はてなキーワード: 日向とは
生きるの向いてねぇな、と度々感じる
それでも充実した休日を過ごしているという見栄は張りたい
普段動いてないから休日くらいは体を動かさないと早めに死んでしまう
思ったより寒い。
そもそも徒歩でいったら美術館着くころにはクタクタだ 観賞できるのか?素直に電車に乗るべきでは?
うるせぇなぁ どうせベストコンディションで観たところで良くわかんねぇからいいんだよ 歩け
大体、キース・ヘリングって落書きみたいな奴だろ?カラフルな棒人間みたいなのが組んずほぐれず48手みたいな奴だろ?
んなもん適当に眺めりゃいんだよ
天気が良いので、日向を歩けば丁度良い
だが日陰に入ると手袋が欲しい 耐えつつ歩く
道中、世話になった眼科が取り壊されているのに気が付く
「眼圧高めだからなるべく定期的に来い」とか言ってたくせに。俺を置いて逝くな。まぁリフォームとかかもしれないが。
途中、コンビニで一息つく。
本のコーナーになぜか、オリジナルのアンパンマンの絵本が置いてある。
初めて見たな パラパラめくってみる
アンパンマンは砂漠で飢えている男に顔を食わせて助けていたが、お茶も一緒にあげて欲しい
絵本を棚に戻し、缶コーヒーを買って、飲む。コンビニを出て、さらに歩く。
その後、特に面白いこともなく、無事に美術館にたどり着く。いやー疲れた。
ここまで1万2000歩くらい歩いたらしい。でも思いのほか元気だ。まだやれる
「うわっ、寒っ!」美術館の入り口ですれ違ったオッサンがつぶやいた。なるほど、中は暖房が効いている
なんか誰かと誰かの対談イベントがあるらしいが、定員に達したから観覧は無理らしい。そういわれると見たくなるものだな。
悔しがっても仕方がないので、チケットを買って進む
キース・ヘリング、若くして亡くなってたんだな そしてゲイだったのだな
結構年配だと思ってたのは、アンディ・ウォーホルと混同してたんだろう。まぁアンディがいくつで死んだのかも知らんけど。
ビジュアルは誰かに似てるなぁと思って考えてみたら、バキ童さんだわ
俺が「○○さんは□□さんに似てるよね」って言ってみて賛同された記憶が無いので、おそらくそんなには似てないだろう。だが俺にとってはそう見えた。
あの人も数十年後には時代を代表するアーティストになってるかもしれないな。何やってる人なのか知らんけど。
キースはサブウェイ・ドローイングなるものを考案した?実践した?みたいな解説を読みつつ、「あーこれこれ、なんかどっかで見たヤツ」と思いながら歩を進める
あと、アートで世界を平和にできると信じて活動してたとか。いいヤツだなキース
アンディ・ウォーホルとの合作?コラボ作品?も出てきた 仲良しだったのか?ディズニーは嫌いだったんだろうか
熱心にメモを取りながら鑑賞している人、連れと感想を言い合いながら見ている人、お客さんも色々だった
キースの作品が表紙の「ぴあ」の雑誌とか、招き猫とか、サイン入りのジャンパーが展示されていた
一番、気に入ったのがこのエリアにあったので、撮影が出来ず残念だった。
犬の横にキースが自分の名前をカタカナで書いていて、その文字がなんかめちゃくちゃ可愛いやつ。
何で撮影ダメなんだよ、ケチ。ぴあが許可しないからか?おのれ、ぴあ。
仕方がないので、目に焼き付けたはずだが、もうあまり覚えてない。歳は取りたくないな
今夜は何か温まるものを食べるため、スーパーに寄って帰ることにする。
何が言いたいのかと言うと、みんなもなるべく歩いて健康になろうぜ、と言う話。
12月1日に名古屋にて開催された、
蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 3rdLIVE スリーズブーケ公演におけるセットリストの楽曲に関する長ったらしい文章だよ。読まなくていいよ
noteに書きたいけどアカウントは無いし、インターネット版 チラシの裏に掃き捨てにきたよ。
蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ(以降 蓮と称する)についても説明しておくと、ラブライブ系列の1つとして、蓮ノ空女学院のスクールアイドルクラブを舞台に、ラブライブ優勝を目指して奮闘する彼女らが主役のコンテンツである。活動記録(コミュ)、生配信、バーチャルライブを束ねて追って、リアルタイムで楽しむコンテンツである。生配信やライブをするのは中の人ではなく、彼女らというのが特殊。初めて見た人の多くは、中身が漏れ出ていないVtuber配信のような感触を持つだろう。バーチャルライブについては、これこそVtuberのライブに近いものがありそう。実際に歌って踊るしMCもする。(たまに声裏返ったり音外したりもする……)ファンの事は「蓮ノ空のこと好き好きクラブの皆さん」と呼ばれている。
長くてイライラするね!誰もそんな説明は聞いていない。ラブライブのアイドルがVtuberやってるようなもんだよ。どうせその方が通じるんだ。
さて、話を戻すと蓮のツアーライブが現在進行していて、12/1には名古屋に1ユニット「スリーズブーケ」が来たというわけだ。名古屋での公演は昼と夜で計2回。セットリストはほぼ同一だったが、一部が入れ替えとなっており、それが「謳歌爛漫」と「残陽」だった。(ほんとはあと1組あるけど端折るよ)
今回のユニット、スリーズブーケが歌うそれぞれの楽曲は人気が高いが、中でも上の2曲はそれぞれ違う方向を向いた魅力がある。
