fc2ブログ

映画「関心領域」…このシュールさ、怖さを堪能.


映画「関心領域」-5
原題:The Zone of Interest 製作年:2023年
製作国:アメリカ・イギリス・ポーランド合作 上映時間:105分



さて、カンヌのグランプリを獲った問題作.音響がキモという評判なので、
補聴器を付けるか取るか悩んだ末に、補聴器有りで観賞してみた.
本年度累積118本目はMovixつくばの大劇場で観賞.
—————————————————————

「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」のジョナサン・グレイザー監督がイギリス
の作家マーティン・エイミスの小説を原案に手がけた作品で、2023年・
第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門でグランプリ、第96回
アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞.

ホロコーストや強制労働によりユダヤ人を中心に多くの人びとを死に
至らしめたアウシュビッツ強制収容所の隣で平和な生活を送る一家の
日々の営みを描く.

タイトルの「The Zone of Interest(関心領域)」は、第2次世界大戦中、
ナチス親衛隊がポーランド・オシフィエンチム郊外にあるアウシュビッツ
強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するために
使った言葉で、映画の中では強制収容所と壁一枚隔てた屋敷に住む
収容所の所長とその家族の暮らしを描いていく.

カンヌ国際映画祭ではパルムドールに次ぐグランプリに輝き、第96回
アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞、音響賞
の5部門にノミネートされ、国際長編映画賞と音響賞の2部門を受賞した.

出演は「白いリボン」「ヒトラー暗殺、13分の誤算」のクリスティアン・
フリーデル、主演作「落下の解剖学」が本作と同じ年のカンヌ国際
映画祭でパルムドールを受賞したサンドラ・ヒュラー.

以上は《映画.COM》から転載.
——————————————————————


新種のホロコースト作品.
三国合作とあるが、A24提供ゆえアメリカは資本提供、原作・監督が英国.
撮影場所とスタッフはポーランドだ.

直接的な残虐場面は無く、間接的表現や音響面でナチスの残虐さを表現.
一見すると、ドイツ人将校の平和的?な生活を表面的に描いてみせる.
観客の創造力と妄想力が試される造りだ.観方によってはとんでもない
心のダメージを受けてしまう….

物語の主人公はルドルフ・ヘス:クリスティアン・フリーデル.アウシュビッツ
収容所の所長.彼は妻ヘートヴィヒ・ヘス:サンドラ・ヒューラーと5人の
子どもたちとともに、収容所から塀一枚隔てた土地に建つ瀟洒な一軒家に
暮らしている.


映画「関心領域」-1


たくさんの草花が生い茂り、よく管理されたヘス家の美しい庭の向こうには、
有刺鉄線が巡らされた塀越しに収容所の見張り塔が覗いている.
抜けるような青空の下、塀の向こうからは得体の知れない重機の音にまじって、
銃声や悲鳴が引っ切りなしに聞こえてくる….

本作の特徴は、音による暴力. 冒頭と最後のエンドロール時にはブラックアウトし、
悲鳴のような合唱とバイオリンの不気味な音色の伴奏が流れる.冒頭は数分にも
及ぶかと感じさせ、観る前に気持ちを萎えさせる.

途中の音声も、小さめだがかなりクリアにアウシュビッツ収容所で起きている音だけ
でその行動や声が表現されている.人が運ばれてくる汽車の稼動音、時折の銃声、
立ち起こる悲鳴、ゴーと燃やす音….観客にはその存在が見えないからこそ、
恐ろしさが強調される.

その悪魔の所業が実行される場の壁一つ隣で、何不自由なく暮らす一家の様子.
沢山の使用人はおそらく現地ポーランド人なのであろう、妻ヘートヴィヒ・ヘスの
人を人とも思えない罵倒する姿はこの上なくあさましい.庭やプールで遊ぶ5人の
子供たちには罪はない.ただ、毎朝学校に行く時、家族に向けて右手を高く上げて
「ハイルヒットラー」を叫ぶのには嫌悪感を感ずる.


映画「関心領域」-2


主人公ルドルフは所長ゆえ、所内で行われている事は周知している.それどころか
いかに効率よくユダヤ人を殺す手段を考える、昇進願望の強い男だ.一度子供たちと
川で遊んでいる際に、川に流れてきた或るモノを見て、血相を変えて子供たちを
風呂で完璧に洗わせて.自らも清める姿が描かれ、自らが行っている事が汚らわしい
と思っているのか、流れてきたモノのユダヤ人を汚らわしいと心底思いこんでいる
のかは分からない.

