台湾の「反日教科書」出現と中国の対台湾「反日共闘アピール」(附:台湾チャンネル番組動画)
2014/02/17/Mon
■中国統一派による密室の歴史改竄
日本時代のインフラ建設などの近代化政策を積極的に評価するなど、公正、客観的な記述で高く評価されて来たのが台湾の高校用歴史教科書だが、すでに本ブログでもたびたび伝えて来たとおり、今それが「改悪」の危機に瀕している。
歴史の高校学習指導要領が一月、必ずしも歴史を専門としない中国統一派の審査委員による短期間、密室で改訂されたのだ。これは「微調整」とされるが、実際には六〇・四%もの大幅改定で、中国とは別個の歩みを持つ台湾史を強引に中国史の一環に仕立て上げている。そのため当然ながら改定には多くの歴史捏造が伴っている。
馬英九政権に任命され、密室での学習指導要領改訂作業に携わった10人の
審査委員。反台湾親中国の人々で占められている
このようなものが、二〇一六年九月の新学期から使用される教科書に適用される予定なのである。
こうした動きにもちろん「台湾は中国の一部」と主張する中国は大喜びだが、台湾国内では「脱台湾化」「大中国史観」「決められた手続きを踏んでいない」等々の批判の声が巻き起こっている。
日本は四十七都道府県であるのに対して台湾は二十県市だが、その内実に六県市もが新指導要領のボイコットを声明しているほどだ。
6県市の首長は学習指導要領の再審査を要求している
■中国人化教育のための日本時代否定
ところがこれに対して蒋偉寧教育部長(文科相)は、「脱台湾化ではなく、やや脱日本化しただけ」と反論。「現行では日本統治期間を美化しすぎで、今日の建設基盤はすべて日本人が作ったかのように記述している。調整後の指導要領は台湾の主体性を強調するものだ」と。
在台中国人勢力を中枢とする馬英九総統ら国民党は、「台湾の主体性」を強調する民主化と、それに伴う国民の台湾人意識の広がりを「脱中国化」と捉え、警戒している。そこで着手せずにはいられないのが中国人意識扶植のための洗脳教育なのだ。今回の「微調整」は、そのためのものであるに他ならない。
台湾の子供たちが「洗脳教育」の危機
そして中国と同様、抗日戦争の勝利を強調し、日本の中国侵略、殖民地支配の糾弾を中国人意識高揚のための格好の梃子と見ている。また台湾人の反日は皇民化政策に象徴される日本統治下の近代国民教育の影響と見定め、日本統治時代は何としてでも否定したい。
蒋教育部長の発言は、まさに国民党のそうした欲求、野望の反映である。
■日本統治の不法性をでっち上げる
日本時代に関する記述指導は三九・三%もの「微調整」が加えられる。以下に具体的に見てみよう。
ます「日本統治時期」の章は「日本殖民統治時期」に書き換えろとする。つまり「殖民」を加えて「日本統治」の不法性を強調するためだ。中国の一部である台湾に対する日本の不法占領との位置付けだが、当時の台湾が下関条約によって清国から割譲された合法的な日本領土であったことは言うまでもない。
そして現行の「殖民統治前期の政治經経済発展」の節の「.統治政策と台湾民衆の反応」の一項も「殖民統治政策」へと変更せよとしている。
そして同節の「統治政策と台湾民衆の対応」なる項は「殖民統治政策と台湾民衆の対応」と改めるとした上で、新たに次のように加筆した。
―――台湾は甲午戦争(※日清戦争)後の清末期の変法運動や辛亥革命と連動し、孫中山が台湾人の支持を求めて来台したことや、台湾人が革命、中華民国の樹立に参与したことなどを説明すること。
これは台湾主体ではなく中国主体の歴史観の表れだ。つまり台湾人も中華民族の一員として日本の統治を嫌い、積極的に中国の政治運動に参与したと強調するのが狙いだ。
