森元首相の友情空し―蔡政権が東京五輪「台湾正名」に反対する愚
2020/09/22/Tue
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森喜朗元首相は9月18日午後、李登輝元総統の告別式への弔問団団長として台湾を訪問した。日本の元首相の訪台とあって、台湾では大変注目された。自宅で転んで腕を怪我している森氏だが、「たとえ骨折してでも台湾へ行く」と話したという親台派ならではのエピソードも感動的に報じられている。
森氏はその日、まず総統府に蔡英文総統を表敬訪問。時事通信によると蔡氏は「李元総統と台湾に対する友情に感謝する」と挨拶。森氏は菅義偉首相からの伝言として「何かの機会にお電話でも(いいから)お話しできればいいなと思っている」と伝えたという。
蔡氏は会談後、ツイッターに日本語で投稿。「森喜朗元総理が労を厭わず、怪我を押して李登輝元総統の追悼のために再びお運びいただいたことを心より感謝申し上げます」と述べ、「お互いのオリンピックチームのユニホームを交換し、来年の東京オリンピックが開催されることを楽しみにしています」と綴った。そして日台代表のユニフォーム(ジャンパー)を前にした記念写真も添えたのだが、私はその写真にとても残念な気持ちになった。
なぜなら台湾代表のそれには、大きく「CHINESE TAIPEI」と書かれているからである。
このチャイニーズ・タイペイ(中国台北)とは、世界のどこにも存在しない架空の名称だが、これは言うまでもなく中国の圧力に屈したIOCが、台湾に押し付けているものである。そこでこれまで日本と台湾では、「台湾は台湾。東京五輪では台湾の名を『チャイニーズ・タイペイ』から『台湾』に改めよう」と訴える東京五輪台湾正名運動が行われてきている。
そしてそうした中、台湾でこの運動を主導してきた蔡明憲元国防部長(国防相)は三年前、東京五輪組織委員会会長を務める森氏を訪問して支援を求めた際、森氏は蔡氏に対し、台湾側が国際五輪委員会(IOC)に台湾正名を行うようアドバイス。そして、もし台湾側がその方向で動くなら、自分はそれを支持すると伝えていたのである。ところがその森氏に対し、今回蔡英文氏は「CHINESE TAIPEI」を強調するデザインのジャンパーを贈ったのだ。
これでは森氏は、あるいは東京五輪組織委は、そして日本国民は、台湾では「チャイニーズ・タイペイ」の名は受け入れられており、「台湾」を主張するものは少数に過ぎないとの印象を持ちかねず、長く台湾の人々と共に台湾正名運動を進めてきた私には、それが残念でならないのである。
ただこのように書くと、「実際に多くの台湾人は台湾正名を求めてなどいない。そのことは二年前の公民投票で実証されているではないか」との反論、皮肉が聞かれそうである。
2018年11月24日に台湾で行われたその公民投票(国民投票)とは、「あなたは『台湾』(Taiwan)の名称で国際競技会や2020東京五輪へ参加申請することに同意するか」と問うものだ。事前の世論調査でも7割が「同意」と答えており、難なく通過するとの楽観的観測も広がっていたのだが、実際の結果は「同意」は476万票で「不同意」の577万票に勝てず、否決されてしまった。それを受け、「台湾国民は台湾正名を求めていない」との認識が日本でも広がったが、実際にはそうとは断言できない複雑な状況がある。
日本では一般に、民進党の蔡英文政権は台湾独立派だと見られており、この公民投票を積極的に応援するのも当然視されていたかもしれないが、実際には投票を支持しなかった。そのため「蔡政権のせいで投票は失敗した」との見方が台湾では持たれたが、それはあながち間違いではない。
