隣国台湾で今何が?―中国も巻き込む「近代vs前近代」決戦が間もなく
2015/10/31/Sat
■台湾総統選挙―日本メディアが気にする中国の動向
来年一月に投開票される台湾の総統選挙では、国民党から最大野党の民進党が政権を奪取する可能性が高まっている。そこで日本でも注目されるのが、中国の反応だ。
総統選挙では民進党候補、蔡英文主席の勝利が予測されるが、これに対して日本のメディアが
懸念するのは…
それについて毎日新聞は七月二十六日の社説で次のように書いていた。
―――政権奪還を目指す民進党の課題は対中政策だ。中国は中台が「一つの中国」に属すると主張する。馬政権は「一つの中国」を認めるが、その内容は独自に解釈するという「1992年合意」を基に交流を進めてきた。しかし、台湾独立綱領を持つ民進党はこの合意を認めていない。
民進党が「1992年合意」なるものを認めていないのは、「台湾独立綱領」の問題以前に、その「合意」自体が国民党のでっち上げであり、そもそも存在していないと見られるからだ。
ちなみに台湾を中国の一部とする「一つの中国」の考えは、国共両党の中国人が案出したフィクションだ。国際法的に見て台湾は中国の一部ではなく、日本を含む世界各国の政府も、それを承認していない。
■台湾「新政権」に対中従属を求めた毎日新聞
それから民進党は「台湾独立綱領」(中華民国体制を打破した台湾建国を謳う)をとうに棚上げし、中華民国を主権国家として認めている。
もっとも「一つの中国」を否定し、台湾を「主権国家」と主張する同党を、中国は台独分裂勢力として敵視、警戒しているのは事実だ。そこで毎日社説は、民進党が「中台関係の悪化を望まない住民の支持を得るため、今後、『92年合意』にどう対応するかが焦点になる」とした上で、次のように訴える。
―――96年の総統選の際、中国がミサイル演習を実施し、米国が空母艦隊を台湾海峡に派遣して緊張が高まった。中国が再び、圧力をかけるようなことはあってはならないが、中台関係の行方は東アジアの安全保障環境にも大きな影響を与える。日本としても冷静に見守りたい。
要するに、日本もまた「中台関係の悪化を望まない」のであれば、もし民進党が政権を獲得するのなら、「一つの中国」を受け入れるべきだと言いたいようだ。
だがそんな考えでアジアの繁栄と平和を守ることができると思っているのか。
■台湾問題では「思考停止」に陥る日本のメディア
「冷静に見守りたい」というのは、「例え中国が横暴な圧力をかけても、そればかりを批判してはいけないよ」という意味に聞こえてしまう。緊張緩和のためであるなら、中国に譲歩を求めるより台湾に犠牲を強いようとするのが、従来日本のメディアに目立つ傾向だからだ。
それは台湾報道で中国の逆鱗に触れたくないとの一念が生む思考停止の傾向と呼んでもいいかも知れない。
そしてそうしたメディアの「思考停止」も大きく手伝い、日本国民の多くは、台湾で現在、「近代」と「前近代」と言う文化、文明的な摩擦が進行中であり、そしてそれらが激しくぶつかり合うのが、今度の総統選であるという視点を持てずにいる。
台湾と同様、やはり近代国家として、中国の「前近代」に振り回される日本としては、そうした隣国の状況に無関心ではいられないはずなのだが。
■国際社会の民主主義に挑戦する中国民族主義
そもそも、政権を失うことが予測される国民党とはいかなる勢力なのか。
それを語る前にまず、同党が「一つの中国」の主張で繋がる中国の現況を考えたい。
台湾紙自由時報の三月二十八日に掲載した「民族主義は普遍的価値観には対抗しきれない」と題する社説によれば、
―――近年来、中国は「民族振興」とのスローガンで、絶えず全世界の中国人の祖国意識を刺激し続け、中国擡頭という表面的なイメージ作りを行っているが、それは明らかに時代遅れの民族主義を活用し、民主主義という普遍的価値観を押さえ付け、共産党の一党独裁を強固たらしめようとするものだ。