夫は実行犯なのだが、その妻ヘートヴィヒは隣の所内で行われている事を一切
無視している.ユダヤ人から搾取した毛皮や宝石を纏うことをいとわないし、庭の
手入れや家のでの暮らしをまったく享受しきっている.


映画「関心領域」-3


夫にベルリン移籍の栄転話しが舞い込んでも、自分と家族は今の家に残ると
主張する.職業軍人ゆえの良く有る移動話しなのだが、悪行の限りが行われる
収容所の隣に住み続けたいと思うその神経の麻痺には驚いてしまう.

単身赴任に追い込まれた夫ルドルフが浮気?とも思えるポーランド女性あるいは
ユダヤ女性との性行為を想像させるシーンがあった.異常に思えたのは、事後
自身の性器を磨くが如く洗い流すシーン.その後、階段でルドルフが吐き気を催す
場面が何かを示唆しているようなのだが判断に苦しむ.

大量殺戮を指揮した贖罪の気持ちがあったのか? あるいは、人間とも思わぬ
ユダヤ人と交わってしまったからか?ルドルフによって殺害された人たちから
時空を超えて呪われたのか? とても不思議な場面であった.

その後、現代のアウシュビッツ収容所が映される.そこのスタッフの人々が掃除
をしているシーン、そこで映し出されるのは残された大量の靴やさびれた衣服.
観客たちの関心領域だとで思っているのだろうか、押しつけがましいと感じた.

本作の怖さは壁を隔てた2つの空間の対比よりも、むしろ、妻ヘートヴィヒに
見られるような、無関心を装うことがいかに残酷で、戦争を放置することに
なるかという事実にあると感じた.

そんな中にも、それらに抗う姿も描かれてはいた.映画の後半に挟まれる
赤外線カメラの少女の行動.最初は何をしているのかはよくわからないのだけど、
収容所内で何かをそっと置いているように見える.これが後に実話としてされている
「命の危険を冒して囚人に食べ物を届けた少女」の映像だと判る.

もう一つは、ヘートヴィヒの母の行動.わざわざドイツ本国からアウツシュビッツ
までやって来て、実の娘がエリート軍人に嫁いで、子どもたちといい暮らしを
していることに満足しているようすを見せる.

が、「あの塀の中にあの方たちは居るのね」と親しかったユダヤ人家族の名をあげる.
また、塀のむこうからのただならぬ気配におびえ泣き止まない末の孫の泣き声に
心を痛め、娘にはなにも告げずに、夜のうちに姿を消してしまう.

出来る範囲内での.起きている事への抗議の姿は尊い.ポーランド人に於いても、
ドイツ人異に於いてもだ. 大勢に屈せず、権力の横暴に抗う姿勢は尊い.
この部分は見習わなければならない.

この作品の製作ポリシーは、露骨なシーンは見せない、音だけ聞いて、後は観客
が脳内で補完してくれという事なのであろう.解釈は観客に委ねられているのだ.
とんでもなくシュールな造りの作品.その不気味さに慄くとともに、映画的な発想
の斬新さには感服してしまう.

たんと味あわせてもらった気分、ラストエンディングロールの音楽は、刺激的な
バイオリンの音が人の悲鳴に聞こえてしまい、吐き気を催してしまった.
普段にも増してエンドロール中に退出する顧客が多かった….

映画「ワイルド・リベンジ」(DVD)…二大スターの存在感あり.


映画「ワイルド・リベンジ」-1
原題:Savage Salvation 製作年:2022年
製作国:アメリカ 上映時間:101分



レンタル屋の新作棚で、ロバート・デ.ニーロとジョン・マルコビッチ
の名前だけで吊られて借りて来てしまったのは米製のアクションもの.
本年度累積117本目の鑑賞.
————————————————————

ジョン・ヒューストン監督の孫ジャック・ヒューストンが主演を務め、
ロバート・デ・ニーロら名優が脇を固める.薬に溺れるカップルの悲劇
をじっくり描き、後半のリベンジアクションでその鬱憤をスカッと晴らす.