「謳歌爛漫」は蓮の発足から間もない2023年の4月度フェスライブ(コンテンツ2回目のバーチャルライブ)に初披露された思い出深い楽曲である。爛漫の文字に相応しい雄大さがある曲調の中に、桜模様を過去と未来の境目として綴った歌詞が良い。
入ってきたばかりの新入生と、後輩を持ったばかりの2年生が張り切って歌う感じが良い。尚、このコンテンツは登場人物が進級するため、この新入生は今2年生である。勿論、当時2年生の子は現在3年生、来年3月には卒業する。卒業という別れも現実味を帯びた今、この曲は別の意味を内包し始めている。
「残陽」はバーチャルライブでは披露されていない。2023年9月に出たCDに収録されており、1stライブからキャストが何度か披露している。この楽曲は歌詞と振り故に、異常な人気がある。
夕暮れ時にハッキリ別れる日向と日陰、それを別の世界と置いた上で日向に憧れる者、日陰に居てほしいと願う者との2つの視点で歌詞が綴られている。
「どうしよう、言えない」「どうしよう、行っちゃう」を繰り返している。(はよ直接言え)
そして振り付けだが、曲終盤にて抱き着く振りがあり、蓮ノ空のこと好き好きクラブの皆さんが毎回うるさい。だがこれもバーチャルライブでの披露という正解がない故、可能となる芸当である。(バーチャルライブで披露された曲はそれに準拠したダンスを披露するのが大半である。)
残陽が夜公演のみの披露と判明した時には、蓮ノ空のこと好き好きクラブの皆さん(現地)はとんでもない腰の抜かし方をし、蓮ノ空のこと好き好きクラブの皆さん(ライブビューイング/配信)はとにかく落胆した。実物が見れなかったからである。
ここまで読み進めた人の大半が思うように、謳歌爛漫 <<<< 残陽 かのように捉える人が大多数である。
だが、そうこう書き進めている上で、気付いた点がある。やはり謳歌爛漫≒残陽であるが、更にいえば謳歌爛漫を正史とした場合に、残陽はそれに相当しない。
2つの楽曲は、どちらも違う場面ながら、「今回のライブでは」別れの歌として機能している。それが風通しの良い感情か、蒸し暑く曇った感情かは違いがある。
2つの楽曲のうち、片方はキャラがバーチャルライブを披露しており、片方はキャストのみがライブで披露している。リアルタイム性重視、ゲーム内キャラクターの主体性を売りにしているコンテンツにおいて、これはどう判断するべきか?
あくまで「蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ所属 スリーズブーケ」のライブとして捉えた場合には、謳歌爛漫に軍配が上がる。
では、そこから離れた解釈と表現を含む残陽に惹かれるのは何故か。これを考えると楽曲の属人的側面(その限定性)、またナマモノとしての消費需要が密かに挟まっているからではないかと思われる。
楽曲を歌うキャラクター2人の関係性、これを師弟関係とおくか姉妹関係とおくか親友、またはそれ以上とするかは各自の判断であるが、"親密"である点においては一致している。その限定的な関係性の2人で歌う事に希少さ、価値を感じているのかもしれない。実際に、残された披露回数は手で数えるほどもない。なにせ卒業したら、3年生は居なくなってしまう。
そして、もう一つの理由、ナマモノとしての消費は言うまでもなく声優として眼差す上の消費を指す。バーチャルライブの延長として、活動記録の欠片として見る〜ような建前を持つくせして、実際には声優のイチャつきが見たい、というのが蓮ノ空のこと好き好きクラブの皆さんなのだ。アホらしい。この意味では、この曲の披露には破格の価値が付くと言えるだろう。
2つの楽曲を分ける価値はナマモノ消費である、という身も蓋もない結論になってしまったのは大変残念だが、チラシの裏に書くには丁度いいものになった。大変に満足したのでこれで筆を置こうと思う。
残陽なんで夜だけなんだよクソ
4月5日 被疑者が地方から帰省した日で、まさかこれから、5月以降に恐ろしいことが立て続けに起こるとはよもや思っていないような状態に置かされていた。
5月23日、24日、26日、6月2日、6月14日 新部雄大に対しお前がやってはいけないことをやってしまった日。
6月25日 被疑者が、東京拘置所の様子を見に行く様子。自転車で行って自転車で帰って来ている。少年をライトで照らしたり、雨でぬれた草の中を、北上している。
7月17日 新部雄大が、堤防のところでてんかんを起こしている。
7月31日 伊勢崎市で、高齢女性がアパート前にて大声、うるさいといった高齢男性が刺される。
8月1日 本件犯行。
8月2日 午前10時30分 三木健次、出勤。パネルがなくなっておりました。最後に見たのは、近藤警部補ということで出勤していたらなくなっていたということです。
8月13日 延岡市長が被疑者に関する戸籍謄本を取り寄せており、既に逮捕をする準備が出来ていた。
8月21日 虻川真也が、もうすぐ逆送ありますんで、といって林田課長に言っていた。
令和6年8月23日 真夏の蒸し暑い日であったが、乙黒が玄関に家庭訪問に来ていた。
8月25日午前5時50分 西山周太郎が出現し、一回部屋にはいれやの喧嘩の後に、ガラスを割ったということで、逮捕。
午前6時8分 志村警察署入り ホワイトボードに予め住所が書いている。
