自信か?焦りか?「中国統一」を急ぐ習近平
2017/10/25/Wed
中共十九大(第十九回党大会)が十月二十四日に閉幕。党章に毛沢東思想、鄧小平理論などとともに、習近平思想(習近平による新時代の中国の特色のある社会主義思想)も中共の行動指針として列挙されるなど、習近平総書記への権力集中が更に進められた。
習近平は十九大での演説で台湾侵略の野心を剥き出しにした
そしてその習近平は二〇四九年の中華人民共和国建国百周年を視野に、開幕に当たっての演説の中で「今世紀中葉までに社会主義現代化強国へと変える」との目標を掲げ、「中華民族の偉大なる復興という中国の夢の実現」に向けた奮起を呼び掛けたが、要するにこの独裁者が思い描く「夢」とは、アジアの中心たる中華帝国の復興、つまり中国を盟主とする新たな国際秩序の構拡なのだ。中共政権の維持を図るには、こうした危険な拡張主義、覇権主義で人民を束ねる以外に術はないのである。
演説の最後に習近平は、「現代化建設、祖国統一の完成、世界平和の維持と共同発展の促進という三大歴史任務」にも言及した。「祖国統一の完成」とは台湾攻略である。「統一」と言えば聞こえが好いが、いかに中共が「一つの中国」(台湾は中国領土の一部)の宣伝に躍起となっても、台湾が中国領土でないとの真実は変わることはなく、したがって「統一」とは、不法な領土拡張を意味する「台湾侵略」に他ならない。
要するに習近平は「現代化を通じて富国強兵を推進し、第一列島線上の要衝である台湾を併呑し、そこを跳躍台としてアジア太平洋地域において、パックス・アメリカーナ(米国支配下の平和)に代わるパックス・シニカ(中国支配下の平和)を達成する」との好戦的な戦略計画を公表したわけである。
ちなみにその前日、国務院台湾事務弁公室(国台弁)が発表した「党の十八大以降の対台湾工作の平凡ならざる道のり」なる文書の冒頭には、「祖国の平和統一を推し進め、祖国統一の大業を完成させることは、中華民族の偉大なる復興を実現する上での必然的要求だ」とある。実はこれは習近平が繰り返し見せている発言を引用したもの。このように習近平彼が、台湾攻略は待ったなしだと考えているのは疑いない。
さて、そうした習近平の野望の一端を分析する論文を紹介したい。作者は香港ネットメディア「超訊」の編集長、紀碩鳴。「中国の強大さと自身の衰弱により、台湾当局はもはや統一を避けることはできない」と強調し、台湾のメディア各社に一斉に取り上げられている。
それによれば、香港を含む中国のメディアは、習近平は任期内に台湾問題を解決しようとしていると確信しており、台湾海峡は一触即発だと見ているそうだ。実際に中国は目下次のような情勢なのだという。
―――中国は近年、総合国力を高め、軍事力も増強していて、武力統一の実力がある。台湾ではこれまでになく台湾独立(※台湾側の統一拒否の動きを指す)の衝動が見られるが、それが武力統一の引き金になりつつある。習近平は十九大で「いかなる祖国分裂活動も全中国人の断固たる反対に遭うだろう。我々にはいかなる台独の企みも失敗に終わらせる堅い意志、充分な自信、満ち足りた能力がある」と述べている。
―――明らかに北京は、主動的、積極的になりさえすれば平和統一の可能性は高まると認識している。大陸(※中国)で台湾研究に携わる職員は「超訊」に対し、「北京には自信がある。平和統一の可能性の高まりで武力での威嚇は必要ないと考えている」と語っている。
―――十九大の前の段階で大陸は伝統的な考えを放棄し、両岸(※台湾と中国)関係方面では従来の受動的姿勢を主動的なものへと変えている。もともとは消極的に台湾側の反応を待ち、向こう側が「一つの中国」を口にしたら、国際的な活動空間を与えるなどしたが、しかし事実が証明するように、大陸側が受動的なままでは統一は促進できない。大陸が強い姿勢を見せて初めて、平和統一の条件は作り出せるのだ。
論文はこう論じた上で、「台湾が台独傾向を見せつつある中、北京は今後これまでのような文攻武嚇(※宣伝、武力を通じた威嚇)ではなく、全方位的な『実戦』を進めている」とし、台湾を「統一」へと追いやるために以下の五つの策略を行使しているという。
一、外交面では台湾と国交を結ぶ国はいくらも残っていない。北京はそれらを簡単に奪い取ることができる。台湾のWHO、ICAOといった国際機関の参加資格も次々と剥奪されているところだ。
二、経済面では、台湾を訪れる観光客を絶えず減らし、観光業界に大きな打撃を与えている。台湾の新南向外交(※東南亜、南亜重視の外交政策)の効果が上がらないのも、大陸の妨害とは無関係ではない。大陸の一帯一路政策の周辺諸国への吸収力も小さくない。大陸がその気になれば両岸貿易を減らして脆弱な台湾経済をさらに悪化させることもできる。