薬物に溺れてすさんだ生活を送っていたシェルビーとルビーは、婚約
をきっかけにお互い薬物と縁を切ろうと決意する.しかし結婚を控えた
ある日、売人にそそのかされたルビーが再び薬物に手を出し、
命を落としてしまう.

怒りに燃えるシェルビーは復讐を決意し、売人を自らの手で殺害.
一方、息子を薬物で失った過去を持ち、以前からシェルビーたちを
気にかけていた保安官チャーチは、シェルビーのさらなる凶行を
阻止しようとする.

以上は〈Firmarks〉から転載.
—————————————————————


チャーチ:ロバート・デ・ニーロは悲しい過去を持つ保安官.薬物に侵される
若者を救うため、日々奮闘していた. チャーチと旧知の仲のシェルビー・
ジョン:ジャック・ヒューストンとルビー・レッド:ウィラ・フィッツジェラルドも
薬によって堕落した生活を送っていたが、婚約をきっかけに薬物と縁を
切ることを決意.

冒頭は二人の壮絶な薬断ちの様子を描く.禁断症状の凄さをまざまざと
見せつけられる.2〜3週間もすると、二人の顔付きまで異なるほど、快復
が見られるようになる.峠は過ぎたと見るべきであろう.

再出発した二人を、義理の兄であるピーター:ジョン・マルコヴィッチも
心から祝福していた.しかし薬の売人たちは容赦なく二人に接触してくる.
ルビーは結婚を目前にして、断ち切ったはずの薬物によって命を落として
しまう.

彼女が再びそれを手にした背景には、巨大な麻薬密売組織の闇が
隠されていた.シェルビーは真実を突き止め、彼女の無念を晴らすべく、
止まることを知らない復讐の鬼と化す.


映画「ワイルド・リベンジ」-3


シェルビーは「マスタング」の異名を取るタフガイ.「俺にはこれから冒すべき
罪がある」の名言を吐いて、瞬く間にルビーに薬を渡した売人を、釘打ち銃で
撃ち殺してしまう.もちろん薬の元締めの居場所を聞いてからだ.

次々と、薬の流れに従って黒幕に近づいていくシェルビー. それをなんとか
食い止めようと追う保安官チャーチ. 追いつ追われつを繰り返し、シェルビー
がたどり着いた薬の総元締めはなんと…!!


映画「ワイルド・リベンジ」-5


意外な最悪人が身近に居たという落とし穴に唖然….
チャーチと三つ巴のラストの結末は??

バイオレンスもしっかりとしているし、二大スターがちゃんとした役柄を
演じていて好感.B級にしては上出来な部類かも.

.

映画「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章」…伏線の回収は見事!


映画「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章」 -5
製作年:2024年 製作国:日本 上映時間:130分



前章は公開後ずいぶん経ってから観ちゃったのだけど、
後章は公開初日にすかさず観賞してしまった.
本年度累積116本目は日本製アニメーションの秀作.
————————————————————

地球外からの侵略者が日常に溶け込んだ世界で青春を謳歌する少女たち
を描いた浅野いにお原作の同名コミックをアニメーション映画化した2部作の後編.

入試に合格して亜衣や凛と同じ大学に通い始めた門出と凰蘭は、竹本ふたばや
田井沼マコトという新しい友だちもでき、尾城先輩が会長を務めるオカルト研究会
に入ることに.

一方、宇宙からの侵略者は東京各地で目撃され、自衛隊が駆除活動を繰り
広げていた.上空の母艦は傾いて煙が立ち上り、政府転覆を狙って侵略者
狩りを続ける過激派グループ「青共闘」も暗躍.世界の終わりに向かって
カウントダウンが始まるなか、凰蘭は不思議な少年・大葉に再び遭遇する.

音楽ユニット「YOASOBI」のボーカル・ikuraとしても活動するシンガーソング
ライターの幾田りらが門出、歌手・タレントとして活躍するあのが凰蘭の声を
それぞれ演じるほか、浅野いにお原作の映画「零落」の監督を務めた俳優の
竹中直人が“侵略者の議長役”の声優として友情出演.

以上は《映画.COM》から転載.
———————————————————


とりもなおさず、前章で散りばめられた伏線は徐々に解決していった.
10代の門出と凰蘭の過激な行動は門出の自殺で終焉を迎えたように
見えたが、そこから凰蘭は侵略者?…宇宙人の力を借りて別次元へ
転移すること選択してしまったよう.