―――日本に対しては、実に安っぽく民族主義を操作し、徹底的だ。民主主義、自由、人権を追究する国際秩序の中において、中共は常に民族主義の大刀を振り回し、十三億人と在外中国人を覇権擡頭の自爆テロリストに仕立て上げようとしている。
―――こうした狂った振る舞い、特に「公海である南海(※南支那海)」を「中国の南海」に変えようとする動きを受け、米国からベトナムに至るまでみな極度の警戒を強めている。
以上の状況は日本国民もよく知るところだが、さて社説はいよいよここで、国民党に言及する。
■中国民族主義に唯一迎合するのが国民党
次のようにだ。
―――残念なことに、ただ台湾の馬英九やその同類だけが、嬉々として中国民族主義に迎合するのだ。そしてややもすれば「両岸は同じく炎黄の子孫(※中華民族)だ」と叫び、台湾の主権ある地位を矮小化し、中国の国際社会におけるトラブル作りの共犯となっている。
国民党政権のそうした中華民族主義に基づく「中国迎合」の最新の例としては、「抗日戦争勝利及び台湾光復」七十周年記念キャンペーンが挙げられるだろう。
すなわち中共と歩調を合わせ、七十年前の対日戦争の勝利とそれに伴う台湾の日本からの奪取という中華民族の栄光を強調する洗脳宣伝工作のことだ。
これに関して自由時報は十月二十七日、こう伝えた。
―――馬総統は今年に入り、スピーチを行えば抗戦の話題を繰り返し、中国(※中華民国)の第二次大戦勝利に対する貢献を讃え、台湾と中国との連結を企てるのだが、それは中国の観点に立ったものであり、台湾の主体性を全く軽視している。
―――統一派の人々もそれに乗じ、「抗戦の結果、台湾人民は祖国の懐に戻ることができた」と喧伝し、それに対して尊崇の気持ちを持たない者は「皇民の残党」(※日本統治の悪影響を引き摺る者)と看做そうとする。
―――馬政権は一億元もの税金を使って「抗戦七十周年」記念活動を行い、国防部、退輔委員会、国史館、外交部、僑務委員会を総動員しただけでなく、教育部を通じて学校に愛国歌、ポスター、書、詩文などのコンクールを実施させ、朝礼の時間に関連映像を鑑賞させることまでした。
中共と歩調を合わせるかのように、抗日戦争勝利70周年の宣伝に余念なき馬英九総統。狙いは
台湾での中華民族主義の発揚。中共に期待に応えようとしているかに見える
だが台湾は民主主義の社会、国家であり、国民も近代的国民であって、愚民ではない。そうした前近代的な洗脳宣伝に踊らされることはないのである。そのため、国内では次のような状況だ。
―――しかし馬総統がいかに「抗戦」「光復」史観を強調しても、彼の支持率がわずか九%に過ぎないのと同様、社会の反応は冷淡だ。
それは当然だろう。「中国民族主義に迎合し、台湾の主権ある地位を矮小化」して行けば、やがて中国の併呑を受けかねないからだ。
■台湾戦後史は「近代」と「前近代」の対立の歴史
前掲の自由時報社説「民族主義は…」には次のようにもある。
―――(昨年の)ヒマワリ学生運動や統一地方選挙でも見られたように、人々はどんどん近代的な理性で物事を考えるようになってきたが、それは国家の正常化に向けた動力となるのだ。
国民党政権が推進する中国傾斜政策に反撥したヒマワリ学生運動は
民主化後に生まれ育った若者が原動力。全国の人々を覚醒させた
―――残念なのは少数の人々の考えが前近代的であること。彼らは党国(※国民党と国家の一体化)時代の残滓であるイデオロギーや体制にすがって既得権益を守るとともに、進歩を求める多くの人々の声を踏み躙り、そして中国に傾斜した揚句、終局的な目標は統一だなどと虚勢を張っている。
―――この六年あまり、馬政権は前近代的な操作を行ってきた結果、かえってさらに多くの人々の近代的な理性を激発させ、二千三百万人によって構成されるこの国へのアイデンティティを強化させた。
そしてこの一文は、最後にこう記す。
