中国の使者を襲撃―私が台湾人の「暴力」に感動した理由 (付:ニュース動画)
2008/10/22/Wed
※「連載・政党の媚中度調査」は休みます。
■台湾へやって来た中国政府高官
台湾と中国との交流を「両岸交流」と言うが、台湾南部の台南で二十一日から開催されている「両岸学術シンポジウム」に出席している中国の張銘清と言う学者が台湾の民衆の抗議にさらされている。なぜならこの人物は肩書きは「学者」でも、実は海峡両岸交流協会(海協会)の副会長と言う政府高官でもあるからだ。
来台した海峡両岸交流協会の張銘清副会長
海協会とは台中交流の中国側窓口で、台湾側の海峡交流基金会(海基会)と協議を行う機関。しかし中国にとって「交流」とは「中国統一」(台湾併呑)の準備以外にない。だからこの国は、台湾と中国は「国と国との関係」とする李登輝総統の発言に反発し、一方的に協議を拒否させてきた(協議が中国に宣伝利用されることを恐れた李登輝氏の策略が奏功した)。
■台湾は中国にここまで侮られている
ところが今年六月、「一つの中国」を掲げる在台中国人、馬英九総統の就任で協議は北京で再開。そして近く台北でも行われ、海協会の陳雲林会長が初めて台湾の地に足を踏み入れる予定だ。
侵略国家である中国が安心して陳雲林氏を台湾へ派遣できるのは、やはり台湾人を侮っているからだろう。これまで散々軍事的な恫喝を加えてきたこの国は、台湾人はすっかり中国に萎縮していると思っているはずだ。
事実、馬英九政府など、自ら「国と国との関係」を否定するなど、中国傾斜を強めているが、これは中国から見れば台湾側の降伏に等しい。海協会などは海基会に対し、「たとえ沿道であれ、陳雲林の目の届く場所に台湾の国旗を掲げるな」とまで要求しているほどだ。
■台湾人の反応を探りにやって来た
そのため大勢の日本人も、小国台湾の人々は、中国に萎縮していると感じているが、実際には馬英九政府の中国傾斜と中国の横暴には怒りを募らせているのだ。そのため十月二十五日には台北で、陳雲林氏の入国に抗議する数十万人規模のデモが行われる予定だ。
そうした状況下でやって来たのが張銘清副会長なのだ。陳雲林会長の台湾訪問に先立って、政治抜きの「学者」の身分で入国し、台湾人の反応を探ろうと言うわけである。
彼が訪れた台南は、台北と異なり中国色が希薄。中国軍が「攻撃するなら先ず台南だ」と宣言していたほど台湾独立を求める声が強烈だ。
そしてこの地の人々は、早速「反応」を示してやった。
■まず二人の学生が抗議に立ち上がった
二十日、シンポジウムの会場である台南芸術大学の入り口で彼を待ち受けていたのは、抗議に集まった数十名の民衆で、現地は警官隊と揉み合って騒然となった。
シンポジウムの会場前に詰め掛けた抗議の群衆
また彼が講演を始めようとすると、今度は男女二人の学生が立ち上がり、「台湾は中国の一部ではない」「講演前に毒ミルク事件について謝罪しろ」と書かれたプラカードを掲げて罵声を浴びせて取り押さえられている。
講演会場で抗議する学生。右端が張銘清氏
それに対して張銘清氏は「特別に熱心な歓迎を受けたが、気にしない」「私は彼らの主張の権利を死んでも守る」などと余裕を見せ、あるいは台湾人に対する優越感を示して面子を保ったが、翌二十一日にはそうも行かなくなった。
■中国の使者を取り囲む群衆
メディアを付き従えて市内の史跡巡りをし、昔の大砲を眺めては「台湾が独立しなければ永遠に戦争はないのだ」などと傲慢に語っているうちに、抗議にやってきたの群衆に取り囲まれた。
その模様をNHKはこう速報した。
「中国製の乳製品に化学物質のメラミンが混入していた問題などに不満を募らせた市民から突き倒されるなどの激しい抗議に遭いました」
ここで中国に配慮して真実をはっきり言えない同局に代わって書くと、そのとき人々が張銘清に浴びていた言葉はもっと深刻なものだった。それは「台湾は独立する」「台湾は中国のものではない」である。
■わざとか? ひっくり返った中国の使者
ところで、突き倒されたと言う張銘清氏だが、ずいぶんと派手にひっくり返っていた。
転倒する張銘清氏。メガネは飛んでも、余裕の表情は崩さなかった
犯人とされるのは、彼に詰め寄っていた台南の王定宇市議会議員。だがニュース画像を見る限り、張銘清氏は自分でわざと転倒したようだ、と多くの台湾人は思っているし、私もそう感じている。王定宇氏自身も「私は押していない。木の根につまずいたのだと思う」と主張している。
王定宇氏の肩が張氏の胸に当たっているが、手で押し倒していない。そ
の後、王氏は転んだ張氏に手を差し伸べるが、張氏は王氏を睨んで「彼
が暴行犯人だ」と示唆
いずれにせよ、それまで余裕綽綽だった「張大人」も、この辺りからは表情に恐怖の色が浮かび上がってきた。追って来る群集に小突かれながら、慌てて乗用車に駆け戻ったのだが、今度はその屋根に一人のおじさんが上って激しく蹴り始めた。
車を群衆に囲まれた張銘清氏は、さぞ身の危険を感じたことだろう。しかし彼は神に感謝するべきだった。なぜなら相手が台湾の民衆だからだ。「大陸同胞」などとは違い、一人の老人に対して無闇にリンチを加えたりはしない。
■ついに「中国」に怒りをぶつけた!