しかしいったい台湾の民衆の何人がそれらに参加したというのか。ちなみに孫文の「来台」は一九〇〇年。恵州での蜂起のため、児玉源太郎台湾総督に資金を求めるためだった。その後も一九一三年、一九一七年にも「来台」しているが、それぞれ第二革命で敗北し、あるいは広東軍政府から追放されたため、中国から日本へ逃亡する際に立ち寄っただけである。つまり「台湾人の支持を求める」ための「来台」ではなかった。孫文は「日本の殖民統治」を批判せず、それを容認していたのだが、孫文を「国父」として神格化し、それを台湾人の中国人教育の宣伝材料とする馬英九政権は、平然とこうした歴史歪曲に手を染めるのだ。
■「インフラ建設」を「略奪」とする印象操作
また同節の「殖民地性を持った経済発展」の項については、次のような改定が見られる。
―――日本殖民政府は統治の効率化のため殖民地の価値を拡大し、「工業日本、農業台湾」のインフラ建設と経済発展に力を入れ、たとえばインフラ建設には土地、旧慣、人口等の三大調査や、交通、水利、電気、金融、近代的教育等の発展促進があったことを説明すること。
↓
―――日本殖民政府は統治の効率化のため、その殖民利益地の価値を拡大し、「工業日本、農業台湾」のインフラ建設と経済発展に力を入れ、たとえば土地調査、そして水利建設を行ったことを説明すること。
ここからは当時のインフラ建設の功績を出来るだけ塗り潰そうとの意図が充分に伝わってくる。
―――経済発展については農業改良、近代的製糖工場の設立、林産と特産の開発、日本との経済往来があったことを討論する。
↓
―――経済発展については農業改良、そして近代的製糖工場の設立と林特産の開発があったことを討論し、あわせて殖民政府による台湾人民の経済、土地に対する侵害、そして多くの貿易が日本の商社に独占されたことも討論する。
つまり日本による台湾のインフラ建設は、あくまでも本国の「利益」のためであり、台湾人は収奪の対象でしかなかったと強調するのを狙っている。広大な土地を要する製糖工場の建設という産業経済の近代化という社会変化の過程で土地の買い上げが進められ、当初民衆の反撥を招いたのは事実だが、しかしこうした産業基盤の諸建設があってこそ産業発展と民生向上が進み、その結果として今日の近代社会が存在しているのだ。
しかしここではことさら「侵害」という言葉を用いて史実を枉げ、まるで簒奪目的の経済政策が遂行されたかのような印象を植え付けたいらしい。その文脈の上では「農業開発」も「林産の開発」も、すべて農作物、木材の略奪という意味に変わってしまうだろう。
■「慰安婦の強制連行」の記述挿入を自慢
次いで「戦争時期の台湾」の節では、まず「皇民化政策と台湾人の対応」という項に関し、「武官総督統治の復活と大日本帝国の『大東亜共栄圏』の構想…を説明すること」とある中の「『大東亜共栄圏』の構想」を「『大東亜共栄圏』の侵略構想」に書き換える。
言うまでもなく抗日戦争勝利を宣伝したい国民党史観の適用である。
また台湾人は抗日戦争を行っていないにもかかわらず、新たに「台湾人と抗日戦争」との項を設け、それについて次のように記載する。
―――中華民国は対日抗戦を宣戦し、あわせて馬関条約(※下関条約)を破棄することを声明し、抗戦中の軍、民間の死傷の惨状と、李友邦ら台湾人が大陸で抗戦に参加したことを説明すること。
中華民国が一九四一年の対日宣戦布告文の中で「中日間の条約は一律破棄する」と声明し、それにより下関条約も廃止されたため、その時点で台湾の日本への割譲は帳消しになったと印象付けたいのだ。もっとも同条約の破棄を宣言したところで、すでに割譲済みの領土は回復しないというのが国際法の常識である。
また李友邦(中国に亡命して国民党に協力した人物)のクローズアップも政治的だ。なぜならこの人物は、国民党が反日宣伝の際に利用する「台湾の中華民族の抗日英雄」の一人だからだ。
