向を封印する民進党」とすれば誤報とはならないので、お勧めしたい。
台湾では、「台湾を守れ」とは叫ばれても、「中華人民共和国から独立しよう」と主張する者など一人もいない。台湾で取材を行えば、そんなことはすぐわかる。だから私は先に、記者たちは「台湾について勉強したか」と書いたのだが、このように言うのは、勉強をしていないはずのないプロの記者に対して失礼かもしれない。
これは私の勝手な想像だが、記者たちは蔡英文総統が国家主権を守るために選挙戦を戦い、そして多くの国民がそれを熱狂的に支持する光景を目の当たりにし、そしてそれに心が動かされ、いつまでも「一つの中国」なるバカバカしい宣伝に配慮するのが嫌になったのではないだろうか。
日経の記事は、笑顔の民進党支持者たちの写真とともに「台湾、中国離れ加速」との見出しを付けているが、日本の記者たちも「中国離れ加速」か。
日本メディアの「中国離れ」も祈りたい
彼らもまた日本人。中国より台湾の方が好きなはず。そのためかどうかは知らないが、1996年に総統直接選挙が始まって以降、中国に対抗する反中愛台の候補者が勝利するたび、それを好意的に報じる傾向が日本メディアには確かにある。
ただそうした中、いまだ「中国統一」を支持するかのような記事も今回見られた。「統一」というものが「併呑」「侵略」に等しいということにまだ気付かない、あるいは気付かないふりをする記者がいるのである。
それについては次回に書きたい。
【ご登録を】 メルマガ「台湾は日本の生命線!」を創刊
このほど、無料メルマガ「台湾は日本の生命線!」を「まぐまぐ!」にて創刊しました。
これまで「メルマ!」で配信していましたが、1月末にサービスが停止されるため、配信元を切り替えた次第です。「メルマ!」で登録されている方は、ご面倒ですがこちらへご移行ください。
本ブログの記事のほか、台湾支持運動などの情報もお届けしますので、ぜひご登録のほどお願いいたします。
台湾支持運動拡大のため、よければクリックをお願いします。→
モバイルはこちら→http://blog.with2.net/link.phplink.php
*****************************************************************
1月11日に投開票が行われた台湾総統選挙は蔡英文候補が勝利。それについては日本の各紙が翌日の朝刊で詳報しているが、それらを読んで気が付いたのは、記者たちも最近はちょっと台湾について勉強しているようだ、ということだ。
そう思うのは、これまで各紙とも「民進党の蔡英文総統」と書く時、たいてい「(中国からの)独立志向の民進党の蔡英文」といった感じの誤った表現を使っていたのだが(中国領土ではない台湾が、どうして中国から独立できるというのか)、この日はそうした中国の虚構宣伝に迎合、従属した表現が減ったからである。
ちなみに中国の虚構宣伝とは、「一つの中国」原則なるものに基づき、いわゆる中国統一を拒絶するという民進党を「台湾独立分裂」勢力と位置づけ、トラブルメーカー扱いにして、国際社会で孤立させようとするものだが、そういったものの受け入れを止めたというなら、これで読者も危険な誤解をせずに済むので、高く評価すべきである。
良い変化が見られた日本各紙の台湾選挙報道
例えば毎日新聞は「中国と対立する民進党」と書き、朝日新聞は「中国統一を拒否する与党民進党」とし、産経新聞は「中国の圧力に抵抗する姿勢を示してきた民主進歩党」と書き、日本経済新聞は対中強硬路線をとる与党・民主進歩党」としていて、これらならどれも間違っていない。
また日経はさらに「(蔡政権は)党が持つ独立志向を封印する立場をとる」と書いているが、この「独立」は「中華民国の独立」という正しい意味で用いられている。
今後各紙はどうしても「独立志向」という言葉を使いたいなら、このように「独立志向を封印する民進党」とすれば誤報とはならないので、お勧めしたい。
台湾では、「台湾を守れ」とは叫ばれても、「中華人民共和国から独立しよう」と主張する者など一人もいない。台湾で取材を行えば、そんなことはすぐわかる。だから私は先に、記者たちは「台湾について勉強したか」と書いたのだが、このように言うのは、勉強をしていないはずのないプロの記者に対して失礼かもしれない。
これは私の勝手な想像だが、記者たちは蔡英文総統が国家主権を守るために選挙戦を戦い、そして多くの国民がそれを熱狂的に支持する光景を目の当たりにし、そしてそれに心が動かされ、いつまでも「一つの中国」なるバカバカしい宣伝に配慮するのが嫌になったのではないだろうか。
日経の記事は、笑顔の民進党支持者たちの写真とともに「台湾、中国離れ加速」との見出しを付けているが、日本の記者たちも「中国離れ加速」か。
日本メディアの「中国離れ」も祈りたい
彼らもまた日本人。中国より台湾の方が好きなはず。そのためかどうかは知らないが、1996年に総統直接選挙が始まって以降、中国に対抗する反中愛台の候補者が勝利するたび、それを好意的に報じる傾向が日本メディアには確かにある。
ただそうした中、いまだ「中国統一」を支持するかのような記事も今回見られた。「統一」というものが「併呑」「侵略」に等しいということにまだ気付かない、あるいは気付かないふりをする記者がいるのである。
それについては次回に書きたい。
【ご登録を】 メルマガ「台湾は日本の生命線!」を創刊
このほど、無料メルマガ「台湾は日本の生命線!」を「まぐまぐ!」にて創刊しました。
これまで「メルマ!」で配信していましたが、1月末にサービスが停止されるため、配信元を切り替えた次第です。「メルマ!」で登録されている方は、ご面倒ですがこちらへご移行ください。