この公民投票に激しく反対したのは言うまでもなく中国だが、その息のかかった国民党も猛反対した。そして国民党の息のかかった台湾の五輪委員会もまた猛反対し、同じくマスコミ各社も反対の論陣を張った。これら「反台湾」勢力の投票反対の主張は、「投票が可決されれば、台湾の選手は五輪への出場権が取り消される」というものだった。台湾国内の国民投票が実施されたことを理由に、IOCが台湾の参加を認めないということなどあり得ないのだが(IOC自身も台湾の民主的投票を尊重すると表明していた)、しかしマスコミはそうしたデマを報じたし、また選手たちもそうした事態への懸念を表明した(五輪員会に強制的に表明させられた)。そのため多くの国民は選手に同情し、やむなく「不同意」票を投じたのだ。
他方、こうした国民党の策謀に対し、民進党は何も対抗しなかったばかりか、何と国民党のデマに呼応し、「選手の出場権が大事だ」などとして不支持の姿勢を示した。
もし民進党がその気になり、全国の同党支持者を動員すれば、それだけで投票は可決されたと見るのが一般的だ。かくして「蔡政権のせいだ」との不満の声が広がった訳である。
そして今回、蔡総統が森氏に寄贈したジャンパーを見ると、やはりこの政権には、そもそも「チャイニーズ・タイペイ」の名に抵抗感はないのだと感じた次第である。彼女の政権は台湾独立派の支持は受けているが、それ自体は独立派ではない、ということがこの一事を見てもわかると思う。蔡政権は中国や国民党の反撥を恐れているだけだとの指摘も多いが、実際にはそれ以前に、中華民国体制を変えようという気など最初からないかに見える。
目下の武漢ウイルスのパンデミックの中、防疫対策で成功している台湾の存在がクローズアップされ、台湾でも台湾が中国と異なる国であることを世界に示そうとの機運が高まり、蔡政権はパスポートの表紙にあるTAIWANの文字を拡大し、「REPBULIC OF CHINA」(中華民国の英語表記)の文字を目立たないよう小さくすることを決めた。この「パスポート正名」に、蔡政権は当初は消極的に見えたが、それを求める国民の声の大きさに最後は押された格好だ。
しかしパスポートの「CHINA」の文字より、五輪での「CHINESE」の名称の方が、世界に誤解を与える力は大きいのである。そのことを私は台湾に訴えて行きたい。
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森喜朗元首相は9月18日午後、李登輝元総統の告別式への弔問団団長として台湾を訪問した。日本の元首相の訪台とあって、台湾では大変注目された。自宅で転んで腕を怪我している森氏だが、「たとえ骨折してでも台湾へ行く」と話したという親台派ならではのエピソードも感動的に報じられている。
森氏はその日、まず総統府に蔡英文総統を表敬訪問。時事通信によると蔡氏は「李元総統と台湾に対する友情に感謝する」と挨拶。森氏は菅義偉首相からの伝言として「何かの機会にお電話でも(いいから)お話しできればいいなと思っている」と伝えたという。
蔡氏は会談後、ツイッターに日本語で投稿。「森喜朗元総理が労を厭わず、怪我を押して李登輝元総統の追悼のために再びお運びいただいたことを心より感謝申し上げます」と述べ、「お互いのオリンピックチームのユニホームを交換し、来年の東京オリンピックが開催されることを楽しみにしています」と綴った。そして日台代表のユニフォーム(ジャンパー)を前にした記念写真も添えたのだが、私はその写真にとても残念な気持ちになった。
なぜなら台湾代表のそれには、大きく「CHINESE TAIPEI」と書かれているからである。
このチャイニーズ・タイペイ(中国台北)とは、世界のどこにも存在しない架空の名称だが、これは言うまでもなく中国の圧力に屈したIOCが、台湾に押し付けているものである。そこでこれまで日本と台湾では、「台湾は台湾。東京五輪では台湾の名を『チャイニーズ・タイペイ』から『台湾』に改めよう」と訴える東京五輪台湾正名運動が行われてきている。
そしてそうした中、台湾でこの運動を主導してきた蔡明憲元国防部長(国防相)は三年前、東京五輪組織委員会会長を務める森氏を訪問して支援を求めた際、森氏は蔡氏に対し、台湾側が国際五輪委員会(IOC)に台湾正名を行うようアドバイス。そして、もし台湾側がその方向で動くなら、自分はそれを支持すると伝えていたのである。ところがその森氏に対し、今回蔡英文氏は「CHINESE TAIPEI」を強調するデザインのジャンパーを贈ったのだ。
