台湾の「反日感情」とは(上)―実は在台中国人の「反台感情」でもあり
2016/02/24/Wed
■総統府も怒り―台湾で続く李登輝「尖閣」発言批判
台湾では、李登輝元総統が近著『余生―私の生命の旅と台湾の民主の道』(『李登輝より日本へ贈る言葉』の漢語版)で尖閣諸島は台湾ではなく日本に帰属するとの従来の主張を繰り返したため、それへの批判の声を、メディアが盛んに伝えている。

李登輝氏の新著。国内メディアの非難を受けるのはなぜか。それよりも非難するメディアの実
態を考えた方が好い
たとえば総統府は二月十六日、「喪権辱国(主権放棄の国辱)の言動」とする痛烈な批判のコメントを出した。
一方、李登輝氏と近い関係にあり、間もなく次期総統に就任する民進党の蔡英文主席はどうか。十七日にメディアからマイクを向けられ、「民進党の立場は一貫して明確。釣魚台は台湾に属する」とだけ答えている。もっとも彼女は「それ以上の質問は受け付けず、立ち去って行った」(中央社)とはされるが、中国時報や聯合報は鬼の首を取ったかのように、「蔡英文が李登輝の面子を潰した」と強調した。
このような感じで台湾では最近、日本を擁護するかのような李登輝氏に対する批判の言論が年がら年中噴き出している。そしてそうした話が時折日本でも報じられたり、またあの国での尖閣問題などを巡る反日デモの模様も伝えられたりで、親日と言われる台湾でも反日の意見は根強いのだとの印象がもたらされている。
そこでその台湾のこうした「反日感情」について考えてみたい。果たしてそれはあの国で広く持たれているものなのかどうかなどを。
■国民党の中華民族主義に冷ややかな台湾人

台北でしばしばみられる反日デモ。中華民族主義者のグループだ
台湾の国民党・馬英九政権にとって昨年は中共と同様、「抗日勝利七十周年」の年。やはり中共と同様、軍事パレードなど様々な記念行事を行ったが、その目的もまた向こうと同様だろう。すなわち国内における中華民族主義の高揚だ。かつての国民党独裁時代のような台湾の中国化を図るこうした営みには、中共も強く支持しているところだ。
しかし今さら中華民族主義の洗脳宣伝もあるまい。「抗日勝利」キャンペーンに対して当の台湾国民はあまりに冷ややかだったため、それだけで一つのニュースになったほどだ。
李登輝氏も日本の「Voice」九月号への寄稿で色々と書いている。「一連の馬総統の動きは、日本に対する嫌がらせといってよい。終戦七十周年を機に、中国の「抗日」と同調することで、中国側の歓心を買おうとしているのだろう」とか、「(軍事パレードには)もっとも一般の台湾人の関心はほとんどなく、私も人に教えられるまで知らなかったくらいである」といったようにだ。
そしてこんなことも。
「そもそも『抗日』というが、七十年前まで日本と台湾は『同じ国』だったのである。『同じ国』だったのだから、台湾が日本と戦った(抗日)という事実もない」
「私は陸軍に志願し、兄・李登欽は海軍に志願した。当時われわれ兄弟は、紛れもなく『日本人』として、祖国のために戦ったのである」
実はこうした李登輝氏の発言も、メディアを激怒させたのだ。上記の中国時報や聯合報などは、国民党寄りにして中共ベッタリ、中華民族主義濃厚のマスメディアだが、これらは「李登輝の日本祖国説」とまで命名し、糾弾キャンペーンを張った。
そしてそれに馬英九総統も呼応した。「李登輝は十二年間も中華民国総統を務めながら、何と台湾を売り飛ばし、人民を辱め、自分自身をも卑しめる媚日言論を見せるとは。直ちに撤回して謝罪すべきだ」とまで罵倒した。
■ヒステリックな反日宣伝に見られる台湾人憎悪
この騒動に関して朝日新聞は当時、以下の如く報じた(二〇一五年八月二十三日)。
「騒ぎになった背景には、戦前に中国から台湾に渡った人たちやその子孫の『本省人』と、戦後、国民党政権とともに台湾に移った『外省人』の対立がある。人口の8割超を占める本省人には日本と戦ったという意識は薄いが、外省人には抗日戦争で台湾を取り戻したとの考えが強い。
「来年1月の総統選で劣勢とされる国民党には、対日感情を揺さぶることで外省人を中心とする支持基盤を奮い立たせる狙いもありそうだ」
要するに李登輝氏の「親日」姿勢への批判キャンペーンはつねに、在台中国人(外省人)が主導する国民党などの政治勢力や同党寄りのマスメディアが行っているというわけだ。
それにしても馬英九氏のコメントを見てもわかるように、彼らのヒステリックさは尋常ではない。それには単に彼らの反日感情だけでなく、むしろそれ以上に反日感情=中華民族主義に染まらない台湾人への苛立ちが反映されているようだ。
だから当時、蔡英文氏が「日本祖国説」への感想を聞かれ、「この社会には様々な歴史の記憶がある、異なる歴史解釈には寛容になり、社会の団結を図って民主主義を進展させよう」などと発言し、社会に理性ある対応を求めるや、民主主義より中華民族主義を優先させるメディアは嬉々として、非難の矛先をこの台湾人リーダーにも向けたのである。