本ブログの記事のほか、台湾支持運動などの情報もお届けしますので、ぜひご登録のほどお願いいたします。
中国から見た台湾総統選挙の結果―アジア太平洋地域にとっても正確な選択
2020/01/12/Sun
ブログランキング参加中
台湾支持運動拡大のため、よければクリックをお願いします。→
モバイルはこちら→http://blog.with2.net/link.phplink.php
*****************************************************************
■民進党の勝利は中国のおかげ
台湾では1月11日、総統選挙と立法委員(国会議員)選挙の投開票が行われた。米国(日米同盟)との協力関係の強化を求める現職の与党・民進党の蔡英文総統と、再び中国への依存度を高めようとする国民党の韓国瑜高雄市長との一騎打ちとなった総統選では、蔡英文氏が大差で勝利。立法委員選挙でも113議席の内、民進党が61議席で過半数を維持した。
一昨年の統一地方選挙では国民党に大敗を喫し、当時は政権交代も予測されたが、最終的に民進党が勝ち得たのは、日本でも報道各社が指摘する通り、その最大原因は「中国」だ。
中共はすでに自らの影響下にある国民党の統一地方選での大勝を見て、「中国統一」(台湾併呑)の念願は叶い得ると早合点したらしい。習近平主席が昨年初め、「平和統一には一国二制度が最良の方法」などと演説して台湾人の対中警戒心を強化させ、更には同年6月以降、香港での一国二制度の形骸化の状況が、更に台湾人の危機意識を高めさせた。
おまけに豪州に亡命した中国の元スパイが統一地方選挙で高雄市長候補だった韓國瑜氏など国民党サイドに資金援助をするなど、さまざまな選挙介入が行われていたと告白。更には国民党がその元スパイに対し、「民進党に言われて嘘をついたと言え。さもないと殺害されるぞ」と脅していたことも明るみになり・・。・
かくしてそうした流れの中で中共の攻勢に抵抗する蔡英文氏=民進党の支持率は回復し、そして今回の選挙の結果へと繋がった訳だ。
■それでも台湾民意を無視する中国政府
台湾の民意を読み誤った中共。「統一」攻勢が有権者の反発を招いた
開票後、蔡英文氏「台湾の民意をよく理解してほしい。交流の仕方は一国が決めるものではない。健康的に交流したいなら、対話、協議の再開を」と中国政府に訴えたのだが、翌12日、中国で対台湾工作を司る国務院台湾事務弁公室報道官は、次のような声明を出している。
「我々の台湾に対する方針は明確で一貫している。平和統一と一国二制度という基本方針を堅持し、一つの中国原則を堅持し、国家主権と領土の完備を断固維持し、いかなる形のものであれ台湾独立の計画、行為には断固反対し、台湾同胞の利益と福祉を断固増進する」
要するに蔡英文氏の関係改善の呼びかけには耳も傾けないのである。
ちなみに中国政府が言う「台湾独立」とは、中国からの分離独立の意だが、実際には台湾は中国に統治されておらず、したがって中国による「中国統一」の要求を拒否することを指すと考えてよい。そして今回の選挙では、その「統一」なるものを拒否する強烈な「台湾の民意」が明確になったのだが、それに聞く耳も持たないという訳だから、引き続き台中間の緊張は続くのだろう。
■中共は自らのミスを悔しがっている
そればかりか、ますます恫喝を強化する構えではないのか。中共機関紙人民日報系の環球時報が11日に配信した「蔡英文と民進党は『好き勝手にしない』を座右の銘に」と題する社説を読んでも、そう思える。
台湾を思うようにできない中共の苛立ちが伝わってくる内容なので、以下に抄訳しよう。
―――台湾地区の領導人と民意代表の選挙が今日行われ、目下のところ蔡英文の得票率は半数を超え、再選が達成されようとしている。2018年11月の台湾地区の統一地方選挙で惨敗した蔡英文は、民進党内部で激しく批判されたが、それから一年半後に再任されるとは、明らかに西側の選挙体制下での通常の政党競争のルールに符合していない。
「台湾地区の領導人」とは総統のこと。「総統」という国家元首の職名を書くと台湾を国と認めることになるので、こう呼び変えている。また「民意代表」とは立法委員のこと。立法委員とは国会議員なので、同じ理由でこうするのだ。台湾が独立国であることを否定するため、中共はここまで徹底して用語統制を行っているわけだが、それにしても何が「西側のルールに符合しない」だろうか。まるで民進党が汚い手を使って勝利したと言わんばかりである。
自分たち自身の台湾民意の読み違いにより、統一地方選挙で大敗した民進党が今回再び力を伸ばしたことが、よほど悔しかったようだ。
■民進党の抵抗を「挑発」と呼ぶ中共
中共の苛立ち、悔しさが滲む環球時報の社説
―――ここ数か月を見ると、蔡英文と民進党は与党としての力を行使し、徹底して競争相手に圧力を加えた。もっとも典型的なのが昨年末に急いで反浸透法を可決し、中国大陸からの脅威というものを大袈裟に宣伝し、それと同時に国民党の候補者である韓国瑜をアカ扱いにした。
―――毎回選挙では両岸(台中)関係を緊張させ、極力島内の一部の民衆に大陸(中国)への恐怖感を煽るというのが民進党の最も得意とする選挙のやり方である。このように選挙のたびに両岸関係は、民進党の挑発によって毒されるのだ。今回の場合は米国の対中戦略の調整に乗じ、中国を戦略的競争相手となし、思う存分反中をやってのけた。
台湾にさまざまな圧力をかける中共だが、民進党がそれに屈せず、そしてそれにより支持率を高めたばかりか、更には反浸透法を可決して、中共の台湾選挙への介入(国民党への支援)に対抗したのも悔しくてならないのである。
民進党の抵抗を「挑発」と呼ぶのも中共得意の悪質な印象操作だ。
