日本の中国専門家は信用できない
2007/09/27/Thu
■「サーチナ・中国情報局」の報道に注意を
ネット上の中国報道ではマスコミと並び、「日本最大の中国情報ポータルサイト」「日本において中国情報のオンリーワンとしての地位を確立」と自称する「サーチナ・中国情報局」のニュースがとても多いのが気がかりだ。
サーチナは今年三月には中国の「中日新聞事業促進協会」から日中関係のメディア交流に貢献したとして「中日新聞交流突出貢献賞」を受賞しているほどだから、よほど中国の「代弁者」となって活躍しているのだろうと疑ってしまう。すくなくとも中国の要人の発言や政策の紹介などをすること自体、その「代弁者」となっている可能性が高いわけだが。
だからと言って露骨に中国に迎合する記事ばかりではない。結構オブラートに包む努力の跡も認められる。それは露骨な偏向記事では日本では信憑性を失い、誰からも相手にされなくなるからか。
たとえば二十五日に配信の「中国は台湾問題でも責任大国の立場を貫けるか」と題する論説なども、一見すると中国を叱る内容かと思い、日本人は中立な論評ではないかと期待してしまうが、そんなものではまったくなかった。
内容は中国を刺激してやまない台湾の国連加盟問題についてだ。そして台湾の動きは「選挙戦術」にすぎず、「大国としての中国は、こうした選挙戦術に惑わされることなく冷静に対応すべきだ」と言うものだ。何てことはない。この問題で中国の反冷静的態度に疑問を持つ日本人に受け入れやすい切り口で、「悪いのは台湾だ」と強調するものなのである。
■中国専門家はなぜ「代弁者」に成り下がるのか
これを書いたのはサーチナ総合研究所客員研究員の高井潔司氏。北海道大学教授で元は読売新聞北京支局長と言う中国専門家だ。一般では「元支局長」と聞くだけで、つい権威を感じてしまうが、どうもそうではないらしい。
そもそも日本の中国専門家の多くは、たとえ中国を批判しても、その根本利益を損なうような主張はしない。それは中国から学術交流などを拒否されては飯が食えなくなるからだ。そして結局は中国の「真実」を語り切れず、それだけで充分にこの国の「代弁者」に成り下がってしまうのだ。高井氏もどうもその類に思えてならない。
もちろんそうした状況は中国の思惑どおりでもある。常識ではあるが、この国の対外的な情報工作の手口の一つは、外国のメディアと専門家に影響力を行使することだ。
高井氏の論説で目立つのは台湾の矮小化で、まさに中国だけが喜ぶものだ。
たとえば「陳総統の住民投票案は国際社会においては、“四面楚歌”の状態にあり、犬の遠吠えの感がある」と言ってみたり、「大陸との緊張を高める政策の表明は選挙の戦術として採用しているともいえよう。実際、住民投票で国連加盟を決議しても、その先の見通しも次のプロセスも示されていない」と言ってみたり。
そこには中国の統一攻勢で孤立して危機感を募らせ、劣勢を挽回しようとしている台湾の状況にはまったく触れられていない。これでは専門家どころか、たんに素人の作文か、あるいは中国御用学者の宣伝でしかないだろう。
■デタラメ論説に国民はたまらない
高井氏は、潘基文国連事務総長が「台湾は中華人民共和国の一部」との台湾加盟拒否の見解を示したことを強調する。また「この問題をめぐる国際社会の反応は従来と変わりなく、中国の立場を支持する声が圧倒的である」とも強調する。
そして日本政府が八月、潘事務総長の見解に対し、国連日本代表部を通じ「誤った解釈」と申し入れたことを批判する。「事務総長は国連としての、あるいは事務総長としての立場を表明したのであり、それに対してわざわざ申し入れをして日本の立場を表明する必要があったのかどうか」「わざわざ『誤った解釈』などと抗議まがいの申し入れをする必要はないだろう」などと。
そんな申し入れをすると、「まだ責任大国としての思考に慣れていない中国の、とりわけ商業メディアの余計な疑念を招くことになるのではないか」と言うのである。
これは中国をけなすように見えて、じつはしっかりと「中国を刺激するな」(中国を尊重しろ)と日本に警告を与えているわけだ。
だが日本政府は、国連には「台湾を中国領」とする立場だと勘違いしている潘基文事務総長に、「それ間違いだ」と言っただけである。これはいつも中国のウソに黙ってきた日本政府としては、たいへん立派なことだったのだが、高井氏は学者なのに、そんなこともわからないのだろうか。
日本の主張はあまりにも正しすぎたので、中国は反論できないで苦悩しているのを見て、その国に代わって日本批判をしたつもりだろうか。