また現行の同項には次のようにある。
―――太平洋戦争勃発後、台湾人民は戦争に巻き込まれ、軍事動員、物資統制、社会動員、慰安婦等など様々な状況に直面したこと、そして戦争後期においては聯合軍が台湾を吸収したことを説明すること。
今回はそこにある「慰安婦」を「女性の慰安婦強制」に改める。
こうした「慰安婦の強制連行」への言及で、「教科書はより史実に近づく」と、蒋教育部長は胸を張っている。
■門外漢による素人臭い歴史改竄も平然と
「殖民統治の社会文化の変遷」の節は「殖民統治時期の社会文化の変遷」に改めた。そして同節の「社会の変遷」の項では、次のように変わる。
――― 一九二〇年代以降、新たなタイプのインテリ層が形成され、社会に影響を与えた。殖民地反抗運動の指導、各種の新思潮の鼓吹等を指導したと説明すること。
↓
――― 一九二〇年代以降、新たなタイプのインテリ層が形成され、また五四運動、新文化運動の影響や活動が見られた。たとえば殖民地反抗運動の指導、各種の新思潮の鼓吹等を指導したと説明すること。
つまり二〇、三〇年代の台湾文化協会に代表される台湾人の文化や社会的地位の向上を求めた運動は、中国の五四新文化運動の影響を受けたものだと強調せよというわけだ。
その狙いは、インテリ層の文化運動をも中華民族の抗日運動の一環と位置付けることにある。
しかしこうした歴史の捉え方に対し、著名な歴史学者である張炎憲元国史館長は「日本統治時代、台湾の文化界は統治下における文化の対等を求め、自発的に台湾文化運動を開始した。五四運動、新文化運動の台湾への影響を記述させるのは台湾を中国の一部とするためで、史実に合わない」と批判している。
こうした歴史の門外漢による素人臭い歴史の改竄を平然とやってのけ、堂々と教科書に記載させてしまうところに在台中国人勢力の恐ろしさがある。
■日台分断目指す中国への呼応か
もちろん歴史の改竄は日本統治時代だけに限らず、どの時代についても歴史捏造の大中国史観で彩られることになる。
このように馬英九政権が台湾の中国化を急ぐのは、任期内での「中国統一の大業」の達成を目指す中国の習近平主席への呼応との見方が広く持たれている。
先頃中国の南京で行われた王郁琦・大陸委員会主任委員と張志軍・国務院台湾弁公室主任による台中初の閣僚級会談なども、「一つの中国」の枠組みの下、中国側の「統一」に向けたシナリオ通りの危険な茶番だが、そうしたものに馬英九政権は応じてしまったわけだ。
今回の学習指導要領の改訂なども「王郁琦主任委員の訪中での手土産にするため」(李俊毅・民進党副秘書長)との批判が出るなど、中国の歓心を買うためとの側面も指摘されている。
張志軍主任はこの会談の翌日、南京大虐殺記念館を訪れ、こうアピールしている。明らかに日本の安倍政権を念頭に入れてのものだ。
「両岸同胞は共に炎黄の子孫(※中華民族)。血脈の繋がる兄弟であり、栄辱を共にすべき運命共同体であって、民族が弱い時が叩かれる。我々は共に民族苦難の歴史を銘記し、日本国内で歴史を書き換えて中華民族の歴史の傷に塩を塗り、公然と抗戦勝利の成果と戦後秩序に挑戦しようとする右翼の危険な勢力に対し、大声でノーと言い、その挑発行為に断固反撃を加えなければならない」
台湾における今回の歴史教科書の書き換えの動きは、実はこのような中国の日台分断の呼び掛けに呼応したものとすら見えるのだ。
従って我々は、安全保障の観点からも、その動向を注視しなければならないのである。
台湾側との会談を終え、南京大虐殺記念館を訪れた張志軍・国台弁主任。台湾
との反日共闘を呼び掛けた
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「反日」捏造が再び―台湾の歴史教科書が危機!(上) 14/01/30