―――香港で条例修正反対運動が発生すると、民進党当局(民進党政権)は選挙のために台湾問題化し、更に大陸への誤解を煽った。目下、台湾のグリーン陣営支持者層による大陸に対する悪印象は近年来のピークに達している。大陸及び大陸の台湾政策、香港政策に関する言論のでたらめさは、これ以上ないほどひどい。
香港の民主化デモを暴動などと宣伝し、中国人民の香港人への憎悪を煽ってきた中共だが、このような報道で台湾への憎悪をも増幅させようとするのだから、恐ろしいことである。
■中国と距離を置くという選択の正しさ
――ー韓国瑜は今回の選挙で敗れたが、韓国瑜ブームが巻き起こったのは事実で、台湾の民衆が経済の改善を求め、両岸の鋭い対立を見たがらずにいるのも事実だ。中国大陸の影響力がどんどん強大になる事実も否定できない。
―――蔡英文当局(民進党政権)は票を騙し取って政権を維持したが、台湾社会を台湾独立の戦車に括り付けることはできない。実際に台湾社会では「独立はできない」という意識が広く形成されている。米国も敢えて公然と台湾独立を支持しておらず、国際社会で「一つの中国」を維持する状況は非常に安定している。
台湾人を反中国へと追いやった中共自らの失敗を隠蔽するため、台湾に親中勢力が潜在していると強調したいらしいが、台湾国内の大勢は選挙結果に示されたとおりである。中国の期待する投降路線はますます唾棄されつつある。また中国の台湾に対する「影響力」の増大を受け、米国には「一つの中国」の主張を尊重する姿勢を見直しつつあることを、この社説は敢えて知らぬふりをしている。
そして社説は、このような事実の歪曲を連発した後、最後は台湾の政府、国民に対し、お決まりの恫喝を行うのである。「米国に頼っても無駄だ」とのメッセージを織り交ぜながら、懸命に台湾国内の分断を図る訳だ。
―――蔡英文の再選は台湾海峡情勢に不確定性を増加させることになる。彼らはたぶん、選挙結果をカードとし、「民意に基づいている」などといって人を欺き自らも欺くような、より悪辣な主張をするだろう。我々はここにおいて蔡英文と民進党政権に対し、少し控えめになさるようお勧めしたい。
―――台湾海峡情勢にどれほど不確定性があろうと、最大の確定性は「陸強台弱」(中国は強く台湾は弱い)という趨勢は継続し、大陸の総合実力はどんどん強くなり、台湾との差異は日に日に開いていくということだ。米国の台湾海峡情勢で果たせる役割はどんどん小さくなっていくだろう。
―――こうした現実に順応することが台湾との平和にとり生命線となる。もし蔡英文と民進党当局が逆の方向へ進むなら、必ず両岸社会から唾棄され、最後は歴史の罪人となって報いを受けることになるだろう。
以上のように中共には、香港に向けているのと同様の、いやきっとそれ以上に強烈な憎しみを、中共の言いなりにならない台湾人に向けているのである。このような中共の支配下に台湾が陥ったら、果たして人々はどうなるだろうか。今日の香港は明日の台湾とも言えるだろうし、今日のウイグル人への残忍な仕打ちは明日の台湾人への仕打ちとも言えそうである。
今回、台湾の有権者は正しい選択を行ったようだ。台湾にとっても、そして日本を含むアジア太平洋地域にとっても、「中国覇権主義と距離を置く」という選択は正しかったのである。
【ご登録を】 メルマガ「台湾は日本の生命線!」を創刊
このほど、無料メルマガ「台湾は日本の生命線!」を「まぐまぐ!」にて創刊しました。
これまで「メルマ!」で配信していましたが、1月末にサービスが停止されるため、配信元を切り替えた次第です。「メルマ!」で登録されている方は、ご面倒ですがこちらへご移行ください。
本ブログの記事のほか、台湾支持運動などの情報もお届けしますので、ぜひご登録のほどお願いいたします。
台湾支持運動拡大のため、よければクリックをお願いします。→
モバイルはこちら→http://blog.with2.net/link.phplink.php
*****************************************************************
■民進党の勝利は中国のおかげ
台湾では1月11日、総統選挙と立法委員(国会議員)選挙の投開票が行われた。米国(日米同盟)との協力関係の強化を求める現職の与党・民進党の蔡英文総統と、再び中国への依存度を高めようとする国民党の韓国瑜高雄市長との一騎打ちとなった総統選では、蔡英文氏が大差で勝利。立法委員選挙でも113議席の内、民進党が61議席で過半数を維持した。
一昨年の統一地方選挙では国民党に大敗を喫し、当時は政権交代も予測されたが、最終的に民進党が勝ち得たのは、日本でも報道各社が指摘する通り、その最大原因は「中国」だ。
中共はすでに自らの影響下にある国民党の統一地方選での大勝を見て、「中国統一」(台湾併呑)の念願は叶い得ると早合点したらしい。習近平主席が昨年初め、「平和統一には一国二制度が最良の方法」などと演説して台湾人の対中警戒心を強化させ、更には同年6月以降、香港での一国二制度の形骸化の状況が、更に台湾人の危機意識を高めさせた。
おまけに豪州に亡命した中国の元スパイが統一地方選挙で高雄市長候補だった韓國瑜氏など国民党サイドに資金援助をするなど、さまざまな選挙介入が行われていたと告白。更には国民党がその元スパイに対し、「民進党に言われて嘘をついたと言え。さもないと殺害されるぞ」と脅していたことも明るみになり・・。・
かくしてそうした流れの中で中共の攻勢に抵抗する蔡英文氏=民進党の支持率は回復し、そして今回の選挙の結果へと繋がった訳だ。
■それでも台湾民意を無視する中国政府
台湾の民意を読み誤った中共。「統一」攻勢が有権者の反発を招いた
