TBSー中国の情報操作に踊らされ/トランプは台湾を中国領土と認めていない(4)
2017/02/20/Mon
■米中外相会談―なぜ中国はトランプ政権を讃える
二月十七日にトランプ政権発足後初めてとなる米中外相会談が開かれた。
ドイツ・ボンでのG20外相会議に出席していた米国のティラーソン国務長官と中国の王毅外相とが話し合ったのだが、そこではもちろん、十日に行われた米中電話首脳会談で、トランプ大統領が習近平主席に対し「一つの中国」政策の継続を表明したことにも言及された。
中国外務省の報道発表によれば王毅氏はその日、「習近平主席が最近、トランプ大統領と電話会談を行ったことはとても重要だ。米国は明確に『一つの中国』政策の堅持継続を表明した」と指摘した上で、「両国の元首は中米が好き協力パートナーになることは完全に可能であり、新たな出発点から両国関係を推進し大きな発展を獲得すべきとの認識で一致した」と強調したそうである。
中国メディアは米中外相会談を好意的に報じたが…
トランプ氏が「一中」政策の維持を表明したことを、中国側はここまで歓迎している訳だ。だがしかし、中国にとって米国の同政策は、実際にはとても受け入れ難いものではないのだろうか。
■「一つの中国」-異なる米国の「政策」と中国の「原則」
「台湾は中国の不可分の一部だ」とするのが中国の「一つの中国」原則だ。あの国は台湾併呑という侵略政策を正当化すべく、そうした虚構の「原則」を常々内外に喧伝し、さらにはそれこそが「中米関係の政治的基礎だ」などと米国に迫り続けているわけだが、しかしその「一中」原則と米国の「一中」政策とは根本的に対立するものではないのか。
「世界で中国はただ一つ、中国とは中華人民共和国。台湾は中国の不可分の領土」と強調するのが中国「一中」原則だが、それに対して米国の「一中」政策とは「中国とは中華人民共和国」とまでは承認するものの、断じて「台湾は中国の不可分の領土」とは認めないのだから。
ホワイトハウスによればトランプ氏は表明したのは、「我々の『一中』政策に従う」だった。この米国の所謂「我々の『一中』政策とは、「三つの米中共同コミュニケと台湾関係法に基づく政策」としばしば説明される。
その三つの「共同コミュニケ」をすべて見れば明らかだが、米国は「世界で中国はただ一つ、中国とは中華人民共和国」といった意味の表明まではしているものの、「台湾は中国の不可分の領土」については、中国側がそうした立場であることに対して「認識する」と表明するにとどめている。つまり中国の「一中」原則の受け入れは拒否しているのだ。
■中国には憎むべきはずのティラーソン国務長官
そして「台湾関係法」に至っては、台湾が中国に帰属していないのを前提に、米国の台湾への武器供与を義務付けるなどする米国の国内法だ。中国には、こればかりは断じて認めることができない代物となる。
今回、王毅氏が握手を交わしたティラーソン氏自身は、一月十一日の上院での就任確認公聴会で、「一中」政策に関して「米国には台湾に対し、台湾関係法と六つの保証がある」と述べている。
もしそうした見解が反映されるなら、トランプ政権の「一中」政策には「六つの保証」も加えられることになるが、これは台湾関係法のガイドライン。内容については細部で異なる複数のバージョンがあるが、昨年五月十六日に下院で可決された決議案や、七月十八日の共和党全国大会で採択された政策綱領に盛り込まれた「六つの保証」は次のようなものである。
「対台武器供与の期限を設けない」
「台湾と中国の調停を行わない」
「台湾と中国に交渉するよう圧力をかけない」
「台湾の主権に関する長期的な立場を変えない」
「台湾関係法を改正する用意はない」
「台湾への武器売却について事前に中国の意見を聞かない」
もちろん中国は、こうしたものも決して容認できる訳がない。こんな反中国的な政策を口にするティラーソン氏など、あの国としては八つ裂きにしたいところだろう。
■米国政策を材料に印象操作を行う中国の巧妙な手口
しかしそれでありながらも中国側が、そのティラーソン氏と握手をしながら、こうした米国の「一中」政策を持ち上げるのはなぜかというと、それはそれで巧妙な情報捏造の宣伝工作になるからである。
中国が「米国が『一中』政策の堅持継続を表明した」と宣伝するだけで、世界中が、米国は中国の所謂「一中」原則、つまり「台湾は中国の不可分の領土」であると認めているとのイメージを抱くことになるだろう。