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【台湾チャンネル】日台交流頻道第18回、安倍政権「台湾に礼を尽くす」・中国主導の台中政府間対話[桜H26/2/14]
第18回の話題は①台湾からの被災地支援で覚醒した日本の政府、国民、そして②日本メディア各社が見抜けない台湾・中国の政府対話が持つ危険性(中共の謀略と国民党の屈従、売国)について。
日本時代のインフラ建設などの近代化政策を積極的に評価するなど、公正、客観的な記述で高く評価されて来たのが台湾の高校用歴史教科書だが、すでに本ブログでもたびたび伝えて来たとおり、今それが「改悪」の危機に瀕している。
歴史の高校学習指導要領が一月、必ずしも歴史を専門としない中国統一派の審査委員による短期間、密室で改訂されたのだ。これは「微調整」とされるが、実際には六〇・四%もの大幅改定で、中国とは別個の歩みを持つ台湾史を強引に中国史の一環に仕立て上げている。そのため当然ながら改定には多くの歴史捏造が伴っている。
馬英九政権に任命され、密室での学習指導要領改訂作業に携わった10人の
審査委員。反台湾親中国の人々で占められている
このようなものが、二〇一六年九月の新学期から使用される教科書に適用される予定なのである。
こうした動きにもちろん「台湾は中国の一部」と主張する中国は大喜びだが、台湾国内では「脱台湾化」「大中国史観」「決められた手続きを踏んでいない」等々の批判の声が巻き起こっている。
日本は四十七都道府県であるのに対して台湾は二十県市だが、その内実に六県市もが新指導要領のボイコットを声明しているほどだ。
6県市の首長は学習指導要領の再審査を要求している
■中国人化教育のための日本時代否定
ところがこれに対して蒋偉寧教育部長(文科相)は、「脱台湾化ではなく、やや脱日本化しただけ」と反論。「現行では日本統治期間を美化しすぎで、今日の建設基盤はすべて日本人が作ったかのように記述している。調整後の指導要領は台湾の主体性を強調するものだ」と。
在台中国人勢力を中枢とする馬英九総統ら国民党は、「台湾の主体性」を強調する民主化と、それに伴う国民の台湾人意識の広がりを「脱中国化」と捉え、警戒している。そこで着手せずにはいられないのが中国人意識扶植のための洗脳教育なのだ。今回の「微調整」は、そのためのものであるに他ならない。
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そして中国と同様、抗日戦争の勝利を強調し、日本の中国侵略、殖民地支配の糾弾を中国人意識高揚のための格好の梃子と見ている。また台湾人の反日は皇民化政策に象徴される日本統治下の近代国民教育の影響と見定め、日本統治時代は何としてでも否定したい。
蒋教育部長の発言は、まさに国民党のそうした欲求、野望の反映である。
■日本統治の不法性をでっち上げる
日本時代に関する記述指導は三九・三%もの「微調整」が加えられる。以下に具体的に見てみよう。
ます「日本統治時期」の章は「日本殖民統治時期」に書き換えろとする。つまり「殖民」を加えて「日本統治」の不法性を強調するためだ。中国の一部である台湾に対する日本の不法占領との位置付けだが、当時の台湾が下関条約によって清国から割譲された合法的な日本領土であったことは言うまでもない。
そして現行の「殖民統治前期の政治經経済発展」の節の「.統治政策と台湾民衆の反応」の一項も「殖民統治政策」へと変更せよとしている。
そして同節の「統治政策と台湾民衆の対応」なる項は「殖民統治政策と台湾民衆の対応」と改めるとした上で、新たに次のように加筆した。