そこで、前章の大半を占める高校生生活場面が成立するのだが、その
選択してしまった世界が、まさか東京上空に陣取る母船が暴走破壊する
未来であったとは知るよしも無いのであった.


映画「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章」 -3


政府は母艦破壊によって東京に降り注いできた侵略者を駆除し、人々を
安堵させようと試みる.その行いを非人道的だと批判する学生団体と、
更に侵略者たちを無差別に殺戮を続ける過激派グループが存在する.
そして、大学生になって何気ない日常を送るおんたん達ち…門出と凰蘭.


映画「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章」 -2


謎が多い前章に比し、後章は地球崩壊への道筋全ての要素を全回収
しようとするのだが、実際にはまだまだ描けていないなと感じるところもある.
が、本質はそこではない.

この映画は、地球滅亡を描いたSFものでも、現代社会に一石を投じる
社会風刺映画でもない.主人公の小山門出と中山凰蘭という、何処にでも
いるフツーの少女2人が、恋について話して、友達と遊んで、時に上空に
位置する母艦の影響で不思議なことが起こるけど、仲良く慎ましく日々を
過ごす、何気ない青春謳歌と位置づけたい.

おんたんが門出に言う.“僕は君の絶対だから”、“君は僕の絶対だから”.
この言葉が、この作品一番の伝えたいこと.君が世界中の敵になろうとも、
僕は君の味方であり続ける. 前後合わせて4時間かけた壮大なSFの後の、
このド直球な愛のメッセージが身に浸みていく.

おんたんは、門出が死なない平行世界へ移ることを選んだ.正確には、
自分が門出を守ることで、門出が暴走し、跳んで死んでしまわない世界を
作ることを決意する.たとえその世界が人類が滅びる世界であったとしても.

何があっても変わらない、門出とおんたんの強い友情と、絶対に味方で
いてくれるおんたん兄の存在.それでも必ず、君を守ってみせる.
そうとするなら、ラストの結末も納得がいくというもの.


映画「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章」 -1


原作は未読ゆえ、ラストの結末において原作とこの映画版の差は判らない.
とにもかくにも、滅亡したのは東京地区だけだったよう.おんたんたちは、
大学のオカルト研究会の合宿で東海地区に来ていた為、みな生き延びる.

母船破壊を阻止しようとした先行調査宇宙人の大葉も生き残り、オリンピック
スタジアムに隠された秘密の飛行物体で政府も生き延びたよう.
作ろうと思えば、続編も可能か??

興味深い落とし所にしたものだ.

映画「極限境界線」(DVD)…拉致被害者へ同情ゼロ.


映画「極限境界線」(DVD) -5
原題:The Point Men 製作年:2023年
製作国:韓国 上映時間:109分


レンタル屋の韓国作品棚から借り出してみたのは、実話を元にした
サスペンス作品.本年度累積115本目の鑑賞.
————————————————————

ファン・ジョンミンとヒョンビンが初共演し、タリバンの人質となった韓国人
を救出するためアフガニスタンへ飛んだ外交官と現地の工作員が繰り広
げる決死の交渉作戦の行方を、実在の事件をもとに描いたサスペンスドラマ.

2007年.アフガニスタンの砂漠で韓国人23名がタリバンに拉致される事件
が起きた.タリバンは24時間以内に韓国軍の撤退と収監中の仲間23名の
釈放を要求.

韓国政府が交渉役として現地に派遣したエリート外交官チョン・ジェホは、
アフガニスタン外務省に釈放を要請するが拒絶されてしまう.情報員も
動き出し、工作員パク・デシクがアフガニスタンのフィクサーと交渉するも
決裂.チョンとパクは人質を救うため、不本意ながらも手を組むことになるが….

外交官チョンをファン・ジョンミン、工作員パクをヒョンビンが演じる.
監督は「提報者 ES細胞捏造事件」のイム・スルレ.

以上は《映画.COM》からの転載.
——————————————————————


最初は23人と運転手が乗るバス車内からのシーンで始まる.
走るはアフガニスタンの山岳地方、うねった未舗装をくねくねと
進む.バスの中ではリーダーが率先して祈りをしている.全員が
“エホバの証人”の信者、なんとイスラムのアフガニスタンに
訪問宣教だという.瞬く間にタリバンに急襲され運転手は射殺、
23人全員が囚われの身になる.