11月13日午後1時40分 裁判は、弁護人の弁論も、検察官の論告も聞いている暇もないくらいです。裁判官も検事も最終的に何を言うかが被告人も分かった
状態であがってきて、最後の方に出て来る結論だけがみんな分かった状態で出ているので、被告人の方があの場所で暴れることはまず間違いなく
ありません。
「ベニスでしょう」
これは三四郎にもわかった。なんだかベニスらしい。ゴンドラにでも乗ってみたい心持ちがする。三四郎は高等学校にいる時分ゴンドラという字を覚えた。それからこの字が好きになった。ゴンドラというと、女といっしょに乗らなければすまないような気がする。黙って青い水と、水と左右の高い家と、さかさに映る家の影と、影の中にちらちらする赤い片とをながめていた。すると、
「兄さんのほうがよほどうまいようですね」と美禰子が言った。三四郎にはこの意味が通じなかった。
「兄さんとは……」
「この絵は兄さんのほうでしょう」
「だれの?」
「だって、あっちのほうが妹さんので、こっちのほうが兄さんのじゃありませんか」
三四郎は一歩退いて、今通って来た道の片側を振り返って見た。同じように外国の景色をかいたものが幾点となくかかっている。
「違うんですか」
「一人と思っていらしったの」
「ええ」と言って、ぼんやりしている。やがて二人が顔を見合わした。そうして一度に笑いだした。美禰子は、驚いたように、わざと大きな目をして、しかもいちだんと調子を落とした小声になって、
「ずいぶんね」と言いながら、一間ばかり、ずんずん先へ行ってしまった。三四郎は立ちどまったまま、もう一ぺんベニスの掘割りをながめだした。先へ抜けた女は、この時振り返った。三四郎は自分の方を見ていない。女は先へ行く足をぴたりと留めた。向こうから三四郎の横顔を熟視していた。
「里見さん」
だしぬけにだれか大きな声で呼んだ者がある。
美禰子も三四郎も等しく顔を向け直した。事務室と書いた入口を一間ばかり離れて、原口さんが立っている。原口さんのうしろに、少し重なり合って、野々宮さんが立っている。美禰子は呼ばれた原口よりは、原口より遠くの野々宮を見た。見るやいなや、二、三歩あともどりをして三四郎のそばへ来た。人に目立たぬくらいに、自分の口を三四郎の耳へ近寄せた。そうして何かささやいた。三四郎には何を言ったのか、少しもわからない。聞き直そうとするうちに、美禰子は二人の方へ引き返していった。もう挨拶をしている。野々宮は三四郎に向かって、
「妙な連と来ましたね」と言った。三四郎が何か答えようとするうちに、美禰子が、
「似合うでしょう」と言った。野々宮さんはなんとも言わなかった。くるりとうしろを向いた。うしろには畳一枚ほどの大きな絵がある。その絵は肖像画である。そうしていちめんに黒い。着物も帽子も背景から区別のできないほど光線を受けていないなかに、顔ばかり白い。顔はやせて、頬の肉が落ちている。
「模写ですね」と野々宮さんが原口さんに言った。原口は今しきりに美禰子に何か話している。――もう閉会である。来観者もだいぶ減った。開会の初めには毎日事務所へ来ていたが、このごろはめったに顔を出さない。きょうはひさしぶりに、こっちへ用があって、野々宮さんを引っ張って来たところだ。うまく出っくわしたものだ。この会をしまうと、すぐ来年の準備にかからなければならないから、非常に忙しい。いつもは花の時分に開くのだが、来年は少し会員のつごうで早くするつもりだから、ちょうど会を二つ続けて開くと同じことになる。必死の勉強をやらなければならない。それまでにぜひ美禰子の肖像をかきあげてしまうつもりである。迷惑だろうが大晦日でもかかしてくれ。
「その代りここん所へかけるつもりです」
原口さんはこの時はじめて、黒い絵の方を向いた。野々宮さんはそのあいだぽかんとして同じ絵をながめていた。
「どうです。ベラスケスは。もっとも模写ですがね。しかもあまり上できではない」と原口がはじめて説明する。野々宮さんはなんにも言う必要がなくなった。
「どなたがお写しになったの」と女が聞いた。
「三井です。三井はもっとうまいんですがね。この絵はあまり感服できない」と一、二歩さがって見た。「どうも、原画が技巧の極点に達した人のものだから、うまくいかないね」
原口は首を曲げた。三四郎は原口の首を曲げたところを見ていた。
「もう、みんな見たんですか」と画工が美禰子に聞いた。原口は美禰子にばかり話しかける。
「まだ」
「どうです。もうよして、いっしょに出ちゃ。精養軒でお茶でもあげます。なにわたしは用があるから、どうせちょっと行かなければならない。――会の事でね、マネジャーに相談しておきたい事がある。懇意の男だから。――今ちょうどお茶にいい時分です。もう少しするとね、お茶にはおそし晩餐には早し、中途はんぱになる。どうです。いっしょにいらっしゃいな」
美禰子は三四郎を見た。三四郎はどうでもいい顔をしている。野々宮は立ったまま関係しない。
「せっかく来たものだから、みんな見てゆきましょう。ねえ、小川さん」
「じゃ、こうなさい。この奥の別室にね。深見さんの遺画があるから、それだけ見て、帰りに精養軒へいらっしゃい。先へ行って待っていますから」
「深見さんの水彩は普通の水彩のつもりで見ちゃいけませんよ。どこまでも深見さんの水彩なんだから。実物を見る気にならないで、深見さんの気韻を見る気になっていると、なかなかおもしろいところが出てきます」と注意して、原口は野々宮と出て行った。美禰子は礼を言ってその後影を見送った。二人は振り返らなかった。
