台湾の仇討ち快挙に加われずー国際正義を忘れた日本人
2007/08/18/Sat
■まずは報告と感謝から
昨日書いたとおり、第十三回世界ユース野球選手権大会の開催国ベネズエラが中国に迎合し、台湾チームへのビザ発給を拒否したことで、国際野球連盟(IBAF)は昨日、制裁として大会の中止を決めたが、この措置に対して日本野球連盟(JABA)はあろうことか、抗議する方針を固めた。
だがその後JABAに確認したところ、結局は抗議は取り下げ、IBAFの決定に従うこととなったと言う。
抗議取り下げ要求に協力してくれた方々に、お礼を申し上げたい。
さて北京オリンピックボイコットの訴えが世界で広がりも見せる中、今回の件が示唆したものは少なくない。
■アウトロー陣営擡頭の予感
一つはベネズエラが見せた中国との結託姿勢。そもそもエネルギー資源を武器に中国に傾斜するチャべス政権の狙いは米一極支配への挑戦だが、さらに言えばそれは、既存の国際秩序への挑戦でもある。つまりその点において、中国とは利害関係で完全に一致していると言える。今回同政権が行ったのは、中国が最も望む台湾の国際社会における完全なシャットアウトだった。
いかに中国の台湾孤立化戦略が各国に影響を及ぼしているとは言え、ここまで露骨な措置を採り得たのは、やはりチャべスのアウトロー体質によるものだが、それはそれで国際社会における「中国陣営」の形成、擡頭を予感させて余りあるものがあった。
■断固発動された国際正義
もう一つは、そうした不正勢力に対してIBAFが見せた国際ルール防衛の動きである。同大会の中止を決定したのは、開催の直前で、すでにほとんどの参加チームは現地入りをしていた。そうした中での開催中止は、たとえば日本チームの場合、「渡航費用が一千万円だとすると、公的助成金は三百万円。その助成金が支給されなくなる」(JABAの話)と言う事態となるから、それだけを見ても軽々と下せる決断ではなかったはずだが、チャべスの不当行為への制裁として、敢えてそれを断行した。
IBAFが主催者から降りたため、チャべス政権は独力では大会運営ができなくなり、結局はアメリカ大陸野球連盟(COPABE)に主催を肩代わりしてもらうこととなった(南北米地区の大会となり、地域外の日仏は特別招待国として参加)。IBAFは助成金支給の取りやめによって資金的損害が生じた場合、べネズエラを相手に訴訟を起こす方針であるなど、中国と提携したアウトロー行為がいかに「高くつく」かを教えた格好となった。つまり国際正義が行われたと言うことである。
罪のない犠牲者台湾への仇討ちは見事に成功したのだ。これは昨今の国際社会では稀に見る快挙と言って過言ではない。
■正義の敵になりかけた日本
そしてもう一つは、不正を不正と捉えることのできず、この国際正義の妨害すら行おうとしたJABAのごとき存在が、いかに国際社会で不安定要素となるかである。
JABAは当初中止決定を聞き、抗議を行うことにしたと説明していた。昨日の正午前後のことである。そのように淡々と話す職員たちからは、チャべス政権の不当な行為への憤りや、出場権を持ちながらも出場できない台湾チームへの同情心などまったく感じられなかった。「それでいいのか」との問いかけに、急に狼狽して「抗議ではなく、問合せをするだけだ」と誤魔化す始末である。
だが夜になって再度問い合わせると、「抗議はしなかった。関係国はみなIBAFの決定を支持し、それに従うこととなった」と言うのである。
良心を取り戻したと言うより、節操がない連中だと言うのが、そのときの実感だった。
■なぜベネズエラに抗議しない
もっともIBAFにケチはつけたらしい。「開会直前になって中止と言われても困る」と。
そこで「開会直前まで、決定できなかった(台湾チームの入国の可能性は残されていた)と言うことではないのか」と聞くと、「そうだ」と認める。JABA自体、「ベネズエラはすべての参加国は参加できる」と文書で通達してきたため、キリギリまで台湾の参加はあるかも知れないと考えていたそうだ。
そこで「それならなぜ、この問題が発生したとき、JABAはベネズエラに抗議しなかったのか。IABAに抗議する資格はないはずだ」と言うと、「そこまで頭が回らなかった」と言うのだ。
つまりこれは、JABAは終始、台湾チームの出場問題には無関心だったと告白したに等しい。そして中止と聞いて、「日本チームの問題をどうしてくれる」とIABAに食いつこうとしたようなものだ。