いかにも中国専門家らしいやり口だが、こんなデタラメな論説に騙される国民はたまったものではない。
■中国の「野心」を語らないのはなぜか
中国専門家によく見られる一つの特徴は、台湾問題なら日本人は無理解、無関心だろうとたかをくくり、中国の立場に立って好き放題を言うことだ。
高井氏の「住民投票で国連加盟を決議しても、その先の見通しも次のプロセスも示されていない」との指摘も、いかにももっともなようで、もっともではない。台湾は住民投票を通じて台湾人の希望と意思を世界に示し、「台湾は中国の一部ではない」と言うことを示そうとしているのである。つまり「見通し」も「次のプロセス」もはっきりしているのだ。だからこそ中国は、たかだか住民投票ごときに大騒ぎをしているのである。そのことを高井氏は本当に知らないのだろうか。
なお高井氏は北京でのセミナーで、「台湾問題が日中関係での障害になる」との中国側の意見を聞かされ、「そこまで台湾問題に敏感なのかと思わず耳をうたがった」そうだが、この人物は中国のいったい何を研究してきたのかと、こちらの方が耳を疑いたくなる。
中国の台湾侵略の野心を見て見ぬふりをしているうちに、あるいは「そんなものはない」と思い込もうとしているうちに、真実が見えなくなっているのだろうか。
これについて高井氏は、「当時は台湾にも太いパイプを持ち、台湾に同情を寄せる安倍首相が続投を宣言していた時期だったから、中国はそこまで懸念しているのか」と勝手に納得し、「福田新首相が誕生する運びとなり、中国側の懸念もかなり軽減されたことだろう」と勝手に安心しているが、台湾問題が日中間の最大の懸念材料になるのはいよいよこれからなのだ。この中国専門家は、それも知らないのだろうか。
もしかしたらこの中国専門家は、中国の代弁者と言うより、ただ中国に騙されているだけなのだろうか。
いずれにせよ、日本における中国情報、中国専門家の分析には注意しよう。どんなに中国を批判しても、上辺だけの批判にとどまり、本質を見誤らせるものがじつに多い。故意か無知かに関わらず。
*********************************************
↑ ↑
よろしければクリックをお願いします。
運動を拡大したいので。
ネット上の中国報道ではマスコミと並び、「日本最大の中国情報ポータルサイト」「日本において中国情報のオンリーワンとしての地位を確立」と自称する「サーチナ・中国情報局」のニュースがとても多いのが気がかりだ。
サーチナは今年三月には中国の「中日新聞事業促進協会」から日中関係のメディア交流に貢献したとして「中日新聞交流突出貢献賞」を受賞しているほどだから、よほど中国の「代弁者」となって活躍しているのだろうと疑ってしまう。すくなくとも中国の要人の発言や政策の紹介などをすること自体、その「代弁者」となっている可能性が高いわけだが。
だからと言って露骨に中国に迎合する記事ばかりではない。結構オブラートに包む努力の跡も認められる。それは露骨な偏向記事では日本では信憑性を失い、誰からも相手にされなくなるからか。
たとえば二十五日に配信の「中国は台湾問題でも責任大国の立場を貫けるか」と題する論説なども、一見すると中国を叱る内容かと思い、日本人は中立な論評ではないかと期待してしまうが、そんなものではまったくなかった。
内容は中国を刺激してやまない台湾の国連加盟問題についてだ。そして台湾の動きは「選挙戦術」にすぎず、「大国としての中国は、こうした選挙戦術に惑わされることなく冷静に対応すべきだ」と言うものだ。何てことはない。この問題で中国の反冷静的態度に疑問を持つ日本人に受け入れやすい切り口で、「悪いのは台湾だ」と強調するものなのである。
■中国専門家はなぜ「代弁者」に成り下がるのか
これを書いたのはサーチナ総合研究所客員研究員の高井潔司氏。北海道大学教授で元は読売新聞北京支局長と言う中国専門家だ。一般では「元支局長」と聞くだけで、つい権威を感じてしまうが、どうもそうではないらしい。
そもそも日本の中国専門家の多くは、たとえ中国を批判しても、その根本利益を損なうような主張はしない。それは中国から学術交流などを拒否されては飯が食えなくなるからだ。そして結局は中国の「真実」を語り切れず、それだけで充分にこの国の「代弁者」に成り下がってしまうのだ。高井氏もどうもその類に思えてならない。