女は歩をめぐらして、別室へはいった。男は一足あとから続いた。光線の乏しい暗い部屋である。細長い壁に一列にかかっている深見先生の遺画を見ると、なるほど原口さんの注意したごとくほとんど水彩ばかりである。三四郎が著しく感じたのは、その水彩の色が、どれもこれも薄くて、数が少なくって、対照に乏しくって、日向へでも出さないと引き立たないと思うほど地味にかいてあるという事である。その代り筆がちっとも滞っていない。ほとんど一気呵成に仕上げた趣がある。絵の具の下に鉛筆の輪郭が明らかに透いて見えるのでも、洒落な画風がわかる。人間などになると、細くて長くて、まるで殻竿のようである。ここにもベニスが一枚ある。
「これもベニスですね」と女が寄って来た。
「ええ」と言ったが、ベニスで急に思い出した。
「さっき何を言ったんですか」
女は「さっき?」と聞き返した。
「さっき、ぼくが立って、あっちのベニスを見ている時です」
女はまたまっ白な歯をあらわした。けれどもなんとも言わない。
「用でなければ聞かなくってもいいです」
「用じゃないのよ」
三四郎はまだ変な顔をしている。曇った秋の日はもう四時を越した。部屋は薄暗くなってくる。観覧人はきわめて少ない。別室のうちには、ただ男女二人の影があるのみである。女は絵を離れて、三四郎の真正面に立った。
「野々宮さん。ね、ね」
「野々宮さん……」
「わかったでしょう」
美禰子の意味は、大波のくずれるごとく一度に三四郎の胸を浸した。
「野々宮さんを愚弄したのですか」
「なんで?」
女の語気はまったく無邪気である。三四郎は忽然として、あとを言う勇気がなくなった。無言のまま二、三歩動きだした。女はすがるようについて来た。
「あなたを愚弄したんじゃないのよ」
三四郎はまた立ちどまった。三四郎は背の高い男である。上から美禰子を見おろした。
「それでいいです」
「なぜ悪いの?」
「だからいいです」
女は顔をそむけた。二人とも戸口の方へ歩いて来た。戸口を出る拍子に互いの肩が触れた。男は急に汽車で乗り合わした女を思い出した。美禰子の肉に触れたところが、夢にうずくような心持ちがした。
「ほんとうにいいの?」と美禰子が小さい声で聞いた。向こうから二、三人連の観覧者が来る。
「ともかく出ましょう」と三四郎が言った。下足を受け取って、出ると戸外は雨だ。
「精養軒へ行きますか」
美禰子は答えなかった。雨のなかをぬれながら、博物館前の広い原のなかに立った。さいわい雨は今降りだしたばかりである。そのうえ激しくはない。女は雨のなかに立って、見回しながら、向こうの森をさした。
「あの木の陰へはいりましょう」
少し待てばやみそうである。二人は大きな杉の下にはいった。雨を防ぐにはつごうのよくない木である。けれども二人とも動かない。ぬれても立っている。二人とも寒くなった。女が「小川さん」と言う。男は八の字を寄せて、空を見ていた顔を女の方へ向けた。
「悪くって? さっきのこと」
「いいです」
「だって」と言いながら、寄って来た。「私、なぜだか、ああしたかったんですもの。野々宮さんに失礼するつもりじゃないんですけれども」
女は瞳を定めて、三四郎を見た。三四郎はその瞳のなかに言葉よりも深き訴えを認めた。――必竟あなたのためにした事じゃありませんかと、二重瞼の奥で訴えている。三四郎は、もう一ぺん、
「だから、いいです」と答えた。
雨はだんだん濃くなった。雫の落ちない場所はわずかしかない。二人はだんだん一つ所へかたまってきた。肩と肩とすれ合うくらいにして立ちすくんでいた。雨の音のなかで、美禰子が、
「さっきのお金をお使いなさい」と言った。
「借りましょう。要るだけ」と答えた。
「みんな、お使いなさい」と言った。
砲丸投げほど力のいるものはなかろう。力のいるわりにこれほどおもしろくないものもたんとない。ただ文字どおり砲丸を投げるのである。芸でもなんでもない。野々宮さんは柵の所で、ちょっとこの様子を見て笑っていた。けれども見物のじゃまになると悪いと思ったのであろう。柵を離れて芝生の中へ引き取った。二人の女も、もとの席へ復した。砲丸は時々投げられている。第一どのくらい遠くまでゆくんだか、ほとんど三四郎にはわからない。三四郎はばかばかしくなった。それでも我慢して立っていた。ようやくのことで片がついたとみえて、野々宮さんはまた黒板へ十一メートル三八と書いた。
それからまた競走があって、長飛びがあって、その次には槌投げが始まった。三四郎はこの槌投げにいたって、とうとう辛抱がしきれなくなった。運動会はめいめいかってに開くべきものである。人に見せべきものではない。あんなものを熱心に見物する女はことごとく間違っているとまで思い込んで、会場を抜け出して、裏の築山の所まで来た。幕が張ってあって通れない。引き返して砂利の敷いてある所を少し来ると、会場から逃げた人がちらほら歩いている。盛装した婦人も見える。三四郎はまた右へ折れて、爪先上りを丘のてっぺんまで来た。道はてっぺんで尽きている。大きな石がある。三四郎はその上へ腰をかけて、高い崖の下にある池をながめた。下の運動会場でわあというおおぜいの声がする。
三四郎はおよそ五分ばかり石へ腰をかけたままぼんやりしていた。やがてまた動く気になったので腰を上げて、立ちながら靴の踵を向け直すと、丘の上りぎわの、薄く色づいた紅葉の間に、さっきの女の影が見えた。並んで丘の裾を通る。
