台湾人が反対の台中首脳会談を歓迎していいのかー馬英九・習近平の「中国統一」への謀略
2015/11/05/Thu
■ミサイル撤去があっても歓迎できない
台湾の総統府が十一月三日に突如、馬英九総統と中国の習近平国家主席が七日にシンガポールで会談すると発表。この史上初の台中首脳会談について産経新聞は「長年、政治的に対立してきた中台が関係改善に向けて大きな一歩を踏み出す意味がある。中国の内外から歓迎と期待の声が多く寄せられている」と指摘するが、その「関係改善」の意味が問題だ。
馬英九総統(右)と習近平主席(左)。彼らが求める「関係改善」の意味が問題だ
中国が「改善」を進めようとするのはすべて台湾併呑のため。産経も「『中華民族の偉大なる復興の実現』をスローガンに掲げる習政権にとって、中台統一は最大の悲願の一つ」と書いている。
上海台湾研究所の倪永傑常務副所長は「習近平は会談で台湾の国際社会での活動を増加させ、更には台湾に照準を合わせたミサイルの一部を撤去すると表明するかもしれない」と予測するが、そうした脅しと宥めの使い分けもまた、台湾を「統一」に持ち込むための中国の常套手段。
そもそも中国側は無条件に台湾への外交圧力、ミサイル配備を停止すべきである。
したがって、台湾からも「歓迎と期待の声の声が多く寄せられている」などと勘違いしてはならない。
■台湾人の過半数は台中首脳会談に反対
総統府の発表は、会談計画がメディアにすっぱ抜かれたために慌てて行われたものだが、発表の直前までは国民党主席ですら事前に知らされていなかったという。
つまりそれほど、台中首脳会談が、多くの国民に歓迎されないものであるということだ。
馬英九氏自身がかつて米メディアに、「大陸(中国)側は我々と平和協定の問題で話し合いたがっている。しかし台湾の民衆は、それが統一に関する協議になるのを心配している」と述べた通りだ。まして馬英九氏は支持率一桁台とされる不人気ぶりで、しかも来年任期が切れる。そのため現在、このような人物に台湾の将来を左右されたくないとの声が噴出中だ。
次期総統選での最有力候補である野党民進党の蔡英文主席は「馬政権は狼狽した形で国民に知らせたが、それは台湾の民主政治を傷つけるもの。近年国民は政府の両岸政策を信用していないし、こうした密室作業も望んでいない」
民進党の鄭運鵬スポークスマンも、馬英九氏がかつて「馬習会談は国家の需要、人民の支持、国会の監督を前提に行う」と表明したことに触れ、「出発直前になって突然発表するなど、馬政権が民主に反し、監督を回避し、密室作業を好む体質を改めて曝した。人民は受け入れ難い」と強調した。
ちなみに台湾紙蘋果日報が五日に伝えた世論調査の結果をみると、馬英九氏が会談を行うことに、不支持が五三・一%、支持が三八・八%。
■会談に「世界は好意的」と強調する中共メディア
これに対して中共機関紙人民日報系の環球時報は四日、馬習会談に「拍手を送るべき」と訴える社説を掲載。「中国は総体的実力を増強中で、世界も両岸の接近に好意的」だとして「中国統一」の道が現実的であるとした上で、会談に反対する台湾グリーン陣営(民進党など台湾本土派=民主派陣営)についてこう切り捨てた。
「このような極端主義は世界の大潮流の中、いつまでも嘘をつき続けることはできない」と。
総統府前では野党のメンバーや学生運動家たちなど民主派勢力が馬習会談に反対の声
を上げた(4日)
たしかに「世界も両岸の接近に好意的」なのは事実だ。
馬習会談に対する米国の見方は如何。産経によれば、アーネスト大統領報道官は「台湾海峡の両岸(中台)による、緊張を緩和し、関係を改善する歩みを歓迎する」「安定し、平和な両岸関係が米国の基本的な利益である」とし、国務省のトルドー報道部長も3日、「中国と台湾には、尊厳と敬意に基づく建設的な対話を促している」と述べたそうだ。
会談はそうした世界の期待を高めさせるべく「安定・平和」をアピールし、その上で民進党を安定と平和を乱す「極端主義」と宣伝するとの狙いが、中国にないわけがない。
■二人の中国人指導者による台湾人勢力封じ込め
