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映画「パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女」(DVD観賞)…ヒロインの魅力ゆえの作品


映画「パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女」-6
原題:Special Delivery 製作年:2022年
製作国:韓国 上映時間:109分



今年初めの公開時は他作品を優先して観落としてしまった作品.
もうDVD化されたので早速借りてきてみた.
本年度累積141本目は韓国製のアクションもの.
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「パラサイト 半地下の家族」で半地下の家族の長女役を演じた
パク・ソダムが、凄腕の運び屋を演じたカーアクション.

天才的なドライビングテクニックを持つウナは、ワケあり荷物を
届ける特殊配送会社「特送(とくそう)」で働いている.

彼女はある日、海外への逃亡を図る賭博ブローカーと、その息子
ソウォンを港まで運ぶという依頼を引き受ける.しかし、思わぬ
アクシデントで依頼人不在のまま、ソウォンと300億ウォンが入った
貸金庫の鍵を抱えて追われる羽目になる.

貸金庫の鍵を狙う悪徳警官やサイコパスな殺し屋、さらには脱北
の過去を持つウナを秘密裏に調査する国家情報院も巻き込み、
命がけのカーチェイスを繰り広げる.

ソウォン役は「パラサイト 半地下の家族」で社長一家の息子を演じた
チョン・ヒョンジュンが務め、ウナ役のパク・ソダムと再共演を果たした.
そのほか、特送のボス、ペクをキム・ウィソン、貸金庫の鍵を狙う悪徳
警官ヤクザのギョンピルをソン・セビョク、ウナを調査する国家情報院
職員ミヨンをヨム・ヘラン、ソウォンの父ウジンをキム・ドゥシクが演じる.

以上は《映画.COM》から転載.
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過去に同じような作品に見られる運び屋/逃がし屋という生業の主人公を、
女性主人公に応用したアイデアは目の付け所かと.

ヒロイン、ウナ:パク・ソダムは脱北時に家族を皆殺しにされた悲惨な過去
の持ち主だが、メロドラマになりかねないその設定に深入りせず、
悪徳警官や殺し屋につけ狙われる少年ソウン:チョン・ヒョンジュンとウナの
交流劇をユーモアたっぷりに描いてみせる.

カーアクションとしてはそれほど派手でもないしスケール感があるわけでは無い.
それでも、列車と並行して走り踏切で衝突直前にすれ違うシーンは手に汗握る
ものがある.


映画「パーフェクト・ドライバー成功確率100%の女」-3


それよりも、クールな不良少女風の身なりが魅力的なパク・ソダムが涼しい顔で
ハンドルを握りしめて驚異的なドライビングテクニックを披露するシーンに
観いってしまう.めちゃくちゃにカッコいいかと思えば、飼っている猫にデレデレ
している姿が可愛いかったりする.
単なる凄腕ドライバーかと思いきや、肉弾戦もかなり強いのもまた魅力.

映画「パーフェクト・ドライバー成功確率100%の女」-4

映画「パーフェクト・ドライバー成功確率100%の女」-1


ソダムと子役の少年という、過去に共演済みの2人が醸し出す関係性も
上手い演出がされている. 無表情かつ仏頂面にすら思えた主人公から、
感情を引き出し、過去の経歴を引き出しつつ、いつしか天涯孤独なふたりが
姉弟のような絆を育むロードムービーに変容していく.上手い脚本と演出の勝利.

悪役も含め脇の役者の演技にも恵まれ、だれることなく物語は進む.
最後はあわやと思わせるが、ちゃんとヒロインは生き延びて、次作の
登場を予感させるのには苦笑.


映画「それでも私は生きていく」…これもまたフランスの一面.


映画「それでも私は生きていく」-1
原題:Un beau matin 製作年:2022年
製作国:フランス・イギリス・ドイツ合作 上映時間:112分 R15+



柏キネマ旬報シアターは封切館も兼ねる.シアター1は封切り担当.
いつもシアター2でばかり観てるね.またもフランス作品.しかも
大好きなレア・セドゥ主演の人間ドラマ.本年度累積140本目の観賞.
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「未来よ こんにちは」のミア・ハンセン=ラブ監督が、父の病への悲しみと
新たな恋への喜びという相反する感情に直面したシングルマザーの
心の機微を、自身の経験を基に描いたヒューマンドラマ.

シングルマザーのサンドラは、通訳の仕事をしながら8歳の娘とパリの
小さなアパートで暮らしている.サンドラの父ゲオルグは以前は哲学教師
として生徒たちから尊敬されていたが、現在は病によって視力と記憶を
失いつつあった.

サンドラは母フランソワーズと共に父のもとを頻繁に訪ねては、父の変化を
目の当たりにして無力感にさいなまれていた.仕事と子育てと介護に
追われて自分のことはずっと後回しにしてきた彼女だったが、ある日、
旧友クレマンと再会し恋に落ちる.

「アデル、ブルーは熱い色」のレア・セドゥが主演を務め、「王妃マルゴ」の
パスカル・グレゴリーが父ゲオルグ、「わたしはロランス」のメルビル・プポー
が恋人クレマンを演じた.

以上は《映画.COM》から転載.
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最近はフランス映画と言えども、認知症問題や介護問題、ひいては
尊厳死に至るテーマを扱った作品が増えてきた.日本だけではない、
全世界共通の問題という認識だ. 身近に転がっているし、いずれは
自分の問題にもなるのである.

