昨年九月七日、尖閣諸島沖の日本領海内で海上保安庁の二隻の巡視船に体当たりして逮捕された中国漁船長其雄
を那覇地検が処分保留で釈放したのが同月二十四日で、起訴猶予処分としたのが今年一月。国民の猛反発をものともせず、那覇地検があえてこのような措置を繰り返すのは、もちろん中国との関係悪化だけを恐れる民主党の菅直人政権の指示があるからだ。
そこでジャーナリストの山際澄夫氏らが那覇検察審査会に不服申し立てを行い、これを受け審査会が公務執行妨害罪などで「起訴相当」と議決したのが四月十八日である。多くの国民がもっともと思う裁定だった。何しろすでに国民は、かの犯行現場を撮影したビデオすら見ているのだ。
ところが那覇地検(民主党政権)は、あくまでも「抵抗」して見せた。六月二十八日、再度不起訴としたのである。
これを受け審査会は二度目の審査を行い、七月二十一日に再び「起訴相当」とする議決を行った。
いよいよ起訴される中国漁船長其雄その議決書を見ると、産経新聞が二十二日の社説欄で「那覇地検はまるで中国人船長側の弁護人の役目を果たしているようにさえみえる」と書きたくなるのもうなづける。
たとえば地検は、被疑者が帰国後、尖閣海域付近で漁業を行った事実は確認されていないのは「今後二度と魚釣島付近で漁をしない」との誓約を遵守していることの証左であり、被疑者に再犯のおそれがあると認められる事情はなく、あえて訴追の要はないとするが、審査会は、被疑者が「政府が私の外出を好まないから,私も外出しない。私の外出は認められない。」と述べていることが報道されており、誓約を真摯に遵守している訳ではないとする。
また地検は、被疑者は追跡され、針路を規制されるなどしたために心理的に動揺し、巡視船に衝突させたのであり、計画性はないとするが、動画を見る限り、故意に衝突させたことは明らかであり,人命をも危険にさらす無謀なものでだと指摘している。
地検は二隻の巡視船がそれぞれ約五百万~七百万円の修理費を要するほど軽微でない損傷を受けているが、航行能力を低下させるほどではなく、海上保安官らに身体的被害も発生していないため、被疑者に有利に考慮すべきと述べているが、審査会は被疑者が何ら謝罪や被害弁償をしていないことを考慮すれば、起訴猶予は相当ではないと強調する。
そして地裁は、審査会の一回目の「起訴相当」の議決後、「海上保安庁への照会等はしているものの,被疑者に関する,中華人民共和国当局への情報提供申し出や捜査共助の申入れを行っていないので,再捜査を尽くしたとは言えない」というのだ。
つまり審査会の議決を真剣に受け止めていないということだろう。自国の検察審査会
制度より、中国への配慮を優先させたのだ。
かくて議決書は「検察官がした再度の不起訴処分の裁定は正しくない」と断じるとともに、「当検察審査会は,本件が日本国と中華人民共和国間の外交問題に発展したことを憂慮し,今後の両国の関係改善を期待するものである」としながら、「しかし,本邦領海内での被疑者の行為は処罰に価するものであり,当検察審査会は,民意を表明するため,そして市民の正義感情を反映させるために被疑者を起訴すべきだと判断した」と付け加えるのだ。
これを読み私は、よくぞ「民意を表明」してくれた、そして「市民の正義感情を反映」させてくれたと、拍手を送りたくなった。
さて、これから船長は強制起訴されるわけだが、それから二カ月以内に起訴状が船長に届けられなければならない。ただ今回は外交ルートを通じて行われることになるが、中国政府は協力を拒否することだろう。
だから「起訴は無駄だ」との見方も出てきているわけだが、これが無駄であるはずがないのである。
この起訴は中国という無法者国家に対する日本国民の「正義感情」に基づいた意思表明となり、あの国の侮りを防ぐのに大いに役立つ。
またこれにより、今後中国が見せることになる非友好的な態度により、この国がいかに敵性国家であるかを、国民が再確認することにもなる。
それから、これから見物となるのが、この中国に対して日本政府が果たして協力要請をしっかり行えるかどうかである。もし行うなら政府の覚醒を意味することになるが、それができるくらいなら、とうにそれをやっている、というのが大方の見方ではないだろうか。
自国政府内に蔓延る敵性勢力の存在も再確認することになりそうだ。
以下は那覇検察審会の議決書である。正論が堂々と展開されている。国民に広く読まれたい。
平成23年那覇検察審議会審査事件(起相)第1号,同第2号
(平成23年那覇検察審議会審査事件(申立)第3号,同第14号)申立書記載罪名 公務執行妨害,外国人漁業の規制に関する法律違反,建造物等損壊,漁業法違反