日本と台湾の野球連盟は、兄弟のような間柄ではなかったのか。またしても日本の名誉と信頼に泥を塗られた。
■野球だけの問題ではない
「自分がよければそれでよい」。これが抗議を行おうとした動機なのだろうか。このような国が存在する限り、中国、ベネズエラなどの不当行為はなくなるまい。
あるいはもっと積極的な抗議を行おうとしたが、国民の非難を受けて取り止めたのだろうか。もしそれなら賢明な措置である。敢えて抗議を行ったなら、ベネズエラの不当を支持したとして、国際社会で汚名を残すところだった。
これをJABAだけの問題だと考えてはならないと思う。日本の政府自体、すでに同じような振る舞いを中国に対して見せている。たとえば八九年の天安門事件を契機に、欧米諸国が対中経済制裁を行う中、日本だけは経済援助を続行しているのがいい例だ。
かりに各国が人権問題などで北京オリンピックのボイコットを決めても、日本だけは意地でも出場するのではないだろうか。
■気概がなければだめなのだ
このように、日本は中国の前においては正確な判断力を喪失してしまう国である。将来、「悪の枢軸」なる勢力が世界的に拡大し、中国覇権主義の影響下で一つの陣営を形成したとき、日本のように自己利益にとらわれて優柔不断な「大国」が、いかなる去就を見せるかで不安になる。
あるいは台湾有事が発生し、米国が地域防衛のために介入しようとする際、それへの支援を断ってしまうとか…。そうなれば日米安保体制は崩壊し、それに代わる新たな、中国を中心としたアジア秩序が現出することになるだろう。
JABA、いや日本人は、たとえ選手権大会が開催されても、ひとりボイコットを敢行し、正義を天下に示すくらいの気概を持たなければ、今日のような体たらくでいるならば、もはや地域の安全すら守ることができない状況になりつつある。どんなに中国覇権主義に対して安全保障体制を強化しても、気概がなければ何の意味もない。
今回の一件は、国際社会における日本人の堕落を示す格好のケースとして記憶されるべきではないだろうか。
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昨日書いたとおり、第十三回世界ユース野球選手権大会の開催国ベネズエラが中国に迎合し、台湾チームへのビザ発給を拒否したことで、国際野球連盟(IBAF)は昨日、制裁として大会の中止を決めたが、この措置に対して日本野球連盟(JABA)はあろうことか、抗議する方針を固めた。
だがその後JABAに確認したところ、結局は抗議は取り下げ、IBAFの決定に従うこととなったと言う。
抗議取り下げ要求に協力してくれた方々に、お礼を申し上げたい。
さて北京オリンピックボイコットの訴えが世界で広がりも見せる中、今回の件が示唆したものは少なくない。
■アウトロー陣営擡頭の予感
一つはベネズエラが見せた中国との結託姿勢。そもそもエネルギー資源を武器に中国に傾斜するチャべス政権の狙いは米一極支配への挑戦だが、さらに言えばそれは、既存の国際秩序への挑戦でもある。つまりその点において、中国とは利害関係で完全に一致していると言える。今回同政権が行ったのは、中国が最も望む台湾の国際社会における完全なシャットアウトだった。
いかに中国の台湾孤立化戦略が各国に影響を及ぼしているとは言え、ここまで露骨な措置を採り得たのは、やはりチャべスのアウトロー体質によるものだが、それはそれで国際社会における「中国陣営」の形成、擡頭を予感させて余りあるものがあった。
■断固発動された国際正義
もう一つは、そうした不正勢力に対してIBAFが見せた国際ルール防衛の動きである。同大会の中止を決定したのは、開催の直前で、すでにほとんどの参加チームは現地入りをしていた。そうした中での開催中止は、たとえば日本チームの場合、「渡航費用が一千万円だとすると、公的助成金は三百万円。その助成金が支給されなくなる」(JABAの話)と言う事態となるから、それだけを見ても軽々と下せる決断ではなかったはずだが、チャべスの不当行為への制裁として、敢えてそれを断行した。