三、軍事面で与える心理的影響は大きい。昨年は空母や軍用機を何度も台湾周辺を回らせており、中共はすでに台湾に向けた武力を隠すことはしない。軍事的威嚇を例外から慣例、常態へと変え戦略的包囲態勢を形成している。
上と下はそれぞれ最近台湾周辺で訓練を実施した中国の軍用機、空母の航路
四、台湾を愛する人々に善意を示し、それにより台湾の若い世代は転向を始めている。この二年間、大陸の企業に就職や実習を行った若者の総数は六千人以上。
五、平和統一の条件を作り出す。大陸は受動の状態から抜け出し、台湾にどのような変化があろうと、統一という既定路線だけを唯一の選択としている。
それでは習近平が「武力統一」を発動する可能性についてはどうか。論文はこう書いている。
―――民進党政権の発足後、前国台弁副主任の王在希は台湾のメディアに対し、「平和統一の可能性は完全に喪失した場合は、非平和的手段で国家主権、領土の完全性を守る(台湾を併呑する)と述べた。王在希は「国民党は民進党を有効に制御できなくなり、台湾の民意も統一に不利な方向へ向かっている。平和統一の可能性は完全には喪失していないが、しかし徐々に失われつつある」と指摘している。
―――台湾研究を担当する政府関係者は「超訊」に対し、「過激な台独勢力の台頭が武力統一の条件を整えている。中国には反国家分裂法があり、いかなる台独の動きであれ、中国側のレッドラインを超えた場合は出兵となる」と述べている。
それでは「統一」の最大の障害としての米国(日米同盟)に習近平はいかなる姿勢で臨むのか。論文は中国の中心の新秩序建設に対する肝心の日米の抵抗に関しては一切触れていない。
いずれにせよ習近平が九十六歳になる二〇四九年までに、台湾併呑という侵略目標に向けた動きを加速させて行くのは間違いないだろう。論文の指摘の如く彼は自信満々なのか、それとも実は焦っているのかは別として。
【過去の関連記事】
習近平「台湾侵略」の夢を語るー中国共産党大会開幕 17/10/19
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3222.html
2020年、習近平は台湾を侵略するか 17/10/21
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3224.html
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習近平は十九大での演説で台湾侵略の野心を剥き出しにした
そしてその習近平は二〇四九年の中華人民共和国建国百周年を視野に、開幕に当たっての演説の中で「今世紀中葉までに社会主義現代化強国へと変える」との目標を掲げ、「中華民族の偉大なる復興という中国の夢の実現」に向けた奮起を呼び掛けたが、要するにこの独裁者が思い描く「夢」とは、アジアの中心たる中華帝国の復興、つまり中国を盟主とする新たな国際秩序の構拡なのだ。中共政権の維持を図るには、こうした危険な拡張主義、覇権主義で人民を束ねる以外に術はないのである。
演説の最後に習近平は、「現代化建設、祖国統一の完成、世界平和の維持と共同発展の促進という三大歴史任務」にも言及した。「祖国統一の完成」とは台湾攻略である。「統一」と言えば聞こえが好いが、いかに中共が「一つの中国」(台湾は中国領土の一部)の宣伝に躍起となっても、台湾が中国領土でないとの真実は変わることはなく、したがって「統一」とは、不法な領土拡張を意味する「台湾侵略」に他ならない。
要するに習近平は「現代化を通じて富国強兵を推進し、第一列島線上の要衝である台湾を併呑し、そこを跳躍台としてアジア太平洋地域において、パックス・アメリカーナ(米国支配下の平和)に代わるパックス・シニカ(中国支配下の平和)を達成する」との好戦的な戦略計画を公表したわけである。
ちなみにその前日、国務院台湾事務弁公室(国台弁)が発表した「党の十八大以降の対台湾工作の平凡ならざる道のり」なる文書の冒頭には、「祖国の平和統一を推し進め、祖国統一の大業を完成させることは、中華民族の偉大なる復興を実現する上での必然的要求だ」とある。実はこれは習近平が繰り返し見せている発言を引用したもの。このように習近平彼が、台湾攻略は待ったなしだと考えているのは疑いない。
さて、そうした習近平の野望の一端を分析する論文を紹介したい。作者は香港ネットメディア「超訊」の編集長、紀碩鳴。「中国の強大さと自身の衰弱により、台湾当局はもはや統一を避けることはできない」と強調し、台湾のメディア各社に一斉に取り上げられている。
それによれば、香港を含む中国のメディアは、習近平は任期内に台湾問題を解決しようとしていると確信しており、台湾海峡は一触即発だと見ているそうだ。実際に中国は目下次のような情勢なのだという。