開票後、蔡英文氏「台湾の民意をよく理解してほしい。交流の仕方は一国が決めるものではない。健康的に交流したいなら、対話、協議の再開を」と中国政府に訴えたのだが、翌12日、中国で対台湾工作を司る国務院台湾事務弁公室報道官は、次のような声明を出している。
「我々の台湾に対する方針は明確で一貫している。平和統一と一国二制度という基本方針を堅持し、一つの中国原則を堅持し、国家主権と領土の完備を断固維持し、いかなる形のものであれ台湾独立の計画、行為には断固反対し、台湾同胞の利益と福祉を断固増進する」
要するに蔡英文氏の関係改善の呼びかけには耳も傾けないのである。
ちなみに中国政府が言う「台湾独立」とは、中国からの分離独立の意だが、実際には台湾は中国に統治されておらず、したがって中国による「中国統一」の要求を拒否することを指すと考えてよい。そして今回の選挙では、その「統一」なるものを拒否する強烈な「台湾の民意」が明確になったのだが、それに聞く耳も持たないという訳だから、引き続き台中間の緊張は続くのだろう。
■中共は自らのミスを悔しがっている
そればかりか、ますます恫喝を強化する構えではないのか。中共機関紙人民日報系の環球時報が11日に配信した「蔡英文と民進党は『好き勝手にしない』を座右の銘に」と題する社説を読んでも、そう思える。
台湾を思うようにできない中共の苛立ちが伝わってくる内容なので、以下に抄訳しよう。
―――台湾地区の領導人と民意代表の選挙が今日行われ、目下のところ蔡英文の得票率は半数を超え、再選が達成されようとしている。2018年11月の台湾地区の統一地方選挙で惨敗した蔡英文は、民進党内部で激しく批判されたが、それから一年半後に再任されるとは、明らかに西側の選挙体制下での通常の政党競争のルールに符合していない。
「台湾地区の領導人」とは総統のこと。「総統」という国家元首の職名を書くと台湾を国と認めることになるので、こう呼び変えている。また「民意代表」とは立法委員のこと。立法委員とは国会議員なので、同じ理由でこうするのだ。台湾が独立国であることを否定するため、中共はここまで徹底して用語統制を行っているわけだが、それにしても何が「西側のルールに符合しない」だろうか。まるで民進党が汚い手を使って勝利したと言わんばかりである。
自分たち自身の台湾民意の読み違いにより、統一地方選挙で大敗した民進党が今回再び力を伸ばしたことが、よほど悔しかったようだ。
■民進党の抵抗を「挑発」と呼ぶ中共
中共の苛立ち、悔しさが滲む環球時報の社説
―――ここ数か月を見ると、蔡英文と民進党は与党としての力を行使し、徹底して競争相手に圧力を加えた。もっとも典型的なのが昨年末に急いで反浸透法を可決し、中国大陸からの脅威というものを大袈裟に宣伝し、それと同時に国民党の候補者である韓国瑜をアカ扱いにした。
―――毎回選挙では両岸(台中)関係を緊張させ、極力島内の一部の民衆に大陸(中国)への恐怖感を煽るというのが民進党の最も得意とする選挙のやり方である。このように選挙のたびに両岸関係は、民進党の挑発によって毒されるのだ。今回の場合は米国の対中戦略の調整に乗じ、中国を戦略的競争相手となし、思う存分反中をやってのけた。
台湾にさまざまな圧力をかける中共だが、民進党がそれに屈せず、そしてそれにより支持率を高めたばかりか、更には反浸透法を可決して、中共の台湾選挙への介入(国民党への支援)に対抗したのも悔しくてならないのである。
民進党の抵抗を「挑発」と呼ぶのも中共得意の悪質な印象操作だ。
―――香港で条例修正反対運動が発生すると、民進党当局(民進党政権)は選挙のために台湾問題化し、更に大陸への誤解を煽った。目下、台湾のグリーン陣営支持者層による大陸に対する悪印象は近年来のピークに達している。大陸及び大陸の台湾政策、香港政策に関する言論のでたらめさは、これ以上ないほどひどい。
香港の民主化デモを暴動などと宣伝し、中国人民の香港人への憎悪を煽ってきた中共だが、このような報道で台湾への憎悪をも増幅させようとするのだから、恐ろしいことである。
■中国と距離を置くという選択の正しさ
――ー韓国瑜は今回の選挙で敗れたが、韓国瑜ブームが巻き起こったのは事実で、台湾の民衆が経済の改善を求め、両岸の鋭い対立を見たがらずにいるのも事実だ。中国大陸の影響力がどんどん強大になる事実も否定できない。
―――蔡英文当局(民進党政権)は票を騙し取って政権を維持したが、台湾社会を台湾独立の戦車に括り付けることはできない。実際に台湾社会では「独立はできない」という意識が広く形成されている。米国も敢えて公然と台湾独立を支持しておらず、国際社会で「一つの中国」を維持する状況は非常に安定している。
台湾人を反中国へと追いやった中共自らの失敗を隠蔽するため、台湾に親中勢力が潜在していると強調したいらしいが、台湾国内の大勢は選挙結果に示されたとおりである。中国の期待する投降路線はますます唾棄されつつある。また中国の台湾に対する「影響力」の増大を受け、米国には「一つの中国」の主張を尊重する姿勢を見直しつつあることを、この社説は敢えて知らぬふりをしている。
そして社説は、このような事実の歪曲を連発した後、最後は台湾の政府、国民に対し、お決まりの恫喝を行うのである。「米国に頼っても無駄だ」とのメッセージを織り交ぜながら、懸命に台湾国内の分断を図る訳だ。
―――蔡英文の再選は台湾海峡情勢に不確定性を増加させることになる。彼らはたぶん、選挙結果をカードとし、「民意に基づいている」などといって人を欺き自らも欺くような、より悪辣な主張をするだろう。我々はここにおいて蔡英文と民進党政権に対し、少し控えめになさるようお勧めしたい。