次期総統の蔡英文氏の李登輝氏との「近さ」はつねに中華民族主義
勢力の批判のターゲットだ
(つづく)
【過去の関連記事】
李登輝「台湾に抗日なし」発言が許せない国民党「中華民族主義」の実態 15/08/22
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2628.html
李登輝氏を擁護できない朝日新聞の事情 15/08/25
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2630.html
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台湾では、李登輝元総統が近著『余生―私の生命の旅と台湾の民主の道』(『李登輝より日本へ贈る言葉』の漢語版)で尖閣諸島は台湾ではなく日本に帰属するとの従来の主張を繰り返したため、それへの批判の声を、メディアが盛んに伝えている。

李登輝氏の新著。国内メディアの非難を受けるのはなぜか。それよりも非難するメディアの実
態を考えた方が好い
たとえば総統府は二月十六日、「喪権辱国(主権放棄の国辱)の言動」とする痛烈な批判のコメントを出した。
一方、李登輝氏と近い関係にあり、間もなく次期総統に就任する民進党の蔡英文主席はどうか。十七日にメディアからマイクを向けられ、「民進党の立場は一貫して明確。釣魚台は台湾に属する」とだけ答えている。もっとも彼女は「それ以上の質問は受け付けず、立ち去って行った」(中央社)とはされるが、中国時報や聯合報は鬼の首を取ったかのように、「蔡英文が李登輝の面子を潰した」と強調した。
このような感じで台湾では最近、日本を擁護するかのような李登輝氏に対する批判の言論が年がら年中噴き出している。そしてそうした話が時折日本でも報じられたり、またあの国での尖閣問題などを巡る反日デモの模様も伝えられたりで、親日と言われる台湾でも反日の意見は根強いのだとの印象がもたらされている。
そこでその台湾のこうした「反日感情」について考えてみたい。果たしてそれはあの国で広く持たれているものなのかどうかなどを。
■国民党の中華民族主義に冷ややかな台湾人

台北でしばしばみられる反日デモ。中華民族主義者のグループだ
台湾の国民党・馬英九政権にとって昨年は中共と同様、「抗日勝利七十周年」の年。やはり中共と同様、軍事パレードなど様々な記念行事を行ったが、その目的もまた向こうと同様だろう。すなわち国内における中華民族主義の高揚だ。かつての国民党独裁時代のような台湾の中国化を図るこうした営みには、中共も強く支持しているところだ。
しかし今さら中華民族主義の洗脳宣伝もあるまい。「抗日勝利」キャンペーンに対して当の台湾国民はあまりに冷ややかだったため、それだけで一つのニュースになったほどだ。
李登輝氏も日本の「Voice」九月号への寄稿で色々と書いている。「一連の馬総統の動きは、日本に対する嫌がらせといってよい。終戦七十周年を機に、中国の「抗日」と同調することで、中国側の歓心を買おうとしているのだろう」とか、「(軍事パレードには)もっとも一般の台湾人の関心はほとんどなく、私も人に教えられるまで知らなかったくらいである」といったようにだ。
そしてこんなことも。
「そもそも『抗日』というが、七十年前まで日本と台湾は『同じ国』だったのである。『同じ国』だったのだから、台湾が日本と戦った(抗日)という事実もない」
「私は陸軍に志願し、兄・李登欽は海軍に志願した。当時われわれ兄弟は、紛れもなく『日本人』として、祖国のために戦ったのである」
実はこうした李登輝氏の発言も、メディアを激怒させたのだ。上記の中国時報や聯合報などは、国民党寄りにして中共ベッタリ、中華民族主義濃厚のマスメディアだが、これらは「李登輝の日本祖国説」とまで命名し、糾弾キャンペーンを張った。
そしてそれに馬英九総統も呼応した。「李登輝は十二年間も中華民国総統を務めながら、何と台湾を売り飛ばし、人民を辱め、自分自身をも卑しめる媚日言論を見せるとは。直ちに撤回して謝罪すべきだ」とまで罵倒した。
■ヒステリックな反日宣伝に見られる台湾人憎悪
この騒動に関して朝日新聞は当時、以下の如く報じた(二〇一五年八月二十三日)。
「騒ぎになった背景には、戦前に中国から台湾に渡った人たちやその子孫の『本省人』と、戦後、国民党政権とともに台湾に移った『外省人』の対立がある。人口の8割超を占める本省人には日本と戦ったという意識は薄いが、外省人には抗日戦争で台湾を取り戻したとの考えが強い。
「来年1月の総統選で劣勢とされる国民党には、対日感情を揺さぶることで外省人を中心とする支持基盤を奮い立たせる狙いもありそうだ」
要するに李登輝氏の「親日」姿勢への批判キャンペーンはつねに、在台中国人(外省人)が主導する国民党などの政治勢力や同党寄りのマスメディアが行っているというわけだ。
それにしても馬英九氏のコメントを見てもわかるように、彼らのヒステリックさは尋常ではない。それには単に彼らの反日感情だけでなく、むしろそれ以上に反日感情=中華民族主義に染まらない台湾人への苛立ちが反映されているようだ。
だから当時、蔡英文氏が「日本祖国説」への感想を聞かれ、「この社会には様々な歴史の記憶がある、異なる歴史解釈には寛容になり、社会の団結を図って民主主義を進展させよう」などと発言し、社会に理性ある対応を求めるや、民主主義より中華民族主義を優先させるメディアは嬉々として、非難の矛先をこの台湾人リーダーにも向けたのである。

次期総統の蔡英文氏の李登輝氏との「近さ」はつねに中華民族主義
勢力の批判のターゲットだ
(つづく)
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李登輝「台湾に抗日なし」発言が許せない国民党「中華民族主義」の実態 15/08/22
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2628.html
李登輝氏を擁護できない朝日新聞の事情 15/08/25
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2630.html
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