米国に対し、その中国・台湾政策に紛らわしい「一中」と名付けるよう要請したのは中国だとされる。こうした中国の宣伝工作に有利な状況を作り出すことを、あの国が狙ったのは間違いあるまい。
実際に、今回の米中外相会談に関し、TBSニュースなどは完全にその罠に引っ掛かり、次のような誤報を犯してしまった。
―――中国外務省は王毅外相が「(中略)アメリカ側が“中国と台湾は不可分であるとする「ひとつの中国」政策を維持する方針を示した”としています。
最早言を要すまい。米国が「中国と台湾は不可分である」などと表明する訳がないのである。
■TBSに電話で忠告―果たして聞き入れるか
実際に中国外務省が伝えた王毅氏の発言は上記の通り。「米国は明確に『一つの中国』政策の堅持継続を表明した」なのである。
それであるのにTBSは米国の「一中」政策を中国の「一中」原則と混同し、ご丁寧にも誤った説明を挿入し、全国に対して虚偽の報道を行ってしまったのだ。
「中国と台湾は不可分である」などと米国は言ってもいないし考えてもいない。しかし
それでありながらTBSは間違って…
TBSが参考にした中国外務省の報道発表。「『一中国』政策の堅持継続を表明」とあるだけで、どこにも「中国と台湾は不可分で
ある」などと書かれていない
私はTBSの視聴者窓口(03‐3746‐6666)に電話をかけ、この誤報を指摘した。対応に出た職員は私の説明に納得したようで、必ず報道担当者に伝えると約束した。
それでも今後もしTBSが同じ誤報を重ねたとしたら、それは同局が中国の情報操作に踊らされているというより、中国に迎合して騙されたふりをし、自ら進んで誤報を行っているということになるだろう。
そもそも中国の対外宣伝工作は、海外の中国迎合勢力の呼応があることを前提に展開される謀略でもあるのである。
【過去の関連記事】
トランプは台湾を中国領土と認めていないー中国に惑わされる朝日の誤報 17/02/11
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3068.html
間違だらけの日本の報道―トランプは台湾を中国領土と認めていない(続) 17/02/13
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3069.html
必読!産経の記事が正確―トランプは台湾を中国領土と認めていない(続々)17/02/16
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3072.html
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二月十七日にトランプ政権発足後初めてとなる米中外相会談が開かれた。
ドイツ・ボンでのG20外相会議に出席していた米国のティラーソン国務長官と中国の王毅外相とが話し合ったのだが、そこではもちろん、十日に行われた米中電話首脳会談で、トランプ大統領が習近平主席に対し「一つの中国」政策の継続を表明したことにも言及された。
中国外務省の報道発表によれば王毅氏はその日、「習近平主席が最近、トランプ大統領と電話会談を行ったことはとても重要だ。米国は明確に『一つの中国』政策の堅持継続を表明した」と指摘した上で、「両国の元首は中米が好き協力パートナーになることは完全に可能であり、新たな出発点から両国関係を推進し大きな発展を獲得すべきとの認識で一致した」と強調したそうである。
中国メディアは米中外相会談を好意的に報じたが…
トランプ氏が「一中」政策の維持を表明したことを、中国側はここまで歓迎している訳だ。だがしかし、中国にとって米国の同政策は、実際にはとても受け入れ難いものではないのだろうか。
■「一つの中国」-異なる米国の「政策」と中国の「原則」
「台湾は中国の不可分の一部だ」とするのが中国の「一つの中国」原則だ。あの国は台湾併呑という侵略政策を正当化すべく、そうした虚構の「原則」を常々内外に喧伝し、さらにはそれこそが「中米関係の政治的基礎だ」などと米国に迫り続けているわけだが、しかしその「一中」原則と米国の「一中」政策とは根本的に対立するものではないのか。
「世界で中国はただ一つ、中国とは中華人民共和国。台湾は中国の不可分の領土」と強調するのが中国「一中」原則だが、それに対して米国の「一中」政策とは「中国とは中華人民共和国」とまでは承認するものの、断じて「台湾は中国の不可分の領土」とは認めないのだから。
