軍事台頭で「ポスト米国」目指す中国―軍タカ派の新著が描いた中華民族「危険な夢」
2010/03/08/Mon
■軍備増強で「世界第一へと突進する」する「夢」
三月四日公表の二〇一〇年度の軍事予算案は前年度実績比で七・五パーセント増。日米台などは警戒感を強めざるを得ないが、これについて中国軍側からは「米国の対台湾武器売却への報復だ」との反論も見られる。しかし対台売却はそもそも中国の軍事費拡大に対抗してのものなのだ。
さて、このように軍事、経済大国へと成長しつつある中国の米国に対する挑戦姿勢が顕著となる中だからこそ、中国国内だけでなく、西側でも注目を浴びる本がある。
つい最近出版された『中国の夢―ポスト米国時代の大国思考と戦略的位置付け』がそれだ。
著者は人民解放軍のタカ派で国防大学軍隊建設研究所の劉明福所長(上級大佐)。軍歴四十一年の「老兵」で、政治工作や戦略研究での専門家だ。
今後の国際社会で中国は「世界第一へと突進する」「中国は日増しに増大化する経済力を利用して世界に冠たる軍事強国となり、台湾海峡での軍事闘争への干渉を米国に思いとどまらせるほど強大になれ」と訴えるのだから穏やかではない。
解放軍は中国政府従来の「平和的台頭」や「和諧世界」などの路線を否定するのか、との話題を呼んでいるわけだ。
■最強国目指す中国は戦争を忘れていない
西側で物議を醸す『中国の夢―ポスト米国時代の大国思考と戦略的位置付け』と著者の劉明福上級大佐
「世界第一位となって最強国となることが中国の二十一世紀における大目標」「二十一世紀の中国が、もし世界第一にならなければ、必ず落伍した国家、淘汰された国家となるだろう」と訴える『中国の夢』だが、米国との競争を「どちらが勝ってどちらが衰退するか。どちらが世界を主導するのか」の「最強国の地位争い」だと断言する。
そしてその上で「中国は自らを救い、世界を救わなければならない。つまりリーダーとなる準備を進めなければならない」と主張する。
そしてその上で、「中国の台頭がワシントンの警戒感を高めるのは必然だろう。中国がどんなに平和的台頭の思いを抱いていても戦争の危険は解消されないのだ」と強調するのだ。
■二十一世紀は「冷戦」ならぬ「温戦」時代とか
この書では二十一世紀における三つの新概念が提示されている。
一つは「冠軍国家」(「冠軍」とは競争で優勝するの意)。
「覇権国家とは違う。世界の近代史上、最富裕、最強大の国は例外なく世界の覇権国家だった。だが中国は世界一の座を巡って競争はするが、決して世界の覇権国家とはならない。この新しいタイプの大国を世界の『冠軍国家』と呼ぶ」のだそうだ。
二つ目は「温戦」。米国の中国に対する「友好ボイコット」「協力ボイコット」は「半冷戦」である「温戦」であり、相変わらず「冷戦の陰影から抜け切れていない」のだと言う。
三つ目は「中国の志」。「『中国の夢』を実現するには『中国の志』が必要。大国の台頭には必ず『大志』があると言うのが世界の大国に共通するものだ」とか。
どれも人を欺くような「新定義」ばかりである。何だかんだ言っても『中国の夢』が訴えるのは「覇権国家」の達成以外にないのである。
■最強の覇権国家を夢見る中国民衆
この書が話題となったことを受け、「環球時報」(電子版)が行ったアンケートによれば、八〇%以上の回答者は「中国は世界一の軍事強国を目指すべきだ」と考えていた。
ただこの書のように「公開の場でこの目標を掲げるべきか」については「賛成」が四八・五% 、「反対」が五一・五%だったとか。
「反対」が半数をも占めるのは、やはり覇権国家の野望は隠した方が有利との判断からか。
いずれにせよこのように、『中国の夢』の主張は多くの中国人の「夢」と一致したものであるようだ。
では中国政府の「夢」とは合致するか。
合致しないと見るロイター通信に対して 劉明福氏は、「この本は私の個人的観点で書いたものだが、一種の思潮は反映されているはず。経済だけでなく軍事面でも台頭は必要なのだ」と話している。
ただここでも劉明福氏は国際社会は心配する必要はないとは付け加えている。「中国の方針は「強いが霸を唱えず」。だから世界一になっても、軍事力で最強無比となっても、世界の脅威とはならない」と。
しかし世界各国が「最強国」としての中国を「脅威」と思わないはずがないのである。
■中南海に対する解放軍側の圧力か
ではこの書に対し、中国政府はどう考えているのだろうか。ちなみに同書が刊行されたのは、政府の認可があったからだが。
米国での見方を見よう。
中国問題専門家のラリー・ウォーツェル氏は同書に関し、「江沢民前主席やその他の指導者たちの『中国は二十一世紀に平和的に台頭する』との方針と矛盾する」と指摘する
