中国が「親日」と罵る台湾の歴史教育正常化運動とは
2017/07/25/Tue
日本では政治的な反日史観に基づく学校の歴史教育問題があるが、台湾でも大中国史観(反台史観)に基づく歴史教育問題を抱えている。
そして九〇年代の民主化以降、李登輝、陳水扁政権がその歴史教育の正常化を図り、その後、国民党の馬英九政権が大中国史観への回帰を試みはしたが、今日の民進党・蔡英文政権は再び正常化に向け前進しようとしている。
民主化以前の国民党独裁時代に行われた中国人化政策下では、学校で教える自国史と言えば中国史であり、台湾史はその一部との位置付けに過ぎなかったというより、ほとんど抹殺されていた。なぜならそのようなものを教えてしまえば、台湾人が台湾人としてのアイデンティティを持ち、台湾独立が志向されることを警戒したからだ。
中学校で台湾史の教科が導入されたのは李登輝時代である。陳水扁時代には高校でも導入があった。台湾史が中国史から分離され、歴史的分野は「台湾史・中国史・世界史」へと三分された。
そして、このほど教育部(文科省)の国家教育研究院が発表した社会科の課綱(学習指導要領)案によれば、再来年からは「台湾史・東亜史・世界史」へと変わり、中国史は「東亜史」に包含される予定である。かくして中国史はもはや自国史ではなく、外国史と位置付けられるということだ。
ところがこうした台湾の歴史教育の正常化の動きに、かねてから苛立ってきたのが中国である。たとえば現在のこの動きを「文化台独」(政治的な台湾独立に先立つ文化的台湾独立)だと非難する論説が七月十七日、あの国のネットメディア「澎湃新聞」に配信され、その過剰反応ぶりが台湾で話題を呼んだ。
論説は「蔡英文当局の今回の課綱の改造は李登輝、陳水扁時代の文化台独の集大成で、徹底的に両岸(※台湾と中国)の歴史の連結を立ち切り、文化台独の最後の一里を歩き終えるものだ」と強調しながら、次のように憎悪を剥き出した。
―――最近、台湾島内では脱中国化の指標である文化台独の動きが頻々として起こっている。そして両岸関係に対し最も危害が大きく、脱中国化において根本的な作用を及ぼすのが、島内の歴史課綱の台独化的な改造なのだ。
―――台独課綱は党内の中国人アイデンティティを消滅させ、天然独(生まれながらの台湾独立志向)を培養し、両岸の青年や今後の何代もの人々の間の考え方の溝を根本的に広げるものであり、極めて険悪だ。
中国側がここまでヒステリックになるのは当然だろう。何しろ、台湾と中国が中華民族意識、中華民族主義の共有を確認し合いながら平和統一(協議による台湾併呑)を達成しようというのがあの国の国家戦略だからだ。
台湾人がかつての中国人化教育の影響から脱却し、中国とは異なる台湾独自の歴史、文化の歩みがあることを理解し、それに誇りを抱こうとするのであれば、こうした平和統一戦略は頓挫しかねない。だから敵意を露わにするのはあたりまえと言える。
さてこの論説は、実は日本人にとっても興味深いものがある。それは次のようにも論じているからだ。
―――課綱草案には「脱中入日」の伏線がある。
―――日本の台湾での建設がもたらした影響を論じることで、まるで李登輝らのように、台湾青年にも日本が祖国であると思わせ、日本文化を精神的よりどころにさせようというわけだ。
―――台湾社会の「親日」、「依日抗陸」(日本に依って中国に抗す)、そしてさらには「祖国日本への回帰」といった不正常文化が興起すれば、大陸が提唱、追求する「両岸の一家の如き親しみ」、「心霊契合」(魂の一致)は血縁文化の拠り所を失ってしまう。
つまり、台湾史を中国史から分離して記述する台湾人は、中華民族主義という反日イデオロギーに染まっていないため、台湾の日本統治時代も客観的に論じる訳だが、中華民族主義者から見ればそれは、自らが中国人であることを忘れた漢奸であり、断じて許すことのできない親日派となるわけだ。
そして台湾人が自らを中国人であることを忘れ、日本に靡くようになった原因は、日本統治時代の「奴隷化教育」(日本人化=皇民化教育)だとするのが、国民党、中共を含む中国人お決まりの見方である。論説も次のように書く。