―――台湾海峡情勢にどれほど不確定性があろうと、最大の確定性は「陸強台弱」(中国は強く台湾は弱い)という趨勢は継続し、大陸の総合実力はどんどん強くなり、台湾との差異は日に日に開いていくということだ。米国の台湾海峡情勢で果たせる役割はどんどん小さくなっていくだろう。
―――こうした現実に順応することが台湾との平和にとり生命線となる。もし蔡英文と民進党当局が逆の方向へ進むなら、必ず両岸社会から唾棄され、最後は歴史の罪人となって報いを受けることになるだろう。
以上のように中共には、香港に向けているのと同様の、いやきっとそれ以上に強烈な憎しみを、中共の言いなりにならない台湾人に向けているのである。このような中共の支配下に台湾が陥ったら、果たして人々はどうなるだろうか。今日の香港は明日の台湾とも言えるだろうし、今日のウイグル人への残忍な仕打ちは明日の台湾人への仕打ちとも言えそうである。
今回、台湾の有権者は正しい選択を行ったようだ。台湾にとっても、そして日本を含むアジア太平洋地域にとっても、「中国覇権主義と距離を置く」という選択は正しかったのである。
【ご登録を】 メルマガ「台湾は日本の生命線!」を創刊
このほど、無料メルマガ「台湾は日本の生命線!」を「まぐまぐ!」にて創刊しました。
これまで「メルマ!」で配信していましたが、1月末にサービスが停止されるため、配信元を切り替えた次第です。「メルマ!」で登録されている方は、ご面倒ですがこちらへご移行ください。
本ブログの記事のほか、台湾支持運動などの情報もお届けしますので、ぜひご登録のほどお願いいたします。
台湾総統選報道に注意を! 「独立志向の民進党」は中国迎合の誤報
2019/12/13/Fri
ブログランキング参加中
台湾支持運動拡大のため、よければクリックをお願いします。→
モバイルはこちら→http://blog.with2.net/link.phplink.php
*****************************************************************
NHK BS1の「国際報道2019」は最近、「台湾ウォッチ」という特集を組んだらしい。その第1回「台湾総統選挙まで1か月 蔡氏は逃げきれるか」の内容が12月10日、同番組のサイトに載ったので読んでみた。
とても的確で分かりやすい解説で、広く推薦したいと思ったほどだ。しかしそれだけに、NHKのいつもながらの不適切表現が、とても残念なのである。
そこでは冒頭こう書かれている。
―――独立志向が強いとされる与党・民進党から立候補した蔡総統の支持率は、2018年秋に20%を切り、再選に赤信号がともっていた。
「独立志向が強いとされる民進党から立候補した蔡総統」とあるが、いったい誰によって「独立志向が強いとされる」のかと言うと、この文章からだけではわからないが、それは中国である。
NHKは台湾報道で「民進党」や「蔡英文総統」に言及する時、しょっちゅう「独立志向が強い」との「枕詞」を置くのだが、そうした際によく「中国が独立志向が強いとみなす民進党(蔡英文)」などと報じているのだ。
中国がそう「みなす」のは事実だ。中共御用メディアはいつも民進党を、「台独分裂勢力」や「台独分裂の立場」などと批判している。では、中共が言う「台独分裂」とは何かだが、向こうのメディアの表現を借りれば、それは「台湾が中国(中華人民共和国)から分裂すること」、「台湾が中国の主権と領土を分裂させること」である。
NHKは、そのような中共のセリフを踏襲し、「独立志向が強いとされる民進党の蔡総統」などと表現している訳だが、問題は本当に民進党や蔡総統が、中国からの独立を志向しているかだ。
答えは、ノーだ。民進党も蔡総統も、中国からの独立など目指してなどいない。なぜなら台湾は中国の帰属していないからだ。「中華人民共和国からの台湾独立」を求める者など、台湾には一人もいないのだ。
したがって中国が民進党に貼る「台独分裂」勢力とのレッテルは、誤りだということになる。台湾侵略を正当化するための「一つの中国」(台湾は中国領土の一部)という虚構宣伝から派生した虚構のレッテルに過ぎないのだ。
そのようなものを日本国内での報道でわざわざ用いる必要性が、NHKにはあるのか。おそらく中国から、そうした表現を用いるよう求められているのだろう。
私はそう確信している。なぜなら「独立志向」と言う枕詞は、NHKのみならず、国内のマスメディアが一斉に用いているものだからだ。中国からよほど強い圧力がないかぎり、こうした馬鹿げた一斉行動など起こりようがないと思うのだ。
ちなみに朝日新聞も産経新聞もこう表現する。「独立志向の民進党の蔡総統」と。
「台湾独立」とは本来、「中華民国体制からの脱却」の意味だが、民進党も蔡総統も、そのようなものは志向していない。彼女たちが主張するのは、中華民国体制という現状の維持だ。したがってNHK以外のマスメディアが言う「独立志向」も、「中華人民共和国からの独立志向」という意味となろう。
これは完全なる誤報である。中共の指示を受け敢えて行った誤報なのだ。それらに比べ、NHKは頭がいい。「中国が独立志向が強いとみなす民進党の蔡総統」という表現なら、中共の宣伝の代弁に等しい不適切な表現ではあるけれども、一応それはそれで事実だから、誤報とはならない。
しかしいかに狡猾なNHKも、たまにはヘマをする。7月28日の「おはよう日本」は、「中国からの独立志向が強いのが、蔡英文総統が率いる与党の民進党」などと伝えてしまった。
これほど明確な誤報は珍しい。「中国からの独立」とまでは、他社もまだ言っていない。
以上のように、日本のマスメディアによる台湾総統選挙報道は問題だ。報道するたびに、台湾は中国の領土であるといった印象を散布するのだから。