こうした一連のニュース画像を見て、私は心から感動した。なぜなら台湾の民が、ここまで直接「中国」に肉迫し、怒りをぶつけることができたのは、恐らく初めてではないかと思ったからだ。
群衆に追われて逃げる張氏
恐らく多くの台湾人は、抗議の人々に拍手を送っていることだろう。しかしその一方で、台湾併呑後に真っ先に抹殺されるのは彼らだと、心配している人もいるかも知れない。
それでもなお「暴力はいけない」と非難する者がいるなら、私は「台湾人には国家を持つ資格がないと言うのか」と反問したい。
■台湾人に味方をしなくていいのか
これまで一方的にミサイルを向けられ、「台湾海峡を火の海にする」とまで脅迫され、降伏要求(統一要求)まで付き付けられているのは台湾人なのだ。その彼らがその国の使者に怒りをぶつけない方がどうかしている。
その後、張銘清は相変わらず大人然として、「暴力は私に対してだけにして欲しい」とメディアに語った。中国の国務院台湾事務弁公室は「野蛮な暴力行為に強烈な憤慨を表明し、厳しく非難する」とし、「暴徒を厳罰に処せ」と台湾側に要求している。
国民党も「国際社会での台湾のイメージを損なった」等々、どこまでも中国の側に立つ気だ。しかし抗議に立ち上がった台湾人たちは、その国際社会に対し、台湾の危機的状況を知らせたいと願っていたはずだ。そこで私はささやかながらも、ここにおいて彼らの心の声を伝えた次第だ。
このような台湾人に味方をするべきか、それとも見殺しにするべきかを、我々日本人は考えなくてはならないと思う。
学生の抗議(台湾のニュース画面) ※一部英語
王定宇氏、群衆の肉迫抗議(同)
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■台湾へやって来た中国政府高官
台湾と中国との交流を「両岸交流」と言うが、台湾南部の台南で二十一日から開催されている「両岸学術シンポジウム」に出席している中国の張銘清と言う学者が台湾の民衆の抗議にさらされている。なぜならこの人物は肩書きは「学者」でも、実は海峡両岸交流協会(海協会)の副会長と言う政府高官でもあるからだ。
来台した海峡両岸交流協会の張銘清副会長
海協会とは台中交流の中国側窓口で、台湾側の海峡交流基金会(海基会)と協議を行う機関。しかし中国にとって「交流」とは「中国統一」(台湾併呑)の準備以外にない。だからこの国は、台湾と中国は「国と国との関係」とする李登輝総統の発言に反発し、一方的に協議を拒否させてきた(協議が中国に宣伝利用されることを恐れた李登輝氏の策略が奏功した)。
■台湾は中国にここまで侮られている
ところが今年六月、「一つの中国」を掲げる在台中国人、馬英九総統の就任で協議は北京で再開。そして近く台北でも行われ、海協会の陳雲林会長が初めて台湾の地に足を踏み入れる予定だ。
侵略国家である中国が安心して陳雲林氏を台湾へ派遣できるのは、やはり台湾人を侮っているからだろう。これまで散々軍事的な恫喝を加えてきたこの国は、台湾人はすっかり中国に萎縮していると思っているはずだ。
事実、馬英九政府など、自ら「国と国との関係」を否定するなど、中国傾斜を強めているが、これは中国から見れば台湾側の降伏に等しい。海協会などは海基会に対し、「たとえ沿道であれ、陳雲林の目の届く場所に台湾の国旗を掲げるな」とまで要求しているほどだ。
■台湾人の反応を探りにやって来た
そのため大勢の日本人も、小国台湾の人々は、中国に萎縮していると感じているが、実際には馬英九政府の中国傾斜と中国の横暴には怒りを募らせているのだ。そのため十月二十五日には台北で、陳雲林氏の入国に抗議する数十万人規模のデモが行われる予定だ。
そうした状況下でやって来たのが張銘清副会長なのだ。陳雲林会長の台湾訪問に先立って、政治抜きの「学者」の身分で入国し、台湾人の反応を探ろうと言うわけである。
彼が訪れた台南は、台北と異なり中国色が希薄。中国軍が「攻撃するなら先ず台南だ」と宣言していたほど台湾独立を求める声が強烈だ。
そしてこの地の人々は、早速「反応」を示してやった。
■まず二人の学生が抗議に立ち上がった
二十日、シンポジウムの会場である台南芸術大学の入り口で彼を待ち受けていたのは、抗議に集まった数十名の民衆で、現地は警官隊と揉み合って騒然となった。