―――二〇一六年は、あるいは台湾の近代と前近代との総決戦の年になるかも知れない。
そういえば、台湾の戦後史とは、台湾人の「近代」と中国人の「前近代」との文明的な摩擦の時代でもあった。
■同じ民主主義国として台湾の正常化に声援を送るべき
たとえば終戦直後に発生し、三万人近くもの犠牲者を出した二・二八事件は、まさしくその二つが衝突した象徴的な事例だ。日本時代以来の近代的法治社会に、国民党が前近代的な人治支配体制を持ち込んだことが原因だった。
二・二八事件の悲劇は近代と前近代という異なる文明の衝突がもたらした
そして九〇年代の民主化は、台湾人の「近代」文化の「前近代」的体制に対する反撃、勝利と言えた。
ところが二〇〇八年、国民党の馬英九政権が政権を握ると、旧態依然たる「前近代」的な体質を剝き出しにし、あるいは中国の台湾併呑と言う「前近代」的な野望に呼応するかの政策を取った。かくして台湾は自ら民主、自由、人権ばかりか国家主権をも自己否定しかねない方向へと向かい、今日に至っている。
そして現在、たとえ中国が緊張を高めようとも、国民党から政権を取り上げて国家を正常化させたいという願いが国民の間で高まっている訳だ。
もし仮に将来、台湾が中国に併呑されれば、台湾は二・二八事件を遥かに上回る悲劇に見舞われることだろう。台湾人の近代的価値観は、必ず中共の前近代的支配に抵抗することになるからだ。
同じ民主主義国家の民として、我々はこうした隣国の動きに期待し、声援を送らずにはいられないと思うが、どうだろう。
また、ひとたび台湾という民主主義国家を見殺しにすれば、それは国際社会における民主主義という価値感の自己否定にも繋がって行くということも忘れてはならない。
ところがそれでありながら毎日新聞は前述の如く、台湾で民進党政権が発足すれば、「一つの中国」という前近代的な侵略主義のプロパガンダを受け入れ、ふたたび中国の「共犯」の道を歩むことをよしとするかの社説を掲げたわけだ。
もともと中国迎合姿勢が際立つ毎日だが、さすがに最近は中国の「前近代」的振る舞いには同調しきれない模様。米海軍による南支那海での示威行動についても、「軍用艦を投入した作戦行動を手放しでは歓迎できない」などと批判のポーズは見せつつも、「情勢悪化を座視せずに、法の支配と国際正義を掲げて米艦をあえて派遣したオバマ政権の意図は理解できる」(十月二十八日、社説)と言い切っている。
それであるなら同じように、台湾問題に対しても思考停止を改め、もう少し適切な報道に乗り出してはどうか。
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■頑張れ日本!全国行動委員会・埼玉県本部 設立4周年記念講演会
鈴木 邦子氏(元日本文化チャンネル桜キャスター)
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■日時:平成27年11月1日(日)
■会場:さいたま共済会館5F
さいたま市浦和区岸町7-5-14
JR「浦和」駅西口下車 徒歩10分
TEL 048-822-3330
http://www.saitama-ctv-kyosai.net/kyosai_kaikan/
受付:午後2時00分
開演:午後2時30分
懇親会 午後4時半~
■会費:1,000円
懇親会:2,000円
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☆講師プロフィール
(すずき・くにこ)慶應大学法学部政治学科を首席卒業。在学中は、「東南アジア青年の船」に参加。大学院は、欧州にて、トゥルーズ第一大学政治学前期博士号(DEA)及びヨーロピアン大学経営学修士号(MBA)の二つの学位を修める。後期博士課程は、慶應大学の法学研究科で単位取得退学。外務省や国会議員事務所での職務経験を有す(1989-1997)。その後、岡崎研究所や東京大学先端科学技術研究