―――台湾は甲午戦争(※日清戦争)後の清末期の変法運動や辛亥革命と連動し、孫中山が台湾人の支持を求めて来台したことや、台湾人が革命、中華民国の樹立に参与したことなどを説明すること。
これは台湾主体ではなく中国主体の歴史観の表れだ。つまり台湾人も中華民族の一員として日本の統治を嫌い、積極的に中国の政治運動に参与したと強調するのが狙いだ。
しかしいったい台湾の民衆の何人がそれらに参加したというのか。ちなみに孫文の「来台」は一九〇〇年。恵州での蜂起のため、児玉源太郎台湾総督に資金を求めるためだった。その後も一九一三年、一九一七年にも「来台」しているが、それぞれ第二革命で敗北し、あるいは広東軍政府から追放されたため、中国から日本へ逃亡する際に立ち寄っただけである。つまり「台湾人の支持を求める」ための「来台」ではなかった。孫文は「日本の殖民統治」を批判せず、それを容認していたのだが、孫文を「国父」として神格化し、それを台湾人の中国人教育の宣伝材料とする馬英九政権は、平然とこうした歴史歪曲に手を染めるのだ。
■「インフラ建設」を「略奪」とする印象操作
また同節の「殖民地性を持った経済発展」の項については、次のような改定が見られる。
―――日本殖民政府は統治の効率化のため殖民地の価値を拡大し、「工業日本、農業台湾」のインフラ建設と経済発展に力を入れ、たとえばインフラ建設には土地、旧慣、人口等の三大調査や、交通、水利、電気、金融、近代的教育等の発展促進があったことを説明すること。
↓
―――日本殖民政府は統治の効率化のため、その殖民利益地の価値を拡大し、「工業日本、農業台湾」のインフラ建設と経済発展に力を入れ、たとえば土地調査、そして水利建設を行ったことを説明すること。
ここからは当時のインフラ建設の功績を出来るだけ塗り潰そうとの意図が充分に伝わってくる。
―――経済発展については農業改良、近代的製糖工場の設立、林産と特産の開発、日本との経済往来があったことを討論する。
↓
―――経済発展については農業改良、そして近代的製糖工場の設立と林特産の開発があったことを討論し、あわせて殖民政府による台湾人民の経済、土地に対する侵害、そして多くの貿易が日本の商社に独占されたことも討論する。
つまり日本による台湾のインフラ建設は、あくまでも本国の「利益」のためであり、台湾人は収奪の対象でしかなかったと強調するのを狙っている。広大な土地を要する製糖工場の建設という産業経済の近代化という社会変化の過程で土地の買い上げが進められ、当初民衆の反撥を招いたのは事実だが、しかしこうした産業基盤の諸建設があってこそ産業発展と民生向上が進み、その結果として今日の近代社会が存在しているのだ。
しかしここではことさら「侵害」という言葉を用いて史実を枉げ、まるで簒奪目的の経済政策が遂行されたかのような印象を植え付けたいらしい。その文脈の上では「農業開発」も「林産の開発」も、すべて農作物、木材の略奪という意味に変わってしまうだろう。
■「慰安婦の強制連行」の記述挿入を自慢
次いで「戦争時期の台湾」の節では、まず「皇民化政策と台湾人の対応」という項に関し、「武官総督統治の復活と大日本帝国の『大東亜共栄圏』の構想…を説明すること」とある中の「『大東亜共栄圏』の構想」を「『大東亜共栄圏』の侵略構想」に書き換える。
言うまでもなく抗日戦争勝利を宣伝したい国民党史観の適用である。
また台湾人は抗日戦争を行っていないにもかかわらず、新たに「台湾人と抗日戦争」との項を設け、それについて次のように記載する。
―――中華民国は対日抗戦を宣戦し、あわせて馬関条約(※下関条約)を破棄することを声明し、抗戦中の軍、民間の死傷の惨状と、李友邦ら台湾人が大陸で抗戦に参加したことを説明すること。