―――中国は近年、総合国力を高め、軍事力も増強していて、武力統一の実力がある。台湾ではこれまでになく台湾独立(※台湾側の統一拒否の動きを指す)の衝動が見られるが、それが武力統一の引き金になりつつある。習近平は十九大で「いかなる祖国分裂活動も全中国人の断固たる反対に遭うだろう。我々にはいかなる台独の企みも失敗に終わらせる堅い意志、充分な自信、満ち足りた能力がある」と述べている。
―――明らかに北京は、主動的、積極的になりさえすれば平和統一の可能性は高まると認識している。大陸(※中国)で台湾研究に携わる職員は「超訊」に対し、「北京には自信がある。平和統一の可能性の高まりで武力での威嚇は必要ないと考えている」と語っている。
―――十九大の前の段階で大陸は伝統的な考えを放棄し、両岸(※台湾と中国)関係方面では従来の受動的姿勢を主動的なものへと変えている。もともとは消極的に台湾側の反応を待ち、向こう側が「一つの中国」を口にしたら、国際的な活動空間を与えるなどしたが、しかし事実が証明するように、大陸側が受動的なままでは統一は促進できない。大陸が強い姿勢を見せて初めて、平和統一の条件は作り出せるのだ。
論文はこう論じた上で、「台湾が台独傾向を見せつつある中、北京は今後これまでのような文攻武嚇(※宣伝、武力を通じた威嚇)ではなく、全方位的な『実戦』を進めている」とし、台湾を「統一」へと追いやるために以下の五つの策略を行使しているという。
一、外交面では台湾と国交を結ぶ国はいくらも残っていない。北京はそれらを簡単に奪い取ることができる。台湾のWHO、ICAOといった国際機関の参加資格も次々と剥奪されているところだ。
二、経済面では、台湾を訪れる観光客を絶えず減らし、観光業界に大きな打撃を与えている。台湾の新南向外交(※東南亜、南亜重視の外交政策)の効果が上がらないのも、大陸の妨害とは無関係ではない。大陸の一帯一路政策の周辺諸国への吸収力も小さくない。大陸がその気になれば両岸貿易を減らして脆弱な台湾経済をさらに悪化させることもできる。
三、軍事面で与える心理的影響は大きい。昨年は空母や軍用機を何度も台湾周辺を回らせており、中共はすでに台湾に向けた武力を隠すことはしない。軍事的威嚇を例外から慣例、常態へと変え戦略的包囲態勢を形成している。
上と下はそれぞれ最近台湾周辺で訓練を実施した中国の軍用機、空母の航路
四、台湾を愛する人々に善意を示し、それにより台湾の若い世代は転向を始めている。この二年間、大陸の企業に就職や実習を行った若者の総数は六千人以上。
五、平和統一の条件を作り出す。大陸は受動の状態から抜け出し、台湾にどのような変化があろうと、統一という既定路線だけを唯一の選択としている。
それでは習近平が「武力統一」を発動する可能性についてはどうか。論文はこう書いている。
―――民進党政権の発足後、前国台弁副主任の王在希は台湾のメディアに対し、「平和統一の可能性は完全に喪失した場合は、非平和的手段で国家主権、領土の完全性を守る(台湾を併呑する)と述べた。王在希は「国民党は民進党を有効に制御できなくなり、台湾の民意も統一に不利な方向へ向かっている。平和統一の可能性は完全には喪失していないが、しかし徐々に失われつつある」と指摘している。
―――台湾研究を担当する政府関係者は「超訊」に対し、「過激な台独勢力の台頭が武力統一の条件を整えている。中国には反国家分裂法があり、いかなる台独の動きであれ、中国側のレッドラインを超えた場合は出兵となる」と述べている。
それでは「統一」の最大の障害としての米国(日米同盟)に習近平はいかなる姿勢で臨むのか。論文は中国の中心の新秩序建設に対する肝心の日米の抵抗に関しては一切触れていない。
いずれにせよ習近平が九十六歳になる二〇四九年までに、台湾併呑という侵略目標に向けた動きを加速させて行くのは間違いないだろう。論文の指摘の如く彼は自信満々なのか、それとも実は焦っているのかは別として。
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習近平「台湾侵略」の夢を語るー中国共産党大会開幕 17/10/19
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3222.html
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http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3224.html
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