「安定・平和」のアピールにより来年一月の台湾での総統、立法委員(国会議員)で国民党を後押しするのが会談の目的だとする分析が一般的だが、しかしそうした中国の選挙への介入は逆に民進党に有利に働くとの見方も一般的。
しかしそうした戦略が失敗し、大方の予測通り民進党政権が発足しても、その後中国と国民党が必ず展開する民進党のネガティブキャンペーンに、馬習会談の演出は大きな効果を発揮するのではないだろうか。
まずは会談で「一つの中国」の原則に基づく「関係改善」のレールを敷設しておき、もし民進党新政権がその路線継承を拒否するなら、「民進党は安定と平和を乱すトラブルメーカーだ」と宣伝し、国際社会の圧力を誘導し、民進党を「平和統一」に向けた協議の席に座らせようと。まさにかつての民進党政権時代、国際社会で同党を孤立させるため、国共両党がやったような手口で。
会談が二人の中国人指導者による台湾人勢力封じ込めの謀略ではないはずがない。これら中国人が求める「平和」(中華民族の偉大なる復興)が、アジア各国には必ずしも平和しないことを忘れてはならない。
台湾は中国の一部と言った虚構宣伝を繰り返すのが国共両党であるなら、台湾は中国に隷属しない主権国家であるとの事実を強調するのが民進党。国際社会で「嘘」を付いているのは前者であって後者ではない。しかし各国はややもすれば、「総体的実力を増強中」である中国の「嘘」を嘘と知って受け入れてしまいがちだ。
そうした中、地政学的に台湾とは一蓮托生の関係にある日本の政府やマスメディアが、中国に振り回されることなく、どれほど冷静沈着に台湾問題に向き合い続けることかが重要になってくる。
【過去の関連記事】
馬英九が習近平と会見へ―日本メディアは報じない台湾総統の売国言動 15/11/04
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2682.html
*******************************************
ブログランキング参加中
よろしければクリックをお願いします。 運動を拡大したいので。
↓ ↓
モバイルはこちら
↓ ↓
http://blog.with2.net/link.php
link.php
台湾の総統府が十一月三日に突如、馬英九総統と中国の習近平国家主席が七日にシンガポールで会談すると発表。この史上初の台中首脳会談について産経新聞は「長年、政治的に対立してきた中台が関係改善に向けて大きな一歩を踏み出す意味がある。中国の内外から歓迎と期待の声が多く寄せられている」と指摘するが、その「関係改善」の意味が問題だ。
馬英九総統(右)と習近平主席(左)。彼らが求める「関係改善」の意味が問題だ
中国が「改善」を進めようとするのはすべて台湾併呑のため。産経も「『中華民族の偉大なる復興の実現』をスローガンに掲げる習政権にとって、中台統一は最大の悲願の一つ」と書いている。
上海台湾研究所の倪永傑常務副所長は「習近平は会談で台湾の国際社会での活動を増加させ、更には台湾に照準を合わせたミサイルの一部を撤去すると表明するかもしれない」と予測するが、そうした脅しと宥めの使い分けもまた、台湾を「統一」に持ち込むための中国の常套手段。
そもそも中国側は無条件に台湾への外交圧力、ミサイル配備を停止すべきである。
したがって、台湾からも「歓迎と期待の声の声が多く寄せられている」などと勘違いしてはならない。
■台湾人の過半数は台中首脳会談に反対
総統府の発表は、会談計画がメディアにすっぱ抜かれたために慌てて行われたものだが、発表の直前までは国民党主席ですら事前に知らされていなかったという。
つまりそれほど、台中首脳会談が、多くの国民に歓迎されないものであるということだ。
馬英九氏自身がかつて米メディアに、「大陸(中国)側は我々と平和協定の問題で話し合いたがっている。しかし台湾の民衆は、それが統一に関する協議になるのを心配している」と述べた通りだ。まして馬英九氏は支持率一桁台とされる不人気ぶりで、しかも来年任期が切れる。そのため現在、このような人物に台湾の将来を左右されたくないとの声が噴出中だ。