―――「その国を滅したければ先ずその歴史を滅し、その民族を滅したければ必ず先ずその文化を滅する」というが、台湾では歴史上、二度にわたる脱中国化のための脱中国史・脱中国文化の運動があった。一つ目は日本殖民時代後期の皇民化運動だ。
―――二回目は李登輝時代以来の台独を目標とする脱中国化運動。面白いのは、今日脱中国化に余念がないのがかつての皇民世代とその末裔であることだ。歴史文化の断裂の影響はこれほど深刻で長引くものなのである。
以上は論述は史実に基づくものだ。戦時中に台湾島内で推進された「皇民化運動」とは近代国民化運動で、特にこれにより近代的国民と化した台湾人は、戦後台湾から流入した中国の前近代的文化に馴染めず、やがてそれが今日の「脱中国化運動」に繋がったというのは本当なのである。
そうした「脱中国」を追求する台湾人は、中国人から見れば日本人と同様に見えるそうだ。台湾社会の「親日」「依日抗陸」「祖国日本への回帰」をこの論説は指摘したが、それは中華民族主義勢力が通常抱く台湾の印象をそのまま表現したものである。
論説は最後にこう述べている。
―――台独勢力は、台湾と中国の関係を東亜を体系の一環として捉えるが、我方の歴史学者は国際社会に対し、台湾は中国の一部であるとの宣伝を強化し、島内の正統派の学者の台湾と中国の歴史的関連の主張に声援を送るべきだ。
―――いずれにせよ、中国は各領域において巨大なる進歩を遂げ、総合国力が強大になる一方である今日、我々にはいかなる台独勢力の分裂の動きにも対処する能力はある。
要するに中国の強大化する一方の国力を背景に、歴史捏造に基づく「一つの中国」(台湾は中国の一部)の宣伝を国際社会に押し付け、台湾を孤立させ、併呑してしまえばいいと訴えているのである。
こうした中国の不当な圧力に屈服する国はアフリカなどの小国を中心に多数あるが、日本もまたそれと似たようなところがあった。しかし今後はどうするべきだろう。
日本とは歴史的に深い繋がりがあるため、「親日」「依日抗陸」とまで見えるという台湾の人々の心を思い、台湾と中国のいずれを友とするべきかを考えてみたらいい。
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そして九〇年代の民主化以降、李登輝、陳水扁政権がその歴史教育の正常化を図り、その後、国民党の馬英九政権が大中国史観への回帰を試みはしたが、今日の民進党・蔡英文政権は再び正常化に向け前進しようとしている。
民主化以前の国民党独裁時代に行われた中国人化政策下では、学校で教える自国史と言えば中国史であり、台湾史はその一部との位置付けに過ぎなかったというより、ほとんど抹殺されていた。なぜならそのようなものを教えてしまえば、台湾人が台湾人としてのアイデンティティを持ち、台湾独立が志向されることを警戒したからだ。
中学校で台湾史の教科が導入されたのは李登輝時代である。陳水扁時代には高校でも導入があった。台湾史が中国史から分離され、歴史的分野は「台湾史・中国史・世界史」へと三分された。
そして、このほど教育部(文科省)の国家教育研究院が発表した社会科の課綱(学習指導要領)案によれば、再来年からは「台湾史・東亜史・世界史」へと変わり、中国史は「東亜史」に包含される予定である。かくして中国史はもはや自国史ではなく、外国史と位置付けられるということだ。
ところがこうした台湾の歴史教育の正常化の動きに、かねてから苛立ってきたのが中国である。たとえば現在のこの動きを「文化台独」(政治的な台湾独立に先立つ文化的台湾独立)だと非難する論説が七月十七日、あの国のネットメディア「澎湃新聞」に配信され、その過剰反応ぶりが台湾で話題を呼んだ。
論説は「蔡英文当局の今回の課綱の改造は李登輝、陳水扁時代の文化台独の集大成で、徹底的に両岸(※台湾と中国)の歴史の連結を立ち切り、文化台独の最後の一里を歩き終えるものだ」と強調しながら、次のように憎悪を剥き出した。
―――最近、台湾島内では脱中国化の指標である文化台独の動きが頻々として起こっている。そして両岸関係に対し最も危害が大きく、脱中国化において根本的な作用を及ぼすのが、島内の歴史課綱の台独化的な改造なのだ。