主人公サンドラ:レア・セドゥ は、認知症が進み自立生活が営めなくなった
父の介護問題に直面する.哲学教師だった父ゲオルグ:パスカル・グイレゴリー
は、パリのアパルトマンで一人暮らし.恋人がいるが、持病があり同居は難しい.

選択肢は介護施設のみだが、市内の施設は料金がバカ高く、公営ホーム
は待機者が多くて入れない.この状況は、二十万人以上が特養の入所待ち
をしている日本と全く同じだ.

さらに、急場しのぎで病院に入ったゲオルグが早々に退院を迫られる
エピソードは、高齢者が90日以内の退院を強いられる日本と同じだ.
認知症と肝臓を患った母が90日毎に病院をたらい回しされた事を
痛烈に想い出してしまった….

が、こうした介護の現実を訴えることが、この映画の本質ではない.
変わりゆく父をみつめるサンドラを通して投げかけられるのは、
「生きるとは何か」というテーマ.

入院後、サンドラが父の自宅の書庫を整理する場面が痛々しい.
「本人よりも本を見る方がパパを感じる.施設にいる人より書棚の方が
パパらしいから」と、自分の娘に語りかけるサンドラ.

彼女は、知性の塊のようだったゲオルグの中から彼らしさが失われつつ
あることに、恐れと諦めの感情を抱いている.むしろ既に喪の気持ちとも
言えよう.
「施設にいる父」は確かに存在しているが、サンドラの知る父ではもはやない.
生者と接しながら喪失感を抱くことの切なさを、サンドラの感情の揺れを
通して観客に体感させるのは上手い技(わざ)だ.

父の蔵書を眺めながら、父の食事を手伝いながら、一緒にパーティで音楽
を聴きながら、唐突に溢れ出す涙を止められないレア・セドゥの演技は
この年齢になったからではの彼女の成長を示している.

それでも老けた父はまだ生きている…ことを強烈に印象づけるシーンもある.
ゲオルグの生の証は、恋人に寄せる煩悩に近い愛だ.恋人の面会を心待ち
にし、姿を求めて施設の廊下を徘徊するゲオルグは、みっともないほど愛に
突き動かされている.


映画「それでも私は生きていく」-4


それは、妻子ある男性との恋にのめりこむサンドラも同じ様に見える.
生きるとは愛すること.そう堂々と主張するこの映画は、まさにフランス映画の
王道のまっただ中を突っ走っている.

レア・セドゥの存在感も自己主張しすぎることなくそこにナチュラルに立つ.
父の介護と、自身が見つけた愛.これらを決して二者択一にせず、いずれの
問題も片方を失う理由にはしない.ここが本作の特筆すべき持ち味.

サンドラ:レア・セドゥの愛は不倫である.相手のクレマン:メルビル・プポーは
妻子とサンドラの間を行ったり来たりしている.かつて「不倫は文化である」と
発言した愚かなタレントが居たが、日本の不倫は広末問題のように陰の文化
と言えるのに比し、フランスの不倫は陽の文化である.

サンドラとクレマンは不倫なんだけど、堂々と人前でキスしたり手を繋いで
歩いたりと、オープンに過ごすし、自分の本心と向き合い、家族や恋人、幼い娘、
そして老いた父に対しても、愛人への愛を公然と伝える.


映画「それでも私は生きていく」-5


原題の“Un beau matin”は父がかつて書こうとしていた自伝の表題名.
なんの関係も無い邦題は「それでも私は生きていく」.邦題の方が主人公の
切迫した状況と心意気?を示しているのかもしれない.

それでも生きていくのは、仕方なくか前向きなのかわからない.
本作では解決も方向性も見えないのだが、認知症の父も、その娘も、
生きていくその姿がしっかりした視点からの俯瞰で描かれている作品.

TVドラマ「岸辺露伴は動かない」シーズン2 (DVD観賞)…やはり面白い!


Screenshot_2023-06-21 (5)「背中の正面」 - 岸辺露伴は動かない


放送日:2021年12月 製作国:日本 NHK 上映時間:137分


実放送を観たのは2020年放送のシーズン1だったらしい.
映画「岸辺露伴ルーヴルへ行く」でその魅力を再燃させられたので、
DVD化されているシーズン2を借りてきてみた.
TVドラマゆえ本年度累積にはカウントせず.
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第4話「ザ・ラン」

露伴は会員制のスポーツジムで橋本陽馬という若い男と出会う.
陽馬は駆け出しのモデルで、事務所の社長から「体を作れ」と
指示されてジムに通う、無気力でつかみどころのない青年だった.
だがこの日を境に陽馬はランニングにのめり込むようになり、
走りに対する執着は次第に常軌を逸していく.
ある日、久しぶりに露伴の前に姿を見せた陽馬は見違えるほど
自信に満ちあふれていた.そして陽馬は、露伴にある勝負を提案する….

第5話「背中の正面」

露伴の家にリゾート開発を請け負う会社に勤める男、乙雅三が
尋ねてきた.家の中に招き入れると、男はなぜか背中を壁につけたまま、
ずりずりと不自然なかっこうで入ってくる.靴を脱ぐときも、椅子に座る
ときも、紅茶を飲むときも、愛想笑いをしながら、男は決して露伴に
背中を見せようとしない.
その奇妙な行動に猛烈に好奇心をかきたてられた露伴は策を弄して
無理やり男の背中を見てしまう。すると背中を見られた男を異変が襲う.

