台湾のWHO参加問題―中国は転んでもただでは起きない
2020/03/31/Tue
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前回の記事で書いた如く、JBpressが3月29日に配信した「中国、台湾のWHOオブザーバー参加、認める方針」と題する吉村剛史氏の記事によれば、中国の孔鉉佑駐日大使は3月27日、吉村氏の取材に対し、「今後は台湾がWHO年次総会などにオブザーバーとして参加することが常態化してゆく」「すでに関係各方面との調整が始まっている」などと説明した。台湾のオブザーバーが実現し、常態化するというのはすなわち、中国が妨害を停止するという意味だ。中国発の武漢ウイルスの感染が全世界に拡大する中、なおも台湾排除を続ければ、自国に不利になると判断したようである。しかしあの国が、転んでただで起きるとも思えず…。
■台湾政府は中国駐日大使発言をどう受け取ったか
それでは今回の孔大使の発言を、台湾政府はどう受け取ったのか。
外交部(外務省)の欧江安報道官は30日、「孔氏個人の言論には一切評論しない」と前置きしながら、「我が国のWHOへの参与に関しては、直接WHO方面と交渉を継続しており、中国政府には悪意の邪魔や政治的な妨害を止めるよう訴える」とし、「台湾人民が民主的プロセスで選出した政府だけが、WHOや国際社会で台湾を代表する権利を持ち、また台湾の2300万の人民の健康と福祉に責任を有している」と強調した。
「台湾のWHO参加は常態化する」との中国駐日大使の発言に対する
台湾政府の反応はメディア各社に一斉に報じられた
中国政府はこれまでWHO事務局に、台湾を中国領土の一部とする「一つの中国」原則を受け入れさせ、台湾を総会に招待するか否かは中国が決めると約束させているが、その中国に対する台湾政府の反論が、これなのである。
■台湾外交部はWHO総会参加への自信を表明
欧報道官の話を聞く限り、台湾は中国抜きでWHOサイドと交渉をしている模様。しかし世界的に批判されるテドロス事務局長の媚中ぶりを見るだけでも明らかなように、WHO事務局はすっかり中国の影響下にある。したがってあの機関が、中国の意向を一切無視し、独自に台湾と交渉しているとは思えない。おそらくWHOが台湾と行う交渉は、中国の「同意」を得てのものではないだろうか。
いずれにせよ、これまで中国は、「中国台湾地区の国際機関への参与問題の上で、中国政府の立場は一貫し明確だ。つまり『一つの中国』原則に照らして処理をする。民進党は台独の立場を堅持するため、台湾のWHO総会への参加の政治的基礎を喪失させた。そこで中国は台湾地区の参加に反対すると決めたのだ」(外交部報道官)と公然と言い放ってきたのだが、今回はその「台独の立場」(「一つの中国」を否定する立場)の台湾の参加を阻止しないというのだから、やはりこれまでの如く、我が物顔でふるまうことができない状況に陥っているのだろう。
「近年来、わが国の政府、人民、及び国際的な友人の共同努力の結果、国際世論ではWHOに台湾受け入れを支持するよう促す声が日に日に高まっている」とも強調した欧報道官。まさにこうした状況が、中国の横暴を許さなくなっているようだ。
■台湾が参加してもあまり痛痒を感じない中国
欧報道官は更に次のように、自信を表明している。
「我が国政府は、各国が我が国の防疫作業の有効性を認める中、引き続き更に多くの国によるWHO参加への支持を獲得し、国際社会の我が国支持の基礎を不断に拡大し、早期にWHOへの参与という目標を達成することができる」と。
一方の中国は、孫子に「利に合せずして止む」(不利なら退く)とあるが、今回はそうした戦術思考でWHOへの「一つの中国」原則の強要を差し控えようとしているかに見える。
しかしあの国は実際には、台湾がWHO総会に参加しても、さほど痛痒は感じないのではないか。むしろ逆に現在、新たな勝機を見出し、喜んでいるのではないか。。
台湾では外交部の他、更に衛生福利部(厚労省)広報室の王哲超主任もコメントを出しているが、台湾がWHO総会に参加する際の名称については「今のところチャイニーズ・タイペイがみんなに受け入れられる名称だろう。もし参加するなら実務上、みんなが受け入れられる名称を選ぶ」と話している。この「みんな」とは誰と誰のことか。そこには中国も含まれているはずだ。なぜなら中国こそ、最も台湾にその名称を使わせたがっているからだ。
■台湾が「チャイニーズ・タイペイ」と称せば中国は満足
2009年から2018年の間、中国が「一つの中国」を受け入れる馬英九政権のオブザーバー参加を容認した際に、WHOを通じて台湾に使用させた名称こそ、このチャイニーズ・タイペイなのだ。
台湾が「チャイニーズ・タイペイ」(中国台北)の名で参加すれば、
それで中国は満足のはず
この名であるなら台湾は「中国の台北」と自称し、「一つの中国」を世界に認めたに等しくなるであろう。
そして更に中国は、政治的主張より感染拡大から世界を救出することを優先しているとのイメージを、世界に与えるとの勝機も得られるはずである。
転んでもただでは起きないとはこのことだ。
確かに今、台湾の参加に支持を表明する国は増加中だが、その多くは「国際保健課題への対応では、地理的空白を生じさせるべきではないと考えている」(安倍晋三首相)といった理由に基づく台湾のオブザーバー参加への支持にすぎない。
そこで今後求められるのは、中国への過剰な配慮を停止し、「台湾は中国の領土の一部ではなく、一つの主権国家であり、WHO加盟の資格を有している」とし、正式な加盟に支持を表明していくべきではないのか。
