太平洋分割―中国が真剣に語る新秩序構想
2007/08/20/Mon
■政府、メディアが語ってこなかったもの
米紙「ワシントン・タイムズ」(八月十七日)は、中国軍事当局者が最近、訪中したキーティング米太平洋軍司令官に対し、「太平洋を東西に分割し、東側を米国、西側を中国が管理する」ことを提案したと報じたと言う。提案の詳細には触れていないが、米国防当局は「西太平洋の覇権を中国に譲り渡す『大きな過ち』だと主張。日本などアジアの同盟国との関係を台無しにしかねない」として断ったと言う(共同通信)。
日中関係への配慮から中国の脅威を否定する日本の政府、メディアはこれまでほとんど語ってこなかったが、この太平洋分割こそ、中国が思い描く二十一世紀における新国際秩序であるに他ならない。かつて日本が同海域を大東亜共栄圏と言う新秩序の下に組み入れたのと同様、中国もまた中国主導の秩序をそこに築こうとしているのだ。この国のスローガンである「中華振興」とはこのことだ。
実際に西太平洋を米国の支配下から自国の影響下に置くことは、中国の国家戦略目標になっている。なぜならその海域は中国にとり、国防上、あるいは海洋戦略上において重要な「門前」の海域だからだ。
■中国軍拡の目標は太平洋進出
一方、米国が戦後一貫して台湾を中国から切り離し、その防衛に心を砕いてきたのは、大陸共産勢力の海洋進出から西太平洋を守るためだった。日本列島、台湾、フィリピンと連なる列島線を反共の防波堤として位置付けてきたことはよく知られるが、台湾はその列島線における対中国の最前線であり、中国封じ込めの要衝なのだ。
だから中国にとってこの列島線は、自国を押さえ込む脅威以外の何物でもない。それでそれを攻略、突破するために、何としてでも台湾の併呑を果たしたいと考えている。中国がつねに米国に対し、「台湾問題は米中間において最も重要、かつ最も敏感な問題だ」と強調し、米国が台湾を放棄するよう訴えつづけてきた理由はそこにある。
もっとも台湾攻略戦争は米中戦争に発展しかねない。そこで中国は米空母機動部隊の台湾有事への介入を防ぐため、潜水艦の展開、大陸間弾道ミサイルの配備などを推し進めてきた。これが今日問題視されている中国の軍の近代化、軍備拡張の実態である。「国防のため」「国威発揚のため」などとして、中国の軍事的脅威を否定する日本の一部専門家の解説は、素人の域を出ていない。
中国としては米国に邪魔されることなく、台湾の併合を完遂し、その島を基地に西太平洋に進出したい。そして米国には東太平洋のハワイにまで撤退してもらい、太平洋を東西に分割するかたちで両国の平和共存を図りたいのである。
なぜ米国とは平和共存なのか。もちろんそれは、米国と戦っても勝てないからだ。その代わり、日本、韓国などの弱小国家群は、中国の勢力圏内に入れ、東亜共同体なりの一員として、せいぜい地域経済の発展のために貢献してもらう。
■台湾を捨てろー米国への共存のメッセージ
グアムから台湾に至る海域には日本の排他的経済水域が広がっているが、中国は日本の許可、不許可を問わず、そこで黙々と海底調査を進めてきた。そしてその結果、同海域で潜水艦を展開させ、米空母の台湾への出動を阻止することも可能な段階に入っている。もちろん米本土に照準を合わせたミサイルで、恫喝を加える程度の態勢なら充分に整いつつある。
そこでいよいよ米国に対し、台湾から手を引いて、太平洋を東西に分割し、米中の共存共栄を図ろうと言うメッセージを送ったのだろう。今回の「提案」がそれである。こうした提案なり主張なりは、今後は中国人の口からしばしば聞かれることになるのではないだろうか。
ところで中国のこの提案に対し、米政府内の親中派の間では「前向きな受け止めもあった」のだそうだ。たしかに米国人の立場に立って考えれば、それはとてもよく理解できる。彼らからすれば、台湾が中国の手に落ち、日本もその影響下へと吸収されようとも、米軍将兵が血を流し、さらには中国の核ミサイルの脅威に曝されたりするよりはましに違いない。
中国は、そのような米国人の心理を知った上で、シグナルを発して見たに違いない。
■悪夢の太平洋分割地図を思い浮かべよう
では米国は本当に台湾有事に介入するだろうか。「台湾と中国の中国人同士が解決する問題だ」「台湾にも統一を望む声もあるではないか」と言う否定的な見方もあれば、前述のキーティング司令官の発言からもわかるように、「それでも日本を守るために介入する」と言う予測もある。だが、とうの日本が集団的自衛権の行使すら自ら許さず、米軍の後方支援に本当に当たるのかすらわからない現状で、「そのような日本をどうして守る必要があるのか」と言う声が、いざ有事と言うときに米国内で巻き起こらないとは誰も言えまい。そもそも米国は基本的には孤立主義の国である。
このように台湾問題と言う西太平洋の安全保障の問題で、いよいよ日本の意思と姿勢が問われようとしているのだ。「米国とともに戦う」「一国でも戦う」との決意を日本が示さない限り、日本の主権と独立は守れないものと考えるべきだ。
まずは日本人が目覚めよう。米中による太平洋分割の勢力地図を思い浮かべ、そしてそこで日本はどのあたりに位置しているかを考えながら、「米国は助けてくれる」「台湾は落ちても日中友好は可能だ」と言った考えがいかに愚かで危険なものであるかをはっきりと知ろう。
