『ザクロ』
この時期、ザクロ(柘榴)の実をよく見かける。
ザクロと云えば安産・子育の神の鬼子母神(きしもしん)に関係がある。
鬼子母神はインドではその昔、訶梨帝母(カリテイモ)と呼ばれ、嫁して多くの子をもうけたが、しかしその性質は凶暴で、近隣の幼児をさらって食べるので、人々から恐れられた。
そこで釈迦は、その過ちから帝母を救うことを考え、帝母の末の子を隠してしまった。
その時の帝母の嘆き悲しむ様は尋常ではなかったと云う。
そこで釈迦は、
「千人のうちの一子を失うもかくの如し。いわんや人の一子を食らうとき、その父母の嘆きやいかん」
と戒め、ザクロの実を与え、人を食べないように諭したのであった。
帝母は今までの過ちを悟り、その後安産・子育の神となることを誓い、人々に尊崇されるようになったと云われている。
このような謂れから、鬼子母神像はザクロを持ち、幼児を抱いた姿となっている。