中国の弱点を衝け!―日本の戦略から見た台湾の国連加盟問題
2007/08/22/Wed
以下は「台湾がかわいそう」「台湾人の人権を守れ」と言った甘ったるい次元の話ではない。いかに日本が独力で中国と対峙して行くかと言う国家戦略の問題である。
■名もなき小国群の訴えに耳を
一部の国連加盟国は八月十四日、九月十八日からの第六十二回総会を前に、「台湾の加盟申請案を処理することを求める請願」と題する提案を総会における議題の補充事項に加えるよう共同で要求した。
これは台湾加盟問題を議題に上らせようと言う、台湾の友好国による毎年「恒例」のアクションだ。もっとも十四年間以上にわたって行われているが、毎回中国の圧力で虚しくも失敗に終わっている。今年の場合は、さきに陳水扁総統が国連事務局に対して行った二回もの加盟申請が門前払いを受けているので、きちんとそれを処理するよう求めることに主眼が置かれている。
今回、要求を行った国は十五ヶ国だ。台湾と国交を持つ国はわずか二十四ヶ国だから、その中でも中国に配慮し、あるいはその圧力に屈している国が多くあるわけで、台湾の外交上の苦境は相当なものだと理解できる。
ちなみに十五ヶ国の内訳は、ソロモン諸島、ナウル、ガンビア、マラウイ、パラオ、スワジランド、ツバル、サントメ・プリンシペ、マーシャル諸島、セントクリストファー・ネーヴィス、セントビンセント及びグレナディーン諸島、ホンジュラス、ブルキナファソ、キリバス、ベリーズ。どれもこれもが国際社会にはほとんど影響力を持たない小国ばかりである。台湾の政府はこれらの台湾支援に鄭重なる感謝の意を捧げているが、国民の多くは、それらの国々が地球上のどこにあるかも知らないでいる。
今年の提案の目的は、「台湾の国連加盟への支持を表明することと、台湾の加盟案が公正に処理されていないことを国連が正視するよう求める」ことにあると言うが、こうした一部の小国群の訴えなど、他の加盟国は見向きもしないだろう。だが忘れてならないのは、このような訴えこそが、国際正義に適ったものだと言うことだ。
■日本も正論さえ唱えればいい
たとえば、陳水扁総統の加盟申請を受理しなかった潘基文事務総長の理由とは「第二七五八号決議によって、国連は中国は一つ(台湾は中国領土)と認めている」と言うものだったが、それは明らかに中国の意に従った事実の捏造である。なぜなら同決議は、中国と台湾のうち、中国に中国代表権を与えると言う内容であり、台湾の帰属先に関するものでは一切なかったからだ。
つまり「公正に処理されていない」のだ。だが多くの国はそれに異議を唱えることはない。米国や日本も、事務総長の措置に支持を表明している。その理由は「台湾は国家ではなく、加盟の資格はない」と言うものだった。日米はたしかに台湾を国家と承認してはいないが、だからと言って日米の承認が国連加盟資格の基準になっているわけではない。それよりも加盟国としてここで問題にするべきは、潘事務総長の不公正な処理のあり方なのである。国連事務局たる者が、台湾侵略の野心に燃える中国の言いなりになって動いていることを、どうして許容できるのかと言う、国連の存在意義に関わる問題である。
そこで主張したいのは、大国である日本も「台湾加盟支持の陣営に加われ」と言うことだ。
もしそのために中国が、あるいは中国に配慮する米国などが、非難を加えてきたならば、陳水扁総統が主張する如く、以下のように正論を唱えさえすればいい。
「台湾は中華人民共和国と『一つの中国』の代表権を争うつもりはなく、『一つの中国』とは当然ながら中華人民共和国である。中国は国連で議席を持っているが、二千三百万の台湾の国民の国連における代表権は解決していない。いま議論すべきことは、二千三百万の台湾の国民の国連代表権の問題である」
「二千三百万の台湾の国民が国際機関に参加する集団人権は剥奪されたり、制限されてはならない」
そしてその上で、「それでも中国に配慮し、台湾加盟に反対するのか」「台湾は世界で第十八番目の経済体であり、第十六番目の貿易国であり、世界で二十位以内にランクされる対外投資国であって、完全に国際社会の重要メンバーの一つである。それでもなお、その存在を無視するのか」と訴えればいいのである。
■これが真の「大国への道」だ
これは国連の「大改革」に繋がる。日本のような影響国を持つ大国がこのような挙に出たならば、台湾加盟問題が未解決のまま放置してきた国連の不条理さに、必ず注目が集まることだろう。
そしてそうなれば、中国はますます非難を激化させるはずだ。米国なども大慌てで自重するよう圧力をかけてくることだろう。
それであるなら日本は、「台湾は中国の領土ではない」と訴えればいいのだ。「中国は日本が台湾を自国に返還したと言って、それを台湾領有権の唯一の根拠としているが、日本が台湾を返還した事実はない」との「歴史の証言」を行えばいいのである。