三四郎は上から、二人を見おろしていた。二人は枝の隙から明らかな日向へ出て来た。黙っていると、前を通り抜けてしまう。三四郎は声をかけようかと考えた。距離があまり遠すぎる。急いで二、三歩芝の上を裾の方へ降りた。降り出すといいぐあいに女の一人がこっちを向いてくれた。三四郎はそれでとまった。じつはこちらからあまりごきげんをとりたくない。運動会が少し癪にさわっている。
「あんな所に……」とよし子が言いだした。驚いて笑っている。この女はどんな陳腐なものを見ても珍しそうな目つきをするように思われる。その代り、いかな珍しいものに出会っても、やはり待ち受けていたような目つきで迎えるかと想像される。だからこの女に会うと重苦しいところが少しもなくって、しかもおちついた感じが起こる。三四郎は立ったまま、これはまったく、この大きな、常にぬれている、黒い眸のおかげだと考えた。
美禰子も留まった。三四郎を見た。しかしその目はこの時にかぎって何物をも訴えていなかった。まるで高い木をながめるような目であった。三四郎は心のうちで、火の消えたランプを見る心持ちがした。もとの所に立ちすくんでいる。美禰子も動かない。
よし子は美禰子を顧みた。美禰子はやはり顔色を動かさない。三四郎は、
「それより、あなたがたこそなぜ出て来たんです。たいへん熱心に見ていたじゃありませんか」と当てたような当てないようなことを大きな声で言った。美禰子はこの時はじめて、少し笑った。三四郎にはその笑いの意味がよくわからない。二歩ばかり女の方に近づいた。
「もう宅へ帰るんですか」
女は二人とも答えなかった。三四郎はまた二歩ばかり女の方へ近づいた。
「どこかへ行くんですか」
「ええ、ちょっと」と美禰子が小さな声で言う。よく聞こえない。三四郎はとうとう女の前まで降りて来た。しかしどこへ行くとも追窮もしないで立っている。会場の方で喝采の声が聞こえる。
「高飛びよ」とよし子が言う。「今度は何メートルになったでしょう」
美禰子は軽く笑ったばかりである。三四郎も黙っている。三四郎は高飛びに口を出すのをいさぎよしとしないつもりである。すると美禰子が聞いた。
この上には石があって、崖があるばかりである。おもしろいものがありようはずがない。
「なんにもないです」
「そう」と疑いを残したように言った。
「ちょいと上がってみましょうか」よし子が、快く言う。
「あなた、まだここを御存じないの」と相手の女はおちついて出た。
「いいからいらっしゃいよ」
よし子は先へ上る。二人はまたついて行った。よし子は足を芝生のはしまで出して、振り向きながら、
「絶壁ね」と大げさな言葉を使った。「サッフォーでも飛び込みそうな所じゃありませんか」
美禰子と三四郎は声を出して笑った。そのくせ三四郎はサッフォーがどんな所から飛び込んだかよくわからなかった。
「あなたも飛び込んでごらんなさい」と美禰子が言う。
「私? 飛び込みましょうか。でもあんまり水がきたないわね」と言いながら、こっちへ帰って来た。
やがて女二人のあいだに用談が始まった。
「あなた、いらしって」と美禰子が言う。
「ええ。あなたは」とよし子が言う。
「どうしましょう」
「どうでも。なんならわたしちょっと行ってくるから、ここに待っていらっしゃい」
「そうね」
なかなか片づかない。三四郎が聞いてみると、よし子が病院の看護婦のところへ、ついでだから、ちょっと礼に行ってくるんだと言う。美禰子はこの夏自分の親戚が入院していた時近づきになった看護婦を尋ねれば尋ねるのだが、これは必要でもなんでもないのだそうだ。
よし子は、すなおに気の軽い女だから、しまいに、すぐ帰って来ますと言い捨てて、早足に一人丘を降りて行った。止めるほどの必要もなし、いっしょに行くほどの事件でもないので、二人はしぜん後にのこるわけになった。二人の消極な態度からいえば、のこるというより、のこされたかたちにもなる。
三四郎はまた石に腰をかけた。女は立っている。秋の日は鏡のように濁った池の上に落ちた。中に小さな島がある。島にはただ二本の木がはえている。青い松と薄い紅葉がぐあいよく枝をかわし合って、箱庭の趣がある。島を越して向こう側の突き当りがこんもりとどす黒く光っている。女は丘の上からその暗い木陰を指さした。
「あの木を知っていらしって」と言う。
「あれは椎」
女は笑い出した。
「よく覚えていらっしゃること」
「ええ」
「よし子さんの看護婦とは違うんですか」
今度は三四郎が笑い出した。
「あすこですね。あなたがあの看護婦といっしょに団扇を持って立っていたのは」
二人のいる所は高く池の中に突き出している。この丘とはまるで縁のない小山が一段低く、右側を走っている。大きな松と御殿の一角と、運動会の幕の一部と、なだらかな芝生が見える。
「熱い日でしたね。病院があんまり暑いものだから、とうとうこらえきれないで出てきたの。――あなたはまたなんであんな所にしゃがんでいらしったんです」
「熱いからです。あの日ははじめて野々宮さんに会って、それから、あすこへ来てぼんやりしていたのです。なんだか心細くなって」
「野々宮さんにお会いになってから、心細くおなりになったの」
「いいえ、そういうわけじゃない」と言いかけて、美禰子の顔を見たが、急に話頭を転じた。
「野々宮さんといえば、きょうはたいへん働いていますね」
「ええ、珍しくフロックコートをお着になって――ずいぶん御迷惑でしょう。朝から晩までですから」
「だってだいぶ得意のようじゃありませんか」
「だれが、野々宮さんが。――あなたもずいぶんね」