だがその一方で同氏は、たとえば羅援少将(対台武器売却を巡り対米強硬論をメディアで展開)が「経済戦を発動し、米国債を売り飛ばし、米国に報復せよ」とアピールしていることなどを挙げ、「解放軍のリーダーたちが中南海に向けて、ワシントンの台湾、チベット政策に関し、対米懲罰を呼びかける時期」に発刊が重なったことに注目している。
ワシントンポストは「中国の指導者は今日まで、羅援氏などの人々の発言を否認していない」との分析も紹介している。
それによれば、例えば〇五年、「核兵器を先制使用しないとの北京の既定政策に反し、中国は核兵器で米国に反撃すると発言した朱成虎少将」についてもそうだ。
「朱少将は非難され、降級処分も受けたが、一月十日にはメディアの前に再び表われ、中南海は米国の対台武器売却に対し、国防予算の拡大と軍事力強化で応えよと訴えている」とのこと。
羅援少将(左)、朱成虎少将らタカ派の発言を中国政府は否定していない
■これでも中国は「脅威」ではないか
国防総省のマイケル・ビルズベリー顧問は「解放軍は相当の自主権を持っており、こうした出版物も中国の将来に向けた計画の指標を露出させたものなのだろう」と見る。
中国問題専門家のジョン・タシク氏は「この書に軍、政府高層に共通する思考が反映されていないなどと誰も思わない。劉明福氏らは米国との対抗での軍の心理上の準備を進めているのだ」と話している。
ジョン・タシク氏は政府。軍の意志は共通すると見る
これまで米国政府は中国を「脅威」「敵」と認定することを避けてきたが、劉明福氏のようなタカ派の発言がでる以上、そうした姿勢を維持することは難しくなるとの論評も見られる。
日本政府もここまで拡大一方の中国の「脅威」をいまだに「脅威」と認めていないが、これでは日本国民は現状を正しく理解できない。
中国が主導する国際社会が如何なるものとなるかについて考えるなら、日中関係における中国の横暴、理不尽な強圧的態度が参考になるだろう。
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三月四日公表の二〇一〇年度の軍事予算案は前年度実績比で七・五パーセント増。日米台などは警戒感を強めざるを得ないが、これについて中国軍側からは「米国の対台湾武器売却への報復だ」との反論も見られる。しかし対台売却はそもそも中国の軍事費拡大に対抗してのものなのだ。
さて、このように軍事、経済大国へと成長しつつある中国の米国に対する挑戦姿勢が顕著となる中だからこそ、中国国内だけでなく、西側でも注目を浴びる本がある。
つい最近出版された『中国の夢―ポスト米国時代の大国思考と戦略的位置付け』がそれだ。
著者は人民解放軍のタカ派で国防大学軍隊建設研究所の劉明福所長(上級大佐)。軍歴四十一年の「老兵」で、政治工作や戦略研究での専門家だ。
今後の国際社会で中国は「世界第一へと突進する」「中国は日増しに増大化する経済力を利用して世界に冠たる軍事強国となり、台湾海峡での軍事闘争への干渉を米国に思いとどまらせるほど強大になれ」と訴えるのだから穏やかではない。
解放軍は中国政府従来の「平和的台頭」や「和諧世界」などの路線を否定するのか、との話題を呼んでいるわけだ。
■最強国目指す中国は戦争を忘れていない
西側で物議を醸す『中国の夢―ポスト米国時代の大国思考と戦略的位置付け』と著者の劉明福上級大佐
「世界第一位となって最強国となることが中国の二十一世紀における大目標」「二十一世紀の中国が、もし世界第一にならなければ、必ず落伍した国家、淘汰された国家となるだろう」と訴える『中国の夢』だが、米国との競争を「どちらが勝ってどちらが衰退するか。どちらが世界を主導するのか」の「最強国の地位争い」だと断言する。
そしてその上で「中国は自らを救い、世界を救わなければならない。つまりリーダーとなる準備を進めなければならない」と主張する。
そしてその上で、「中国の台頭がワシントンの警戒感を高めるのは必然だろう。中国がどんなに平和的台頭の思いを抱いていても戦争の危険は解消されないのだ」と強調するのだ。
■二十一世紀は「冷戦」ならぬ「温戦」時代とか
この書では二十一世紀における三つの新概念が提示されている。
一つは「冠軍国家」(「冠軍」とは競争で優勝するの意)。
「覇権国家とは違う。世界の近代史上、最富裕、最強大の国は例外なく世界の覇権国家だった。だが中国は世界一の座を巡って競争はするが、決して世界の覇権国家とはならない。この新しいタイプの大国を世界の『冠軍国家』と呼ぶ」のだそうだ。
二つ目は「温戦」。米国の中国に対する「友好ボイコット」「協力ボイコット」は「半冷戦」である「温戦」であり、相変わらず「冷戦の陰影から抜け切れていない」のだと言う。