第6話「六壁坂」

露伴は妖怪伝説を取材するためだけの理由で六壁坂村の山林を買い
破産してしまう.財産よりもネタが大事な露伴は妖怪伝説の謎を追って
京香と村を訪れるが、手掛かりは見つからない.
そんな時、露伴の前に現れたのは村一番の名家の跡取り娘、
大郷楠宝子だった.楠宝子は露伴が村を訪ねた理由を探ってくるが、
自らも何かを隠しているようだ.
楠宝子をヘブンズ・ドアーで読んだ露伴は、楠宝子と六壁坂にまつわる
驚がくの真実を知る.

以上はNHKのHPより転載.
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第4話はマッチョ男陽馬:笠松将の破滅の物語.
生来マッチョが大嫌い.全員脳みそが欠落している人種だと思っている.

女性はなおさらだ.汚い裸体をこれみよがしに見せたがるナルシスティズム
偏った食事、プロテインを飲むばかりの生活.脳みそに栄養が行きようが
無いと思う.

本作の陽馬は取り付かれたようにランに人生を賭けてしまう.
その取り付かれ方が異常ゆえ、キーワードの「六壁坂」を追い求めるのが
本シリーズの基調テーマ.

露伴はある処に存在する「六壁坂」を含む山林を購入してしまう
無鉄砲さを見せる.
自分の描く漫画のリアリティ追求の為とはいえ全財産を投げ打って、
自宅まで抵当に入ってしまう.
これひとえに読者を真に喜ばそうとする切なる気持ちの発露である.

第5話は、その山林の購入をめぐってリゾート会社から派遣された
背中を決して見せない男・乙雅三を演ずるのが、今を騒がす市川猿之助.
まさにはまり役だ.

丈の長めのピンク系のスーツをまとい、真面目な顔付きで他人に自らの
背中を見せまいとする路上の姿は滑稽だ.露伴の家を訪ね、入ってからは
なんとか背中を観ようとする露伴との“バトル”が面白さを通り越して
狂気のレベルまでに見え隠れしてくるから凄い役者だ.


Screenshot_2023-06-21 (5)「背中の正面」 - 岸辺露伴は動かない(2)


明らかに、意志をもって演じている.その真剣さが観るものにひしひしと
伝わってくるのだ.その伝達力が凄いと感じさせた.
一旦露伴に背中を見られてからの演技の切り替えがまた凄いのだ.

完全に人間から逸脱した存在になりきって、今度は露伴の背中に
貼り付いてみせる.一転して無表情で不気味な顔だけの演技だ.
露伴のスタンド、ヘブンズドアも効かないその存在は完全に人間では
無い.そんな存在を演技しきるのだ.

いつもの泉京香:飯豊まりえの思いつきで窮地を脱した露伴は、
第6話でいよいよ自分で購入した「六壁坂」の山林を訪ねる.

そこで待ち受けていたのは村一番の名家の跡取り娘、大郷楠宝子:内田理央.
どろどろの過去を持った彼女の素性をヘブンズドアで知った露伴は、逃げの
一手を打つ.そう人知を超えた悪行からは逃げるが勝ちなのだ.

音楽は菊地成孔/新音楽製作工房、BGMは極少で楽器の短音だけだったりする
テーマ曲はうら悲しくて、不協和音の様相だが、心ふるわされる弦楽四重奏曲、
耳に残る音楽だ.

脚本は小林靖子、オリジナルを逸脱せず確実な実画映像を司る脚本に徹している.

昨年末に、第3シーズンで第7話と第8話が放送されている.
そろそろされるであろうDVD化を待つか、オンデマンドで観るか
うーん、悩ましいなぁ(笑).

映画「せかいのおきく」…汚物扱いなのに清い作品.


映画「せかいのおきく」-4
製作年:2023年 製作国:日本 上映時間:89分



観たかった邦画が、2番館柏キネマ旬報シアターへやって来た.
公開時はマイナ上映で、都心へは行きたくなかったので待ちにした.
本年度累積139本目の鑑賞.
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「北のカナリアたち」「冬薔薇(ふゆそうび)」などの阪本順治監督が、
黒木華を主演に迎えて送る青春時代劇.

江戸時代末期、厳しい現実にくじけそうになりながらも心を通わせる
ことを諦めない若者たちの姿を、墨絵のように美しいモノクロ映像で
描き出す.

武家育ちである22歳のおきくは、現在は寺子屋で子どもたちに読み書き
を教えながら、父と2人で貧乏長屋に暮らしていた.

ある雨の日、彼女は厠のひさしの下で雨宿りをしていた紙屑拾いの中次
と下肥買いの矢亮と出会う.つらい人生を懸命に生きる3人は次第に
心を通わせていくが、おきくはある悲惨な事件に巻き込まれ、
喉を切られて声を失ってしまう.

中次を寛一郎、矢亮を池松壮亮が演じ、佐藤浩市、眞木蔵人、
石橋蓮司が共演.