「なぜですか」
「だって、まさか運動会の計測係りになって得意になるようなかたでもないでしょう」
三四郎はまた話頭を転じた。
「さっきあなたの所へ来て何か話していましたね」
「会場で?」
「ええ、運動会の柵の所で」と言ったが、三四郎はこの問を急に撤回したくなった。女は「ええ」と言ったまま男の顔をじっと見ている。少し下唇をそらして笑いかけている。三四郎はたまらなくなった。何か言ってまぎらそうとした時に、女は口を開いた。
「あなたはまだこのあいだの絵はがきの返事をくださらないのね」
三四郎はまごつきながら「あげます」と答えた。女はくれともなんとも言わない。
「知りません」
「そう」
「なに、その原口さんが、きょう見に来ていらしってね、みんなを写生しているから、私たちも用心しないと、ポンチにかかれるからって、野々宮さんがわざわざ注意してくだすったんです」
美禰子はそばへ来て腰をかけた。三四郎は自分がいかにも愚物のような気がした。
「よし子さんはにいさんといっしょに帰らないんですか」
「いっしょに帰ろうったって帰れないわ。よし子さんは、きのうから私の家にいるんですもの」
三四郎はその時はじめて美禰子から野々宮のおっかさんが国へ帰ったということを聞いた。おっかさんが帰ると同時に、大久保を引き払って、野々宮さんは下宿をする、よし子は当分美禰子の家から学校へ通うことに、相談がきまったんだそうである。
三四郎はむしろ野々宮さんの気楽なのに驚いた。そうたやすく下宿生活にもどるくらいなら、はじめから家を持たないほうがよかろう。第一鍋、釜、手桶などという世帯道具の始末はどうつけたろうと、よけいなことまで考えたが、口に出して言うほどのことでもないから、べつだんの批評は加えなかった。そのうえ、野々宮さんが一家の主人から、あともどりをして、ふたたび純書生と同様な生活状態に復するのは、とりもなおさず家族制度から一歩遠のいたと同じことで、自分にとっては、目前の迷惑を少し長距離へ引き移したような好都合にもなる。その代りよし子が美禰子の家へ同居してしまった。この兄妹は絶えず往来していないと治まらないようにできあがっている。絶えず往来しているうちには野々宮さんと美禰子との関係も次第次第に移ってくる。すると野々宮さんがまたいつなんどき下宿生活を永久にやめる時機がこないともかぎらない。
三四郎は頭のなかに、こういう疑いある未来を、描きながら、美禰子と応対をしている。いっこうに気が乗らない。それを外部の態度だけでも普通のごとくつくろおうとすると苦痛になってくる。そこへうまいぐあいによし子が帰ってきてくれた。女同志のあいだには、もう一ぺん競技を見に行こうかという相談があったが、短くなりかけた秋の日がだいぶ回ったのと、回るにつれて、広い戸外の肌寒がようやく増してくるので、帰ることに話がきまる。
三四郎も女連に別れて下宿へもどろうと思ったが、三人が話しながら、ずるずるべったりに歩き出したものだから、きわだった挨拶をする機会がない。二人は自分を引っ張ってゆくようにみえる。自分もまた引っ張られてゆきたいような気がする。それで二人にくっついて池の端を図書館の横から、方角違いの赤門の方へ向いてきた。そのとき三四郎は、よし子に向かって、
「お兄いさんは下宿をなすったそうですね」と聞いたら、よし子は、すぐ、
「ええ。とうとう。ひとを美禰子さんの所へ押しつけておいて。ひどいでしょう」と同意を求めるように言った。三四郎は何か返事をしようとした。そのまえに美禰子が口を開いた。
「宗八さんのようなかたは、我々の考えじゃわかりませんよ。ずっと高い所にいて、大きな事を考えていらっしゃるんだから」と大いに野々宮さんをほめだした。よし子は黙って聞いている。
学問をする人がうるさい俗用を避けて、なるべく単純な生活にがまんするのは、みんな研究のためやむをえないんだからしかたがない。野々宮のような外国にまで聞こえるほどの仕事をする人が、普通の学生同様な下宿にはいっているのも必竟野々宮が偉いからのことで、下宿がきたなければきたないほど尊敬しなくってはならない。――美禰子の野々宮に対する賛辞のつづきは、ざっとこうである。
三四郎は赤門の所で二人に別れた。追分の方へ足を向けながら考えだした。――なるほど美禰子の言ったとおりである。自分と野々宮を比較してみるとだいぶ段が違う。自分は田舎から出て大学へはいったばかりである。学問という学問もなければ、見識という見識もない。自分が、野々宮に対するほどな尊敬を美禰子から受けえないのは当然である。そういえばなんだか、あの女からばかにされているようでもある。さっき、運動会はつまらないから、ここにいると、丘の上で答えた時に、美禰子はまじめな顔をして、この上には何かおもしろいものがありますかと聞いた。あの時は気がつかなかったが、いま解釈してみると、故意に自分を愚弄した言葉かもしれない。――三四郎は気がついて、きょうまで美禰子の自分に対する態度や言語を一々繰り返してみると、どれもこれもみんな悪い意味がつけられる。三四郎は往来のまん中でまっ赤になってうつむいた。ふと、顔を上げると向こうから、与次郎とゆうべの会で演説をした学生が並んで来た。与次郎は首を縦に振ったぎり黙っている。学生は帽子をとって礼をしながら、
「昨夜は。どうですか。とらわれちゃいけませんよ」と笑って行き過ぎた。
別に子供居なくたって広い家に住みたい!窓がでかい家に住みたい!
