「日本は台湾返還していない」と暴露され狼狽―台湾の歴史教科書に怒る人民日報(下)
2019/11/30/Sat
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台湾の高校用の新しい歴史教科書はかつての中華民族主義のイデオロギーをますます捨て去り、史実を重視する姿勢であるため、中共の公定史観と対立することになる。中共機関紙、人民日報は十一月二十四日、「台湾の学界と教育界は新しい歴史教科書を批判する」と題する論説を掲げ、文攻(宣伝攻撃)に乗り出したが、特に怒りを露わにするのだが教科書が台湾地位未定論に言及したことだ。つまり日本に放棄された台湾の法的地位は未確定であり、中国領土にはなっていないとの事実を明らかにされ、慌てたのだ。しかし人民日報の論説を検証すればするほど、逆に「一つの中国」原則なるものが虚構であるのが明確になるのだ。
■日本は台湾を放棄したという記述は正確
人民日報は次のように書いている。
―――龍騰文化出版の高一用の歴史教科書の百一ページには、「台湾地位未定論」との小見出しがある。そこには「サンフランシスコ平和条約で日本は台湾の主権放棄を声明したが、主権をどこの国、またはどこの政権へ移譲するとは声明しなかった」と書かれている。
―――その教科書だけではない。南一書局発行の教科書にも、台湾の中国への復帰に関する重要な法的根拠であるカイロ宣言とポツダム布告に関し、何と「この二つの宣言は、ただの声明や布告でしかなく、正式な条約としての効果はないとも考えられ…」と書いているのだ。
要するに人民日報は、日本が領有していた台湾の第二次世界大戦後の帰属先に関する史実について、この二つの教科書は間違った記述をしていると批判しているのである。
サンフランシスコ平和条約に日本の首席全権として署名した吉田茂によると、「台湾という地域は、サンフランシスコ平和条約において日本政府が領土権を放棄しただけで、その正式の帰属はまだ決まっていないとするのが、旧連合国一般の見解である」(吉田茂『』大磯随想・世界と日本)が、人民日報はこの厳然たる事実を否定し、「カイロ宣言とポツダム布告」を法的根拠として、台湾は中国の領土の一部だと主張しているのだ。
サンフランシスコへ終わ条約で日本は台湾を放棄。しかし台湾の新たな帰属先は決められなかった。つま
り中華民国や中華人民共和国の領土にはならなかったのだ
そしてこれはまた、中国が世界中に押し付けてやまない「一つの中国」原則の論理でもある。
■結局台湾は中国に返還されなかった
「カイロ宣言とポツダム布告」は「ただの声明や布告でしかなく、正式な条約としての効果はないとする南一書局版の教科書の記述こそが正しい。「宣言」の呼称には条約の響きがあるが、しかし「カイロ宣言」は単なるプレスリリースであり、ポツダム布告(日本では「ポツダム宣言」とされる)もただの布告。いずれも条約ではないのである。
ところが人民日報はこうも書く。
―――台湾の歴史学者である王立本はこう反論する。「カイロ宣言は明確に(日本は)台湾、澎湖、東北(※満洲)を中国へ返還すると規定している。そしてそれはポツダム宣言において確認され、日本は降伏文書でポツダム宣言を順守するとした。こうした流れは明確だ」。
この王立本という人物は中国の大学で教鞭をとる第二次世界大戦史の専門家らしいが、「学者」とは言っても、単なる中共の御用学者らしく、言っているのは中共の「一つの中国」宣伝にしか過ぎない。
彼が言うのは、カイロ宣言が日本による台湾の中国(中華民国)への返還を規定し、ポツダム布告は日本にその順守を求め、そして日本は降伏文書でポツダム布告の順守を成約したという「流れ」だ。
その「流れ」自体は事実である。降伏文書は休戦協定であるから、日本がこれにより、台湾返還という法的な義務を負ったのも事実だ。しかし誤っているのは、この休戦協定によって「台湾の中国への復帰」が行われたということだ。
国際法を理解していればわかるはず。戦争の結果に伴う領土の変更は、休戦協定ではなく平和条約に基づいて行われるのが国際法上の原則なのだ。
