日本航空(JAL)と全日空(ANA)が中国民用航空局の圧力に屈し、それぞれ六月十一日と十二日、自社サイト(中国・香港向け)で台湾を「中国台湾」と書き換えたと聞き、怒りを抱いた国民は少なくないと思う。きっと大勢が両社に電話、メールで抗議していることだろう。
そしていよいよ台湾政府も抗議に乗り出した。時事通信は十八日、次のような報道を行った。
「中国の一部」表記で抗議=日航と全日空に―台湾外交部 【台北時事】日本航空と全日本空輸が中国向けの公式ホームページなどで、「台湾」を「中国台湾」と表記の変更をしていたことが分かり、台湾外交部(外務省)は18日、対日窓口機関の台北駐日経済文化代表処(大使館に相当)を通じて厳重に抗議するとともに、表記を元に戻すよう求めると発表した。
台湾をめぐっては、中国民用航空局が海外の航空会社44社に対し、同国政府が主張する「一つの中国」原則に基づき、中国の一部としてホームページなどに表記するよう要求。日航と全日空はビジネスを考慮し、中国当局の要求に従った格好だ。
両社によると、中国と香港向けの公式サイトを対象に、今月12日に表記をそろって変更した。両社とも日本や台湾向けや英語のサイトについては従来通りの表記を続けているが、「関係省庁などと相談しながら、対応を検討中だ」(日航)としている。
中国民航局の歓心を買うとの一心で、台湾の尊厳を傷つけてしまったJALとANAだが、台湾政府からも抗議され、ようやく事の重大さを知り、「関係省庁」に泣きついているということだろうか。
米国で中国民航局から同様の要求を受けているのはユナイテッド航空、デルタ航空、アメリカン航空だが、これらはその圧力を跳ね除けている模様。
すでにホワイトハウスは五月の段階で、同局のやり方を「ナンセンスな全体主義」と批判。「米国の個人、私企業への脅迫は止めよ」と訴えている。これを受けアメリカン航空のダグ・バーカ―最高経営責任者は「中国から通知は受けているが、米国政府はすでにこの問題に関し回答している。そこで我々は政府の立場に従って対処したい。今やこれは米国政府と中国政府との間の問題になっているのだ」と語っている。
やはり中国民航局から各航空会社に対する要求への協力を求められた国際航空運輸協会(IATA)のスポークスマンも六月初め、次のようにコメントした。
「中国の今回の世界の航空会社に対する要求は国際ルールとは無関係。航空会社をジレンマに陥らせないよう、政府間で協議してほしい。特に政治に関われば、航空会社には厄介だ」
「IATAならびにその加盟企業は、世界の運輸市場に奉仕する非政治性の企業。政治的議論は政府間で行うのが最も好ましい」
正にその通りだろう。こういう時こそ日本の政府は他国政府からの不当な政治的圧力から自国企業を守らなくてはならない。だからこそJALなどは政府に「相談」したのだろう。
ただ心配なのは、政府もまた中国とのトラブルを恐れ、この問題を放置しないかということだ。政府が中国との関係を重視するあまり、台湾を軽視、無視してきた例は枚挙に暇がない。
もしかしたら政府も航空会社も「たかだか中国向けサイトの表記の問題ではないか。国益(社益)への影響はない」などとの考え、いまは抗議の「嵐」が過ぎるのをじっと待っているところかもしれない。
しかし実際のところ、現在の状況はすでに国益を大いに脅かしている。日本の大企業がここまで中国の言論統制下に組み込まれざるを得なくなっているのだ。しかも中国の軍事的脅威の前において日本とは生命共同体である台湾を、その中国の領土と認めてしまったとは…。だから今回の外国企業をコントロールしようという中国民航局の動きは中国の危険な新秩序建設の危険な一環と受け止めるべきだ。だからこそホワイトハウスも、あそこまで批判を行ったわけなのである。
そしてそれ以前に、心ある日本人であれば、JALとANAの対応がいかに許しがたいものであるかはわかるはずだ。
東日本大震災で日本お被災地に暖かな救援の手を差し伸べてくれたような、日本の真の友ともいうべき台湾の人々に、このような仕打ちを加えていいのだろうかと思うはずである。そもそもこの二社は、日本に親しみを抱いて来日する台湾の人々に散々お世話になっているはず。なぜここまで台湾を裏切ることができるのかと憤るのが普通ではないか。
聞くところによればJALとANAは現在、「中国からの指導があった」を理由に自らの行為を正当化し、抗議の電話に反論しているとか。
顧客の意見を重視する姿勢を強調するJALとANA。中国の乗客の意見への配慮を口実に中国政府に従属している。
しかし台湾は中国領土ではない。二社にはこの正しい意見を届けようもしこれら二社や政府がこのまま問題を放置させようというのであれば、我々は抗議を継続し、拡大、深化させなければならない。
日本を代表する航空会社が「一つの中国」という中国覇権主義の政治宣伝に加担し続ける限り、絶対にあってはならない反道義、反平和、反国益の悪しき企業のモデルとして糾弾の対象とし続けなくてはならないのである。
台湾は中国領土ではない!
中国の不当要求に屈したJALとANAに対し
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