台湾の「沖縄独立」研究会に集まった錚々たる反日学者
2013/07/31/Wed
【お断り】
本稿は当初、「中国時報が、日本の外務省の外郭団体であり対台湾窓口機関である交流協会が会場に人員を派遣し、傍聴させたと報道している」ことを取り上げ、同協会が「日本の国土分断を狙う反日政治勢力との『交流』を続けているのか」と問題提起した。しかしその後、交流協会に問い合わせた結果、それが事実無根の誤報であることが判明したので、内容の一部を書き換える。
なお当初のタイトルである“台湾の「沖縄独立」研究会に集まった錚々たる反日学者/そして外務省外郭団体の人員”からも「そして外務省外郭団体の人員」を削除する。
戦時中、日本が受諾した連合国のポツダム宣言。日本からの沖縄県切り離しを望む中国人、在台中国人ら反日学者勢力が着目するのが、その第八項だ。
「カイロ宣言の条項は履行されるべし。また日本の主権は本州、北海道、九州、四国及びわれわれの決定する周辺小諸島に限定されるべし」とあり、沖縄は日本の国土から除外されなければならないとの規定と解釈できるからだ。
もっとも戦後の日本の領土処分は、最終的にはサンフランシスコ講和条約に基づき行われた。沖縄もその第三条により、米国の施政下(信託統治下)に置かれた。
かくてポツダム宣言の規定は行われることなく終わったのだ。沖縄に対する日本の潜在的主権は認められ、だからこそ後年「沖縄の復帰」が実現したわけである。
しかしそのような事実など、反日学者たちにはどうでもいいらしい。彼らにとって大事なのは、史実よりもプロパガンダなのだ。そこでポツダム宣言の公布記念日にあたる七月二十六日、台湾で記念の研究会を開催している。
その名も「琉球の地位と東海平和円卓シンポジウム」(「東海」は東支那海)。沖縄の法的地位は未確定だと主張し、合わせて尖閣諸島の日本への帰属を否定しようというわけだ。
主催者は両岸統合学会と台湾大学政治学部。前者は台湾と中国との統合を訴え、台湾で二〇〇九年に発足したグループだ。
この日は両岸統合学会理事長で台湾大学政治学部教授である張亜中氏が案の定、ポツダム宣言第八項を引用し、「国際法はすでに琉球が日本に帰属しないことを確定し、戦後の連合軍司令部はそこを日本領土と看做さなかったが、冷戦のために米国は日本領土の南端を何度も改変し、最終的には勝手に行政管轄権を日本に返還した」と事実を捏造したお決まりの論法を展開。
そして台湾紙中国時報よると、下のような主張を行った。
台湾で歴史教科書の反日改竄も進める張亜中氏。この日も歴史捏造宣伝を連発
「中華民国外交部は一九七一年六月十一日のプレスリリースで琉球返還に反対した。琉球の地位・帰属問題で中華民国政府は譲歩せず。明確に一九七二年における米国の一方的な琉球返還の合法性を認めなかった」
この発言は事実である。台湾の中華民国政府は沖縄がかつて清国の属国だったことから、かつては沖縄に関わる事務を内政部(内務省)が司っていたなど、建前上は沖縄の日本帰属を認めていない。しかし前近代的な版図観に立脚した中華民国が沖縄の日本帰属を「認めていない」からと言って、それが何だというのか。
そもそも張亜中氏とは大中華史観を振り回し捏造された歴史を宣伝することで知られる学者だ(専門は歴史ではなく政治)。昨年は学校の歴史教育で大中華史観の復活を目指す馬英九総統の指示で教科書検定委員会に入り込み、今年には自ら設置した教科書会社が発行の教科書で歴史捏造を実践し、物議を醸している人物である。
台湾の中央研究院副研究員で琉球大学準教授の林泉忠氏(香港籍中国人)も発言を行った。そしていつもながらのことだが、独自調査の結果として沖縄県民の「二割が独立を望んでいる」と強調している。
沖縄県民の独立志向を宣伝する林泉中氏
この数値の信憑性についてはここで論じようもないが、これを誇大と感じる沖縄県民の声は少なくないことだけは付け加えたい。ちなみに沖縄独立を煽情する琉球新報の県民意識調査(二〇一一年)ですら、独立支持者は四・七%だ。
そしてもう一つはっきりと言えるのは、林氏の掲げる「二割」との数値が、これまで中国メディアによって大々的に宣伝されてきたことである。ちなみに同氏は中共の影響下にある香港・フェニックステレビの特約評論員である。
このシンポで特に注目されたのは、龍谷大学教授の松島泰勝氏が出席したことだ。最近沖縄県で「琉球民族独立総合研究学会」を発足させた人物である。
中国時報によると松島氏は次のように語ったようだ。
