台湾併呑のテコとしての「反日」―中国論説「台湾は日本時代の真相に立ち帰れ」を読む(上)/附:チャンネル桜の関連報道動画
2014/02/20/Thu
■統一の最大障害は台湾人の拒絶
台中台関係の主管官庁トップである台湾の王郁琦・大陸委員会主任委員、と中国の張志軍・国務院台湾事務弁公室主任が二月十一日に中国の南京で公式会談を行ったが、これについて読売新聞は十四日、「中台閣僚級会談 歴史的な一歩にはなったが」と題する社説を掲げ、次のように指摘した。
「中国と台湾の関係は、当局同士が直接交流する新たな段階に入った」
王郁琦(左)と張志軍(右)の会談はたしかに「歴史的な一歩」。しかし「東アジ
アの安定」に反する「一歩」だ
「中国の習近平国家主席は、今回の会談を中台統一に向けた政治協議への足がかりとみなしているに違いない。だが、台湾側は政治協議には消極的だ。台湾住民の大多数は、現状維持を望んでおり、中国との統一は拒んでいる」
中国が今回の会談を「中台統一に向け」、台湾の国民党政権に対する「直接交流」という名の取込みに乗り出したことは間違いない。その意味ではまさに「歴史的な一歩」と呼んでいいだろう。
社説はこの会談が「台湾海峡の緊張緩和を促し、東アジアの安定に寄与するのかを注視したい」と書くが、もちろん台湾が中国に併呑される方向に進むのであれば、「東アジアの安定に寄与」はしない。
しかし中国から見て「統一」の最大の障害となっているのが「台湾住民の大多数」が「中国との統一は拒んでいる」ことだ。
中国の独裁政権下で生きたいと願う台湾国民などほとんどいない。中国が「統一」を要求すればするほど、国民の台湾人意識は強まる一方である。
■中国の対日共闘の訴えと国民党の呼応
そこで張志軍は会談を終えた翌十二日、南京大虐殺記念館を訪れ、台湾に向けて次のようなアピールを行った。
「両岸同胞は共に炎黄の子孫(※中華民族)。血脈の繋がる兄弟であり、栄辱を共にすべき運命共同体であって、民族が弱い時が叩かれる。我々は共に民族苦難の歴史を銘記し、日本国内で歴史を書き換えて中華民族の歴史の傷に塩を塗り、公然と抗戦勝利の成果と戦後秩序に挑戦しようとする右翼の危険な勢力に対し、大声でノーと言い、その挑発行為に断固反撃を加えなければならない」
「両岸間には一致しないことが多くあるが、しかし民族の根本利益に関わる問題では同じ立場に立たなくてはならない。中華民族の偉大な復興を達成し、歴史の悲劇を繰り返させてはならない。それが南京大虐殺で受難した同胞への最大の慰めとなる」
中国人意識を高めよとの訴えだ。つまり台湾と中国とは政治制度は異るが、しかし同じ民族として歴史問題(反日)の一点では一致できるはずだというわけだ。
南京大虐殺記念館で台湾に反日共闘を呼び掛けた張志軍
台湾国民が反日意識を高めることは中国人意識を持つことに繋がるし、またそのようにして台湾が日本(日米同盟)陣営から中国陣営へと接近することは台湾統一に直結すると読んでいるのである。
さて今回の会談に先立つ一月末、国民党政権は高校用学習指導要領の改訂を強行し、例えば歴史教科書では、台湾史は中国史の一環と位置づけられ、日本統治時代も全面否定されることとなった。つまり同政権は台湾人意識に代わる中国人意識を子供たちに注入する洗脳教育を開始する構えなのである。
これはまさに反日共闘を呼び掛ける中国にとっては願ってもいないことだ。むしろ国民党政権は、そうした中国の戦略に呼応し、教科書の書き換えに手を染めたかにも見える。
来年から台湾の高校で使用される歴史、公民などの教科書は歴史捏造による
脱台湾化が行われる見通しだ
そこで以上の状況を受け、人民日報、新華社などは十七日、「台湾は日拠の真相に立ち返るべきだ」と題する論評を掲げた。
■「台湾に抗日記念館なし」を許せない中国
ちなみに「日拠」とは台湾の日本統治時代を指す政治宣伝用語だ。「日治」と呼ばず「日拠」とするのは、「日本は台湾を不法占拠した」と強調するためである。
これを読むと中国が何を恐れ、何を望んでいるかが手に取るようにわかるので、おおよその内容を以下で見て行きたい。
―――王郁琦は南京訪問前、台湾の立法院で「一つの中国」「反台独」等の言論に反応するなと要求されていたが。張志軍は特に日本問題から着手した。
―――日本の首相安倍晋三は最近、立て続けに侵略を否定する誤った言論を繰り返し、そして台湾では台独勢力が日拠の歴史を美化、改竄することすでに数年に及んでいる。
―――最近、台湾の教育部門は高校の歴史の学習指導要領を調整し、日本殖民の歴史を美化する部分を削除するとしたが、グリーン陣営(民進党など)が主張を務める六の県市は、それを拒絶している。
―――「日拠」か「日治」かを巡る論争が昨年台湾で見られたが、今回も「日本統治」から「日本殖民統治」に書き戻されるのをグリーン陣営が反対している。