以上は《映画.COM》から転載.
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先ずは笠松則通撮影によるモノクロ画像の美しさが愁眉である.
主人公の二人矢亮:池松壮亮と中次:寛一郎の生業がおわい屋ゆえ、
全編通して”うんこ“の映画である.これをリアル過ぎないようにの配慮
からのモノクロ画像なのだろうが、うんこ以外は美しい….

各章立ての最後だけ一瞬カラー映像になるのだが、そこで得られる
情報は貴重で、きく:黒木華の着物の色だったり、長屋の様子だったり、
時にうんこも色が着いて、リアルさにおののいたりもする(笑).

当時、農家は人の糞尿を肥料にしていて、自家の排泄物では足りず、
農家に人糞肥料を売りにくる商売があった.これが“おわい屋”.
江戸の町中で排泄物の汲み取りをした側が金を支払い、田舎へ運び、
農家へ売りさばくという薄利で不条理な商売.

一般の町人より武家の排泄物の方が(いいものを食べているから)、
高価だというから可笑しい.この映画には公衆便所も描かれている.
江戸時代の後期には江戸の町に公衆便所が設置されていたらしい.
無料で使えるうえに意外と清潔に保たれていて、それなりに経費が
かかったようだが、下肥を売った収益で賄えていたとか.


映画「せかいのおきく」-3


時代背景は、江戸末期、安政五年から文久元年までの約4年間を描く.
強硬派の井伊直弼による安政の大獄、そのしっぺ返しとなる桜田門外の変
が起こった頃.大国が押し寄せ、400年続いた江戸幕府は崩壊寸前、
価値観も大きく変わるまさに激動期.

時代の趨勢に押されて居場所をなくした武士の中には、髷を切って
長屋暮らしを始める者も多かった.不義を訴えたために武家屋敷を
追い出されたおきくの父、松村源兵衛:佐藤浩市もそのひとり.

飄飄たる元武士の役を佐藤浩市が演ずる.毎朝長屋の前で、四方に
向けて、柏手を打つ.宗教的なものは何も無いという.ただお天道さまに
毎朝、今日一日の無事を祈るだけの行事だという.

民家、長屋回りの中次:寛一郎に向けて、源兵衛:佐藤浩市が“せかい”の
意味とその広さを教えるシーンがある.ついでに、惚れた女に言ってやれ
「世界で一番お前が好きだ」ってな…実はこのふたりの役者は実の親子.
“せかい”を通じて演技を教え込むような印象を与える笑えるシーンだ.

それから程なくして、源兵衛は意見の異なる武家連中に斬殺され、追ってきた
おきくも喉を駆っ切られ声を失ってしまう.幸い命はからくも生き延び得たが、
半年程長屋に引きこもってしまう. それでも生きていけるだけの糧は周囲の
他人たちが与えてくれていたのだろう.大家や寺子屋の住職、もちろん中次
らの支援がおきくの命を支え、相互扶助で成り立つ社会の原理が描かれる.

寺子屋経営の住職:真木蔵人に説得されて、寺子屋の読み書きを教える
仕事に復帰する黒木華.その品の良さと気高さと慎ましさとケジメを兼ね
備えた、武家の娘の佇まいを楚楚と演ずる. 亡くなった父のように、毎朝
お天道さまに手を打つシーンも清々しい….


映画「せかいのおきく」-1


元気になったおきくは恋もする.おきくが自分の家内で夜のシーン.ゆっくりと
精神を統一し、真っ白な和紙に向き合い、筆で「忠義」と書いていく…が、
ハッと気がつくと「中次」と書いており、おきくは顔を赤らめながら畳に
倒れ伏し(でもむちゃくちゃ笑顔)、手足をばたつかせる可愛さの表現が
抜群に黒木華らしい、やんちゃな演技に微笑んでしまう.

恋が成就し、彼の足音に聞き耳をたてる様は、塞いでいたおきくとは
雲泥の差で、生きる事を楽しんでいるようにも見え、恋愛とはこんなにも
人に活力を与えるものなのかの描き方が上手い.

おきくと中次と矢亮、三人の若者.彼らの、虐げられても、惨劇に遭っても、
前を向いて生きる活力を失わない逞しさに加え、恋する若者の純情を
素直に表現していて、清々しい作品.

映画「テノール! 人生はハーモニー」…ラップは捨て、オペラに走る ♪


映画「テノール! 人生はハーモニー」-1
原題:Tenor 製作年:2022年
製作国:フランス 上映時間:101分



フランス映画が続く.ハリウッド作品に嫌気がさしてるからね(笑).
最近フランス映画に多い、立身出世もの、今回は声楽編だ.
本年度累積137本目はMovixつくばまで遠征して観賞.
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パリ・オペラ座を舞台に、類まれな美声を持つラッパーと一流オペラ教師
の運命的な出会いを描いたヒューマンドラマ.

寿司の配達のためオペラ座ガルニエ宮を訪れたラップ好きのフリーター
青年アントワーヌ.ふとしたことからオペラの歌真似をした彼は、偶然その場
に居あわせた一流オペラ教師マリーに才能を見込まれてスカウトされる.

自分とは住む世界が違うと考えながらもマリーと2人で秘密のレッスンを
始めたアントワーヌは、次第にオペラに熱中していくが…….

