洗脳された台湾人にももどかしさ―台湾の国旗・国歌を嫌う親台湾派が多いのはなぜか(下)
2015/11/20/Fri
日華断交後、中華人民共和国への過度な配慮で、台湾の「中華民国」という国名や国旗は日本のメディアなどにタブー視された結果、日本人にはすっかり忘れされたかに見えたが、近年は日台交流機運の高まりを受け、それらがネットでも散見されるようになってきた。
ところがその中華民国の国旗、国歌に反感を抱くのが、親中派ではなく一部の親台派なのだ。それはなぜかと言えば、それらが台湾ではなく中国の国旗、国歌であり、しかも国旗、国歌というより、国民党の党旗、党歌に等しいからだ。
前回はそのことを説明した。
中華民国の「国父」である孫文の肖像。言うまでもなく中国の革命家だ。そして国民党旗(左)
と中華民国旗。台湾は民主化時代の今もなお、中国から持ち込まれた党国一体時代の国家体
制下におかれているのだ
■中華民国国旗・国歌を軽視する民進党
台湾人意識を前面に打ち出す最大野党の民進党は、中華民国体制を支える「一つの中国」原則というフィクションを否定し、「台湾と中国は一辺一国(別々の国)」「一つの台湾・一つの中国」との現状を強調する。同党の蔡英文主席は「中華民国は亡命政権だ」と明確に指摘したこともある(実際に中華民国政権は一九四九年、非領土である台湾へ遷ったものだ)。
したがって党本部に中華民国国旗は掲げられていない。また中華民国国歌も軽視しているものと見られる。実際に蔡英文氏は十月十日の国慶節式典で国歌斉唱の際、出だしの部分を歌わなかった。
国民党勢力はこれを大いに批判した。次期「中華民国総統」の最有力候である蔡氏は「中華民国体制」を尊重していないとのネガティブキャンペーンだろう。
しかし、蔡氏が歌わなかったのは「吾党所宗」(我が党はそれを宗とし)との部分だ。前記の通り、それは孫文の言葉。「我が党」とは「国民党」のことである。
国歌斉唱で冒頭部分を歌わなかった民進党の蔡英文主席(右3)。當然と言えば当然だ
国民党一党独裁時代はとうに終わっているのだ。民進党主席が歌わないのは当然だろう。
それでも中華民族主義者は執念深い。同党の国会議員達は「国父」こと孫文(中山)の誕生日である十一月十二日に記者会見を行い、「蔡英文に国旗を掲げよ、国歌は全部歌え。孫中山は嘆いている」と訴えた。
もっとも、今更孫文の名を出しても、「台湾の政治の空気は変わり、国民党以外は孫中山をかつてのように尊敬することはもうない」(BBC中国語サイト)のだが。
孫文の遺影を掲げ、次期総統有力候補である蔡英文氏に対し国旗、国歌を尊重し、中華民国
体制を守れと訴える国民党の議員達
■実は中共は中華民国体制を支えている
ただ「国民党以外」には、同党と中華民族主義で結ばれる中共は孫文を讃えている。
その日は中国人民政治協商会議が、孫文生誕百五十年を記念する活動を来年盛大に実施することを決議している。何でも「孫中山先生の愛国思想を継承し、両岸関係の平和的発展を守り、祖国の平和統一の大業を推進し、中華民族の偉大なる復興という中国の夢の実現のために力を尽くす」のが目的なのだとか。
反「統一」の「民進党政権」発足を視野に、国共両党の結束を強化して、台湾国内を分断しようと狙っているのだろう。このように「中華民国の国父」は国民党取込みの道具として活用されているのだ。
もちろん既述のように中共は、断じて中華民国の存在を認めない立場だが、しかしそれは表面的なものであり、実際にはしっかりと中華民国体制を支えているのだ。なぜならそれが「チャイナ体制」だからである。その体制が存続する限り、中共はそれを「統一」の口実にし続けることができるのだ。
だから民進党が「台湾と中国は一辺一国」などと主張し、中国とは無関係の台湾人国家を目指そうとすれば、中共は「台湾独立運動による中国分裂の動きだ」などと攻撃し、「地は動き山は揺れる」(習近平)などと恫喝することになるのである。