地下には映画見れる部屋と、北側には居心地のいい図書室みたいな部屋、好きな時に計算できるようにリビング等の日常生活を行う部屋の壁はホワイトボードにして、畳の上で昼寝するの好きだから日向ぼっこできる畳の部屋が欲しい!とかで家買えばいいと思うんだけどそういうのないの?
子供がいると勝手にライフイベントが来るかららくだけど、自分でライフイベント作るのも楽しいよ
大学行き直して、卒業式で自分で着物か袴着たいから着付け習おうとか
パーソナルトレーニングいって筋トレハマったからボディビルの大会目指して出場してみるとか
アニメではヒナタの出番かなり増えてるんだよね(さすがにサクラほどではないがいのより遥かに多い)
日向家関連の設定も若干変わってる(原作では本当に落ちこぼれだったけどアニメだと妹に遠慮して実力隠してる設定)から、アニメだけ見れば一応主人公の嫁候補としては普通にアリの範疇だと思う
<読む前に知ってた情報>
・↑リーとガイ(読む前は名前知らん)は親子だと思ってた(キャラクターの中身については全然知らん)
・サスケとサクラがくっつく(なんで知ったのかは忘れた、多分X)
サクラとくっつかなかったことじゃなくて、「ナルトがヒナタとくっついたこと」にビックリした。いや、ヒナタってそういう立場のキャラだったんか…
単純にヒナタがキャラとして目立ってなかった(いの以下くらいでは)のもあるし、ナルトの気持ちはどこで変わったんだ?!と思ったし…
サイといのとかチョウジとカルイとかもだいぶ急感あったけど(シカマルとテマリはまあ…ギリ…でも恋愛になるのは分からん)、脇役だからというメタ的理由でなんとでも納得できるけど、
ナルトは主人公だよ?!くっつくならもっと作中でヒナタの活躍盛ってくれよ!正直ピンと来ねえよ!!!
読み始めた時点でBORUTOが始まってた(なんなら一部?は終わってた)から子どもがいるのは分かってたし、1話の顔岩ラクガキオマージュで締めたいから息子にしたかったのかなあみたいなのは分かる
分かるんだけど…えっ、い、いつ、いつの間にヒナタ??!!みたいな
ていうかネジがあっさり退場しちゃったのもあって、ヒナタ、おまえ数少ない出番それでいいんか…?て気持ちもある(結局日向家の問題は妹が宗家を継ぐことで解決!って話?)
最終話に至るまでナルトがあんまヒナタのこと意識してないのもあってすべて唐突感がすごい
リアルタイムでこれ読んでた人、振り落とされずによくBORUTOまでついてったな…
外伝とかで回収があるんスかね?