―――今日の論争は一九九七年、李登輝が主導した『認識台湾』の教科書に始まる。それは脱中国化を図っただけでなく、日本の殖民統治の功績を大きく美化していた。その後陳水扁当局もさらに日本の「降伏」を「終戦」と書かせるなどした。
―――李登輝や陳水扁による日本の殖民に対する美化は台湾に深い社会的影響を及ぼしている。台湾当局は一・二億新台湾ドルを費やし、日拠時代に水利工事を行った八田與一の記念館を建てたが、抗日記念館は一つも作っていない。
■歴史教科書改訂で中国人化教育を復活
台湾ではかつての国民党独裁時代、中国人化政策のために学校で台湾の歴史は教えられなかった。しかし台湾人総統の李登輝政権時代からの民主化の中で、台湾人意識の高揚が求められ、中学校で『認識台湾・歴史編』といった台湾史教科書が導入されたわけだが、そこでは反日政治イデオロギーは排され、日本統治時代に関しても近代化建設の時代として攻勢、客観的な記述が施された。
台湾史の教科書は反日イデオロギーを廃した内容。それゆ
えに中国や国民党の在台中国人勢力から警戒されて来た
このように反日イデオロギーにも踊らされない、つまり中国人化を拒否する台湾人意識の高まりに対し、中国が「台湾独立の動き」として警戒し、焦燥していることは、この一文からも十分に伝わってくることだろう。
そうした焦燥感は台湾人の台頭を恐れる国民党の在台中国人勢力もまったく同様だ。同党はかくして中共に歩み寄り、二〇〇五年に「聯共制台」の路線を選択する。その年は「抗日戦争勝利六十周年」に当たり、共に「中華民族」としての絆を確認し合っていたことは何とも象徴的だった。
そして国民党は〇八年に政権に返り咲き、今回いよいよ中国人化教育の復活を本格化させたわけである。
(つづく)
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メディアが「分断後初」と謳い上げる中台閣僚級会議が13日、非公式ながら上海で行わ?れた。これは、かねてから「一つの中国」という虚構を掲げてきた国民党が、むざむざと?中共の設えた土俵に上がったようなものであり、台湾併呑の長期戦略の第一歩となる危険?なものである。今回は、台湾研究フォーラムの永山英樹氏をお迎えして、台湾を「反日連?帯」に引き込もうとする中共の思惑や、それとの首脳会談の実現を目指す国民党の馬英九総統、そしてそうした危険性をきちんと伝えない日本のメディアの問題などについて、警鐘を鳴らして頂きます。
台中台関係の主管官庁トップである台湾の王郁琦・大陸委員会主任委員、と中国の張志軍・国務院台湾事務弁公室主任が二月十一日に中国の南京で公式会談を行ったが、これについて読売新聞は十四日、「中台閣僚級会談 歴史的な一歩にはなったが」と題する社説を掲げ、次のように指摘した。
「中国と台湾の関係は、当局同士が直接交流する新たな段階に入った」
王郁琦(左)と張志軍(右)の会談はたしかに「歴史的な一歩」。しかし「東アジ
アの安定」に反する「一歩」だ
「中国の習近平国家主席は、今回の会談を中台統一に向けた政治協議への足がかりとみなしているに違いない。だが、台湾側は政治協議には消極的だ。台湾住民の大多数は、現状維持を望んでおり、中国との統一は拒んでいる」
中国が今回の会談を「中台統一に向け」、台湾の国民党政権に対する「直接交流」という名の取込みに乗り出したことは間違いない。その意味ではまさに「歴史的な一歩」と呼んでいいだろう。
社説はこの会談が「台湾海峡の緊張緩和を促し、東アジアの安定に寄与するのかを注視したい」と書くが、もちろん台湾が中国に併呑される方向に進むのであれば、「東アジアの安定に寄与」はしない。
しかし中国から見て「統一」の最大の障害となっているのが「台湾住民の大多数」が「中国との統一は拒んでいる」ことだ。
中国の独裁政権下で生きたいと願う台湾国民などほとんどいない。中国が「統一」を要求すればするほど、国民の台湾人意識は強まる一方である。
■中国の対日共闘の訴えと国民党の呼応
そこで張志軍は会談を終えた翌十二日、南京大虐殺記念館を訪れ、台湾に向けて次のようなアピールを行った。
「両岸同胞は共に炎黄の子孫(※中華民族)。血脈の繋がる兄弟であり、栄辱を共にすべき運命共同体であって、民族が弱い時が叩かれる。我々は共に民族苦難の歴史を銘記し、日本国内で歴史を書き換えて中華民族の歴史の傷に塩を塗り、公然と抗戦勝利の成果と戦後秩序に挑戦しようとする右翼の危険な勢力に対し、大声でノーと言い、その挑発行為に断固反撃を加えなければならない」
「両岸間には一致しないことが多くあるが、しかし民族の根本利益に関わる問題では同じ立場に立たなくてはならない。中華民族の偉大な復興を達成し、歴史の悲劇を繰り返させてはならない。それが南京大虐殺で受難した同胞への最大の慰めとなる」