このような中共は、国民党には恐ろしくも、頼もしい存在に映るのだろう。そしてそのようにして同党が中共に傾斜すればするほど、それに反撥するように台湾国内の台湾人意識はますます広がりみせるのだ。
そしてそれが中華民国の国旗、国歌への軽視、反感にも繋がって行くのである。
■台湾で国旗・国歌を尊重しないのが真の愛国
一般の国では国旗、国歌を大切にするのが愛国者だが、以上のように台湾では、それらを大切にする者としない者のどちらが真の愛国者かが問題となる。
それらを大切にするという意味でなら国民党はまさに愛国勢力だ。だが問題は、の愛国心がどこに向けられているかなのである。
彼らの愛の対象は「一つの中国」(台湾を含む中国)とされているのだろう。「一つの台湾」を否定しなければならない立場なのだから。
だからこそ中共からは、「孫中山先生の愛国思想を継承し統一を促進しよう」などと呼び掛けられてしまうわけだ。言うまでもなくいその「愛国」は「中国」である。そして中共が言う「中国」とは「中華人民共和国」だ。
たしかにその呼び掛けに対し、国民党政権(夏立言・大陸委員会主任委員)は「孫中山が我々中華民国の国父であることは否定しようがない」などと応じ、中華民国の存在をアピールはしている。
だがそれは、あくまでも国内向けパフォーマンスに過ぎないようだ。驚くなかれ国民党勢力は、国民には「中華民国を守れ」と叫び、国旗、国歌を強制しようとするが、中共の前ではその国名を口にすることすらないのである。
夏氏自身、七日に行われた馬英九総統と習近平国家主席との台中首脳会談で、馬氏が習氏に対し「中華民国憲法」と口にしたことに関し、「これまで大陸の政治家の前で勇敢にも中華民国と口にしたのは馬総統が最初だ」と話している。それほど国民党は中共の前で国家主権を自己否定して来たということだ。
それに対して国旗、国歌に不満を持つ人々は、そのような国民党の中国迎合を愛国ならぬ売国の動きとして反対するのである。
果たしてそのどちらが本当の愛国者といえるのだろうか。
■日本は台湾のどちらの主張を支持するべきか
そして話を最初に戻そう。台湾に親近感を抱き、豊かな日台交流がいつまでも続くことを願う日本人は、果たしてそのどちらの主張を支持すべきなのだろうか。
日本の親台派には特殊なところがあり、台湾民主化(台湾人国家の建設)をまるで我がことのように支持する傾向がよく見られる。
その理由は日本の民族性に求めるべきか、または日本人をしてそうせしめる台湾の魅力に求めるべきかはともかく、そうした台湾への声援は、国共両党の中華民族主義の妨害圧力が大きくなればなるほど加熱するようだ。
中華民国の国旗、国歌に文句が出るのも、そうした熱意の表れなのだろう。
最後に、民進党が二〇一三年十一月に実施した世論調査の結果を紹介しよう。
「現行の国旗は今の台湾に相応しいか」との問いに対し、「相応しい」は七六・九%で「相応しくない」は一五・一%。
「現行の国歌は今の台湾に相応しいか」との問いには、「相応しい」は五三・一%で「相応しくない」は三六・四%。
国旗の支持度は相当高いが、それに比べ国歌は、より国民党色が強烈なためかだいぶおちるものの、それでも約半数には達している。こうした状況に「長年の洗脳宣伝の結果だ」と、もどかしさを感じる日本の親台派は少なくない。それはあたかも、国共両党の中国人の宣伝に洗脳され、台湾を中国の一部と誤解し続ける日本人にもどかしさを感じて来た台湾の親日派(日本語世代)のようなものだろうか。
そしてもう一つ、「現行の国名は今の台湾に相応しいか」に関しては、「相応しい」が六七・五%で、「相応しくない」が二五・一%。ただし「もし国名を自由に選べるなら、『中華民国』と『台湾』のどちらを選ぶか」では、「中華民国」は三九・五%で、「台湾」の五五・一%を下回っている。
(おわり)