音楽オーディション番組「THE VOICE」で注目されたビートボクサーの
MB14が主演を務め、自らオペラ歌唱にも挑戦.
「100歳の少年と12通の手紙」のミシェル・ラロックがオペラ教師マリー
を演じ、世界的テノール歌手ロベルト・アラーニャが本人役で出演.

以上は《映画.COM》から転載.
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主人公である青年アントワーヌを演じるのは、今月、日本版の地上波放送
も始まった大人気オーディション番組「THE VOICE」でそのカリスマ性を
爆発させて準優勝した、ビートボクサーMB14.よくぞこんな才能を見つけて
きたなぁと感心.

ラップの出来は知らぬが、劇中すべてのオペラ歌唱は吹き替え無しで、
自ら挑戦しているらしい.劇中でも「蝶々夫人」「椿姫」「トゥーランドット」など
オペラの名曲を歌い上げ、天才的な歌の才能を惜しみなく披露する.

極めて私見だが、ラップを音楽とは認めていない.ある文化を形成して
いるのは判るが、音楽の範疇には決して入るものではないと思っている.
そんなクソみたいなラップの世界からオペラに飛び込んでしまう主人公
には共感しかない.音楽としての次元、世界が違いすぎるのだ.

そのままでは、観客に本作がラップ否定と取られては困るので、
なんとかというラッパーのCDをオペラ教師マリー:ミシェル・ラロックに
手渡して、『良かったわー』と無理矢理言わせるのは滑稽すぎる.


映画「テノール! 人生はハーモニー」-3


世界的なテノール歌手のロベルト・アラーニャも本人役で出演.
アントワーヌ:MB14と共演させてしまうのもご愛敬だ.
パリ・オペラ座が舞台の本作は、多くのシーンが実際にオペラ座内部で
撮影されている.そんな場で本物のオペラ歌手の声が聴けるのも耳福である.


映画「テノール! 人生はハーモニー」-4


絢爛豪華な吹き抜けの間や、ベルサイユ宮殿の鏡の間を思わせる
グラン・ホワイエ(大広間)での練習場風景、舞台から見上げる
有名なシャガールの天井画も素晴らしい.私事だがオペラ座で音楽は
聴いたことは無いが、このシャガールの天井画だけは観に行ったことが
ある.遠目でもその鮮やかさ、素晴らしさは記憶に留めている.


映画「テノール! 人生はハーモニー」-5


アントワークヌは、寿司のデリバリーをバイトにしていたり、賭け格闘で
捕まった兄が牢屋で、日本のポスターをバックに出張中だと母親に
ビデオ電話する様など、日本趣味との親和性が高くてクスッと笑わせ
られる.今時のパリでは日本風はざらに転がっているのだね.

アントワーヌはオペラ一流教師・マリーからもらったオペラのCDに衝撃を
受けて、マリーの門を叩きオペラ歌唱に励む.当然その両極にあるラップ
からは遠ざかっていく.

兄からのプレッシャーや仲間を捨てても、夢を掴もうとする姿には
見ている観客も夢中になるし、マリーとアントワーヌの師弟の絆にもグッとくる.
完全予定調和のシンデレラボーイストーリーではあるが、泣いて、笑って、
オペラの名曲に酔いしれる楽しさは極上だ.

ラストのMB14の「誰も寝てはならぬ」を聴きながら、壮麗なオペラ座を
スクリーン越しでも見られるのはフランス映画ならではの楽しみだ.


映画「ウィ、シェフ!」…移民と料理を上手くからめた佳作.


映画「ウィ、シェフ!」-1
原題:La Brigade 製作年:2022年
製作国:フランス 上映時間:97分



2番館柏キネマ旬報シアターに観たかったフランス作品がやって来た.
本年度累積135本目の鑑賞は料理を通じて移民問題を描く作品.
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孤独なシェフと移民の少年たちが料理を通して交流する姿を、
実在のシェフであるカトリーヌ・グロージャンをモデルに描いた
フランス製コメディドラマ.

一流レストランでスーシェフを務める女性カティは、シェフと大ゲンカ
して店を飛び出してしまう.やっとのことで見つけた新しい職場は
移民の少年たちが暮らす自立支援施設で、まともな食材も器材もない.

施設長ロレンゾは不満を訴えるカティに、少年たちを調理アシスタント
にしようと提案.料理がつないだ絆は少年たちの未来のみならず、
天涯孤独で人づきあいが苦手だったカティの人生にも変化をもたらしていく.

「シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション」のオドレイ・ラミー
がカティ役で主演を務め、「最強のふたり」のフランソワ・クリュゼが
施設長ロレンゾを演じる。監督は「社会の片隅に」のルイ=ジュリアン・プティ.

以上は《映画.COM》から転載.
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夢破れたスーシェフのカティ:オドレイ・ラミーが移民の少年たちとの交流
を通じて、変化・進化していくさまを描いた作品.

たかが?前菜に掛けるソースをめぐり、シェフと大げんかして高級レストラン
を飛び出してしまうカティ. シェフとスーシェフの関係は絶対的にシェフの
言いなりが当たり前.これがカティの得意の野菜のゼリー仕立ての前菜.


映画「ウィ、シェフ!」-5


飛び出して行き着いた先は、移民の子供たちの賄いをする施設の厨房.
設備も古ければ、道具も足りない.それでも一人で奮闘するが、ランチが
午後2時にやっと間に合う始末.移民の子たちを手伝いに募集すると、
なんと10人も集まってしまった.