―――台独課綱は党内の中国人アイデンティティを消滅させ、天然独(生まれながらの台湾独立志向)を培養し、両岸の青年や今後の何代もの人々の間の考え方の溝を根本的に広げるものであり、極めて険悪だ。
中国側がここまでヒステリックになるのは当然だろう。何しろ、台湾と中国が中華民族意識、中華民族主義の共有を確認し合いながら平和統一(協議による台湾併呑)を達成しようというのがあの国の国家戦略だからだ。
台湾人がかつての中国人化教育の影響から脱却し、中国とは異なる台湾独自の歴史、文化の歩みがあることを理解し、それに誇りを抱こうとするのであれば、こうした平和統一戦略は頓挫しかねない。だから敵意を露わにするのはあたりまえと言える。
さてこの論説は、実は日本人にとっても興味深いものがある。それは次のようにも論じているからだ。
―――課綱草案には「脱中入日」の伏線がある。
―――日本の台湾での建設がもたらした影響を論じることで、まるで李登輝らのように、台湾青年にも日本が祖国であると思わせ、日本文化を精神的よりどころにさせようというわけだ。
―――台湾社会の「親日」、「依日抗陸」(日本に依って中国に抗す)、そしてさらには「祖国日本への回帰」といった不正常文化が興起すれば、大陸が提唱、追求する「両岸の一家の如き親しみ」、「心霊契合」(魂の一致)は血縁文化の拠り所を失ってしまう。
つまり、台湾史を中国史から分離して記述する台湾人は、中華民族主義という反日イデオロギーに染まっていないため、台湾の日本統治時代も客観的に論じる訳だが、中華民族主義者から見ればそれは、自らが中国人であることを忘れた漢奸であり、断じて許すことのできない親日派となるわけだ。
そして台湾人が自らを中国人であることを忘れ、日本に靡くようになった原因は、日本統治時代の「奴隷化教育」(日本人化=皇民化教育)だとするのが、国民党、中共を含む中国人お決まりの見方である。論説も次のように書く。
―――「その国を滅したければ先ずその歴史を滅し、その民族を滅したければ必ず先ずその文化を滅する」というが、台湾では歴史上、二度にわたる脱中国化のための脱中国史・脱中国文化の運動があった。一つ目は日本殖民時代後期の皇民化運動だ。
―――二回目は李登輝時代以来の台独を目標とする脱中国化運動。面白いのは、今日脱中国化に余念がないのがかつての皇民世代とその末裔であることだ。歴史文化の断裂の影響はこれほど深刻で長引くものなのである。
以上は論述は史実に基づくものだ。戦時中に台湾島内で推進された「皇民化運動」とは近代国民化運動で、特にこれにより近代的国民と化した台湾人は、戦後台湾から流入した中国の前近代的文化に馴染めず、やがてそれが今日の「脱中国化運動」に繋がったというのは本当なのである。
そうした「脱中国」を追求する台湾人は、中国人から見れば日本人と同様に見えるそうだ。台湾社会の「親日」「依日抗陸」「祖国日本への回帰」をこの論説は指摘したが、それは中華民族主義勢力が通常抱く台湾の印象をそのまま表現したものである。
論説は最後にこう述べている。
―――台独勢力は、台湾と中国の関係を東亜を体系の一環として捉えるが、我方の歴史学者は国際社会に対し、台湾は中国の一部であるとの宣伝を強化し、島内の正統派の学者の台湾と中国の歴史的関連の主張に声援を送るべきだ。
―――いずれにせよ、中国は各領域において巨大なる進歩を遂げ、総合国力が強大になる一方である今日、我々にはいかなる台独勢力の分裂の動きにも対処する能力はある。
要するに中国の強大化する一方の国力を背景に、歴史捏造に基づく「一つの中国」(台湾は中国の一部)の宣伝を国際社会に押し付け、台湾を孤立させ、併呑してしまえばいいと訴えているのである。
こうした中国の不当な圧力に屈服する国はアフリカなどの小国を中心に多数あるが、日本もまたそれと似たようなところがあった。しかし今後はどうするべきだろう。
日本とは歴史的に深い繋がりがあるため、「親日」「依日抗陸」とまで見えるという台湾の人々の心を思い、台湾と中国のいずれを友とするべきかを考えてみたらいい。
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