中華民国が一九四一年の対日宣戦布告文の中で「中日間の条約は一律破棄する」と声明し、それにより下関条約も廃止されたため、その時点で台湾の日本への割譲は帳消しになったと印象付けたいのだ。もっとも同条約の破棄を宣言したところで、すでに割譲済みの領土は回復しないというのが国際法の常識である。
また李友邦(中国に亡命して国民党に協力した人物)のクローズアップも政治的だ。なぜならこの人物は、国民党が反日宣伝の際に利用する「台湾の中華民族の抗日英雄」の一人だからだ。
また現行の同項には次のようにある。
―――太平洋戦争勃発後、台湾人民は戦争に巻き込まれ、軍事動員、物資統制、社会動員、慰安婦等など様々な状況に直面したこと、そして戦争後期においては聯合軍が台湾を吸収したことを説明すること。
今回はそこにある「慰安婦」を「女性の慰安婦強制」に改める。
こうした「慰安婦の強制連行」への言及で、「教科書はより史実に近づく」と、蒋教育部長は胸を張っている。
■門外漢による素人臭い歴史改竄も平然と
「殖民統治の社会文化の変遷」の節は「殖民統治時期の社会文化の変遷」に改めた。そして同節の「社会の変遷」の項では、次のように変わる。
――― 一九二〇年代以降、新たなタイプのインテリ層が形成され、社会に影響を与えた。殖民地反抗運動の指導、各種の新思潮の鼓吹等を指導したと説明すること。
↓
――― 一九二〇年代以降、新たなタイプのインテリ層が形成され、また五四運動、新文化運動の影響や活動が見られた。たとえば殖民地反抗運動の指導、各種の新思潮の鼓吹等を指導したと説明すること。
つまり二〇、三〇年代の台湾文化協会に代表される台湾人の文化や社会的地位の向上を求めた運動は、中国の五四新文化運動の影響を受けたものだと強調せよというわけだ。
その狙いは、インテリ層の文化運動をも中華民族の抗日運動の一環と位置付けることにある。
しかしこうした歴史の捉え方に対し、著名な歴史学者である張炎憲元国史館長は「日本統治時代、台湾の文化界は統治下における文化の対等を求め、自発的に台湾文化運動を開始した。五四運動、新文化運動の台湾への影響を記述させるのは台湾を中国の一部とするためで、史実に合わない」と批判している。
こうした歴史の門外漢による素人臭い歴史の改竄を平然とやってのけ、堂々と教科書に記載させてしまうところに在台中国人勢力の恐ろしさがある。
■日台分断目指す中国への呼応か
もちろん歴史の改竄は日本統治時代だけに限らず、どの時代についても歴史捏造の大中国史観で彩られることになる。
このように馬英九政権が台湾の中国化を急ぐのは、任期内での「中国統一の大業」の達成を目指す中国の習近平主席への呼応との見方が広く持たれている。
先頃中国の南京で行われた王郁琦・大陸委員会主任委員と張志軍・国務院台湾弁公室主任による台中初の閣僚級会談なども、「一つの中国」の枠組みの下、中国側の「統一」に向けたシナリオ通りの危険な茶番だが、そうしたものに馬英九政権は応じてしまったわけだ。
今回の学習指導要領の改訂なども「王郁琦主任委員の訪中での手土産にするため」(李俊毅・民進党副秘書長)との批判が出るなど、中国の歓心を買うためとの側面も指摘されている。
張志軍主任はこの会談の翌日、南京大虐殺記念館を訪れ、こうアピールしている。明らかに日本の安倍政権を念頭に入れてのものだ。
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台湾における今回の歴史教科書の書き換えの動きは、実はこのような中国の日台分断の呼び掛けに呼応したものとすら見えるのだ。
従って我々は、安全保障の観点からも、その動向を注視しなければならないのである。
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