各国が勇気を持ってそうしない限り、WHOはいつまでも中国に政治利用され続けかねない。WHO憲章が掲げる「人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることは、 あらゆる人々にとっての基本的人権のひとつである」とする理念はいつまで経っても実現されないのである。
【過去の関連記事】
窮地の覇権主義!中国がついに台湾のWHO参加を容認の方向 20/03/30
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3463.html
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■台湾政府は中国駐日大使発言をどう受け取ったか
それでは今回の孔大使の発言を、台湾政府はどう受け取ったのか。
外交部(外務省)の欧江安報道官は30日、「孔氏個人の言論には一切評論しない」と前置きしながら、「我が国のWHOへの参与に関しては、直接WHO方面と交渉を継続しており、中国政府には悪意の邪魔や政治的な妨害を止めるよう訴える」とし、「台湾人民が民主的プロセスで選出した政府だけが、WHOや国際社会で台湾を代表する権利を持ち、また台湾の2300万の人民の健康と福祉に責任を有している」と強調した。
「台湾のWHO参加は常態化する」との中国駐日大使の発言に対する
台湾政府の反応はメディア各社に一斉に報じられた
中国政府はこれまでWHO事務局に、台湾を中国領土の一部とする「一つの中国」原則を受け入れさせ、台湾を総会に招待するか否かは中国が決めると約束させているが、その中国に対する台湾政府の反論が、これなのである。
■台湾外交部はWHO総会参加への自信を表明
欧報道官の話を聞く限り、台湾は中国抜きでWHOサイドと交渉をしている模様。しかし世界的に批判されるテドロス事務局長の媚中ぶりを見るだけでも明らかなように、WHO事務局はすっかり中国の影響下にある。したがってあの機関が、中国の意向を一切無視し、独自に台湾と交渉しているとは思えない。おそらくWHOが台湾と行う交渉は、中国の「同意」を得てのものではないだろうか。
いずれにせよ、これまで中国は、「中国台湾地区の国際機関への参与問題の上で、中国政府の立場は一貫し明確だ。つまり『一つの中国』原則に照らして処理をする。民進党は台独の立場を堅持するため、台湾のWHO総会への参加の政治的基礎を喪失させた。そこで中国は台湾地区の参加に反対すると決めたのだ」(外交部報道官)と公然と言い放ってきたのだが、今回はその「台独の立場」(「一つの中国」を否定する立場)の台湾の参加を阻止しないというのだから、やはりこれまでの如く、我が物顔でふるまうことができない状況に陥っているのだろう。
「近年来、わが国の政府、人民、及び国際的な友人の共同努力の結果、国際世論ではWHOに台湾受け入れを支持するよう促す声が日に日に高まっている」とも強調した欧報道官。まさにこうした状況が、中国の横暴を許さなくなっているようだ。
■台湾が参加してもあまり痛痒を感じない中国
欧報道官は更に次のように、自信を表明している。
「我が国政府は、各国が我が国の防疫作業の有効性を認める中、引き続き更に多くの国によるWHO参加への支持を獲得し、国際社会の我が国支持の基礎を不断に拡大し、早期にWHOへの参与という目標を達成することができる」と。
一方の中国は、孫子に「利に合せずして止む」(不利なら退く)とあるが、今回はそうした戦術思考でWHOへの「一つの中国」原則の強要を差し控えようとしているかに見える。
しかしあの国は実際には、台湾がWHO総会に参加しても、さほど痛痒は感じないのではないか。むしろ逆に現在、新たな勝機を見出し、喜んでいるのではないか。。
台湾では外交部の他、更に衛生福利部(厚労省)広報室の王哲超主任もコメントを出しているが、台湾がWHO総会に参加する際の名称については「今のところチャイニーズ・タイペイがみんなに受け入れられる名称だろう。もし参加するなら実務上、みんなが受け入れられる名称を選ぶ」と話している。この「みんな」とは誰と誰のことか。そこには中国も含まれているはずだ。なぜなら中国こそ、最も台湾にその名称を使わせたがっているからだ。
■台湾が「チャイニーズ・タイペイ」と称せば中国は満足
2009年から2018年の間、中国が「一つの中国」を受け入れる馬英九政権のオブザーバー参加を容認した際に、WHOを通じて台湾に使用させた名称こそ、このチャイニーズ・タイペイなのだ。
台湾が「チャイニーズ・タイペイ」(中国台北)の名で参加すれば、
それで中国は満足のはず
この名であるなら台湾は「中国の台北」と自称し、「一つの中国」を世界に認めたに等しくなるであろう。
そして更に中国は、政治的主張より感染拡大から世界を救出することを優先しているとのイメージを、世界に与えるとの勝機も得られるはずである。
転んでもただでは起きないとはこのことだ。
確かに今、台湾の参加に支持を表明する国は増加中だが、その多くは「国際保健課題への対応では、地理的空白を生じさせるべきではないと考えている」(安倍晋三首相)といった理由に基づく台湾のオブザーバー参加への支持にすぎない。
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各国が勇気を持ってそうしない限り、WHOはいつまでも中国に政治利用され続けかねない。WHO憲章が掲げる「人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることは、 あらゆる人々にとっての基本的人権のひとつである」とする理念はいつまで経っても実現されないのである。
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