検察官裁定罪名 公務執行妨害,外国人漁業の規制に関する法律違反,建造物等損壊,漁業法違反
議決年月日 平成23年7月21日
議決作成年月日 平成23年7月21日
議決の要旨
審査申立人(平成23年第3号) (氏名)山際澄夫
同 (氏名)山村明義
同 (氏名)伊藤哲夫
同 (氏名)岡田邦宏
同 (氏名)松浦芳子
審査申立人(平成23年第4号) (氏名)木村 太
被疑者 (平成23年第3号,同第14号) (氏名)其雄
不起訴処分をした検察官
(官職氏名)那覇地方検察庁 検察官検事 平光信隆
議決書作成を補助した審査補助員 弁護士 伊東幸太郎
当検察審査会は,上記被疑者に対する公務執行妨害(那覇地方検察庁平成23年検第10771号/平成23年那覇検察審査会(起相)第1号)及び外国人漁業の規制に関する法律違反等被疑事件(那覇地方検察庁平成23年検第11334号/平成23年那覇検察審査会(起相)第2号)につき,平成23年6月28日上記検察官がした再度の不起訴処分の当否に関し,両事件を併合した上で,検察審査会法第41条の21項により審査を行い,次の通り議決する。
議決の趣旨1 別紙犯罪事実につき,起訴すべきである。
2 漁業法違反は起訴議決するに至らない。
議決の理由1 被疑事実の要旨
(1) 平成23年(起相)第1号(平成23年(申立)第3号)
被疑者は,中国籍トロール漁船「閩普漁5179」(以下「本件漁船」という。)の船長として乗り組む者であるが,平成22年9月7日午前10時56分ころ,沖縄県石垣市所在の久場島付近の本邦領海内において,本件漁船を,職務に従事していた海上保安官らが乗り組む石垣海上保安部所属巡視船「みずき」(以下「みずき」という。)に衝突させる暴行を加え,もって海上保安官の職務の執行を妨害した。
(2)平成23年(起相)第2号(平成23年(申立)第14号)
被疑者は,中国籍トロール漁船「閩普漁5179」(以下「本件漁船」という。)に船長として乗り組み,日本国に国籍を有しない外国人であるが,
ア 法定の除外事由がないのに,平成22年9月7日午前,沖縄県石垣市所在の久場島付近の本邦領海内において,漁業を行った
イ 同日午前10時15分ころ,前記久場島付近の本邦領海内において,本件漁船を,石垣海上保安部所属巡視船「よなくに」(以下「よなくに」という。)に衝突させて,「よなくに」の支柱等を破損し,もって艦船を損壊した
ウ 同日午前10時56分ころ,前記久場島付近の本邦領海内において,本件漁船の左舷船首部を,職務に従事していた海上保安官らの乗り組む石垣海上保安部所属巡視船「みずき」(以下「みずき」という。)に衝突させて,「みずき」の右舷中央の外板や支柱等を破損し、もって艦船を損壊した
エ 同日午前10時55分ころ,前記久場島付近の本邦領海内において,「みずき」から,検査を実施するため停船を命じられたがこれに従わず,もって立入検査を忌避した
ものである。
2 検察官の不起訴処分の理由(要旨)
(1)平成23年(起相)第1号(那覇地方検察庁平成23年検第10771号)
那覇検察審査会の議決を踏まえ,再度.,証拠関係を精査し,所要の検査を遂げたが,被疑者に再犯のおそれがあると認められる事情はないのであるから,特別予防の見地からは,あえて訴追の要はなく,「みずき」に関する公務執行妨害について起訴を猶予するのを相当と認めた。
(2)平成23年(起相)第2号(那覇地方検蔡庁平成23年検第11334号)
那覇検察審査会の議決を踏まえ,再度,証拠関係を精査し,所要の捜査を遂げたが,被疑者に再犯のおそれがあるとは認められる事情はなく,特別予防の見地から,あえて訴追の要はないので,外国人漁業の規制に関する法律違反及び「よなくに」と「みずき」に関する建造物等損壊については起訴を猶予するのを相当と認めた。
漁業法違反に関し,本件漁船が停船を求められたものの,これに従わなかったことや,その後,海上保安官が本件漁船に立ち入った際,漁獲物の調査を行ったことなどの事実を認めることができるが,漁業法141粂2号の検査忌避罪が成立するためには,漁業監督官が同法74条3項による検査に着手したことを要するところ,関係証拠によれば「みずき」が本件漁船に停船を求めたのは,あくまで「よなくに」に本件漁船が接触したことについての調査等を目的とした海上保安庁法17粂に基づく立入検査のためであり,漁業法の規定による立入検査のためではなく,漁業法の立入検査忌避罪は成立しない。