映画「ウィ、シェフ!」-2


移民の子たちと書いたが、年齢は不詳だ.生まれも育ちも自己申請は
当てにならない.なんと骨年齢で年齢を判断するそう.成年するまでに、
学校に入るか就業しないと、強制送還される仕組みらしい.フランスと
言えども移民にある程度の規制はあることを実感させられる.

集まったその10名は料理に関してど素人.彼らにあるのは 「好奇心」.
足りないのは「知識と経験」.カティは包丁で野菜を切る基本から教え
始める.

否応も無く料理指導が始まるのだが、進めていく内、カティにも次第に
誰しも料理に対して素直な感受性を持っていることに気付く.
喧嘩をしながらも徐々に距離が縮まり、友情や信頼や絆を培っていく.

いつしか主人公とそこに暮らす人々がファミリー化していく様が描かれる.
移民の子供たちを演じていたのは実際に支援施設に住む強制送還一歩
手前の少年たち.彼らの演技が妙にリアルで真に迫っているのが特徴的.

ラストに向けて、軽薄な料理バトル番組を利用していくカティの計画が
素晴らしい.彼女は勝ち抜いていき、ラストの決勝バトルへ.そこで大芝居
を打つことする.移民の子供たちを助ける為の大芝居だ.

唖然とする大芝居の果ては一見ハッピーエンドのようだが、実際は全然
異なる.10人の子供たちの内、職業に就けたのは2名だけで、他はみな
本国へ強制送還されてしまっている.これが現実であろう.

フランスは過去の歴史からも移民問題は常に抱えている問題.
本作はそれをメインに重くなりすぎず笑える映画を作る.
感傷的になりすぎず、笑わせつつ、極端に泣かせず、考えさせる.

登場人物はそれぞれの立場でガンガンものを言う. 言ってから、それで
あなたは?と問いが出て、会話が始まる.
自分をまずは前に出す.相手が反応する.そして次の行動に移る.
忖度は一切ないから、本音だけのぶつかり合いだし、出てくる結論も
双方納得いくものになっていく.

邦題は、カティが移民の子たちに強制する返事から出たもの.
原題は“La Brigade”、直訳するなら“移動する集団”だろうか、
移民全体を指しもするし、動いて活動する10人の子供たちを指す
のかもしれない.

正しい答えは無い移民問題.それとフランスらしい料理を絡めた、
ユーモアとエスプリが効いた、味付けの濃い作品だった.

今週のランチ事情(2023年第24週)




梅雨の季節のまっただ中、
“王様の如き昼食”を目標に、
今週のランチ模様を.

今週も土曜からの記録.

土日火木は内食、月水金は外食.

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土曜は娘宅で内食.

4人分の弁当を作り持参した.


ランチ20230617-1


コロッケを前日丹念に揚げた.
ピーマン肉詰めは、マカロニや
レンコンを入れた新バージョン.

肉じゃがと出汁巻き卵は定番.
鮭ご飯のお結びは海苔を巻いてみた.

1人分約650KCal、材料費850円也.

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日曜も自宅で内食.

定番の袋麺「サッポロ一番味噌らーめん」
を作ってみた.


ランチ20230618-1


“野菜たっぷりサッポロ一番味噌らーめん”


ランチ20230618-2


パック野菜200gとジャコ天を
塩胡椒で炒めて具の中心に.

「Teshi」で購入のチャーシューと
ゆで玉子、メンマ、コーンも乗せてみた.

土曜の鮭ご飯のおにぎり2個も供に.

デザートは、季節も終わりの
“とちおとめ小粒”


ランチ20230618-3


甘さほどほどの小粒なり.
濃い目のブラック珈琲と供に.

合わせて約890KCal、材料費280円也.

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月曜は出先で外食.

柏南口の「大戸屋」にて.

“懐かしの複刻デミグラスチキンかつ定食”


ランチ20230619


あげたてのチキンカツにコク深い
デミグラスソースをかけて.
チーズまぶしが美味しい.

ご飯は五穀米スモール、100g ー20円.
とろろを付けて、+110円.

味噌汁、お新香付き.

合わせて812KCal、1010円也.

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火曜は自宅で内食.

無印のレトルトカレーを温めた.


ランチ20230620-1


“自家製コロッケ入りスープカレー”


ランチ20230620-2


ご飯は白米180g.
スープカレーは少しの辛さが美味しい.
自家製コロッケはホクホクで美味しい.

8目トマトサラダには、
セブン製のトマトドレッシングで.

デザートは“カットスイカ”


ランチ20230620-3


あまさ程ほど.
皮がないのは寂しい(笑).

合わせて約860KCal、材料費420円也.

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水曜は出先で外食.

馴染みの柏「Teshi」にて.

“夏の丼”


ランチ20230621


豚バラ細切り野菜タレ丼.

柔らかに煮込んだ豚バラ肉たっぷりに、
細切り野菜や錦糸玉子をかけて、
香味タレを掛けてある.

ご飯は300gから200gに減らしてもらった.

豚肉が柔らかでジューシー、
あっさりした野菜類(キュウリ、ネギ、ミョウガ)
と錦糸玉子が美味しい.
濃い目のタレがご飯を美味しくする.
これは久々の138m級のホームランだ ♪

中華スープと漬け物付き.