このままでは「中共にも台湾の選挙に介入する資格がある」と考える者も増えることだろう。「台独などを目指し、地域の緊張を高めるトラブルメーカー」といった印象などはすでに広がってもいる。もし中共が実際に日本のマスメディアに指示を出しているのなら、きっとそうした状況を作り出したいのだろう。
【ご登録を】 メルマガ「台湾は日本の生命線!」を創刊
このほど、無料メルマガ「台湾は日本の生命線!」を「まぐまぐ!」にて創刊しました。
これまで「メルマ!」で配信していましたが、年末にサービスが停止されるため、配信元を切り替えた次第です。「メルマ!」で登録されている方は、ご面倒ですがこちらへご移行ください。
本ブログの記事のほか、台湾支持運動などの情報もお届けしますので、ぜひご登録のほどお願いいたします。
ブログランキング参加中
台湾支持運動拡大のため、よければクリックをお願いします。→
台湾支持運動拡大のため、よければクリックをお願いします。→
モバイルはこちら→http://blog.with2.net/link.phplink.php
*****************************************************************
NHK BS1の「国際報道2019」は最近、「台湾ウォッチ」という特集を組んだらしい。その第1回「台湾総統選挙まで1か月 蔡氏は逃げきれるか」の内容が12月10日、同番組のサイトに載ったので読んでみた。
とても的確で分かりやすい解説で、広く推薦したいと思ったほどだ。しかしそれだけに、NHKのいつもながらの不適切表現が、とても残念なのである。
そこでは冒頭こう書かれている。
―――独立志向が強いとされる与党・民進党から立候補した蔡総統の支持率は、2018年秋に20%を切り、再選に赤信号がともっていた。
「独立志向が強いとされる民進党から立候補した蔡総統」とあるが、いったい誰によって「独立志向が強いとされる」のかと言うと、この文章からだけではわからないが、それは中国である。
NHKは台湾報道で「民進党」や「蔡英文総統」に言及する時、しょっちゅう「独立志向が強い」との「枕詞」を置くのだが、そうした際によく「中国が独立志向が強いとみなす民進党(蔡英文)」などと報じているのだ。
中国がそう「みなす」のは事実だ。中共御用メディアはいつも民進党を、「台独分裂勢力」や「台独分裂の立場」などと批判している。では、中共が言う「台独分裂」とは何かだが、向こうのメディアの表現を借りれば、それは「台湾が中国(中華人民共和国)から分裂すること」、「台湾が中国の主権と領土を分裂させること」である。
NHKは、そのような中共のセリフを踏襲し、「独立志向が強いとされる民進党の蔡総統」などと表現している訳だが、問題は本当に民進党や蔡総統が、中国からの独立を志向しているかだ。
答えは、ノーだ。民進党も蔡総統も、中国からの独立など目指してなどいない。なぜなら台湾は中国の帰属していないからだ。「中華人民共和国からの台湾独立」を求める者など、台湾には一人もいないのだ。
したがって中国が民進党に貼る「台独分裂」勢力とのレッテルは、誤りだということになる。台湾侵略を正当化するための「一つの中国」(台湾は中国領土の一部)という虚構宣伝から派生した虚構のレッテルに過ぎないのだ。
そのようなものを日本国内での報道でわざわざ用いる必要性が、NHKにはあるのか。おそらく中国から、そうした表現を用いるよう求められているのだろう。
私はそう確信している。なぜなら「独立志向」と言う枕詞は、NHKのみならず、国内のマスメディアが一斉に用いているものだからだ。中国からよほど強い圧力がないかぎり、こうした馬鹿げた一斉行動など起こりようがないと思うのだ。
ちなみに朝日新聞も産経新聞もこう表現する。「独立志向の民進党の蔡総統」と。
「台湾独立」とは本来、「中華民国体制からの脱却」の意味だが、民進党も蔡総統も、そのようなものは志向していない。彼女たちが主張するのは、中華民国体制という現状の維持だ。したがってNHK以外のマスメディアが言う「独立志向」も、「中華人民共和国からの独立志向」という意味となろう。
これは完全なる誤報である。中共の指示を受け敢えて行った誤報なのだ。それらに比べ、NHKは頭がいい。「中国が独立志向が強いとみなす民進党の蔡総統」という表現なら、中共の宣伝の代弁に等しい不適切な表現ではあるけれども、一応それはそれで事実だから、誤報とはならない。
しかしいかに狡猾なNHKも、たまにはヘマをする。7月28日の「おはよう日本」は、「中国からの独立志向が強いのが、蔡英文総統が率いる与党の民進党」などと伝えてしまった。
これほど明確な誤報は珍しい。「中国からの独立」とまでは、他社もまだ言っていない。
以上のように、日本のマスメディアによる台湾総統選挙報道は問題だ。報道するたびに、台湾は中国の領土であるといった印象を散布するのだから。
このままでは「中共にも台湾の選挙に介入する資格がある」と考える者も増えることだろう。「台独などを目指し、地域の緊張を高めるトラブルメーカー」といった印象などはすでに広がってもいる。もし中共が実際に日本のマスメディアに指示を出しているのなら、きっとそうした状況を作り出したいのだろう。
【ご登録を】 メルマガ「台湾は日本の生命線!」を創刊
このほど、無料メルマガ「台湾は日本の生命線!」を「まぐまぐ!」にて創刊しました。
これまで「メルマ!」で配信していましたが、年末にサービスが停止されるため、配信元を切り替えた次第です。「メルマ!」で登録されている方は、ご面倒ですがこちらへご移行ください。
本ブログの記事のほか、台湾支持運動などの情報もお届けしますので、ぜひご登録のほどお願いいたします。
