「米中太平洋共同管理」という「中国の夢」と安倍政権の「中国包囲網」
2013/06/07/Fri
六月七、八日に予定される米中首脳会談に対し、中国側は何を期待しているか。清華大学現代国際関係研究院の閻学通院長は今回の習近平主席の訪米について、「双方とも早く会う必要があった。(米国のアジア重視政策を背景に)米中のアジア太平洋での激しい競争が関係悪化につながるのを防ぐためだ」(日本経済新聞)との見方を示している。
中国の台頭に必然的に伴うのが周辺諸国との摩擦であり、それがオバマ政権をしてアジア回帰政策に向かわせているわけだが、中国は超大国である米国と事を構えるのを得策とはしていない。また日本による中国包囲網形成の動きを牽制するためにも、その後ろ盾となっている米国を取り込むことも急務となっている。
かくて中国では米中接近への期待が強く持たれるわけだが、それは自ずと日米分断、米中による太平洋共同管理(棲み分け)を希求するものとなるだろう。
そうした中国の戦略的思考がよく反映されるものに、台湾紙旺報の五月二十七日の社説がある。「台湾紙」とは言っても、これはすでに中国の強い影響下にあるメディアグループ旺中集団の中国情報紙であり、執筆したのは在台中国人か台湾人かは不明だが、いずれにせよ中国への「忠誠心」を示すがごとく、その論調は言わば純化された中華ナショナリズムに基づくものであり、中国人の覇権主義的な情念を知る上では参考になりそうだ。
「中米の共同指導下で東亜の平和を創り出そう」との表題の下で次のように書き綴っている。
―――ワシントンがオバマ・習近平の設定を急ぐのは、オバマが習近平との私的関係を深化させ、中米関係を安定させ、共に東亜の平和と安定を打ち立てたいからだ。
―――北朝鮮の核武装と釣魚島紛争は東亜の不安定情勢の二大原因で、これらを緩和させるカギは中米が真摯に協力できるかにかかっている。前者は北京に外交斡旋を待つべきだが、後者は米国が日本の安倍政権の反秩序的な動きをコントロールできるかどうかという問題だ。
―――オバマはすでに中米(中国と米国)の新たなパートナー関係構築を重視していることを中国側に伝え、中国もそれに対し善意ある姿勢を示しているようだ。
―――五月二十二日、北朝鮮の金正恩は特使を北京へ派遣するや、米国務院は「中国側はこのことを事前に米国へ通知している」と声明し、中米の北朝鮮問題での協力が継続していることを明示した。国際メディアはこれについて、中米がG2スタイルで将来の東亜新秩序を管理する方向へ向かっているとの見方を示した。
―――米太平洋軍司令官ロックリアは公の場で「米国がもし今世紀において全世界で指導者的地位を維持するのなら、アジア太平洋での安保環境の変化を考慮しなければならない」「米国は中国と安定し、効率の高い建設的なパートナー関係を結んで初めてグローバルな戦略目標を達成できる」と述べている。
―――中米二強の将来における競争は避けられないが、しかし衝突は避けることができる。重要なのは米国が中国の台頭を「脅威」と見るか「チャンス」と見るかだ。中日の釣魚島での衝突を例にとろう。米国が過度に日本に肩入れすれば、自ら傷つけることになる。
―――安倍首相の手口と米国と提携する中国包囲戦略は、憲法改正と再軍備で、最終的には東亜の新たな覇権を狙うものだ。安倍は五月下旬に特使を平壌に派遣した際、六カ国協議参加国に事前通知を行わなかった。これを見ても安倍が政治目的達成のため、米国の戦略的利益を軽視しているのがうかがえる。
―――東亜の平和と安定は主に中米関係の動向に関わっている。両国が対抗より協力を行うことで、多くの問題は解決に向かう。
―――米日安保条約に基づき、米国は日本の利益と北京との関係改善を交換することはないかも知れない。しかし安倍政権に勝手を許すことは好ましくない。中日関係が安倍首相の在任中に大幅な改善を見るのは難しいが、北京とワシントン間であれば協力する空間は広くある。中米の協力と共同指導によりアジアを繁栄、平和、安定の方向へと導けば、右翼軍国主義の日本は最終的には蚊帳の外へと追いやられることだろう。
習近平は国家主席に就任した三月十四日、オバマ大統領との電話会談で「相互尊重、開放、包容の精神に基づきさえすれば、中米はアジア太平洋でさらに大きな働きをし、太平洋を真の太平の海、協力の海にすることが完全にできる」と伝えているが、「太平洋を太平の海、協力の海にする」というのもまた、「日本を含むアジア太平洋地域への中国の勢力伸長と国際新秩序の形成を容認し、中国と共存共栄を図って行こう」との米国に対するメッセージだったのだろう。それはまた所謂「中華民族の偉大なる復興」という「中国の夢」を具体的に表明したものだった。
なお旺報の社説が露わにする安倍政権への警戒心を見ても、日米同盟の強化や中国包囲網の形成を目指す同政権の外交・安保政策が、「中国の夢」(中国の覇権主義政策)に対する大きな妨げになっているのがよくわかる。言いかえればそれは日本の生存権を守りぬくための必死の抵抗であるということであり、この営みだけは後退させてはならないと痛感するのである。