もちろんそうした状況は中国の思惑どおりでもある。常識ではあるが、この国の対外的な情報工作の手口の一つは、外国のメディアと専門家に影響力を行使することだ。
高井氏の論説で目立つのは台湾の矮小化で、まさに中国だけが喜ぶものだ。
たとえば「陳総統の住民投票案は国際社会においては、“四面楚歌”の状態にあり、犬の遠吠えの感がある」と言ってみたり、「大陸との緊張を高める政策の表明は選挙の戦術として採用しているともいえよう。実際、住民投票で国連加盟を決議しても、その先の見通しも次のプロセスも示されていない」と言ってみたり。
そこには中国の統一攻勢で孤立して危機感を募らせ、劣勢を挽回しようとしている台湾の状況にはまったく触れられていない。これでは専門家どころか、たんに素人の作文か、あるいは中国御用学者の宣伝でしかないだろう。
■デタラメ論説に国民はたまらない
高井氏は、潘基文国連事務総長が「台湾は中華人民共和国の一部」との台湾加盟拒否の見解を示したことを強調する。また「この問題をめぐる国際社会の反応は従来と変わりなく、中国の立場を支持する声が圧倒的である」とも強調する。
そして日本政府が八月、潘事務総長の見解に対し、国連日本代表部を通じ「誤った解釈」と申し入れたことを批判する。「事務総長は国連としての、あるいは事務総長としての立場を表明したのであり、それに対してわざわざ申し入れをして日本の立場を表明する必要があったのかどうか」「わざわざ『誤った解釈』などと抗議まがいの申し入れをする必要はないだろう」などと。
そんな申し入れをすると、「まだ責任大国としての思考に慣れていない中国の、とりわけ商業メディアの余計な疑念を招くことになるのではないか」と言うのである。
これは中国をけなすように見えて、じつはしっかりと「中国を刺激するな」(中国を尊重しろ)と日本に警告を与えているわけだ。
だが日本政府は、国連には「台湾を中国領」とする立場だと勘違いしている潘基文事務総長に、「それ間違いだ」と言っただけである。これはいつも中国のウソに黙ってきた日本政府としては、たいへん立派なことだったのだが、高井氏は学者なのに、そんなこともわからないのだろうか。
日本の主張はあまりにも正しすぎたので、中国は反論できないで苦悩しているのを見て、その国に代わって日本批判をしたつもりだろうか。
いかにも中国専門家らしいやり口だが、こんなデタラメな論説に騙される国民はたまったものではない。
■中国の「野心」を語らないのはなぜか
中国専門家によく見られる一つの特徴は、台湾問題なら日本人は無理解、無関心だろうとたかをくくり、中国の立場に立って好き放題を言うことだ。
高井氏の「住民投票で国連加盟を決議しても、その先の見通しも次のプロセスも示されていない」との指摘も、いかにももっともなようで、もっともではない。台湾は住民投票を通じて台湾人の希望と意思を世界に示し、「台湾は中国の一部ではない」と言うことを示そうとしているのである。つまり「見通し」も「次のプロセス」もはっきりしているのだ。だからこそ中国は、たかだか住民投票ごときに大騒ぎをしているのである。そのことを高井氏は本当に知らないのだろうか。
なお高井氏は北京でのセミナーで、「台湾問題が日中関係での障害になる」との中国側の意見を聞かされ、「そこまで台湾問題に敏感なのかと思わず耳をうたがった」そうだが、この人物は中国のいったい何を研究してきたのかと、こちらの方が耳を疑いたくなる。
中国の台湾侵略の野心を見て見ぬふりをしているうちに、あるいは「そんなものはない」と思い込もうとしているうちに、真実が見えなくなっているのだろうか。
これについて高井氏は、「当時は台湾にも太いパイプを持ち、台湾に同情を寄せる安倍首相が続投を宣言していた時期だったから、中国はそこまで懸念しているのか」と勝手に納得し、「福田新首相が誕生する運びとなり、中国側の懸念もかなり軽減されたことだろう」と勝手に安心しているが、台湾問題が日中間の最大の懸念材料になるのはいよいよこれからなのだ。この中国専門家は、それも知らないのだろうか。
もしかしたらこの中国専門家は、中国の代弁者と言うより、ただ中国に騙されているだけなのだろうか。
いずれにせよ、日本における中国情報、中国専門家の分析には注意しよう。どんなに中国を批判しても、上辺だけの批判にとどまり、本質を見誤らせるものがじつに多い。故意か無知かに関わらず。
*********************************************
↑ ↑
よろしければクリックをお願いします。
運動を拡大したいので。