映画「サウンド・オブ・フリーダム」…児童人身売買の事実に驚愕する.
原題:Sound of Freedom 製作年:2023年
制作国:アメリカ 上映時間:131分
キャッチーな作品ゆえ二の足を踏んでいたが、
公開終了間際にかけ込み観賞してしまった.
本年度累積222本目は衝撃の事実に基づく
社会派ドラマ.
——————————————
児童誘拐、人身売買、性的虐待など、国際的
性犯罪の犠牲となった少年少女を救い出す
ミッションに挑んだアメリカの元政府職員
ティム・バラードの奮闘を、実話をもとに描いた
ドラマ.
性犯罪組織に誘拐された少年少女の追跡捜査
を進めていたアメリカ国土安全保障省の捜査官
ティムは、上司から特別な捜査の許可をもらい、
事件の温床となっている南米コロンビアに単身
潜入する.
そこで彼は、いわくつきの前科者や捜査の資金
提供を申し出た資産家、地元の警察などと手
を組み、大規模なおとり作戦を計画する.
ティムの少年少女たちの命を救う捜査は、
やがて自身の命をもかけたものになっていく.
イエス・キリストを描いたメル・ギブソン監督
作品「パッション」のジム・カビーゼルがティム役
を演じ、ティム・バラード本人の職務に同行して
役作りに励んだ.
また、メル・ギブソンも製作総指揮として参加
している.監督は「リトル・ボーイ 小さなボクと
戦争」のアレハンドロ・モンテベルデ.
以上は《映画.COM》から転載.
——————————————
冒頭の誘拐シーンが巧妙で卑怯で唖然とする.
親元で平和に暮らしていた幼い姉弟が、ある
女性からオーディションに誘われる.父親はふたり
をオーディションに送り出すが、夜に迎えに行って
みると、会場はもぬけの殻.
子どもたちを託した女性は、実は児童人身売買
業者だった.
その卑劣極まりない手口や、子どもが売られて
いくおぞましい実態は、見ているだけでドキドキ
してしまう.
驚きの世界を知ると同時に、いままで知らな
かった自分に愕然とする.
何よりも印象的だったのが、随所で挿入される、
実際の子どもの誘拐映像だ。道端や駅で、
前触れもなく突然、子どもたちが車やバイクに
乗せられ、姿を消していく.
そこには、劇中で描かれるような周到な計画
は存在しない.監視カメラの映像は、極めて
雑な手口で、日常的に行われている児童誘拐
のリアルを映し出す.
テイム:ジム・カビーゼルはいくら児童性愛
愛好家を逮捕しても、一向に児童を救えない
ことに無力感を感じていた.
そこに、冒頭の娘息子を誘拐された父親と
面会する.「貴方の娘がもしそのベッドに居
なかったらどんな気持ちになるか?」と問われ
絶句する.テイムもまた子どもを持つ身であった.
ティムは上司に制止されながらも、人身売買
組織を追いつめるためコロンビアに向かう.
そこで彼は、ワケありの前科者、資金提供を
申し出た資産家、さらに地元警察とタッグを組む.
さらに、彼らは巨額費用をかけた極大スケール
の囮捜査を敢行したり、反政府組織のアジトに
単独で潜入したりと、劇中のほとんどの時間が、
身分がバレたら即殺される極限状況で、ヒリヒリ
感満載のシーン連続で、最後まで目を離すこと
ができない.
実話に基づくと謳われているが、全てとは思えない.
エンタメに変換する際に事実とは異なることも
描いているのではないかと思える部分もかなりある.
なにせ、噂されるように製作者はQアノン信者らしいし、
劣悪なのはトランプ支持のメル・ギブソンも製作に
なを連ねているし、実在のティムは起訴されている
らしい.とかく怪しげな人たちが作った作品である
ことは世に知らされている.
されど、強い真実であるのは人身売買が実際に
行われていることで、今この瞬間も罪のない子供たち
が大人の欲望に搾取されている.
それは紛れもない事実なのだ.
ティムの静なる熱量こそが本作の原動力と言っていい.
彼の頬を伝うひとすじの涙はそこには一人の父親と
して、捜査官として、人間としてのやるせない思いや
葛藤が象徴されている.
単なるサスペンスとしてのみならず、本作自体が
ある種の使命感に突き動かされて製作されたこと
が伝わってくる誠実さは本物であろう.
.