確かに休戦協定締結後、台湾に進駐した中華民国軍が勝手に領有を宣言し、また国共内戦で敗れた中華民国政府が台湾へ亡命し、そして新たに誕生した中華人民共和国が台湾の領有を主張始めるという騒ぎはあったが、しかし台湾は法的にはまだ日本領土であり続けた。
そしてその後締結されたサンフランシスコ平和条約によって日本は、まさに龍騰文化出版の教科書にあるように、「台湾の主権放棄を声明したが、主権をどこの国、またはどこの政権へ移譲するとは声明しなかった」わけである。
日本は連合国に対する降伏文書の署名を通じ、台湾を中国へ割譲することを約束させられたが、しかし
その約束を果たす前に台湾の放棄させられたため、中国への台湾割譲は永遠に不可能になったのだ
■やはり「一つの中国」原則は間違いだ
かくして台湾は「地位未定」の状況に置かれたのだ。たしかに中華民国亡命政権の支配下に置かれたが、それで中華民国領となったわけでもなく、もちろん中華人民共和国の領土になったわけでもない。
―――彼(王立本)は、特に一九七二年、大陸(※中国)政府と日本は国交樹立に際しての声明で、再度台湾と澎湖の主権の帰属先を明確にした。はっきりと明文化されているのだ。所謂台湾の地位未定論など、台湾独立派が歴史を都合いいように切り貼りした産物に過ぎない。
一九七二年の日中共同声明の話をしているようだ。しかしこの王立本のコメントを読むと、まるで日本も「台湾と澎湖の主権の帰属先」は中国であると承認したかに聞こえるが、日本はそのようなことはしていない。「台湾は中国の一部」と主張する中国の「立場」を理解し尊重するとは声明したが、しかしどんな中国に要求されても、ついに中国の一部だとは認めなかったのである。
一九六四年、池田勇人首相は国会外務委員会・予算委員会でこう述べた。
「(台湾を)日本は放棄しただけでございます、連合国に対しまして。したがって、これを客観的に、連合国が確定しておりませんから、未確定と言い得ましょう。日本は放棄しただけ、これが法律上の日本の立場でございます」
「台湾地位未定」という日本政府の考えは、今日も変わっていない(対中関係を慮り、「地位未定」とは言わなくなっているが)。「旧連合国一般」も同じだろう。
だから「台湾の地位未定論など、台湾独立派が歴史を都合いいように切り貼りした産物に過ぎない」という人民日報の指摘は間違っている。そして「一つの中国」原則なるものもだ。
人民日報の論説が先ず攻撃の矛先を向けたのが、台湾の教科書が「一つ
の中国」原則を根底から覆す台湾地位未定論に関し記述したことだ。しかし論説の
内容を検証すると、かえって「一つの中国」の誤りが明らかになる
■馬英九前総統のでたらめ言論
―――台湾地区の前指導者、馬英九も記者会見動画で新しい歴史教科書の誤りを批判し、台湾地位未定論は間違いだらけで、「教科書までがこれを掲げるとはめちゃくちゃだ」と直接非難した。
「台湾地区の前指導者」とは中国特有の表現で、つまり「台湾の前総統」の意味。
私もそのビデオを見たが、実に馬鹿馬鹿しい内容。馬英九は「私は国際法を学んだ者です」と前置きし、「台湾地位未定論は中華民国の台湾統治の基礎を否定するものだ」と強調した後、何と人民日報と同じ主張を展開しているではないか。
「私は国際法を学んだ」と前置きし、台湾地位未定論を批判する馬英九前総統。しかしその語るところ
は基本的には人民日報と同じ内容。法理捏造に基づいており、良心が感じられない
更には台湾地位未定論を否定するため、日華平和条約の内容をもさまざま捏造しているに驚いた。ただこれについては本題から逸れるので、後日また別稿にて。
とにかく馬英九は元総統であり国際法学者だが、しかし中華民族主義者であるため中共と同じ穴の狢。とにかくウソまみれだ。
台湾の歴史教科書問題が書いた史実が中華民族主義の虚構宣伝と対立すれば、当然史実を捏造したがる国内の中共や国内の中華民族主義者や中共から攻撃されることになる。それは日本の歴史教科書が国内の左翼勢力と中共から攻撃されたのと、全く同じ構図ではないだろうか。
(おわり)
台湾の歴史教科書に怒る人民日報(上) 19/11/28