「なぜ琉球独立を論じるかというと、それは米軍基地、日本の米軍優遇の問題を解決するため」
反米ゆえに沖縄独立論を展開する松島泰勝氏。中国には歓迎すべき学者だ
「琉球では第二次大戦中、十五万人が死亡しており、今後は非武装国家として邁進すべき。釣魚台問題も周辺国家と共同で解決したい」
「日本の再軍備は琉球を再度戦場と看做すこと。目下百四十万人の内外の琉球人は独立を求めて努力している」
以上の発言を見る限り、まるで中国のための沖縄独立論だ。第一列島線の要衝である沖縄を勢力下に組み込むため、それと日米同盟との切り離しを望む中国から見れば、これほど好ましい言論もあるまい。
こうした沖縄独立論者と台湾の親中反日勢力との合流は必然的なものなのだろう。
その他、先頃発足した保釣(尖閣防衛)団体「台湾釣魚台光復会」の理事長に就任した東呉大学教授で、元中華保釣協会理事長の劉源俊氏も姿を見せており、反日政治集会の雰囲気を一層盛り上げた。
そしてここで気になるのは、やはり中国時報が、日本の外務省の外郭団体であり対台湾窓口機関である交流協会が会場に人員を派遣し、傍聴させたと報道していることだ。
これについて三十一日、交流協会に確認したところ、そのような事実はないことがわかった。
実は交流協会は、昨年十一月に早稲田大学アジア研究機構が沖縄県立博物館で「沖縄返還・琉球独立」をテーマに開催した研究会(前出の林泉中、松島泰勝氏も登壇)を後援している。こうした政治的テーマを掲げる会合の後援は不適切ではないかとの指摘に対し、当時交流協会は「琉球独立を促進するような政治的発言は出ないことになっている」と説明していた。
だがそうした経緯も、今回の主催者、あるいは中国時報(中国寄りで、尖閣問題では反日の急先鋒メディア)などから良いように宣伝利用されているのではないか。
ごく一部の親中反日勢力の会合だが、その宣伝力は侮れない
こうした誤報により、まるで交流協会(あるいは日本の外務省)も、ポツダム宣言の有効性を認め、あるいは沖縄地位未定論に理解を示しているかの如き印象を、台湾や中国で持たれかねない。
政治宣伝に長ける反日勢力の侮り難きを痛感する次第だ。
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本稿は当初、「中国時報が、日本の外務省の外郭団体であり対台湾窓口機関である交流協会が会場に人員を派遣し、傍聴させたと報道している」ことを取り上げ、同協会が「日本の国土分断を狙う反日政治勢力との『交流』を続けているのか」と問題提起した。しかしその後、交流協会に問い合わせた結果、それが事実無根の誤報であることが判明したので、内容の一部を書き換える。
なお当初のタイトルである“台湾の「沖縄独立」研究会に集まった錚々たる反日学者/そして外務省外郭団体の人員”からも「そして外務省外郭団体の人員」を削除する。
戦時中、日本が受諾した連合国のポツダム宣言。日本からの沖縄県切り離しを望む中国人、在台中国人ら反日学者勢力が着目するのが、その第八項だ。
「カイロ宣言の条項は履行されるべし。また日本の主権は本州、北海道、九州、四国及びわれわれの決定する周辺小諸島に限定されるべし」とあり、沖縄は日本の国土から除外されなければならないとの規定と解釈できるからだ。
もっとも戦後の日本の領土処分は、最終的にはサンフランシスコ講和条約に基づき行われた。沖縄もその第三条により、米国の施政下(信託統治下)に置かれた。
かくてポツダム宣言の規定は行われることなく終わったのだ。沖縄に対する日本の潜在的主権は認められ、だからこそ後年「沖縄の復帰」が実現したわけである。
しかしそのような事実など、反日学者たちにはどうでもいいらしい。彼らにとって大事なのは、史実よりもプロパガンダなのだ。そこでポツダム宣言の公布記念日にあたる七月二十六日、台湾で記念の研究会を開催している。
その名も「琉球の地位と東海平和円卓シンポジウム」(「東海」は東支那海)。沖縄の法的地位は未確定だと主張し、合わせて尖閣諸島の日本への帰属を否定しようというわけだ。
主催者は両岸統合学会と台湾大学政治学部。前者は台湾と中国との統合を訴え、台湾で二〇〇九年に発足したグループだ。
この日は両岸統合学会理事長で台湾大学政治学部教授である張亜中氏が案の定、ポツダム宣言第八項を引用し、「国際法はすでに琉球が日本に帰属しないことを確定し、戦後の連合軍司令部はそこを日本領土と看做さなかったが、冷戦のために米国は日本領土の南端を何度も改変し、最終的には勝手に行政管轄権を日本に返還した」と事実を捏造したお決まりの論法を展開。