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米紙「ワシントン・タイムズ」(八月十七日)は、中国軍事当局者が最近、訪中したキーティング米太平洋軍司令官に対し、「太平洋を東西に分割し、東側を米国、西側を中国が管理する」ことを提案したと報じたと言う。提案の詳細には触れていないが、米国防当局は「西太平洋の覇権を中国に譲り渡す『大きな過ち』だと主張。日本などアジアの同盟国との関係を台無しにしかねない」として断ったと言う(共同通信)。
日中関係への配慮から中国の脅威を否定する日本の政府、メディアはこれまでほとんど語ってこなかったが、この太平洋分割こそ、中国が思い描く二十一世紀における新国際秩序であるに他ならない。かつて日本が同海域を大東亜共栄圏と言う新秩序の下に組み入れたのと同様、中国もまた中国主導の秩序をそこに築こうとしているのだ。この国のスローガンである「中華振興」とはこのことだ。
実際に西太平洋を米国の支配下から自国の影響下に置くことは、中国の国家戦略目標になっている。なぜならその海域は中国にとり、国防上、あるいは海洋戦略上において重要な「門前」の海域だからだ。
■中国軍拡の目標は太平洋進出
一方、米国が戦後一貫して台湾を中国から切り離し、その防衛に心を砕いてきたのは、大陸共産勢力の海洋進出から西太平洋を守るためだった。日本列島、台湾、フィリピンと連なる列島線を反共の防波堤として位置付けてきたことはよく知られるが、台湾はその列島線における対中国の最前線であり、中国封じ込めの要衝なのだ。
だから中国にとってこの列島線は、自国を押さえ込む脅威以外の何物でもない。それでそれを攻略、突破するために、何としてでも台湾の併呑を果たしたいと考えている。中国がつねに米国に対し、「台湾問題は米中間において最も重要、かつ最も敏感な問題だ」と強調し、米国が台湾を放棄するよう訴えつづけてきた理由はそこにある。
もっとも台湾攻略戦争は米中戦争に発展しかねない。そこで中国は米空母機動部隊の台湾有事への介入を防ぐため、潜水艦の展開、大陸間弾道ミサイルの配備などを推し進めてきた。これが今日問題視されている中国の軍の近代化、軍備拡張の実態である。「国防のため」「国威発揚のため」などとして、中国の軍事的脅威を否定する日本の一部専門家の解説は、素人の域を出ていない。
中国としては米国に邪魔されることなく、台湾の併合を完遂し、その島を基地に西太平洋に進出したい。そして米国には東太平洋のハワイにまで撤退してもらい、太平洋を東西に分割するかたちで両国の平和共存を図りたいのである。
なぜ米国とは平和共存なのか。もちろんそれは、米国と戦っても勝てないからだ。その代わり、日本、韓国などの弱小国家群は、中国の勢力圏内に入れ、東亜共同体なりの一員として、せいぜい地域経済の発展のために貢献してもらう。
■台湾を捨てろー米国への共存のメッセージ
グアムから台湾に至る海域には日本の排他的経済水域が広がっているが、中国は日本の許可、不許可を問わず、そこで黙々と海底調査を進めてきた。そしてその結果、同海域で潜水艦を展開させ、米空母の台湾への出動を阻止することも可能な段階に入っている。もちろん米本土に照準を合わせたミサイルで、恫喝を加える程度の態勢なら充分に整いつつある。
そこでいよいよ米国に対し、台湾から手を引いて、太平洋を東西に分割し、米中の共存共栄を図ろうと言うメッセージを送ったのだろう。今回の「提案」がそれである。こうした提案なり主張なりは、今後は中国人の口からしばしば聞かれることになるのではないだろうか。
ところで中国のこの提案に対し、米政府内の親中派の間では「前向きな受け止めもあった」のだそうだ。たしかに米国人の立場に立って考えれば、それはとてもよく理解できる。彼らからすれば、台湾が中国の手に落ち、日本もその影響下へと吸収されようとも、米軍将兵が血を流し、さらには中国の核ミサイルの脅威に曝されたりするよりはましに違いない。
中国は、そのような米国人の心理を知った上で、シグナルを発して見たに違いない。
■悪夢の太平洋分割地図を思い浮かべよう
では米国は本当に台湾有事に介入するだろうか。「台湾と中国の中国人同士が解決する問題だ」「台湾にも統一を望む声もあるではないか」と言う否定的な見方もあれば、前述のキーティング司令官の発言からもわかるように、「それでも日本を守るために介入する」と言う予測もある。だが、とうの日本が集団的自衛権の行使すら自ら許さず、米軍の後方支援に本当に当たるのかすらわからない現状で、「そのような日本をどうして守る必要があるのか」と言う声が、いざ有事と言うときに米国内で巻き起こらないとは誰も言えまい。そもそも米国は基本的には孤立主義の国である。
このように台湾問題と言う西太平洋の安全保障の問題で、いよいよ日本の意思と姿勢が問われようとしているのだ。「米国とともに戦う」「一国でも戦う」との決意を日本が示さない限り、日本の主権と独立は守れないものと考えるべきだ。
まずは日本人が目覚めよう。米中による太平洋分割の勢力地図を思い浮かべ、そしてそこで日本はどのあたりに位置しているかを考えながら、「米国は助けてくれる」「台湾は落ちても日中友好は可能だ」と言った考えがいかに愚かで危険なものであるかをはっきりと知ろう。
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