3 検察審査会の判断当検察審査会が,本件第二段階の審査において事件を併合し,被疑者に対する公務執行妨害,外国人漁業の規制に関する法律違反,建造物等損壊及び漁業法違反の各被疑事実について、本件各審査申立書及び同資料並びに不起訴裁定書,同記録及び海上保安官撮影による動画等を精査し,併せて,審査補助員及び検察官の法的見地からの意見等を聴取した上で,上記議決の趣旨記載の判断をした理由は,第一段階の各議決時の判断理由に付加して次のとおりである。
(1)本邦領海内での被疑者の違法操業について,検察官は,被疑が身柄を拘束されるとは予想せず,逃走が可能と考えて違法操業に及んでいると認められ,被疑者の有していた思惑自体が悪質とは評価できず,違法操業の態様自体を他の同種事案と比して特に悪質とは評価すべき点は見当たらないと述べる。しかし,被疑者は,本邦領海内の魚釣島付近で本件以外にも違法操業をしたことがあり,海上保安庁の巡視船に拿捕されることはなく,射撃されることもないと考えた上で,本邦領海内で違法操業をしているので,動機において酌量の余地はなく,その態様は悪質である。
被疑者は「今後,二度と魚釣島付近で漁をしない」旨誓約しているが,これまで何度も尖閣海域の本邦領海内で違法操業してきたことがうかがわれることから,この誓約は被疑者の真摯な態度から出たものとは思われない。
また,検察官は,被疑者が退去強制により帰国した後,被疑者あるいは本件漁船が同海域付近で漁業を行った事実は確認されていないことは,彼疑者が上記誓約を遵守していることの証左であり,被疑者に再犯のおそれがあると認められる事情はないので,特別予防の見地からは,あえて訴追の要はないと述べる。しかし,記録上,被疑者が「政府が私の外出を好まないから,私も外出しない。私の外出は認められない。」と述べていることが報道されているとあることから,被疑者が検察官に誓約したことを真摯に遵守している訳ではなく,再犯のおそれがないので訴追の要はないとの検察官の裁定は納得できない。
更に,一般予防の観点からも,確かに現在までの中国漁船等による違法操業は減少しているとはいえ,将来にわたってそれが維持されるか分からない。
(2)「よなくに」と「みずき」に対する艦船損壊について,検察官は,被疑者が本邦領海内での違法操業を発見されて逃走を開始したものの,「よなくに」の船尾直近を通過して逃走しようとして,本件漁船を「よなくに」に衝突させた上,その後,追跡されて針路を規制されるなどしたことから心理的に相当程度動揺して「みずき」に衝突させたことが認められるので,咄嵯にとった行動で計画性はないと述べる。しかし,記録上,被疑者が,尖閣海域の本邦領海内で操業していたことを認識していたこと,また,被疑者が本邦領海における警備を軽視し,追跡されても逃走できると考えていたことがうかがわれ,どのような方法をとっても逃走を図る意思であったと思われるので,咄嗟にとった行動であり計画性までは認められないという検察官の裁定には納得できない。海上保安官撮影による動画を見る限り,被疑者が,故意に本件漁船を「よなくに」と「みずき」に衝突させたことは明らかであり,この意味で当該行為は悪質である。特に,本件漁船が「みずき」に衝突した行為は,「みずき」及び本件漁船の乗組員の人命をも危険にさらす無謀なものであり,「みずき」の損傷の程度も大きい。また,「よなくに」は,衝突された直後の被害調査のために,本件漁船を追跡することも他の中国漁船を領海外へ退去させるための取締りを行うこともできなくなったのであり,更に,飛行甲板支柱及び手すり等が損壊したために,海難救助用ヘリコプターの運航にも重大な影響を与えたものである。
検察官は。「よなくに」の修理費用に約531万円及び「みずき」の修理費用に約708万円をそれぞれ要する被害を受けており,軽微な損傷ではないが,「よなくに」と「みずき」の航行能力を低下させる程度まで至っていない上,海上保安官らに身体的被害が発生するまでには至っていないことを被疑者に有利に考慮すべき事情である旨述べるが,衝突時の海上保安官らの驚愕に加え,これまで被疑者が何ら謝罪や被害弁償をしていないことを考慮すると被疑者を起訴猶予とすることは相当ではない。
(3)「みずき」に乗り組んでいた海上保安官が従事中であった公務の執行妨害について,検察官は,公務の執行を不能又は著しく困難とするまでの結果が生じていないこと,「みずき」の航行能力に支障がなかったこと,「みずき」に乗り組んでいた海上保安官らに身体的被害が生じていないことなどの事実を被疑者に有利に考慮されるべき事情と認められると述べる。しかし,記録上,衝突の態様によっては,「みずき」の推進力が低下するなどの危険があったことがうかがわれるので,結果的に,航行能力に支障がなかったことをもって被疑者に有利な事情と判断すべきではない。