中国以外の国で、この真実を否定できる国は存在しないのである。たったそれだけで、国際社会には大衝撃が走ることだろう。
そして多くの国は、台湾と言う先進的な民主主義国家の存在を無視してきた国連の、あるいは国際社会の現実が、正義や理想とは無縁のものであることを知ることになるのである。そして中国の長年にわたる台湾領有の主張が、たんなる領土的野心に過ぎないと言うことも。
もっともそうすることによって、台湾加盟が実現するかどうかはわからない。ただそのような行動に出ることが、日本が中国覇権主義の拡張に対する抑止力となるのだ。所謂「大国の影響力」とは、このように発揮するべきものではないのか。日本人が憧れる「国際貢献」と言うのも、このようなものであるべきだ。
そのような「独走」で国際社会で孤立しないかとの懸念もあろうが、日本はそう言った弱気こそを捨てるべきだ。むしろ日本の奮起に、中国の脅威におびえるアジア、そして世界の国々は、これに拍手を惜しまないはずである。日本は世界における正義の旗手として尊敬を集めることとなるだろう。連鎖反応も国際世論の間できっと起こる。
■国民が関心をーやがてくる戦いの日に備え
そうなってこそ日本は初めて、中国と戦うことが可能となるのだが……、もちろん以上はまったくの夢物語である。たったこれだけのことですら、中国を刺激することを何よりも恐れる今の政府は考えたこともないだろうし、考えたくもないだろう。
しかし国民はどうだろう。中国の横暴は許したくない、その軍拡は阻止したい、台湾の国連加盟を実現し、台湾問題を国際社会の関心事にして隣国日本の安全保障としたいと言う意見を一大世論にまでしてしまえば、それだけで国家の意思、進路と言うものに影響を及ぼして行くのではないだろうか。
日本が好むと好まざるとに関わらず、中国との「戦い」は不可避なのである。政府が今日、その圧力に屈して手も足も出ないような状況を打破するためには、国民もまた戦略的思考を持ち、政府の後押しをしなければならないのである。
毎年浮上する台湾の国連加盟問題に中国が敏感に反応するのは、そこにこそ中国の弱点があるからだ。なにしろ台湾が国連に加盟してしまっては、その台湾問題は世界の関心事となり、中国が国家戦略の上で受けるダメージははかり知れないものがある。
だから「政府はそこを衝け」と訴えるのだ。
国民の正論に政府が動かないとは誰も言えない。なぜなら政府もやがてこれまで以上に、中国の脅威に直面せざるを得なくなる情勢にあるからである。
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■名もなき小国群の訴えに耳を
一部の国連加盟国は八月十四日、九月十八日からの第六十二回総会を前に、「台湾の加盟申請案を処理することを求める請願」と題する提案を総会における議題の補充事項に加えるよう共同で要求した。
これは台湾加盟問題を議題に上らせようと言う、台湾の友好国による毎年「恒例」のアクションだ。もっとも十四年間以上にわたって行われているが、毎回中国の圧力で虚しくも失敗に終わっている。今年の場合は、さきに陳水扁総統が国連事務局に対して行った二回もの加盟申請が門前払いを受けているので、きちんとそれを処理するよう求めることに主眼が置かれている。
今回、要求を行った国は十五ヶ国だ。台湾と国交を持つ国はわずか二十四ヶ国だから、その中でも中国に配慮し、あるいはその圧力に屈している国が多くあるわけで、台湾の外交上の苦境は相当なものだと理解できる。
ちなみに十五ヶ国の内訳は、ソロモン諸島、ナウル、ガンビア、マラウイ、パラオ、スワジランド、ツバル、サントメ・プリンシペ、マーシャル諸島、セントクリストファー・ネーヴィス、セントビンセント及びグレナディーン諸島、ホンジュラス、ブルキナファソ、キリバス、ベリーズ。どれもこれもが国際社会にはほとんど影響力を持たない小国ばかりである。台湾の政府はこれらの台湾支援に鄭重なる感謝の意を捧げているが、国民の多くは、それらの国々が地球上のどこにあるかも知らないでいる。
今年の提案の目的は、「台湾の国連加盟への支持を表明することと、台湾の加盟案が公正に処理されていないことを国連が正視するよう求める」ことにあると言うが、こうした一部の小国群の訴えなど、他の加盟国は見向きもしないだろう。だが忘れてならないのは、このような訴えこそが、国際正義に適ったものだと言うことだ。
■日本も正論さえ唱えればいい
たとえば、陳水扁総統の加盟申請を受理しなかった潘基文事務総長の理由とは「第二七五八号決議によって、国連は中国は一つ(台湾は中国領土)と認めている」と言うものだったが、それは明らかに中国の意に従った事実の捏造である。なぜなら同決議は、中国と台湾のうち、中国に中国代表権を与えると言う内容であり、台湾の帰属先に関するものでは一切なかったからだ。