食後の珈琲はプライスレス ♪

約832KCal、900円也.

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木曜は自宅で内食.

パスタを茹でた.

“あさりとキノコのスープスパゲティ”


ランチ20230622-1


殻付きのあさりとしめじ、アスパラと玉ネギを
ガーリック+オリーブオイルで炒め、
硬めに茹でたdechecco#11を投入.

スープは市販品.
8目サラダにはトマト・ドレッシングで.


父の日にもらった
“レモン・サングリア”も開けてみた.
少し私には甘過ぎ…かも.
サングリアだからしょうがない.

デザートは、近所のパン屋
「TiTi」で購入の

“チョコレート・プディング”


ランチ20230622-2


甘さ控えめが嬉しい.
濃い目のレッドマウンテンで.

合わせて約800KCal、材料費390円也.



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金曜は出先で外食.

月に一度の循環器の定期健診の
腹いせに、近所のチェーン系とんかつ屋
「和幸」にて.

ランチ“ロースカツ定食”


ランチ20230623


ランチの豚ロースはサイズも小さめ.
ちょうど良いね.ご飯は少なめ、100gだね.

味噌汁は大好きなしじみゆえお代わり.
キャベツも当然お代わりしちゃうのだ!
漬け物付き.

約880Kcal、970円也.





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今週もバラエティに富んだランチ.

体重は横ばい♪

来週も頑張るぞぉ!!

今週もご馳走様.





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映画「探偵マーロウ」…“雰囲気”のある作品.


映画「探偵マーロウ」-2
原題:Marlowe 製作年: 2022年
製作国:アメリカ・アイルランド・フランス合作



金曜は新作公開の日、DCでもなくマーベルでもなく、いそいそと老俳優の
出演作を観につくばのシネコンまで出かける.もうフラッシュとかスパイダー
マンに全く興味が持てないのだからしょうがないね(笑).
待ちに待っていたリーアム・ニーソンの最新作はあのマーロウを演ずる作品.
本年度累積138本目の観賞.
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リーアム・ニーソンが、推理小説の巨匠レイモンド・チャンドラーが生んだ
ハードボイルドヒーロー「私立探偵フィリップ・マーロウ」を演じたミステリー映画.

ブッカー賞受賞作家ジョン・バンビルがベンジャミン・ブラック名義で執筆し、
チャンドラーの傑作「ロング・グッドバイ」の続編として本家より公認された
小説「黒い瞳のブロンド」を原作に、「クライング・ゲーム」のニール・ジョーダン
監督がメガホンをとった.

1939年、ロサンゼルス.私立探偵マーロウのもとに裕福そうなブロンド美女
が現れ、姿を消した元愛人を捜して欲しいと話す.依頼を引き受けたマーロウ
は捜索を進めるうちに、映画産業が急成長するハリウッドの闇に飲み込まれていく.

共演は「女は二度決断する」のダイアン・クルーガー、
「トッツィー」のジェシカ・ラング.

以上は《映画.COM》から転載.
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探偵フィリップ・マーロウ…大作家レイモンド・チャンドラーが1930年代に
生み出した超人気キャラであり、タフで孤独、女性にモテるが、友情を重んじ、
どんな時も権力に媚びない.そのハードボイルドな生きざまは、世界中の男性を
長きにわたり魅了し続けている.

今回はマーロウが登場するがチャンドラー作ではない.
「黒い瞳のブロンド」(小鷹信光訳/早川書房刊)が原作で、ちゃんとマーロウが
登場する、2014年に刊行された新作(作者は“ブッカー賞受賞作家ジョン・
バンヴィルの別名義”ベンジャミン・ブラック)で、チャンドラーの傑作
「ロング・グッドバイ」の続編として、本家の公認も受けている一作.

舞台は1939年、ロサンゼルス.探偵フィリップ・マーロウ:リーアム・ニーソン
のもとに現れたのは、見るからに裕福そうなブロンドの美女:ダイアン・クルーガー.
「突然姿を消したかつての愛人を探してほしい」と….


映画「探偵マーロウ」-3


マーロウは淡々と調査を始めていくのだが、OBとして警察内部に知己がいたり、
街の顔役や悪役に顔が効いたりと、ニヤリとするシーンが続出する.
一つ気になるのはやはりニーソンの70歳と言う年齢からくる脚本環境.

「ロング・グッドバイ」の続編ならマーロウは40代から50代が妥当なのだろうが、
リーアムにその年代は演じきれない.いきおいロートルなベテラン探偵の役柄に
なってしまうのだが、仲間内の話しや雇い主の口々に“年金”がでてくるのには
ちと閉口してしまう.

突然消えた愛人を探すという…絶対にろくなもんじゃない依頼から、関係者
から聞き出しを始めても、関係者全員の意見が頻繁に食い違っている.
「さっきあの人から聞いた話と違う」.つまり「全員、何かしら嘘をついている」
「意図的に情報を隠している」というもつれた糸が物語の中心にどっかりとあり、
マーロウは丹念に糸を解きほぐしていく.


映画「探偵マーロウ」-1


どんでん返しや特別な仕掛けがあるわけではないものの、教養と刺激に溢れ、
質実剛健のミステリーを味わえる.ちょっとした味付けのアクションはリーアムの
70歳の年齢を考えれば充分だ.