センター(RCAST)等で研究員、東京大学特任助教授、㈱日本文化チャンネル桜キャスターなどをつとめる。著書に『歴代首相物語』(共著、御厨貴編、新書館、2003年)、『日本の外交政策決定要因』(共著、橋本光平編、PHP研究所、1999年)などがある。
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来年一月に投開票される台湾の総統選挙では、国民党から最大野党の民進党が政権を奪取する可能性が高まっている。そこで日本でも注目されるのが、中国の反応だ。
総統選挙では民進党候補、蔡英文主席の勝利が予測されるが、これに対して日本のメディアが
懸念するのは…
それについて毎日新聞は七月二十六日の社説で次のように書いていた。
―――政権奪還を目指す民進党の課題は対中政策だ。中国は中台が「一つの中国」に属すると主張する。馬政権は「一つの中国」を認めるが、その内容は独自に解釈するという「1992年合意」を基に交流を進めてきた。しかし、台湾独立綱領を持つ民進党はこの合意を認めていない。
民進党が「1992年合意」なるものを認めていないのは、「台湾独立綱領」の問題以前に、その「合意」自体が国民党のでっち上げであり、そもそも存在していないと見られるからだ。
ちなみに台湾を中国の一部とする「一つの中国」の考えは、国共両党の中国人が案出したフィクションだ。国際法的に見て台湾は中国の一部ではなく、日本を含む世界各国の政府も、それを承認していない。
■台湾「新政権」に対中従属を求めた毎日新聞
それから民進党は「台湾独立綱領」(中華民国体制を打破した台湾建国を謳う)をとうに棚上げし、中華民国を主権国家として認めている。
もっとも「一つの中国」を否定し、台湾を「主権国家」と主張する同党を、中国は台独分裂勢力として敵視、警戒しているのは事実だ。そこで毎日社説は、民進党が「中台関係の悪化を望まない住民の支持を得るため、今後、『92年合意』にどう対応するかが焦点になる」とした上で、次のように訴える。
―――96年の総統選の際、中国がミサイル演習を実施し、米国が空母艦隊を台湾海峡に派遣して緊張が高まった。中国が再び、圧力をかけるようなことはあってはならないが、中台関係の行方は東アジアの安全保障環境にも大きな影響を与える。日本としても冷静に見守りたい。
要するに、日本もまた「中台関係の悪化を望まない」のであれば、もし民進党が政権を獲得するのなら、「一つの中国」を受け入れるべきだと言いたいようだ。
だがそんな考えでアジアの繁栄と平和を守ることができると思っているのか。
■台湾問題では「思考停止」に陥る日本のメディア
「冷静に見守りたい」というのは、「例え中国が横暴な圧力をかけても、そればかりを批判してはいけないよ」という意味に聞こえてしまう。緊張緩和のためであるなら、中国に譲歩を求めるより台湾に犠牲を強いようとするのが、従来日本のメディアに目立つ傾向だからだ。
それは台湾報道で中国の逆鱗に触れたくないとの一念が生む思考停止の傾向と呼んでもいいかも知れない。
そしてそうしたメディアの「思考停止」も大きく手伝い、日本国民の多くは、台湾で現在、「近代」と「前近代」と言う文化、文明的な摩擦が進行中であり、そしてそれらが激しくぶつかり合うのが、今度の総統選であるという視点を持てずにいる。
台湾と同様、やはり近代国家として、中国の「前近代」に振り回される日本としては、そうした隣国の状況に無関心ではいられないはずなのだが。
■国際社会の民主主義に挑戦する中国民族主義
そもそも、政権を失うことが予測される国民党とはいかなる勢力なのか。
それを語る前にまず、同党が「一つの中国」の主張で繋がる中国の現況を考えたい。
台湾紙自由時報の三月二十八日に掲載した「民族主義は普遍的価値観には対抗しきれない」と題する社説によれば、