この時点でもう拉致された人質には共感とか可哀想という気持ちは
吹っ飛んでしまう.なんで911以降戦争状態のアフガニスタンに、
しかも敬虔なイスラム教の地にキリスト教亜種の“エホバの証人”
の教宣なのだろう??

北京・パキスタン経由でアフガニスタンへ入国しているので、
韓国政府の抑止も効かなかったよう.もう自殺願望者としか
思えないのだが、後に23人全員出国前に遺書をかいていたとか.

もうこんな奴ら助ける意味や意義が感じられず、その後の主人公
たちの奮闘もなにか虚しく無意味に感じてしまう.被害者に全く
感情移入出来ない作りのこの映画、失敗だと思う.

されど、韓国民であればこそ…と大義に基づき外交官チョン:
ファン・ジョンミン、秘密諜報工作員パク:ヒョンビンは全力を
あげてアフガニスタン政府とタリバン政権へ根強く交渉していく.


映画「極限境界線」(DVD) -1


拉致された韓国人たちはタリバンの言うままに、“助けてくれ”だの、
“韓国に帰りたい”とVideoメッセージを送ってくる.そのまま頭を
打ち抜いてくれれば良いのに、と不謹慎な観客の副長(苦笑).

日本でなら「自己責任」の話題で持ちきりになるだろうけど、
韓国メディアは、気にもせず拉致されたのは布教活動の為と
盛大に放送してしまう.どうせタリバンにはわかりっこないと
うそぶく韓国メディアもそうとうなマスゴミ化している.

案の定、アルジャジーラを通じて訳されて放送され、タリバンは尚
一層に反目してくる.一方韓国外務側にも、人質解放の手伝いと称して
詐欺師一派が近づいてくる.

大金を渡してから、詐欺と気付き、秘密諜報工作員パク:ヒョンビンが
その車を追跡するシーンが本作唯一のアクションシーン.最後はバイクに
乗って、その追跡車に乗り移るシーンまで見せてくれる.これには興奮.


映画「極限境界線」(DVD) -4


パクの大活躍により、大金だけは取り戻したのに、グルだろうと疑われる
パクは浮かばれないのだが、陰に日向に外交官チョン:ファン・ジョンミンの
手助けをしようとするのが、単なるバディ感を超えてみせるのがキモ.

外交官チョン:ファン・ジョンミンは任務としての「交渉人」の枠を、一個人の
怒りや心情が突き破ってしまおうとするのだが、国や担当省庁や上役の
面子や掟に押し込められてしまい最後には韓国帰国まで申し渡される.
男のやるせ無さが強調されていたが、急転直下韓国大統領からの電話で、
タリバンとの対面交渉を任される.

ラストは米軍の空爆を後ろ盾にした力攻めでタリバンの将軍と対面勝負.
タリバンの要求が勾留中の仲間の解放から身代金に変わったことで、
揺れを読んだファン・ジョンミンが身代金の額を値切って将軍を追い
詰めたのは、交渉に長けた外交官の手腕を見せつけるものであった.

どうせ事実を元にフィクション化するのであるから、拉致される被害者の
設定も変えれば良かったのではと思った.エンタメと史実の間を彷徨う
韓国映画の欠点が露出してしまった感がある.

私事だが、勤めていた会社の先輩が老いて結婚した妻の影響で、
“エホバの証人”に入教してしまい、その奇異な教条に縛られた生活
の為に、会社関係の知己は全て排除された経験がある.

その時も奇異な宗教と思っていたが、昨今のマスゴミの取り上げ方を
見ると、旧統一教会に勝るとも劣らない活動内容があり、今改めて
近寄りたくない人々…の感を強めている.
まぁ宗教の自由はあるのですが.

映画「ありふれた教室」…かくも教師は難しく、哀れだ.


映画「ありふれた教室」-1
原題:Das Lehrerzimmer 製作年:2022年
製作国:ドイツ 上映時間:99分



予告を観て興味をもった作品.柏キネマ旬報シアターで封切りされた
独作品を本年度累積115本目に観賞.
————————————————————————

ある中学校で発生した小さな事件が予想もつかない方向へと進み、
校内の秩序が崩壊していく様を、ひとりの新任教師の目を通して
描いたサスペンススリラー.
ドイツの新鋭監督イルケル・チャタクの長編4作目.

仕事熱心で正義感の強い若手教師のカーラは、新たに赴任した中学校
で1年生のクラスを受け持ち、同僚や生徒の信頼を得ていく.

