映画「八月のクリスマス」(DVD観賞)…切なく、儚い恋物語.
原題:Christmas in August 製作年:1998年
製作国:韓国 上映時間:97分
観落とした名画シリーズの一環.
恋愛ものの達人ホ・ジノ監督のデビュー作.
日本でもリメイクされたものは観たような気がする.
本年度累積165本目は韓国発の恋愛もの作品.
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不治の病に侵された写真館の青年と、駐車違反取締員の女性の
切ない恋をつづった韓国製ラブストーリー.ホ・ジノ監督の
長編デビュー作で、第19回青龍映画賞の最優秀作品賞など
数々の賞に輝いた.
父の跡を継いでソウルで小さな写真館を営むジョンウォン.
彼は不治の病により余命が限られているが、笑顔を絶やさず
穏やかな毎日を送っている.
そんなある日、駐車違反取締員のタリムが違反車の写真を
拡大してほしいと写真館にやって来る.それ以来、タリムは
たびたび写真館を訪れるようになり、
ふたりは次第に惹かれ合っていくが…….
主演は「シュリ」のハン・ソッキュと「サランヘヨ あなたに逢いたくて」
のシム・ウナ.
2005年には日本で「8月のクリスマス」のタイトルでリメイクされた.
以上は《映画.COM》から転載.
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良くも悪くも90年代のテンポと時代性が発揮される映像.
殺伐としていない、良き時代の韓国ソウルの生活が描かれる.
主人公ジョンウォン:ハン・ソッキュの営む写真館だって、まだ
アナログ時代の写真館、フィルムの現像・焼き付けそして、
撮影もする小さなスタジオを有している.
不治の病を抱えた写真屋の主人公と、駐車違反取締りの仕事を
する女性警察管の淡いラブストーリーのようなヒューマンドラマ.
死を前にした人間の心情を感情剥き出しには描かず、ただ粛々と
死が近づいていることを表現する、淡々と静かな映画.
引退した父親との料理風景、食事風景、近所に住む妹がやく世話、
そんな中で主人公ジョンウォンは屈託のない笑顔を見せるばかり.
小学校からの幼なじみとの付き合いが深く、たびたび一緒に飲んで
騒いで…を繰り広げる.
写真館を営むだけあって、写真がキーとなるポイントが多い.
別れた彼女の学生時代の写真が店頭に飾ってある.彼女は既に
他人と結婚して二人の子が居るらしい….街ですれ違っても、
ぎこちない会話を交わす二人.
今の彼女は幸せそうにも見えないのだが、ジョンウォンは何も
積極的に声はかけない….後に人づてに店頭の写真は外して
ほしいと彼女は希望する.
代わりに?ジョンウォンはよく店を訪問してくる駐車違反取締員
のタリムの写真を撮って、店頭に置く…好きな人の写真を身近に
飾りたい気持ちは写真好きの私にも痛いほど良く判る….
家族写真を撮りにきた客たちが解散間際に、息子がお婆ちゃんだけ
の写真を所望して撮るシーンが印象的.使い道の意図を持った写真なのだ.
数日後、着飾ったお婆ちゃんが再来し、写真を撮ってもらいたいと言う.
自らの意志、自ら選んだ衣装での遺影撮影だ.
それを判ってシャッターを押すジョンウォン、死期が近づいてきている
彼の気持ちがひしひしと伝わってきたシーン.後に自分で遺影を撮る
シーンに繫がるのだ.
ジョンウォンの屈託のない笑顔や、心を許した友達の前で泥酔する
彼の姿に生きていることのやるせなさが滲んで表現されていた.
どんな状況になっても、笑顔を絶やすことはない.
そして何よりも恋した女には自分自身の病について語らない.
この愛の表現は90年代だなぁ…と感じ入った次第.
店で倒れ入院した時、彼女に何も知らせなかったという、何もしない行為
が理解でき、両サイドから見る者にとっては悲しくてしょうがいない.
写真=思い出という単純なものにしたくなかったタミルへの愛情は、
最後には彼女に伝わるのだろうか?
ラストシーンは、クリスマスの頃、店頭に飾ってあった自分の写真を
見たタミルの微笑がずっと印象に残ってしまう.
エンドロールで流れるハン・ソッキュの歌う主題歌も印象深いもの.
韓国発の切ない叶わない恋愛もの、しかと味合わせてもらった.
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