中国人意識を高めよとの訴えだ。つまり台湾と中国とは政治制度は異るが、しかし同じ民族として歴史問題(反日)の一点では一致できるはずだというわけだ。
南京大虐殺記念館で台湾に反日共闘を呼び掛けた張志軍
台湾国民が反日意識を高めることは中国人意識を持つことに繋がるし、またそのようにして台湾が日本(日米同盟)陣営から中国陣営へと接近することは台湾統一に直結すると読んでいるのである。
さて今回の会談に先立つ一月末、国民党政権は高校用学習指導要領の改訂を強行し、例えば歴史教科書では、台湾史は中国史の一環と位置づけられ、日本統治時代も全面否定されることとなった。つまり同政権は台湾人意識に代わる中国人意識を子供たちに注入する洗脳教育を開始する構えなのである。
これはまさに反日共闘を呼び掛ける中国にとっては願ってもいないことだ。むしろ国民党政権は、そうした中国の戦略に呼応し、教科書の書き換えに手を染めたかにも見える。
来年から台湾の高校で使用される歴史、公民などの教科書は歴史捏造による
脱台湾化が行われる見通しだ
そこで以上の状況を受け、人民日報、新華社などは十七日、「台湾は日拠の真相に立ち返るべきだ」と題する論評を掲げた。
■「台湾に抗日記念館なし」を許せない中国
ちなみに「日拠」とは台湾の日本統治時代を指す政治宣伝用語だ。「日治」と呼ばず「日拠」とするのは、「日本は台湾を不法占拠した」と強調するためである。
これを読むと中国が何を恐れ、何を望んでいるかが手に取るようにわかるので、おおよその内容を以下で見て行きたい。
―――王郁琦は南京訪問前、台湾の立法院で「一つの中国」「反台独」等の言論に反応するなと要求されていたが。張志軍は特に日本問題から着手した。
―――日本の首相安倍晋三は最近、立て続けに侵略を否定する誤った言論を繰り返し、そして台湾では台独勢力が日拠の歴史を美化、改竄することすでに数年に及んでいる。
―――最近、台湾の教育部門は高校の歴史の学習指導要領を調整し、日本殖民の歴史を美化する部分を削除するとしたが、グリーン陣営(民進党など)が主張を務める六の県市は、それを拒絶している。
―――「日拠」か「日治」かを巡る論争が昨年台湾で見られたが、今回も「日本統治」から「日本殖民統治」に書き戻されるのをグリーン陣営が反対している。
―――今日の論争は一九九七年、李登輝が主導した『認識台湾』の教科書に始まる。それは脱中国化を図っただけでなく、日本の殖民統治の功績を大きく美化していた。その後陳水扁当局もさらに日本の「降伏」を「終戦」と書かせるなどした。
―――李登輝や陳水扁による日本の殖民に対する美化は台湾に深い社会的影響を及ぼしている。台湾当局は一・二億新台湾ドルを費やし、日拠時代に水利工事を行った八田與一の記念館を建てたが、抗日記念館は一つも作っていない。
■歴史教科書改訂で中国人化教育を復活
台湾ではかつての国民党独裁時代、中国人化政策のために学校で台湾の歴史は教えられなかった。しかし台湾人総統の李登輝政権時代からの民主化の中で、台湾人意識の高揚が求められ、中学校で『認識台湾・歴史編』といった台湾史教科書が導入されたわけだが、そこでは反日政治イデオロギーは排され、日本統治時代に関しても近代化建設の時代として攻勢、客観的な記述が施された。
台湾史の教科書は反日イデオロギーを廃した内容。それゆ
えに中国や国民党の在台中国人勢力から警戒されて来た
このように反日イデオロギーにも踊らされない、つまり中国人化を拒否する台湾人意識の高まりに対し、中国が「台湾独立の動き」として警戒し、焦燥していることは、この一文からも十分に伝わってくることだろう。
そうした焦燥感は台湾人の台頭を恐れる国民党の在台中国人勢力もまったく同様だ。同党はかくして中共に歩み寄り、二〇〇五年に「聯共制台」の路線を選択する。その年は「抗日戦争勝利六十周年」に当たり、共に「中華民族」としての絆を確認し合っていたことは何とも象徴的だった。
そして国民党は〇八年に政権に返り咲き、今回いよいよ中国人化教育の復活を本格化させたわけである。
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【永山英樹】中台首脳会談の行方[桜H26/2/17]
メディアが「分断後初」と謳い上げる中台閣僚級会議が13日、非公式ながら上海で行わ?れた。これは、かねてから「一つの中国」という虚構を掲げてきた国民党が、むざむざと?中共の設えた土俵に上がったようなものであり、台湾併呑の長期戦略の第一歩となる危険?なものである。今回は、台湾研究フォーラムの永山英樹氏をお迎えして、台湾を「反日連?帯」に引き込もうとする中共の思惑や、それとの首脳会談の実現を目指す国民党の馬英九総統、そしてそうした危険性をきちんと伝えない日本のメディアの問題などについて、警鐘を鳴らして頂きます。