普段アイドルはそんなに見ない。ライブもほぼ行ったことがない。坂道グループは配信でいくつか見たことあるくらい。
そんな自分がこの前、ジャイガ(OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL)で日向坂を見た。
日向坂はたまにテレビで見て、可愛いな〜と思っていたので楽しみだった(デビュー当初しかほぼ知らないけど)。
「キュン」とか「ドレミ」とか一般人でも知っている曲を数曲歌ってくれて、かわいいな〜と思っていると、なぜだか曲間に客席まで全員で寄ってきた。ステージの端っこまで来て、一列に並んでこちらに手を振ってくる。しかも誰かが何かを話しているというわけではない。ひたすら笑顔で手を振っている。オタクたちは思い思いのタオルを掲げ、一生懸命名前を呼んでいる。
アイドルのライブってこんな感じなんですか……?ファンは嬉しいのかもしれないけれど、人数が多いからか、正直かなり異様な光景に映った。
パフォーマンスは正直普通だった。可愛いけど、そんなに歌っていないし全力で踊っている感じもしないし、へぇ〜……という感じ。
四期生?新人?の子たちのユニット?が頑張っていてそれはやや好きだった。
あと、「君はハニーデュー」という曲の歌詞に全力で引いた。
女性を果物に例えた上で、「少し硬い果肉だけど」「瑞々しい若さいっぱい」て。
モニターにその歌詞とアイドルたちが一緒に映し出されていることにかなり気まずさを覚えた。
フェスが終わった後ネットで検索すると、「曲は良いのに歌詞が……」と残念がっているファンが多くて気の毒だったのと、ちょっとホッとした。いつもの(?)炎上商法なのかもしれない。
あとその曲のセンターの子は可愛かった。「見た目はごく普通」なのになんかグッと来る、みたいな歌詞にはフィットしているように思えた。
坂道グループはたまにテレビや動画で見ていて、日向坂には「正統派、全力明るいアイドル」というイメージを勝手に抱いていたので、なんか意外と普通で拍子抜けした。
「タマ地裁民事部には医事部(第一部)があるから、傷害被害を訴えるなら、そこを希望しようと思って」
「当て逃げ犯から逆提訴されるなんてトンデモない話よね。反訴が禁止なら別訴しないとならないもんね」
「反訴禁止のはずないんだけど。裁判官とかけっこうコレなのよ」
そのジェスチャーは説明しまい。その担当は最高裁事務総局派の判事補だった。そして、腰椎あばら骨折を詐病と言ってくるのが、自賠責保険社のひき逃げ部隊とその弁護士である。
増田は念のため医事部移送申立と裁判官忌避を、両方した。別訴の文書はほぼできていた。なのに、なんだか嫌な気がして、別訴は先延ばしにして一部和解に動き、ひとまずナノ程度の和解金を貰ったのである(米は買わねばならない)。
「どうして私の移送申立や忌避申立棄却のタイミングで、第一部の担当表が白紙になってるんだろ…? それに、医事部でもなくなってる? 3ヶ月間も」
「増田が第一部に別訴したときのために、第一部を通常部にする。わが局派が自由に介入できるように。愚か者め、裁判所は我々の庭だ。ふふふ…増田自身が第一部を選ぶのだから文句は言えまいよ。さあ蟻地獄に落ち給え」
という状態である。つまりは賠償額1千万円切下げ工作の一環である。
「どんだけシツコイのよ局派は?ひき逃げも局派の手の者がやったことかしら? 懸賞金目当てだかなんだか、裁判不正をやりたくてジリジリしてそうね」と思った増田。
世間には局派(自民)と創価(公明)と共産に同時に目をつけられている人物もいないとは限らないのである。金融不動産業者は昔から、名実ともに買収屋であり戦争屋だったのである。郵便物はしばらく日向干しにしなければ部屋においてはいけない。
男性だけど、定年になったときに妻が「やっと勤め上げたって感じだねー」とか言ったら、「おっ、せやなw」って返すと思うな。ふつーに。だって代わりに仕事してくれたわけじゃないとしても、陰に日向に支えてくれて一緒に走ってきたわけだから。帰りが遅いとき寝ずに待っててくれたりとかな。そりゃ、仕事のストレスで辛いのに振り回されたこととかあったとしても、それ(個別のこと)はそれ、これ(全体として)はこれだろ。
むしろそこで、「いや、お前別に仕事してねーしw」みたいに返したら、相当感じ悪くない? この奥さんの発言って、それと同じじゃねって思うけど。男女逆転したら、むしろ奥さんの感じ悪さが際立つんじゃね?
もちろん増田自身が認めるように、増田にも過失はあるだろう。でも、過失は過失で責めればいいけど、それでも越えちゃいけないラインてあるし、この発言は相当そのラインを越えた発言だと思うよ。
なのに、この奥さんの発言を正当化するのって、パートナーとしての対等性・対称性を否定するのと同義だと思うんだよね。奥さんを聞き分けのない子供扱いしてるか、夫を人権のない存在とみなしてるか。多分後者なんだろうけど。個人的には、奥さんちょっとヤバ気な(ひと昔前の鬼女板ぽい)その手の思想にカブれてて、現状は夫婦関係の危機、つか手遅れ寸前じゃないかと思う。増田は、一度その辺詰めてみるべきだと思うんだよね。
「なるほど、一緒に育てていると思わないというなら、今後一切子供に対しても、子供の世話をするあなたに対しても、私は口も出さなければ金も出さない。
それがよいということだね。もちろん、夫婦である間に築いた財産は半分に分与しよう。それはあなたの正当な権利だから。それであなたは一人で子育てするといい。
それでこそあなたは、名実共に『生物学上の父親の手を一切借りることなく一人で子育てをする母親』になれるわけだから、それがあなたの望みなのだね。」
……と、決して興奮せず、冷静に淡々と詰めてみたらどうだろう。そこまで言わねえだろうと思って甘えて、あるいは舐めているから、そんな後先考えない発言が出てくるのだと思うよ。
もしも、それで分からないようなら、あるいは売り言葉に買い言葉でも「それでいいわ」みたいなことを言ってせせら笑うようなら、双方の親、子供たちに向かって、奥さんの発言と自分の考えを説明して、「そういう次第なので、協議離婚することになりました。妻の意向により、慰謝料・養育費は一切無しになります」となるしかないわな。まあ、いずれにせよオオゴトにはなるけど、増田が眠れないのは当然で、奥さんの発言には実際それくらいの重みはあると思うし、いまここでオオゴトにしとかないと、あとではほんとにもう取り返しがつかないと思うよ。
日向の面と日陰の面が同じだと思ってるのか、それとも人体が体表面で画された個体ではなく大気と一体化した気体だと思ってるのか、どっち?