―――近年来、中国は「民族振興」とのスローガンで、絶えず全世界の中国人の祖国意識を刺激し続け、中国擡頭という表面的なイメージ作りを行っているが、それは明らかに時代遅れの民族主義を活用し、民主主義という普遍的価値観を押さえ付け、共産党の一党独裁を強固たらしめようとするものだ。
―――日本に対しては、実に安っぽく民族主義を操作し、徹底的だ。民主主義、自由、人権を追究する国際秩序の中において、中共は常に民族主義の大刀を振り回し、十三億人と在外中国人を覇権擡頭の自爆テロリストに仕立て上げようとしている。
―――こうした狂った振る舞い、特に「公海である南海(※南支那海)」を「中国の南海」に変えようとする動きを受け、米国からベトナムに至るまでみな極度の警戒を強めている。
以上の状況は日本国民もよく知るところだが、さて社説はいよいよここで、国民党に言及する。
■中国民族主義に唯一迎合するのが国民党
次のようにだ。
―――残念なことに、ただ台湾の馬英九やその同類だけが、嬉々として中国民族主義に迎合するのだ。そしてややもすれば「両岸は同じく炎黄の子孫(※中華民族)だ」と叫び、台湾の主権ある地位を矮小化し、中国の国際社会におけるトラブル作りの共犯となっている。
国民党政権のそうした中華民族主義に基づく「中国迎合」の最新の例としては、「抗日戦争勝利及び台湾光復」七十周年記念キャンペーンが挙げられるだろう。
すなわち中共と歩調を合わせ、七十年前の対日戦争の勝利とそれに伴う台湾の日本からの奪取という中華民族の栄光を強調する洗脳宣伝工作のことだ。
これに関して自由時報は十月二十七日、こう伝えた。
―――馬総統は今年に入り、スピーチを行えば抗戦の話題を繰り返し、中国(※中華民国)の第二次大戦勝利に対する貢献を讃え、台湾と中国との連結を企てるのだが、それは中国の観点に立ったものであり、台湾の主体性を全く軽視している。
―――統一派の人々もそれに乗じ、「抗戦の結果、台湾人民は祖国の懐に戻ることができた」と喧伝し、それに対して尊崇の気持ちを持たない者は「皇民の残党」(※日本統治の悪影響を引き摺る者)と看做そうとする。
―――馬政権は一億元もの税金を使って「抗戦七十周年」記念活動を行い、国防部、退輔委員会、国史館、外交部、僑務委員会を総動員しただけでなく、教育部を通じて学校に愛国歌、ポスター、書、詩文などのコンクールを実施させ、朝礼の時間に関連映像を鑑賞させることまでした。
中共と歩調を合わせるかのように、抗日戦争勝利70周年の宣伝に余念なき馬英九総統。狙いは
台湾での中華民族主義の発揚。中共に期待に応えようとしているかに見える
だが台湾は民主主義の社会、国家であり、国民も近代的国民であって、愚民ではない。そうした前近代的な洗脳宣伝に踊らされることはないのである。そのため、国内では次のような状況だ。
―――しかし馬総統がいかに「抗戦」「光復」史観を強調しても、彼の支持率がわずか九%に過ぎないのと同様、社会の反応は冷淡だ。
それは当然だろう。「中国民族主義に迎合し、台湾の主権ある地位を矮小化」して行けば、やがて中国の併呑を受けかねないからだ。
■台湾戦後史は「近代」と「前近代」の対立の歴史
前掲の自由時報社説「民族主義は…」には次のようにもある。
―――(昨年の)ヒマワリ学生運動や統一地方選挙でも見られたように、人々はどんどん近代的な理性で物事を考えるようになってきたが、それは国家の正常化に向けた動力となるのだ。
国民党政権が推進する中国傾斜政策に反撥したヒマワリ学生運動は
民主化後に生まれ育った若者が原動力。全国の人々を覚醒させた
―――残念なのは少数の人々の考えが前近代的であること。彼らは党国(※国民党と国家の一体化)時代の残滓であるイデオロギーや体制にすがって既得権益を守るとともに、進歩を求める多くの人々の声を踏み躙り、そして中国に傾斜した揚句、終局的な目標は統一だなどと虚勢を張っている。