台湾の国旗・国歌を嫌う親台湾派が多いのはなぜか(上) 15/11/19
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ところがその中華民国の国旗、国歌に反感を抱くのが、親中派ではなく一部の親台派なのだ。それはなぜかと言えば、それらが台湾ではなく中国の国旗、国歌であり、しかも国旗、国歌というより、国民党の党旗、党歌に等しいからだ。
前回はそのことを説明した。
中華民国の「国父」である孫文の肖像。言うまでもなく中国の革命家だ。そして国民党旗(左)
と中華民国旗。台湾は民主化時代の今もなお、中国から持ち込まれた党国一体時代の国家体
制下におかれているのだ
■中華民国国旗・国歌を軽視する民進党
台湾人意識を前面に打ち出す最大野党の民進党は、中華民国体制を支える「一つの中国」原則というフィクションを否定し、「台湾と中国は一辺一国(別々の国)」「一つの台湾・一つの中国」との現状を強調する。同党の蔡英文主席は「中華民国は亡命政権だ」と明確に指摘したこともある(実際に中華民国政権は一九四九年、非領土である台湾へ遷ったものだ)。
したがって党本部に中華民国国旗は掲げられていない。また中華民国国歌も軽視しているものと見られる。実際に蔡英文氏は十月十日の国慶節式典で国歌斉唱の際、出だしの部分を歌わなかった。
国民党勢力はこれを大いに批判した。次期「中華民国総統」の最有力候である蔡氏は「中華民国体制」を尊重していないとのネガティブキャンペーンだろう。
しかし、蔡氏が歌わなかったのは「吾党所宗」(我が党はそれを宗とし)との部分だ。前記の通り、それは孫文の言葉。「我が党」とは「国民党」のことである。
国歌斉唱で冒頭部分を歌わなかった民進党の蔡英文主席(右3)。當然と言えば当然だ
国民党一党独裁時代はとうに終わっているのだ。民進党主席が歌わないのは当然だろう。
それでも中華民族主義者は執念深い。同党の国会議員達は「国父」こと孫文(中山)の誕生日である十一月十二日に記者会見を行い、「蔡英文に国旗を掲げよ、国歌は全部歌え。孫中山は嘆いている」と訴えた。
もっとも、今更孫文の名を出しても、「台湾の政治の空気は変わり、国民党以外は孫中山をかつてのように尊敬することはもうない」(BBC中国語サイト)のだが。
孫文の遺影を掲げ、次期総統有力候補である蔡英文氏に対し国旗、国歌を尊重し、中華民国
体制を守れと訴える国民党の議員達
■実は中共は中華民国体制を支えている
ただ「国民党以外」には、同党と中華民族主義で結ばれる中共は孫文を讃えている。
その日は中国人民政治協商会議が、孫文生誕百五十年を記念する活動を来年盛大に実施することを決議している。何でも「孫中山先生の愛国思想を継承し、両岸関係の平和的発展を守り、祖国の平和統一の大業を推進し、中華民族の偉大なる復興という中国の夢の実現のために力を尽くす」のが目的なのだとか。
反「統一」の「民進党政権」発足を視野に、国共両党の結束を強化して、台湾国内を分断しようと狙っているのだろう。このように「中華民国の国父」は国民党取込みの道具として活用されているのだ。
もちろん既述のように中共は、断じて中華民国の存在を認めない立場だが、しかしそれは表面的なものであり、実際にはしっかりと中華民国体制を支えているのだ。なぜならそれが「チャイナ体制」だからである。その体制が存続する限り、中共はそれを「統一」の口実にし続けることができるのだ。
だから民進党が「台湾と中国は一辺一国」などと主張し、中国とは無関係の台湾人国家を目指そうとすれば、中共は「台湾独立運動による中国分裂の動きだ」などと攻撃し、「地は動き山は揺れる」(習近平)などと恫喝することになるのである。
このような中共は、国民党には恐ろしくも、頼もしい存在に映るのだろう。そしてそのようにして同党が中共に傾斜すればするほど、それに反撥するように台湾国内の台湾人意識はますます広がりみせるのだ。