三つ目は「中国の志」。「『中国の夢』を実現するには『中国の志』が必要。大国の台頭には必ず『大志』があると言うのが世界の大国に共通するものだ」とか。
どれも人を欺くような「新定義」ばかりである。何だかんだ言っても『中国の夢』が訴えるのは「覇権国家」の達成以外にないのである。
■最強の覇権国家を夢見る中国民衆
この書が話題となったことを受け、「環球時報」(電子版)が行ったアンケートによれば、八〇%以上の回答者は「中国は世界一の軍事強国を目指すべきだ」と考えていた。
ただこの書のように「公開の場でこの目標を掲げるべきか」については「賛成」が四八・五% 、「反対」が五一・五%だったとか。
「反対」が半数をも占めるのは、やはり覇権国家の野望は隠した方が有利との判断からか。
いずれにせよこのように、『中国の夢』の主張は多くの中国人の「夢」と一致したものであるようだ。
では中国政府の「夢」とは合致するか。
合致しないと見るロイター通信に対して 劉明福氏は、「この本は私の個人的観点で書いたものだが、一種の思潮は反映されているはず。経済だけでなく軍事面でも台頭は必要なのだ」と話している。
ただここでも劉明福氏は国際社会は心配する必要はないとは付け加えている。「中国の方針は「強いが霸を唱えず」。だから世界一になっても、軍事力で最強無比となっても、世界の脅威とはならない」と。
しかし世界各国が「最強国」としての中国を「脅威」と思わないはずがないのである。
■中南海に対する解放軍側の圧力か
ではこの書に対し、中国政府はどう考えているのだろうか。ちなみに同書が刊行されたのは、政府の認可があったからだが。
米国での見方を見よう。
中国問題専門家のラリー・ウォーツェル氏は同書に関し、「江沢民前主席やその他の指導者たちの『中国は二十一世紀に平和的に台頭する』との方針と矛盾する」と指摘する
だがその一方で同氏は、たとえば羅援少将(対台武器売却を巡り対米強硬論をメディアで展開)が「経済戦を発動し、米国債を売り飛ばし、米国に報復せよ」とアピールしていることなどを挙げ、「解放軍のリーダーたちが中南海に向けて、ワシントンの台湾、チベット政策に関し、対米懲罰を呼びかける時期」に発刊が重なったことに注目している。
ワシントンポストは「中国の指導者は今日まで、羅援氏などの人々の発言を否認していない」との分析も紹介している。
それによれば、例えば〇五年、「核兵器を先制使用しないとの北京の既定政策に反し、中国は核兵器で米国に反撃すると発言した朱成虎少将」についてもそうだ。
「朱少将は非難され、降級処分も受けたが、一月十日にはメディアの前に再び表われ、中南海は米国の対台武器売却に対し、国防予算の拡大と軍事力強化で応えよと訴えている」とのこと。
羅援少将(左)、朱成虎少将らタカ派の発言を中国政府は否定していない
■これでも中国は「脅威」ではないか
国防総省のマイケル・ビルズベリー顧問は「解放軍は相当の自主権を持っており、こうした出版物も中国の将来に向けた計画の指標を露出させたものなのだろう」と見る。
中国問題専門家のジョン・タシク氏は「この書に軍、政府高層に共通する思考が反映されていないなどと誰も思わない。劉明福氏らは米国との対抗での軍の心理上の準備を進めているのだ」と話している。
ジョン・タシク氏は政府。軍の意志は共通すると見る
これまで米国政府は中国を「脅威」「敵」と認定することを避けてきたが、劉明福氏のようなタカ派の発言がでる以上、そうした姿勢を維持することは難しくなるとの論評も見られる。
日本政府もここまで拡大一方の中国の「脅威」をいまだに「脅威」と認めていないが、これでは日本国民は現状を正しく理解できない。
中国が主導する国際社会が如何なるものとなるかについて考えるなら、日中関係における中国の横暴、理不尽な強圧的態度が参考になるだろう。
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台湾研究フォーラム 第133回定例会
■講 師 西村幸祐氏 (ジャーナリスト、撃論ムック編集長)
■演 題 映画「海角七号」とNHK「JAPANデビュー」問題
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【日 時】 平成22年3月13日(土)午後6時~8時
【場 所】 文京区民センター2階ホール
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東京メトロ丸の内線・南北線「後楽園駅」徒歩1分
【参加費】 会員500円、一般1,000円
【懇親会】 終了後、会場付近にて。(会費3,000円、学生1,000円)
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