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3394.html
「日本統治時代」評価が許せぬ中華民族主義―台湾の歴史教科書に怒る人民日報(中) 19/11/29
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3395.html
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■日本は台湾を放棄したという記述は正確
人民日報は次のように書いている。
―――龍騰文化出版の高一用の歴史教科書の百一ページには、「台湾地位未定論」との小見出しがある。そこには「サンフランシスコ平和条約で日本は台湾の主権放棄を声明したが、主権をどこの国、またはどこの政権へ移譲するとは声明しなかった」と書かれている。
―――その教科書だけではない。南一書局発行の教科書にも、台湾の中国への復帰に関する重要な法的根拠であるカイロ宣言とポツダム布告に関し、何と「この二つの宣言は、ただの声明や布告でしかなく、正式な条約としての効果はないとも考えられ…」と書いているのだ。
要するに人民日報は、日本が領有していた台湾の第二次世界大戦後の帰属先に関する史実について、この二つの教科書は間違った記述をしていると批判しているのである。
サンフランシスコ平和条約に日本の首席全権として署名した吉田茂によると、「台湾という地域は、サンフランシスコ平和条約において日本政府が領土権を放棄しただけで、その正式の帰属はまだ決まっていないとするのが、旧連合国一般の見解である」(吉田茂『』大磯随想・世界と日本)が、人民日報はこの厳然たる事実を否定し、「カイロ宣言とポツダム布告」を法的根拠として、台湾は中国の領土の一部だと主張しているのだ。
サンフランシスコへ終わ条約で日本は台湾を放棄。しかし台湾の新たな帰属先は決められなかった。つま
り中華民国や中華人民共和国の領土にはならなかったのだ
そしてこれはまた、中国が世界中に押し付けてやまない「一つの中国」原則の論理でもある。
■結局台湾は中国に返還されなかった
「カイロ宣言とポツダム布告」は「ただの声明や布告でしかなく、正式な条約としての効果はないとする南一書局版の教科書の記述こそが正しい。「宣言」の呼称には条約の響きがあるが、しかし「カイロ宣言」は単なるプレスリリースであり、ポツダム布告(日本では「ポツダム宣言」とされる)もただの布告。いずれも条約ではないのである。
ところが人民日報はこうも書く。
―――台湾の歴史学者である王立本はこう反論する。「カイロ宣言は明確に(日本は)台湾、澎湖、東北(※満洲)を中国へ返還すると規定している。そしてそれはポツダム宣言において確認され、日本は降伏文書でポツダム宣言を順守するとした。こうした流れは明確だ」。
この王立本という人物は中国の大学で教鞭をとる第二次世界大戦史の専門家らしいが、「学者」とは言っても、単なる中共の御用学者らしく、言っているのは中共の「一つの中国」宣伝にしか過ぎない。
彼が言うのは、カイロ宣言が日本による台湾の中国(中華民国)への返還を規定し、ポツダム布告は日本にその順守を求め、そして日本は降伏文書でポツダム布告の順守を成約したという「流れ」だ。
その「流れ」自体は事実である。降伏文書は休戦協定であるから、日本がこれにより、台湾返還という法的な義務を負ったのも事実だ。しかし誤っているのは、この休戦協定によって「台湾の中国への復帰」が行われたということだ。
国際法を理解していればわかるはず。戦争の結果に伴う領土の変更は、休戦協定ではなく平和条約に基づいて行われるのが国際法上の原則なのだ。
確かに休戦協定締結後、台湾に進駐した中華民国軍が勝手に領有を宣言し、また国共内戦で敗れた中華民国政府が台湾へ亡命し、そして新たに誕生した中華人民共和国が台湾の領有を主張始めるという騒ぎはあったが、しかし台湾は法的にはまだ日本領土であり続けた。
そしてその後締結されたサンフランシスコ平和条約によって日本は、まさに龍騰文化出版の教科書にあるように、「台湾の主権放棄を声明したが、主権をどこの国、またはどこの政権へ移譲するとは声明しなかった」わけである。