ホワイトハウスによればトランプ氏は表明したのは、「我々の『一中』政策に従う」だった。この米国の所謂「我々の『一中』政策とは、「三つの米中共同コミュニケと台湾関係法に基づく政策」としばしば説明される。
その三つの「共同コミュニケ」をすべて見れば明らかだが、米国は「世界で中国はただ一つ、中国とは中華人民共和国」といった意味の表明まではしているものの、「台湾は中国の不可分の領土」については、中国側がそうした立場であることに対して「認識する」と表明するにとどめている。つまり中国の「一中」原則の受け入れは拒否しているのだ。
■中国には憎むべきはずのティラーソン国務長官
そして「台湾関係法」に至っては、台湾が中国に帰属していないのを前提に、米国の台湾への武器供与を義務付けるなどする米国の国内法だ。中国には、こればかりは断じて認めることができない代物となる。
今回、王毅氏が握手を交わしたティラーソン氏自身は、一月十一日の上院での就任確認公聴会で、「一中」政策に関して「米国には台湾に対し、台湾関係法と六つの保証がある」と述べている。
もしそうした見解が反映されるなら、トランプ政権の「一中」政策には「六つの保証」も加えられることになるが、これは台湾関係法のガイドライン。内容については細部で異なる複数のバージョンがあるが、昨年五月十六日に下院で可決された決議案や、七月十八日の共和党全国大会で採択された政策綱領に盛り込まれた「六つの保証」は次のようなものである。
「対台武器供与の期限を設けない」
「台湾と中国の調停を行わない」
「台湾と中国に交渉するよう圧力をかけない」
「台湾の主権に関する長期的な立場を変えない」
「台湾関係法を改正する用意はない」
「台湾への武器売却について事前に中国の意見を聞かない」
もちろん中国は、こうしたものも決して容認できる訳がない。こんな反中国的な政策を口にするティラーソン氏など、あの国としては八つ裂きにしたいところだろう。
■米国政策を材料に印象操作を行う中国の巧妙な手口
しかしそれでありながらも中国側が、そのティラーソン氏と握手をしながら、こうした米国の「一中」政策を持ち上げるのはなぜかというと、それはそれで巧妙な情報捏造の宣伝工作になるからである。
中国が「米国が『一中』政策の堅持継続を表明した」と宣伝するだけで、世界中が、米国は中国の所謂「一中」原則、つまり「台湾は中国の不可分の領土」であると認めているとのイメージを抱くことになるだろう。
米国に対し、その中国・台湾政策に紛らわしい「一中」と名付けるよう要請したのは中国だとされる。こうした中国の宣伝工作に有利な状況を作り出すことを、あの国が狙ったのは間違いあるまい。
実際に、今回の米中外相会談に関し、TBSニュースなどは完全にその罠に引っ掛かり、次のような誤報を犯してしまった。
―――中国外務省は王毅外相が「(中略)アメリカ側が“中国と台湾は不可分であるとする「ひとつの中国」政策を維持する方針を示した”としています。
最早言を要すまい。米国が「中国と台湾は不可分である」などと表明する訳がないのである。
■TBSに電話で忠告―果たして聞き入れるか
実際に中国外務省が伝えた王毅氏の発言は上記の通り。「米国は明確に『一つの中国』政策の堅持継続を表明した」なのである。
それであるのにTBSは米国の「一中」政策を中国の「一中」原則と混同し、ご丁寧にも誤った説明を挿入し、全国に対して虚偽の報道を行ってしまったのだ。
「中国と台湾は不可分である」などと米国は言ってもいないし考えてもいない。しかし
それでありながらTBSは間違って…
TBSが参考にした中国外務省の報道発表。「『一中国』政策の堅持継続を表明」とあるだけで、どこにも「中国と台湾は不可分で
ある」などと書かれていない
私はTBSの視聴者窓口(03‐3746‐6666)に電話をかけ、この誤報を指摘した。対応に出た職員は私の説明に納得したようで、必ず報道担当者に伝えると約束した。
それでも今後もしTBSが同じ誤報を重ねたとしたら、それは同局が中国の情報操作に踊らされているというより、中国に迎合して騙されたふりをし、自ら進んで誤報を行っているということになるだろう。
そもそも中国の対外宣伝工作は、海外の中国迎合勢力の呼応があることを前提に展開される謀略でもあるのである。
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必読!産経の記事が正確―トランプは台湾を中国領土と認めていない(続々)17/02/16
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