IBAFが主催者から降りたため、チャべス政権は独力では大会運営ができなくなり、結局はアメリカ大陸野球連盟(COPABE)に主催を肩代わりしてもらうこととなった(南北米地区の大会となり、地域外の日仏は特別招待国として参加)。IBAFは助成金支給の取りやめによって資金的損害が生じた場合、べネズエラを相手に訴訟を起こす方針であるなど、中国と提携したアウトロー行為がいかに「高くつく」かを教えた格好となった。つまり国際正義が行われたと言うことである。
罪のない犠牲者台湾への仇討ちは見事に成功したのだ。これは昨今の国際社会では稀に見る快挙と言って過言ではない。
■正義の敵になりかけた日本
そしてもう一つは、不正を不正と捉えることのできず、この国際正義の妨害すら行おうとしたJABAのごとき存在が、いかに国際社会で不安定要素となるかである。
JABAは当初中止決定を聞き、抗議を行うことにしたと説明していた。昨日の正午前後のことである。そのように淡々と話す職員たちからは、チャべス政権の不当な行為への憤りや、出場権を持ちながらも出場できない台湾チームへの同情心などまったく感じられなかった。「それでいいのか」との問いかけに、急に狼狽して「抗議ではなく、問合せをするだけだ」と誤魔化す始末である。
だが夜になって再度問い合わせると、「抗議はしなかった。関係国はみなIBAFの決定を支持し、それに従うこととなった」と言うのである。
良心を取り戻したと言うより、節操がない連中だと言うのが、そのときの実感だった。
■なぜベネズエラに抗議しない
もっともIBAFにケチはつけたらしい。「開会直前になって中止と言われても困る」と。
そこで「開会直前まで、決定できなかった(台湾チームの入国の可能性は残されていた)と言うことではないのか」と聞くと、「そうだ」と認める。JABA自体、「ベネズエラはすべての参加国は参加できる」と文書で通達してきたため、キリギリまで台湾の参加はあるかも知れないと考えていたそうだ。
そこで「それならなぜ、この問題が発生したとき、JABAはベネズエラに抗議しなかったのか。IABAに抗議する資格はないはずだ」と言うと、「そこまで頭が回らなかった」と言うのだ。
つまりこれは、JABAは終始、台湾チームの出場問題には無関心だったと告白したに等しい。そして中止と聞いて、「日本チームの問題をどうしてくれる」とIABAに食いつこうとしたようなものだ。
日本と台湾の野球連盟は、兄弟のような間柄ではなかったのか。またしても日本の名誉と信頼に泥を塗られた。
■野球だけの問題ではない
「自分がよければそれでよい」。これが抗議を行おうとした動機なのだろうか。このような国が存在する限り、中国、ベネズエラなどの不当行為はなくなるまい。
あるいはもっと積極的な抗議を行おうとしたが、国民の非難を受けて取り止めたのだろうか。もしそれなら賢明な措置である。敢えて抗議を行ったなら、ベネズエラの不当を支持したとして、国際社会で汚名を残すところだった。
これをJABAだけの問題だと考えてはならないと思う。日本の政府自体、すでに同じような振る舞いを中国に対して見せている。たとえば八九年の天安門事件を契機に、欧米諸国が対中経済制裁を行う中、日本だけは経済援助を続行しているのがいい例だ。
かりに各国が人権問題などで北京オリンピックのボイコットを決めても、日本だけは意地でも出場するのではないだろうか。
■気概がなければだめなのだ
このように、日本は中国の前においては正確な判断力を喪失してしまう国である。将来、「悪の枢軸」なる勢力が世界的に拡大し、中国覇権主義の影響下で一つの陣営を形成したとき、日本のように自己利益にとらわれて優柔不断な「大国」が、いかなる去就を見せるかで不安になる。
あるいは台湾有事が発生し、米国が地域防衛のために介入しようとする際、それへの支援を断ってしまうとか…。そうなれば日米安保体制は崩壊し、それに代わる新たな、中国を中心としたアジア秩序が現出することになるだろう。
JABA、いや日本人は、たとえ選手権大会が開催されても、ひとりボイコットを敢行し、正義を天下に示すくらいの気概を持たなければ、今日のような体たらくでいるならば、もはや地域の安全すら守ることができない状況になりつつある。どんなに中国覇権主義に対して安全保障体制を強化しても、気概がなければ何の意味もない。
今回の一件は、国際社会における日本人の堕落を示す格好のケースとして記憶されるべきではないだろうか。
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