日本は連合国に対する降伏文書の署名を通じ、台湾を中国へ割譲することを約束させられたが、しかし
その約束を果たす前に台湾の放棄させられたため、中国への台湾割譲は永遠に不可能になったのだ
■やはり「一つの中国」原則は間違いだ
かくして台湾は「地位未定」の状況に置かれたのだ。たしかに中華民国亡命政権の支配下に置かれたが、それで中華民国領となったわけでもなく、もちろん中華人民共和国の領土になったわけでもない。
―――彼(王立本)は、特に一九七二年、大陸(※中国)政府と日本は国交樹立に際しての声明で、再度台湾と澎湖の主権の帰属先を明確にした。はっきりと明文化されているのだ。所謂台湾の地位未定論など、台湾独立派が歴史を都合いいように切り貼りした産物に過ぎない。
一九七二年の日中共同声明の話をしているようだ。しかしこの王立本のコメントを読むと、まるで日本も「台湾と澎湖の主権の帰属先」は中国であると承認したかに聞こえるが、日本はそのようなことはしていない。「台湾は中国の一部」と主張する中国の「立場」を理解し尊重するとは声明したが、しかしどんな中国に要求されても、ついに中国の一部だとは認めなかったのである。
一九六四年、池田勇人首相は国会外務委員会・予算委員会でこう述べた。
「(台湾を)日本は放棄しただけでございます、連合国に対しまして。したがって、これを客観的に、連合国が確定しておりませんから、未確定と言い得ましょう。日本は放棄しただけ、これが法律上の日本の立場でございます」
「台湾地位未定」という日本政府の考えは、今日も変わっていない(対中関係を慮り、「地位未定」とは言わなくなっているが)。「旧連合国一般」も同じだろう。
だから「台湾の地位未定論など、台湾独立派が歴史を都合いいように切り貼りした産物に過ぎない」という人民日報の指摘は間違っている。そして「一つの中国」原則なるものもだ。
人民日報の論説が先ず攻撃の矛先を向けたのが、台湾の教科書が「一つ
の中国」原則を根底から覆す台湾地位未定論に関し記述したことだ。しかし論説の
内容を検証すると、かえって「一つの中国」の誤りが明らかになる
■馬英九前総統のでたらめ言論
―――台湾地区の前指導者、馬英九も記者会見動画で新しい歴史教科書の誤りを批判し、台湾地位未定論は間違いだらけで、「教科書までがこれを掲げるとはめちゃくちゃだ」と直接非難した。
「台湾地区の前指導者」とは中国特有の表現で、つまり「台湾の前総統」の意味。
私もそのビデオを見たが、実に馬鹿馬鹿しい内容。馬英九は「私は国際法を学んだ者です」と前置きし、「台湾地位未定論は中華民国の台湾統治の基礎を否定するものだ」と強調した後、何と人民日報と同じ主張を展開しているではないか。
「私は国際法を学んだ」と前置きし、台湾地位未定論を批判する馬英九前総統。しかしその語るところ
は基本的には人民日報と同じ内容。法理捏造に基づいており、良心が感じられない
更には台湾地位未定論を否定するため、日華平和条約の内容をもさまざま捏造しているに驚いた。ただこれについては本題から逸れるので、後日また別稿にて。
とにかく馬英九は元総統であり国際法学者だが、しかし中華民族主義者であるため中共と同じ穴の狢。とにかくウソまみれだ。
台湾の歴史教科書問題が書いた史実が中華民族主義の虚構宣伝と対立すれば、当然史実を捏造したがる国内の中共や国内の中華民族主義者や中共から攻撃されることになる。それは日本の歴史教科書が国内の左翼勢力と中共から攻撃されたのと、全く同じ構図ではないだろうか。
(おわり)
台湾の歴史教科書に怒る人民日報(上) 19/11/28
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3394.html
「日本統治時代」評価が許せぬ中華民族主義―台湾の歴史教科書に怒る人民日報(中) 19/11/29
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3395.html
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