ブログランキング参加中
台湾支持運動拡大のため、よければクリックをお願いします。→
続報-中国スパイ「台湾選挙」介入事件―元締が台湾で取り調べ/中国公表の文書は明らかに偽造
2019/11/26/Tue
ブログランキング参加中
台湾支持運動拡大のため、よければクリックをお願いします。→
モバイルはこちら→http://blog.with2.net/link.phplink.php
*****************************************************************
【おことわり】
本稿では「豪州メディアによると、『王立強』という名は偽名である。この元スパイのインタビュー記事を掲載する際に作られたものだというのだ。身の安全を守るため、本名を隠すのは当然のことだろう。やはり判決書はでっち上げではないか。」とありましたが削除します。「豪州メディア」が用いた名は「Wang Liqiang」(その後、漢語メディアが「王立強」と音訳)ですが、その後「豪州メディア」は、その名を「偽名」としたことはなく、本名であると説明しています。また文中に出てくるジョスク研究員によると、「王立強」の漢語名も本名だということです。
■スパイの元締めとされる人物が拘束
台湾などでスパイ活動に従事し、現在豪州で亡命を申請中の中国の元スパイこと、王立強氏。
中国人民解放軍総参謀部傘下とされる香港の中国系企業「中国創新投資公司」で働き、その経営者で香港でのスパイ組織の元締めである向心夫妻の指揮下で台湾の選挙に介入し、対中宥和路線の国民党に民進党から政権を奪取させるべく、サイバー攻撃や国民党候補や同党寄りのマスコミへの資金提供などの工作に従事したという。
そうした王立強氏の証言が十一月二十三日、豪州メディアにより報じられ、台湾は騒然とした。
これを受け台湾の法務部調査局が調査に乗り出すと、その向心夫妻が台湾国内に滞在していることが判明した。そこで二十四日、桃園国際空港から出国しようとする二人に出頭を願う。そして翌二十五日、二人は台北地方検察署へ送致され、国家安全法違反の容疑で取り調べを受けた。今も出国禁止の措置が取られている。
検察に送致されるスパイの元締めと目される夫婦
ただ「中国創新投資公司」はすでに、王立強氏を雇用したことはないとの声明を出している。それでは王氏の証言は真実ではないというのか。
■元スパイの証言は信じられるか
豪戦略政策研究所のアレックス・ジョスク研究員はこう語る。
「王氏の十二頁にわたる中国語の自白と支援要請の文章を読み驚いた。そしてそれと同時に疑いも抱いた。軍や政府の背景を持たない二十六歳の男が、どうして解放軍の香港における情報ネットワークの核心部に接近できたのかと」
その「中国軍事情報ネットワークの核心」というのが向心氏だそうだ。だからジョスク氏は、王氏証言の向心氏に関する部分は「信用できる」とする。ジョスク氏によれば向心氏は「香港が中国へ復帰する前、中国国防科学技術工業委員会(COSTIND)から香港へ派遣された人物」だという。
また「向心氏の妻も情報研究所に勤務していたことがある。彼女もまた王立強にスパイだと名指しされている」とも。王氏は彼女を台湾選挙への介入工作を直接指揮していたと証言している。
■元スパイを詐欺犯扱いする中国だが
しかし中国政府は、もちろん王氏がスパイであるとは認めない。実際にはどうであれ、それを認めることはあり得ない。上海市公安局は二十三日、王氏は単なる逃走犯人だと声明した。
それによると「王立強は一昨年十月、福建省光沢県人民法院において詐欺罪で懲役一年三月、執行猶予一年六月の判決を受けた。今年二月、自動車輸入の投資話を人に持ち掛け、四百六十万元を騙し取った」という。
これを受け、対台湾工作を管轄する行政院台湾事務弁公室の報道官は、「このような時にこうした(偽の)ニュース作り出す者こそ、台湾選挙に干渉し、影響を及ぼそうとするものだ」と述べ、また外交部報道官も、「全く信用できない人間の証言をもとに、嬉々として所謂中国脅威論を大げさに広めた」など強調。今回の一件は豪州側による反中国の陰謀だとして片を付けたい様子だ。
中国外交部は元スパイを犯罪者扱い。それを庇護する豪州を非難するが…
台湾でも国民党の呉敦義主席が、この説明に飛びつき、王氏は「偽スパイだ」と強調した。
しかし中国側の主張の信憑性は、当初から大きく揺らいでいるのである。
■中国に否定されるほど信用され
王氏が中国で有罪判決を受けたというなら、その判決文が最高人民法院の運営するサイト「裁判文書網」に載るはずである。そこであるネットユーザーが閲覧したところ、それが載っていなかった。つまり、それだけで、判決などでっち上げだったことが想像できる。
だが中国当局は、その重大な不備に気付いたのか、ほどなくして判決書をアップした。だがそこには何と「王立強」に名が載っているではないか。
また中国当局の説明では、二〇一六年の大部分の期間において、王氏は保釈中につき行動範囲が制限されていたが、ジョスク氏によれば、王氏の旅券にはその年に王氏が出国した記録が見え、「当局の説明には矛盾がある」という。
ジョスク氏は、「中国政府が主張すればするほど、『王氏は真実を語っているからこそ、北京は彼を黙らせようとするのだ』と想像することになる。王氏の話が真実か否かは、豪州政府の調査で明らかになるだろう」と語る。
当初、中国国内の判決を公表するサイトに問題の判決文はなかった。
【過去の関連記事】
中国の元スパイが明かす台湾選挙介入工作ー浮上する中共の国民党支援疑惑 19/11/25
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3392.html