次期総統選での最有力候補である野党民進党の蔡英文主席は「馬政権は狼狽した形で国民に知らせたが、それは台湾の民主政治を傷つけるもの。近年国民は政府の両岸政策を信用していないし、こうした密室作業も望んでいない」
民進党の鄭運鵬スポークスマンも、馬英九氏がかつて「馬習会談は国家の需要、人民の支持、国会の監督を前提に行う」と表明したことに触れ、「出発直前になって突然発表するなど、馬政権が民主に反し、監督を回避し、密室作業を好む体質を改めて曝した。人民は受け入れ難い」と強調した。
ちなみに台湾紙蘋果日報が五日に伝えた世論調査の結果をみると、馬英九氏が会談を行うことに、不支持が五三・一%、支持が三八・八%。
■会談に「世界は好意的」と強調する中共メディア
これに対して中共機関紙人民日報系の環球時報は四日、馬習会談に「拍手を送るべき」と訴える社説を掲載。「中国は総体的実力を増強中で、世界も両岸の接近に好意的」だとして「中国統一」の道が現実的であるとした上で、会談に反対する台湾グリーン陣営(民進党など台湾本土派=民主派陣営)についてこう切り捨てた。
「このような極端主義は世界の大潮流の中、いつまでも嘘をつき続けることはできない」と。
総統府前では野党のメンバーや学生運動家たちなど民主派勢力が馬習会談に反対の声
を上げた(4日)
たしかに「世界も両岸の接近に好意的」なのは事実だ。
馬習会談に対する米国の見方は如何。産経によれば、アーネスト大統領報道官は「台湾海峡の両岸(中台)による、緊張を緩和し、関係を改善する歩みを歓迎する」「安定し、平和な両岸関係が米国の基本的な利益である」とし、国務省のトルドー報道部長も3日、「中国と台湾には、尊厳と敬意に基づく建設的な対話を促している」と述べたそうだ。
会談はそうした世界の期待を高めさせるべく「安定・平和」をアピールし、その上で民進党を安定と平和を乱す「極端主義」と宣伝するとの狙いが、中国にないわけがない。
■二人の中国人指導者による台湾人勢力封じ込め
「安定・平和」のアピールにより来年一月の台湾での総統、立法委員(国会議員)で国民党を後押しするのが会談の目的だとする分析が一般的だが、しかしそうした中国の選挙への介入は逆に民進党に有利に働くとの見方も一般的。
しかしそうした戦略が失敗し、大方の予測通り民進党政権が発足しても、その後中国と国民党が必ず展開する民進党のネガティブキャンペーンに、馬習会談の演出は大きな効果を発揮するのではないだろうか。
まずは会談で「一つの中国」の原則に基づく「関係改善」のレールを敷設しておき、もし民進党新政権がその路線継承を拒否するなら、「民進党は安定と平和を乱すトラブルメーカーだ」と宣伝し、国際社会の圧力を誘導し、民進党を「平和統一」に向けた協議の席に座らせようと。まさにかつての民進党政権時代、国際社会で同党を孤立させるため、国共両党がやったような手口で。
会談が二人の中国人指導者による台湾人勢力封じ込めの謀略ではないはずがない。これら中国人が求める「平和」(中華民族の偉大なる復興)が、アジア各国には必ずしも平和しないことを忘れてはならない。
台湾は中国の一部と言った虚構宣伝を繰り返すのが国共両党であるなら、台湾は中国に隷属しない主権国家であるとの事実を強調するのが民進党。国際社会で「嘘」を付いているのは前者であって後者ではない。しかし各国はややもすれば、「総体的実力を増強中」である中国の「嘘」を嘘と知って受け入れてしまいがちだ。
そうした中、地政学的に台湾とは一蓮托生の関係にある日本の政府やマスメディアが、中国に振り回されることなく、どれほど冷静沈着に台湾問題に向き合い続けることかが重要になってくる。
【過去の関連記事】
馬英九が習近平と会見へ―日本メディアは報じない台湾総統の売国言動 15/11/04
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2682.html
*******************************************
ブログランキング参加中
よろしければクリックをお願いします。 運動を拡大したいので。
↓ ↓
モバイルはこちら
↓ ↓
http://blog.with2.net/link.php
link.php