つまり「公正に処理されていない」のだ。だが多くの国はそれに異議を唱えることはない。米国や日本も、事務総長の措置に支持を表明している。その理由は「台湾は国家ではなく、加盟の資格はない」と言うものだった。日米はたしかに台湾を国家と承認してはいないが、だからと言って日米の承認が国連加盟資格の基準になっているわけではない。それよりも加盟国としてここで問題にするべきは、潘事務総長の不公正な処理のあり方なのである。国連事務局たる者が、台湾侵略の野心に燃える中国の言いなりになって動いていることを、どうして許容できるのかと言う、国連の存在意義に関わる問題である。
そこで主張したいのは、大国である日本も「台湾加盟支持の陣営に加われ」と言うことだ。
もしそのために中国が、あるいは中国に配慮する米国などが、非難を加えてきたならば、陳水扁総統が主張する如く、以下のように正論を唱えさえすればいい。
「台湾は中華人民共和国と『一つの中国』の代表権を争うつもりはなく、『一つの中国』とは当然ながら中華人民共和国である。中国は国連で議席を持っているが、二千三百万の台湾の国民の国連における代表権は解決していない。いま議論すべきことは、二千三百万の台湾の国民の国連代表権の問題である」
「二千三百万の台湾の国民が国際機関に参加する集団人権は剥奪されたり、制限されてはならない」
そしてその上で、「それでも中国に配慮し、台湾加盟に反対するのか」「台湾は世界で第十八番目の経済体であり、第十六番目の貿易国であり、世界で二十位以内にランクされる対外投資国であって、完全に国際社会の重要メンバーの一つである。それでもなお、その存在を無視するのか」と訴えればいいのである。
■これが真の「大国への道」だ
これは国連の「大改革」に繋がる。日本のような影響国を持つ大国がこのような挙に出たならば、台湾加盟問題が未解決のまま放置してきた国連の不条理さに、必ず注目が集まることだろう。
そしてそうなれば、中国はますます非難を激化させるはずだ。米国なども大慌てで自重するよう圧力をかけてくることだろう。
それであるなら日本は、「台湾は中国の領土ではない」と訴えればいいのだ。「中国は日本が台湾を自国に返還したと言って、それを台湾領有権の唯一の根拠としているが、日本が台湾を返還した事実はない」との「歴史の証言」を行えばいいのである。
中国以外の国で、この真実を否定できる国は存在しないのである。たったそれだけで、国際社会には大衝撃が走ることだろう。
そして多くの国は、台湾と言う先進的な民主主義国家の存在を無視してきた国連の、あるいは国際社会の現実が、正義や理想とは無縁のものであることを知ることになるのである。そして中国の長年にわたる台湾領有の主張が、たんなる領土的野心に過ぎないと言うことも。
もっともそうすることによって、台湾加盟が実現するかどうかはわからない。ただそのような行動に出ることが、日本が中国覇権主義の拡張に対する抑止力となるのだ。所謂「大国の影響力」とは、このように発揮するべきものではないのか。日本人が憧れる「国際貢献」と言うのも、このようなものであるべきだ。
そのような「独走」で国際社会で孤立しないかとの懸念もあろうが、日本はそう言った弱気こそを捨てるべきだ。むしろ日本の奮起に、中国の脅威におびえるアジア、そして世界の国々は、これに拍手を惜しまないはずである。日本は世界における正義の旗手として尊敬を集めることとなるだろう。連鎖反応も国際世論の間できっと起こる。
■国民が関心をーやがてくる戦いの日に備え
そうなってこそ日本は初めて、中国と戦うことが可能となるのだが……、もちろん以上はまったくの夢物語である。たったこれだけのことですら、中国を刺激することを何よりも恐れる今の政府は考えたこともないだろうし、考えたくもないだろう。
しかし国民はどうだろう。中国の横暴は許したくない、その軍拡は阻止したい、台湾の国連加盟を実現し、台湾問題を国際社会の関心事にして隣国日本の安全保障としたいと言う意見を一大世論にまでしてしまえば、それだけで国家の意思、進路と言うものに影響を及ぼして行くのではないだろうか。
日本が好むと好まざるとに関わらず、中国との「戦い」は不可避なのである。政府が今日、その圧力に屈して手も足も出ないような状況を打破するためには、国民もまた戦略的思考を持ち、政府の後押しをしなければならないのである。
毎年浮上する台湾の国連加盟問題に中国が敏感に反応するのは、そこにこそ中国の弱点があるからだ。なにしろ台湾が国連に加盟してしまっては、その台湾問題は世界の関心事となり、中国が国家戦略の上で受けるダメージははかり知れないものがある。
だから「政府はそこを衝け」と訴えるのだ。
国民の正論に政府が動かないとは誰も言えない。なぜなら政府もやがてこれまで以上に、中国の脅威に直面せざるを得なくなる情勢にあるからである。
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