これでは森氏は、あるいは東京五輪組織委は、そして日本国民は、台湾では「チャイニーズ・タイペイ」の名は受け入れられており、「台湾」を主張するものは少数に過ぎないとの印象を持ちかねず、長く台湾の人々と共に台湾正名運動を進めてきた私には、それが残念でならないのである。
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2018年11月24日に台湾で行われたその公民投票(国民投票)とは、「あなたは『台湾』(Taiwan)の名称で国際競技会や2020東京五輪へ参加申請することに同意するか」と問うものだ。事前の世論調査でも7割が「同意」と答えており、難なく通過するとの楽観的観測も広がっていたのだが、実際の結果は「同意」は476万票で「不同意」の577万票に勝てず、否決されてしまった。それを受け、「台湾国民は台湾正名を求めていない」との認識が日本でも広がったが、実際にはそうとは断言できない複雑な状況がある。
日本では一般に、民進党の蔡英文政権は台湾独立派だと見られており、この公民投票を積極的に応援するのも当然視されていたかもしれないが、実際には投票を支持しなかった。そのため「蔡政権のせいで投票は失敗した」との見方が台湾では持たれたが、それはあながち間違いではない。
この公民投票に激しく反対したのは言うまでもなく中国だが、その息のかかった国民党も猛反対した。そして国民党の息のかかった台湾の五輪委員会もまた猛反対し、同じくマスコミ各社も反対の論陣を張った。これら「反台湾」勢力の投票反対の主張は、「投票が可決されれば、台湾の選手は五輪への出場権が取り消される」というものだった。台湾国内の国民投票が実施されたことを理由に、IOCが台湾の参加を認めないということなどあり得ないのだが(IOC自身も台湾の民主的投票を尊重すると表明していた)、しかしマスコミはそうしたデマを報じたし、また選手たちもそうした事態への懸念を表明した(五輪員会に強制的に表明させられた)。そのため多くの国民は選手に同情し、やむなく「不同意」票を投じたのだ。
他方、こうした国民党の策謀に対し、民進党は何も対抗しなかったばかりか、何と国民党のデマに呼応し、「選手の出場権が大事だ」などとして不支持の姿勢を示した。
もし民進党がその気になり、全国の同党支持者を動員すれば、それだけで投票は可決されたと見るのが一般的だ。かくして「蔡政権のせいだ」との不満の声が広がった訳である。
そして今回、蔡総統が森氏に寄贈したジャンパーを見ると、やはりこの政権には、そもそも「チャイニーズ・タイペイ」の名に抵抗感はないのだと感じた次第である。彼女の政権は台湾独立派の支持は受けているが、それ自体は独立派ではない、ということがこの一事を見てもわかると思う。蔡政権は中国や国民党の反撥を恐れているだけだとの指摘も多いが、実際にはそれ以前に、中華民国体制を変えようという気など最初からないかに見える。
目下の武漢ウイルスのパンデミックの中、防疫対策で成功している台湾の存在がクローズアップされ、台湾でも台湾が中国と異なる国であることを世界に示そうとの機運が高まり、蔡政権はパスポートの表紙にあるTAIWANの文字を拡大し、「REPBULIC OF CHINA」(中華民国の英語表記)の文字を目立たないよう小さくすることを決めた。この「パスポート正名」に、蔡政権は当初は消極的に見えたが、それを求める国民の声の大きさに最後は押された格好だ。
しかしパスポートの「CHINA」の文字より、五輪での「CHINESE」の名称の方が、世界に誤解を与える力は大きいのである。そのことを私は台湾に訴えて行きたい。
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