ブログランキング参加中
台湾支持運動拡大のため、よければクリックをお願いします。→
台湾支持運動拡大のため、よければクリックをお願いします。→
モバイルはこちら→http://blog.with2.net/link.phplink.php
*****************************************************************
【おことわり】
本稿では「豪州メディアによると、『王立強』という名は偽名である。この元スパイのインタビュー記事を掲載する際に作られたものだというのだ。身の安全を守るため、本名を隠すのは当然のことだろう。やはり判決書はでっち上げではないか。」とありましたが削除します。「豪州メディア」が用いた名は「Wang Liqiang」(その後、漢語メディアが「王立強」と音訳)ですが、その後「豪州メディア」は、その名を「偽名」としたことはなく、本名であると説明しています。また文中に出てくるジョスク研究員によると、「王立強」の漢語名も本名だということです。
■スパイの元締めとされる人物が拘束
台湾などでスパイ活動に従事し、現在豪州で亡命を申請中の中国の元スパイこと、王立強氏。
中国人民解放軍総参謀部傘下とされる香港の中国系企業「中国創新投資公司」で働き、その経営者で香港でのスパイ組織の元締めである向心夫妻の指揮下で台湾の選挙に介入し、対中宥和路線の国民党に民進党から政権を奪取させるべく、サイバー攻撃や国民党候補や同党寄りのマスコミへの資金提供などの工作に従事したという。
そうした王立強氏の証言が十一月二十三日、豪州メディアにより報じられ、台湾は騒然とした。
これを受け台湾の法務部調査局が調査に乗り出すと、その向心夫妻が台湾国内に滞在していることが判明した。そこで二十四日、桃園国際空港から出国しようとする二人に出頭を願う。そして翌二十五日、二人は台北地方検察署へ送致され、国家安全法違反の容疑で取り調べを受けた。今も出国禁止の措置が取られている。
検察に送致されるスパイの元締めと目される夫婦
ただ「中国創新投資公司」はすでに、王立強氏を雇用したことはないとの声明を出している。それでは王氏の証言は真実ではないというのか。
■元スパイの証言は信じられるか
豪戦略政策研究所のアレックス・ジョスク研究員はこう語る。
「王氏の十二頁にわたる中国語の自白と支援要請の文章を読み驚いた。そしてそれと同時に疑いも抱いた。軍や政府の背景を持たない二十六歳の男が、どうして解放軍の香港における情報ネットワークの核心部に接近できたのかと」
その「中国軍事情報ネットワークの核心」というのが向心氏だそうだ。だからジョスク氏は、王氏証言の向心氏に関する部分は「信用できる」とする。ジョスク氏によれば向心氏は「香港が中国へ復帰する前、中国国防科学技術工業委員会(COSTIND)から香港へ派遣された人物」だという。
また「向心氏の妻も情報研究所に勤務していたことがある。彼女もまた王立強にスパイだと名指しされている」とも。王氏は彼女を台湾選挙への介入工作を直接指揮していたと証言している。
■元スパイを詐欺犯扱いする中国だが
しかし中国政府は、もちろん王氏がスパイであるとは認めない。実際にはどうであれ、それを認めることはあり得ない。上海市公安局は二十三日、王氏は単なる逃走犯人だと声明した。
それによると「王立強は一昨年十月、福建省光沢県人民法院において詐欺罪で懲役一年三月、執行猶予一年六月の判決を受けた。今年二月、自動車輸入の投資話を人に持ち掛け、四百六十万元を騙し取った」という。
これを受け、対台湾工作を管轄する行政院台湾事務弁公室の報道官は、「このような時にこうした(偽の)ニュース作り出す者こそ、台湾選挙に干渉し、影響を及ぼそうとするものだ」と述べ、また外交部報道官も、「全く信用できない人間の証言をもとに、嬉々として所謂中国脅威論を大げさに広めた」など強調。今回の一件は豪州側による反中国の陰謀だとして片を付けたい様子だ。
中国外交部は元スパイを犯罪者扱い。それを庇護する豪州を非難するが…
台湾でも国民党の呉敦義主席が、この説明に飛びつき、王氏は「偽スパイだ」と強調した。
しかし中国側の主張の信憑性は、当初から大きく揺らいでいるのである。
■中国に否定されるほど信用され
王氏が中国で有罪判決を受けたというなら、その判決文が最高人民法院の運営するサイト「裁判文書網」に載るはずである。そこであるネットユーザーが閲覧したところ、それが載っていなかった。つまり、それだけで、判決などでっち上げだったことが想像できる。
だが中国当局は、その重大な不備に気付いたのか、ほどなくして判決書をアップした。だがそこには何と「王立強」に名が載っているではないか。
また中国当局の説明では、二〇一六年の大部分の期間において、王氏は保釈中につき行動範囲が制限されていたが、ジョスク氏によれば、王氏の旅券にはその年に王氏が出国した記録が見え、「当局の説明には矛盾がある」という。
ジョスク氏は、「中国政府が主張すればするほど、『王氏は真実を語っているからこそ、北京は彼を黙らせようとするのだ』と想像することになる。王氏の話が真実か否かは、豪州政府の調査で明らかになるだろう」と語る。
当初、中国国内の判決を公表するサイトに問題の判決文はなかった。
【過去の関連記事】
中国の元スパイが明かす台湾選挙介入工作ー浮上する中共の国民党支援疑惑 19/11/25
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3392.html
ブログランキング参加中
台湾支持運動拡大のため、よければクリックをお願いします。→