シンポジウムの会場前に詰め掛けた抗議の群衆
また彼が講演を始めようとすると、今度は男女二人の学生が立ち上がり、「台湾は中国の一部ではない」「講演前に毒ミルク事件について謝罪しろ」と書かれたプラカードを掲げて罵声を浴びせて取り押さえられている。
講演会場で抗議する学生。右端が張銘清氏
それに対して張銘清氏は「特別に熱心な歓迎を受けたが、気にしない」「私は彼らの主張の権利を死んでも守る」などと余裕を見せ、あるいは台湾人に対する優越感を示して面子を保ったが、翌二十一日にはそうも行かなくなった。
■中国の使者を取り囲む群衆
メディアを付き従えて市内の史跡巡りをし、昔の大砲を眺めては「台湾が独立しなければ永遠に戦争はないのだ」などと傲慢に語っているうちに、抗議にやってきたの群衆に取り囲まれた。
その模様をNHKはこう速報した。
「中国製の乳製品に化学物質のメラミンが混入していた問題などに不満を募らせた市民から突き倒されるなどの激しい抗議に遭いました」
ここで中国に配慮して真実をはっきり言えない同局に代わって書くと、そのとき人々が張銘清に浴びていた言葉はもっと深刻なものだった。それは「台湾は独立する」「台湾は中国のものではない」である。
■わざとか? ひっくり返った中国の使者
ところで、突き倒されたと言う張銘清氏だが、ずいぶんと派手にひっくり返っていた。
転倒する張銘清氏。メガネは飛んでも、余裕の表情は崩さなかった
犯人とされるのは、彼に詰め寄っていた台南の王定宇市議会議員。だがニュース画像を見る限り、張銘清氏は自分でわざと転倒したようだ、と多くの台湾人は思っているし、私もそう感じている。王定宇氏自身も「私は押していない。木の根につまずいたのだと思う」と主張している。
王定宇氏の肩が張氏の胸に当たっているが、手で押し倒していない。そ
の後、王氏は転んだ張氏に手を差し伸べるが、張氏は王氏を睨んで「彼
が暴行犯人だ」と示唆
いずれにせよ、それまで余裕綽綽だった「張大人」も、この辺りからは表情に恐怖の色が浮かび上がってきた。追って来る群集に小突かれながら、慌てて乗用車に駆け戻ったのだが、今度はその屋根に一人のおじさんが上って激しく蹴り始めた。
車を群衆に囲まれた張銘清氏は、さぞ身の危険を感じたことだろう。しかし彼は神に感謝するべきだった。なぜなら相手が台湾の民衆だからだ。「大陸同胞」などとは違い、一人の老人に対して無闇にリンチを加えたりはしない。
■ついに「中国」に怒りをぶつけた!
こうした一連のニュース画像を見て、私は心から感動した。なぜなら台湾の民が、ここまで直接「中国」に肉迫し、怒りをぶつけることができたのは、恐らく初めてではないかと思ったからだ。
群衆に追われて逃げる張氏
恐らく多くの台湾人は、抗議の人々に拍手を送っていることだろう。しかしその一方で、台湾併呑後に真っ先に抹殺されるのは彼らだと、心配している人もいるかも知れない。
それでもなお「暴力はいけない」と非難する者がいるなら、私は「台湾人には国家を持つ資格がないと言うのか」と反問したい。
■台湾人に味方をしなくていいのか
これまで一方的にミサイルを向けられ、「台湾海峡を火の海にする」とまで脅迫され、降伏要求(統一要求)まで付き付けられているのは台湾人なのだ。その彼らがその国の使者に怒りをぶつけない方がどうかしている。
その後、張銘清は相変わらず大人然として、「暴力は私に対してだけにして欲しい」とメディアに語った。中国の国務院台湾事務弁公室は「野蛮な暴力行為に強烈な憤慨を表明し、厳しく非難する」とし、「暴徒を厳罰に処せ」と台湾側に要求している。
国民党も「国際社会での台湾のイメージを損なった」等々、どこまでも中国の側に立つ気だ。しかし抗議に立ち上がった台湾人たちは、その国際社会に対し、台湾の危機的状況を知らせたいと願っていたはずだ。そこで私はささやかながらも、ここにおいて彼らの心の声を伝えた次第だ。
このような台湾人に味方をするべきか、それとも見殺しにするべきかを、我々日本人は考えなくてはならないと思う。
学生の抗議(台湾のニュース画面) ※一部英語
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