そして台湾紙中国時報よると、下のような主張を行った。
台湾で歴史教科書の反日改竄も進める張亜中氏。この日も歴史捏造宣伝を連発
「中華民国外交部は一九七一年六月十一日のプレスリリースで琉球返還に反対した。琉球の地位・帰属問題で中華民国政府は譲歩せず。明確に一九七二年における米国の一方的な琉球返還の合法性を認めなかった」
この発言は事実である。台湾の中華民国政府は沖縄がかつて清国の属国だったことから、かつては沖縄に関わる事務を内政部(内務省)が司っていたなど、建前上は沖縄の日本帰属を認めていない。しかし前近代的な版図観に立脚した中華民国が沖縄の日本帰属を「認めていない」からと言って、それが何だというのか。
そもそも張亜中氏とは大中華史観を振り回し捏造された歴史を宣伝することで知られる学者だ(専門は歴史ではなく政治)。昨年は学校の歴史教育で大中華史観の復活を目指す馬英九総統の指示で教科書検定委員会に入り込み、今年には自ら設置した教科書会社が発行の教科書で歴史捏造を実践し、物議を醸している人物である。
台湾の中央研究院副研究員で琉球大学準教授の林泉忠氏(香港籍中国人)も発言を行った。そしていつもながらのことだが、独自調査の結果として沖縄県民の「二割が独立を望んでいる」と強調している。
沖縄県民の独立志向を宣伝する林泉中氏
この数値の信憑性についてはここで論じようもないが、これを誇大と感じる沖縄県民の声は少なくないことだけは付け加えたい。ちなみに沖縄独立を煽情する琉球新報の県民意識調査(二〇一一年)ですら、独立支持者は四・七%だ。
そしてもう一つはっきりと言えるのは、林氏の掲げる「二割」との数値が、これまで中国メディアによって大々的に宣伝されてきたことである。ちなみに同氏は中共の影響下にある香港・フェニックステレビの特約評論員である。
このシンポで特に注目されたのは、龍谷大学教授の松島泰勝氏が出席したことだ。最近沖縄県で「琉球民族独立総合研究学会」を発足させた人物である。
中国時報によると松島氏は次のように語ったようだ。
「なぜ琉球独立を論じるかというと、それは米軍基地、日本の米軍優遇の問題を解決するため」
反米ゆえに沖縄独立論を展開する松島泰勝氏。中国には歓迎すべき学者だ
「琉球では第二次大戦中、十五万人が死亡しており、今後は非武装国家として邁進すべき。釣魚台問題も周辺国家と共同で解決したい」
「日本の再軍備は琉球を再度戦場と看做すこと。目下百四十万人の内外の琉球人は独立を求めて努力している」
以上の発言を見る限り、まるで中国のための沖縄独立論だ。第一列島線の要衝である沖縄を勢力下に組み込むため、それと日米同盟との切り離しを望む中国から見れば、これほど好ましい言論もあるまい。
こうした沖縄独立論者と台湾の親中反日勢力との合流は必然的なものなのだろう。
その他、先頃発足した保釣(尖閣防衛)団体「台湾釣魚台光復会」の理事長に就任した東呉大学教授で、元中華保釣協会理事長の劉源俊氏も姿を見せており、反日政治集会の雰囲気を一層盛り上げた。
そしてここで気になるのは、やはり中国時報が、日本の外務省の外郭団体であり対台湾窓口機関である交流協会が会場に人員を派遣し、傍聴させたと報道していることだ。
これについて三十一日、交流協会に確認したところ、そのような事実はないことがわかった。
実は交流協会は、昨年十一月に早稲田大学アジア研究機構が沖縄県立博物館で「沖縄返還・琉球独立」をテーマに開催した研究会(前出の林泉中、松島泰勝氏も登壇)を後援している。こうした政治的テーマを掲げる会合の後援は不適切ではないかとの指摘に対し、当時交流協会は「琉球独立を促進するような政治的発言は出ないことになっている」と説明していた。
だがそうした経緯も、今回の主催者、あるいは中国時報(中国寄りで、尖閣問題では反日の急先鋒メディア)などから良いように宣伝利用されているのではないか。
ごく一部の親中反日勢力の会合だが、その宣伝力は侮れない
こうした誤報により、まるで交流協会(あるいは日本の外務省)も、ポツダム宣言の有効性を認め、あるいは沖縄地位未定論に理解を示しているかの如き印象を、台湾や中国で持たれかねない。
政治宣伝に長ける反日勢力の侮り難きを痛感する次第だ。
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