また,検察官は,「みずき」に乗り組ん,でいた海上保安官らに身体的被害が生じていないことも被疑者に有利な事情と述べるが,本件漁船に衝突される際,「みずき」の乗組員が「自分たちも乗組員も本件漁船に激突して死んでしまう。」,「このまままともに船首が乗組員に当たったら,死んでしまう。」等と述べていること,そして海上保安官撮影の動画からも,非常に危険な衝突行為であったことがうかがわれ,また,海上保安官といえどもかなりの恐怖に直面したことを考慮すると,公務の執行を不能又は著しく困難とするまでの結果が生じでいないこと,身体的被害がなかったこと等をもって被疑者の起訴を猶予することは相当ではない。
更に,検察官は,被疑者において,巡視船に発見された場合の逃走方法として,違法操業を行う前から,巡視船に本件漁船を衝突させるという危険な方法を採ることを予め計画していたとは考えられず,これを認めるに足る証拠もないと述べるが,被疑者が尖閣海域の本邦領海内で操業していたことを認識していたと供述していること,本件漁船の乗組員が逃走を制止しようとした際,「深炉の漁船が日本に捕まったことはない。撃ってこない。巡視船に撃つ勇気なんて絶対ない。」等と乗組員に述べ逃走を継続していること,「この巡視船から逃げることができるのであれば,私の船を巡視船にぶつけさせても関係ないし,それでも構わないと思っていました。」と述べていること等を考慮すると,被疑者は,巡視船に追跡された場合,本件漁船を巡視船に衝突させるなど,どのような方法をとっても逃走を図る意思であったと思われるので,衝突行為に計画性がないとの検察官の裁定には納得できない。
よって,「みずき」に関する公務執行妨害について,起訴を猶予するのは相当ではない。
(4)立入検査忌避について,検察官は,「よなくに」に本件漁船が接触したことについての調査等を目的とした海上保安庁法に基づく立入検査のためであり,漁業法の規定に基づく立入検査のためではないと述べる。当検察審査会は,第一段階の審査において,海上保安官が本件漁船への立入後,漁獲物の調査を行っていること,「よなくに」の乗組員の報告によれば,衝突される前に,立入検査を行うか検討していたと述べていることなどをもって,立入検査を忌避したことについても漁業法違反の罪が成立し,起訴相当とする旨議決した。しかし,検察官は,石垣海上保安部から,漁業法74条3項に基づくものではなく海上保安庁法17粂に基づく立入検査を行うためであったと報告を受けた旨述べるので再考した結果,当初,漁業法違反に基づく立入検査を検討していたところ,本件漁船による衝突行為があったので,海上保安庁法に基づき立入検査を実施したと判断した。よって,漁業法違反に関しては検察官裁定どおり,罪とならないものと考える。
以上,本件に関し,被疑者の動機,態様の悪質さに加え,謝罪や被害弁償を全くしていないこと,上記事情及び不起訴処分理由等を総合考慮すると,検察官がした再度の不起訴処分の裁定は正しくない。また,記録上,本件に関する2個の起訴相当議決後,検察官は,海上保安庁への照会等はしているものの,被疑者に関する,中華人民共和国当局への情報提供申し出や捜査共助の申入れを行っていないので,再捜査を尽くしたとは言えない。
更に,検察官は,本件以後,尖閣諸島海域付近の本邦領海内で操業する中国漁船は激減していると述べるが,中国漁業監視船の接近は増えており,尖閣諸島の本邦領海及びその接続水域が,本邦の漁業に従事する者にとって安全な海域になった訳ではない。
当検察審査会は,本件が日本国と中華人民共和国間の外交問題に発展したことを憂慮し,今後の両国の関係改善を期待するものである。しかし,本邦領海内での被疑者の行為は処罰に価するものであり,当検察審査会は,民意を表明するため,そして市民の正義感情を反映させるために被疑者を起訴すべきだと判断した。
また,当検察審査会は,第一段階の議決でも述べたように,わが国の領海の警備をする海上保安官の権限を強化し,わが国の領海での響備の実情を国民に知らしめるためにも海上保安官撮影の動画を国民に公開するよう重ねて希望するものである。
よって,上記趣旨のとおり議決する。
平成23年7月21日
那覇検察審査会
【過去の関連記事】
中国船長「起訴相当」議決は媚中政権に突き付けた刃(付:那覇検察審査会の議決書全文) 4/22
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