ある時、校内で盗難事件が相次ぎ、カーラの教え子が犯人として疑われる.
校長らの強引な調査に反発したカーラは、独自に犯人捜しを開始.
ひそかに職員室の様子を撮影した映像に、ある人物が盗みを働く瞬間が
収められていた.しかし、盗難事件をめぐるカーラや学校側の対応は、
やがて保護者の批判や生徒の反発、同僚教師との対立といった事態を
招いてしまう.
後戻りのできないカーラは、次第に孤立無援の窮地に追い込まれていく.

主演は映画「白いリボン」やテレビシリーズ「THE SWARM ザ・スウォーム」
で活躍するレオニー・ベネシュ.
ドイツのアカデミー賞にあたるドイツ映画賞で作品賞はじめ5部門を受賞.
第96回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされた.

以上は《映画.COM》から転載.
—————————————————————


ドイツの義務教育は9年間.6歳から4年間の初等教育を施す基礎学校
で学んだ後、中等教育へと進む.又は高校まで通える一貫校へ進む.
一貫校を選べない多くの子どもたちは10歳にして選択せねばならない.

舞台は、10歳で進路を選択した15歳までの生徒たちが通う中学校.
主人公は新任教師のカーラ:レオニー・ベネシュ.聡明で快活.
ポーランド系ドイツ人の彼女は、生徒との交流を最優先に精力的に
授業を行っている.


映画「ありふれた教室」-2


生徒は多人種混在で個性も豊か、思ったよりも真面目な様子で
いわゆる「学級崩壊」というような状態では決して無い.むしろ問題と
思えるのは学校側の「不寛容方式」に思える.長い間でつちかった
考え方では有るのだろうが、いかにもドイツの学校らしい考え方だ.

その「不寛容」がゆえに校内で多発する盗難事件に業を煮やした
一部の教師たちが生徒を集め、最近お金を持っている子に思い
あたらないかと問い詰めたり、抜き打ちの持ち物検査を強行する.

あるトルコ人の子供が高額の持ち金を所持していたが、それは
親類の子に贈り物を買うために親が持たせたものであった.
そんな生徒への「不寛容」な仕打ちに反感をもつ主人公カーラは
別な方法を思いつき、実行してしまう.

それは、職員室内に財布を入れた上着を残し、PCのカメラで録画
しておくという手段.こともあろうかそのカメラに学校のある事務員の
衣服の一部が映っていた….

自席のノートパソコンのカメラで盗難の現場を押さえたカーラは、
穏便に事を収めようとしたが、その事務員は仮にも職員室で盗撮する
行為が信じられないと猛然と抗議して、カーラの教え子である息子を
引き連れて家へ帰ってしまう.

徐々に問題が大きくなる様がとてもスリリングに描かれていく.
一つひとつの選択が大きく間違っているわけではないが、ボタンの
かけ違いが物事の歪みをどんどん大きくしていく.犯人が誰かという
サスペンスではなく、カーラが追いつめられていくスリラーと化していく.

確定的な証拠もないまま、疑わしい人物を犯人扱いしてしまったカーラ
や校長の対応は、相手に良心があり、簡単に自白するだろうと妄信した
性善説に基づくもので、「不寛容」を謳う割にはお粗末と感じられる.

閉塞的な教室で声高な噂が暴走を始めるや保護者たちがモンスター
ペアレンツに豹変し、生徒たちもまたモンスターと化す.12、13歳とも
なると、学生たちを動員する術も持っているのだ.本作では学校新聞が
マスゴミと同じ効果を見せる.それにそそのかされ、生徒たちまでも敵に
回してしまうカーラと校長含む教師陣.


映画「ありふれた教室」-3


生徒たちとカーラの対話においても、カーラがポーランド人である事への
出自をめぐるレイシズムが無意識のバイアスがかかっていると感じた.
もはやカーラの言葉には誰も耳を貸さない.予想だにしない事態に
呑み込まれ、孤立無援の窮地に追い込まれていくカーラを演技する
レオニー・ベネッシュには感心もするし、その役柄に同情さえしてしまう.

挙げ句の果て、容疑者の事務員の息子に証拠のPCを奪われ、河に
投げ込まれてしまう.その事で休学処置を学校から言い渡されても、
その息子は学校に来てしまう.