ジェシカ・ラング、ライアン・クルーガーの美女親娘を相手の駆け引きも
生臭さは一切無く、枯れきっているのが、老齢のマーロウにはふさわしい?

ほとんどアイルランドで撮られたようだが、1939年、第2次大戦突入直前の
ロサンゼルスを良く再現していた.

出演者、演技、脚本、セットのいずれも“雰囲気のある”作品だった.


映画「ザ・スパイ エージェント・ウルトラ」(DVD観賞)…これは酷い.


映画「ザ・スパイエージェント・ウルトラ」-1
原題:老板娘2无间潜行 製作年:2022年
製作国:中国 上映時間:83分



単にジャケットのシュー・トントンに惹かれて借りてきてしまったDVD.
香港製かと思ったら、香港監督起用の中国本土製であった…(泣).
本年度累積136本目の観賞.
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1970年代イギリス領香港.腐敗した警察組織と領内を牛耳る犯罪組織
を壊滅すべく汚職捜査機関ICACが組織される.
捜査官のメイクイは四大組織の一つハオの元へ潜入を命じられる.

監督は「燃えよ!デブゴンTOKYO MISSION」や「追龍」等のベテラン
バリー・ウォン.

以上は〈Firmarks〉から転載.
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70年代の香港が舞台なのだけど、どうも本国で撮られている様子.
資本も完全に中国本土だしね.それより画の作りから、脚本の出来まで
まるで70年代そのもの.40年も前の感覚だ.救いようがない.

ジャケの感じでは、女スパイ:シュー・トントンによるガンアクションを
期待させられたが全く違った.ジャンルもスパイものというより、
恋愛要素の方が強い。てか、最後まで恋愛ものの結末だった.

アクションは少ないのだけど、シュー・トントンの動きのキレは有る.
物語の組み立て方が悪く、余計な話に時間を使い過ぎでテンポも悪い.
その分メインの話が薄過ぎて全然感情移入も出来ない….

いまもってこの時代にこの感覚でこんな映画を作る国がある意味恐ろしい….



映画「アブソリュート/服従者」(DVD観賞)…もう一歩の残念な作品.


映画「アブソリュート 服従者」-1
原題:Woman 製作年:2021年
製作国:アイスランド・アメリカ・イギリス合作 上映時間:92分



レンタル屋の新作棚からなにげなく借りてきたら、
又も「未体験ゾーンの映画たち」の作品だった.ほんとにビデオ化が多いね.
本年度累積134本目の鑑賞は誘拐もの作品.
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恐ろしい裏の顔を持つ大学教授に囚われた女子大生の恐怖を描く
クライムスリラー.

大学教授ブラッドリーには、女生徒たちを巧みに誘い出して拉致・監禁
するという裏の顔があった.新たな標的となったヘイリーは数日間に
わたって暗い部屋に拘束され、正気を失うほどのフラッシュライトと
爆音ノイズを浴びせられる.

ようやく拷問から解放された彼女の前に、5年前から監禁されている
ジェニファーが現れる.一方、町の廃車置き場で女性の遺体が発見され、
捜査官ホークは女子大生連続失踪事件との関連に気づく.

監督・脚本は「静寂の森の凍えた姉妹」のアントン・シーグルドソン.
ヒューマントラストシネマ渋谷&シネ・リーブル梅田で開催の
「未体験ゾーンの映画たち2023」上映作品.

以上は《映画.COM》から転載.
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ほんとに「未体験ゾーンの映画たち」登場の作品はくせものばかり(苦笑).
自分の感性に合えば、幸せなのだけどなかなかそうはいかない.
本作も、良い風合いはあるのだけどいまいちの完成度.

犯人は誰だか判っている状態で展開していくドラマ.事件を追う刑事も
グループセラピーに通うような影があり、家で病んだ母親との二人暮らし
とか本題と関係ない描き方は何を示すのかよく判らない.

そして犯人の異常性と被害者のズレていく感性等々をみせていくので
非常に陰鬱でドロドロした印象がある.丁寧なのだが、若干くどい説明的に
進行していくので、観ていて疲れてしまう.

邦題はそのものズバリで味も素っ気もないのだが、原題は“Women”と
深遠.複数形なのにも訳がある.犯人大学教授ブラッドリーが誘拐、束縛
しているのは常時2人.新しく捕獲されたヘイリーと5年間も拉致されている
ジェニファー.


映画「アブソリュート 服従者」-2


極限状態に置かれていた人の気持ちは計り知れないのだが、この二人の
関係性と行動が本作の本題.ヘイリーとジェニファーは助け合ったりする時
もあるが、ある時は蹴落とし合ったり….

監禁されている環境下で、戦うか戦わないかを日々葛藤する思いと、
ジェニファーに於いては長年の洗脳の結果か、ストックホルム症候群
みたいな感情をブラッドリー教授に抱いていたりもする.

逃げるヘイリー、付いていかないジェニファー、逃がそうとしないブラッドリー
と三つ巴の展開に、駆け付ける捜査官ホーク.
そして起きるあっけない結末….
意外性というよりも、洗脳されたジェニファーにとっては必然の結果
なのだろう.

もう少し違ったアプローチから攻めた脚本ならもう少し面白かったかも.
残念な一作.