―――この六年あまり、馬政権は前近代的な操作を行ってきた結果、かえってさらに多くの人々の近代的な理性を激発させ、二千三百万人によって構成されるこの国へのアイデンティティを強化させた。
そしてこの一文は、最後にこう記す。
―――二〇一六年は、あるいは台湾の近代と前近代との総決戦の年になるかも知れない。
そういえば、台湾の戦後史とは、台湾人の「近代」と中国人の「前近代」との文明的な摩擦の時代でもあった。
■同じ民主主義国として台湾の正常化に声援を送るべき
たとえば終戦直後に発生し、三万人近くもの犠牲者を出した二・二八事件は、まさしくその二つが衝突した象徴的な事例だ。日本時代以来の近代的法治社会に、国民党が前近代的な人治支配体制を持ち込んだことが原因だった。
二・二八事件の悲劇は近代と前近代という異なる文明の衝突がもたらした
そして九〇年代の民主化は、台湾人の「近代」文化の「前近代」的体制に対する反撃、勝利と言えた。
ところが二〇〇八年、国民党の馬英九政権が政権を握ると、旧態依然たる「前近代」的な体質を剝き出しにし、あるいは中国の台湾併呑と言う「前近代」的な野望に呼応するかの政策を取った。かくして台湾は自ら民主、自由、人権ばかりか国家主権をも自己否定しかねない方向へと向かい、今日に至っている。
そして現在、たとえ中国が緊張を高めようとも、国民党から政権を取り上げて国家を正常化させたいという願いが国民の間で高まっている訳だ。
もし仮に将来、台湾が中国に併呑されれば、台湾は二・二八事件を遥かに上回る悲劇に見舞われることだろう。台湾人の近代的価値観は、必ず中共の前近代的支配に抵抗することになるからだ。
同じ民主主義国家の民として、我々はこうした隣国の動きに期待し、声援を送らずにはいられないと思うが、どうだろう。
また、ひとたび台湾という民主主義国家を見殺しにすれば、それは国際社会における民主主義という価値感の自己否定にも繋がって行くということも忘れてはならない。
ところがそれでありながら毎日新聞は前述の如く、台湾で民進党政権が発足すれば、「一つの中国」という前近代的な侵略主義のプロパガンダを受け入れ、ふたたび中国の「共犯」の道を歩むことをよしとするかの社説を掲げたわけだ。
もともと中国迎合姿勢が際立つ毎日だが、さすがに最近は中国の「前近代」的振る舞いには同調しきれない模様。米海軍による南支那海での示威行動についても、「軍用艦を投入した作戦行動を手放しでは歓迎できない」などと批判のポーズは見せつつも、「情勢悪化を座視せずに、法の支配と国際正義を掲げて米艦をあえて派遣したオバマ政権の意図は理解できる」(十月二十八日、社説)と言い切っている。
それであるなら同じように、台湾問題に対しても思考停止を改め、もう少し適切な報道に乗り出してはどうか。
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TEL 048-822-3330
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受付:午後2時00分
開演:午後2時30分
懇親会 午後4時半~
■会費:1,000円
懇親会:2,000円
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☆講師プロフィール
(すずき・くにこ)慶應大学法学部政治学科を首席卒業。在学中は、「東南アジア青年の船」に参加。大学院は、欧州にて、トゥルーズ第一大学政治学前期博士号(DEA)及びヨーロピアン大学経営学修士号(MBA)の二つの学位を修める。後期博士課程は、慶應大学の法学研究科で単位取得退学。外務省や国会議員事務所での職務経験を有す(1989-1997)。その後、岡崎研究所や東京大学先端科学技術研究
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