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中国の台頭に必然的に伴うのが周辺諸国との摩擦であり、それがオバマ政権をしてアジア回帰政策に向かわせているわけだが、中国は超大国である米国と事を構えるのを得策とはしていない。また日本による中国包囲網形成の動きを牽制するためにも、その後ろ盾となっている米国を取り込むことも急務となっている。
かくて中国では米中接近への期待が強く持たれるわけだが、それは自ずと日米分断、米中による太平洋共同管理(棲み分け)を希求するものとなるだろう。
そうした中国の戦略的思考がよく反映されるものに、台湾紙旺報の五月二十七日の社説がある。「台湾紙」とは言っても、これはすでに中国の強い影響下にあるメディアグループ旺中集団の中国情報紙であり、執筆したのは在台中国人か台湾人かは不明だが、いずれにせよ中国への「忠誠心」を示すがごとく、その論調は言わば純化された中華ナショナリズムに基づくものであり、中国人の覇権主義的な情念を知る上では参考になりそうだ。
「中米の共同指導下で東亜の平和を創り出そう」との表題の下で次のように書き綴っている。
―――ワシントンがオバマ・習近平の設定を急ぐのは、オバマが習近平との私的関係を深化させ、中米関係を安定させ、共に東亜の平和と安定を打ち立てたいからだ。
―――北朝鮮の核武装と釣魚島紛争は東亜の不安定情勢の二大原因で、これらを緩和させるカギは中米が真摯に協力できるかにかかっている。前者は北京に外交斡旋を待つべきだが、後者は米国が日本の安倍政権の反秩序的な動きをコントロールできるかどうかという問題だ。
―――オバマはすでに中米(中国と米国)の新たなパートナー関係構築を重視していることを中国側に伝え、中国もそれに対し善意ある姿勢を示しているようだ。
―――五月二十二日、北朝鮮の金正恩は特使を北京へ派遣するや、米国務院は「中国側はこのことを事前に米国へ通知している」と声明し、中米の北朝鮮問題での協力が継続していることを明示した。国際メディアはこれについて、中米がG2スタイルで将来の東亜新秩序を管理する方向へ向かっているとの見方を示した。
―――米太平洋軍司令官ロックリアは公の場で「米国がもし今世紀において全世界で指導者的地位を維持するのなら、アジア太平洋での安保環境の変化を考慮しなければならない」「米国は中国と安定し、効率の高い建設的なパートナー関係を結んで初めてグローバルな戦略目標を達成できる」と述べている。
―――中米二強の将来における競争は避けられないが、しかし衝突は避けることができる。重要なのは米国が中国の台頭を「脅威」と見るか「チャンス」と見るかだ。中日の釣魚島での衝突を例にとろう。米国が過度に日本に肩入れすれば、自ら傷つけることになる。
―――安倍首相の手口と米国と提携する中国包囲戦略は、憲法改正と再軍備で、最終的には東亜の新たな覇権を狙うものだ。安倍は五月下旬に特使を平壌に派遣した際、六カ国協議参加国に事前通知を行わなかった。これを見ても安倍が政治目的達成のため、米国の戦略的利益を軽視しているのがうかがえる。
―――東亜の平和と安定は主に中米関係の動向に関わっている。両国が対抗より協力を行うことで、多くの問題は解決に向かう。
―――米日安保条約に基づき、米国は日本の利益と北京との関係改善を交換することはないかも知れない。しかし安倍政権に勝手を許すことは好ましくない。中日関係が安倍首相の在任中に大幅な改善を見るのは難しいが、北京とワシントン間であれば協力する空間は広くある。中米の協力と共同指導によりアジアを繁栄、平和、安定の方向へと導けば、右翼軍国主義の日本は最終的には蚊帳の外へと追いやられることだろう。
習近平は国家主席に就任した三月十四日、オバマ大統領との電話会談で「相互尊重、開放、包容の精神に基づきさえすれば、中米はアジア太平洋でさらに大きな働きをし、太平洋を真の太平の海、協力の海にすることが完全にできる」と伝えているが、「太平洋を太平の海、協力の海にする」というのもまた、「日本を含むアジア太平洋地域への中国の勢力伸長と国際新秩序の形成を容認し、中国と共存共栄を図って行こう」との米国に対するメッセージだったのだろう。それはまた所謂「中華民族の偉大なる復興」という「中国の夢」を具体的に表明したものだった。
なお旺報の社説が露わにする安倍政権への警戒心を見ても、日米同盟の強化や中国包囲網の形成を目指す同政権の外交・安保政策が、「中国の夢」(中国の覇権主義政策)に対する大きな妨げになっているのがよくわかる。言いかえればそれは日本の生存権を守りぬくための必死の抵抗であるということであり、この営みだけは後退させてはならないと痛感するのである。
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