映画「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」
原題:Les traducteurs
制作年:2019年 制作国:フランス・ベルギー合作 上映時間:105分
土曜の夕方、コロナ禍前から観たかった作品をようやくキネマ旬報シネマで観賞.
本年劇場鑑賞75本目はフランス製サスペンスもの.
世界的ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」をはじめとするダン・ブラウンの小説
「ロバート・ラングドン」シリーズの出版秘話をもとにしたミステリー映画.
シリーズ4作目「インフェルノ」出版時、違法流出防止のため各国の翻訳家たちを
秘密の地下室に隔離して翻訳を行ったという前代未聞のエピソードを題材に描く.
フランスの人里離れた村にある洋館.全世界待望のミステリー小説「デダリュス」
完結編の各国同時発売に向けて、9人の翻訳家が集められた.翻訳家たちは
外部との接触を一切禁止され、毎日20ページずつ渡される原稿を翻訳していく.
しかしある夜、出版社社長のもとに「冒頭10ページをネットに公開した.
24時間以内に500万ユーロを支払わなければ、次の100ページも公開する.
要求を拒めば全ページを流出させる」という脅迫メールが届く.
社長役に「神々と男たち」のランベール・ウィルソン、翻訳家役に「007 慰めの報酬」
のオルガ・キュリレンコ、「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」の
アレックス・ロウザー.「タイピスト!」のレジス・ロワンサルが監督・脚本を手がけた.
以上は《映画.COM》から転載.
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原題の直訳は“翻訳家たち”.著名な作家が翻訳する以外は、翻訳家って透明な
存在.あまり表に出てくる人たちでは無い.本作に出てくる9人の翻訳家達もそう.
だが、自らの国では作家を務めていたり、仏語はもちろん数ヶ国語に堪能だったり
頭脳明晰さプンプン漂っている.
そんな翻訳家9人を厳重な警戒の中の城に閉じ込めて、同時に翻訳させるという
やり方も画期的というか、実際にダン・ブラウンの小説で実現されたことというから
面白い.
そんな警戒態勢の中を泳ぐ様に案内したり、翻訳家達の世話をする秘書ローズ
マリー役にサラ・ジロドー.コケティッシュでチャーミングで面白い役柄だ.
単なる秘書役では終わらず、最後の局面で重要な役を担う.
さて、そんな状況下で発生する脅迫事件.小説の内容を知るは9人の翻訳家たち.
スマホもPCも取り上げられ、外界との交信も遮断される中で起きた脅迫.
さて、犯人は…? と疑心暗鬼の世界へみなまっしぐらに.
そんな中、自己の作家としての才能に絶望して自殺する翻訳家も出て、
翻訳家VS出版社社長の対立体制は佳境に入る.密室閉じ込めからの脱出劇
の様相も呈してくる.
狂気に追い込まれた出版社社長は翻訳家を銃で撃つまでの罪を犯してしまい、
一気に問題解明のラストに向かう….
複数の翻訳家たちの複合犯罪かと思いきや、もう一つのどんでん返しが控えていた.
なかなか秀逸なプロットの積み重ねの脚本だ.
105分まっしぐらに突っ走る演出でテンポは悪く無い.
良くできた脚本に感心した佳作.
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