そしてそれが中華民国の国旗、国歌への軽視、反感にも繋がって行くのである。
■台湾で国旗・国歌を尊重しないのが真の愛国
一般の国では国旗、国歌を大切にするのが愛国者だが、以上のように台湾では、それらを大切にする者としない者のどちらが真の愛国者かが問題となる。
それらを大切にするという意味でなら国民党はまさに愛国勢力だ。だが問題は、の愛国心がどこに向けられているかなのである。
彼らの愛の対象は「一つの中国」(台湾を含む中国)とされているのだろう。「一つの台湾」を否定しなければならない立場なのだから。
だからこそ中共からは、「孫中山先生の愛国思想を継承し統一を促進しよう」などと呼び掛けられてしまうわけだ。言うまでもなくいその「愛国」は「中国」である。そして中共が言う「中国」とは「中華人民共和国」だ。
たしかにその呼び掛けに対し、国民党政権(夏立言・大陸委員会主任委員)は「孫中山が我々中華民国の国父であることは否定しようがない」などと応じ、中華民国の存在をアピールはしている。
だがそれは、あくまでも国内向けパフォーマンスに過ぎないようだ。驚くなかれ国民党勢力は、国民には「中華民国を守れ」と叫び、国旗、国歌を強制しようとするが、中共の前ではその国名を口にすることすらないのである。
夏氏自身、七日に行われた馬英九総統と習近平国家主席との台中首脳会談で、馬氏が習氏に対し「中華民国憲法」と口にしたことに関し、「これまで大陸の政治家の前で勇敢にも中華民国と口にしたのは馬総統が最初だ」と話している。それほど国民党は中共の前で国家主権を自己否定して来たということだ。
それに対して国旗、国歌に不満を持つ人々は、そのような国民党の中国迎合を愛国ならぬ売国の動きとして反対するのである。
果たしてそのどちらが本当の愛国者といえるのだろうか。
■日本は台湾のどちらの主張を支持するべきか
そして話を最初に戻そう。台湾に親近感を抱き、豊かな日台交流がいつまでも続くことを願う日本人は、果たしてそのどちらの主張を支持すべきなのだろうか。
日本の親台派には特殊なところがあり、台湾民主化(台湾人国家の建設)をまるで我がことのように支持する傾向がよく見られる。
その理由は日本の民族性に求めるべきか、または日本人をしてそうせしめる台湾の魅力に求めるべきかはともかく、そうした台湾への声援は、国共両党の中華民族主義の妨害圧力が大きくなればなるほど加熱するようだ。
中華民国の国旗、国歌に文句が出るのも、そうした熱意の表れなのだろう。
最後に、民進党が二〇一三年十一月に実施した世論調査の結果を紹介しよう。
「現行の国旗は今の台湾に相応しいか」との問いに対し、「相応しい」は七六・九%で「相応しくない」は一五・一%。
「現行の国歌は今の台湾に相応しいか」との問いには、「相応しい」は五三・一%で「相応しくない」は三六・四%。
国旗の支持度は相当高いが、それに比べ国歌は、より国民党色が強烈なためかだいぶおちるものの、それでも約半数には達している。こうした状況に「長年の洗脳宣伝の結果だ」と、もどかしさを感じる日本の親台派は少なくない。それはあたかも、国共両党の中国人の宣伝に洗脳され、台湾を中国の一部と誤解し続ける日本人にもどかしさを感じて来た台湾の親日派(日本語世代)のようなものだろうか。
そしてもう一つ、「現行の国名は今の台湾に相応しいか」に関しては、「相応しい」が六七・五%で、「相応しくない」が二五・一%。ただし「もし国名を自由に選べるなら、『中華民国』と『台湾』のどちらを選ぶか」では、「中華民国」は三九・五%で、「台湾」の五五・一%を下回っている。
(おわり)
台湾の国旗・国歌を嫌う親台湾派が多いのはなぜか(上) 15/11/19
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