そんな生徒に最後まで寄り添うとするカーラの姿は印象的であるのだが、
ラストは警官によってその生徒が学校から排除されるシーンで終わる.

原題「Das Lehrerzimmer」は職員室を指す.事件が職員室で起きているから.
邦題「ありふれた教室」は、ドイツが舞台ではあるものの、日本でも同じ
ではないか、という問題提起に取れる.

昔はなりたい職業の上位に学校の先生が入っていた気がする.
今や一部の志ある若者しか目指さない過酷な職業という印象だ.
学級崩壊、コンプライアンスの厳しさ、多大な業務量、そして
モンスターペアレンツへの対応.どれもつらいものであろう.
心を病んでしまう教員が多いのも納得してしまう.

国の根幹を成す教育という大切な現場が、こんな状況であることは
憂うべき事なのであろう.だが何をすれば良くなるのか、解があるとは
思えないのは、ドイツだけではない、日本も同じであろう.

映画「Virginia ヴァージニア」(DVD)…少女の死の耽美に酔う.


映画「Virginia ヴァージニア」(DVD)-1
原題:Twixt 製作年:2011年
製作国:アメリカ 上映時間:88分



レンタル屋の旧作棚からコッポラ監督の作品をチョイス.
本年度累積113本目は名監督によるゴシックホラー作品.
——————————————————————

フランシス・フォード・コッポラ監督が、推理小説の大家エドガー・
アラン・ポーをモチーフに描くゴシックミステリー.

小説家の男が呪われた街を訪れる数日前、身元不明の少女が
胸に杭を打たれ殺されていた.小説家は、謎の少女「V.」や
エドガー・アラン・ポーの幻影に導かれながら、現在と過去に
起こった事件をひも解いていく.
しかし、その先には思いがけない結末が待ち受けていた.

出演はバル・キルマー、エル・ファニング、トム・ウェイツら.

以上は《映画.COM》から転載.
——————————————————————


13年前の画像とは思えない鮮明さと美しい映像が先ず印象的.
モノクロ貴重ながらも効果的なスポットカラーが素晴らしい印象.
田舎町のセット撮影なのに、やたら雰囲気があるのがいかにも
コッポラらしいと.

主役の小説家にバル・キルマー、町の保安官にブルース・ダーン、
謎の少女“V”にエル・ファニング、幻影で現れるエドガー・アラン・ポー
にベン・チャプリンとくせ者ぞろいのキャスティング.

原題“Twixt” は betweenの古い同義語らしい.思えば本作は現実と
夢の狭間を行ったり来たりする内容をもつ.
主人公のオカルト作家ボルティモア:ヴァル・キルマーはが、この奇妙な町
に辿り着いた時点、この舞台(凄惨な事件が起きた過去を持つ)に立った
時点で、現世から隔離されていると感じた.


映画「Virginia ヴァージニア」(DVD)-2


この町で起きている事象は全て現実と夢の地続きであり、過去と現在が
同時進行し、リアルとファンタジーに境界が無いように見える.
幼くあどけない少女、水先案内人“V”:エル・ファニングは、浮世離れした、
怖いくらいの美しさ.白いコルセットとシフォンドレスのロリータ・ファッションに
透き通るような白い肌が、より幻想的な雰囲気を醸し出す.


映画「Virginia ヴァージニア」(DVD)-3


邦題“ヴァージニア”は何を指す? エル・ファニング演ずる“V”の意味は?
作家ボルティモアを先導する亡霊のエドガー・アラン・ポーの妻の名が
“ヴァージニア”.ポーは従妹ヴァージニアが14歳の時に彼女と結婚.
その約10年後、彼女は肺を患って死んだ.

劇中では、過去の世界で教会に幽閉されている子どもたちの1人として
“ヴァージニア”が存在する.主人公ボルティモアが罪の意識に苛まれ
続ける娘として湖で事故死した“ヴィッキー”もまた“V”である、.
そして湖の対岸側に居ると言われる“バンパイア”もまた“V”である.

通じて感じられるのは“少女の死”.それは限りなく美化されている.
登場人物にそれぞれの“少女”が存在する.
彼女たちは美しいものの象徴なのか、真実そのものなのか、
儚い青春というだけなのか?
ポーの亡霊は語る.「死が最も美に近付く瞬間とは? 美しい娘の死がそれだ」

テーマは在るかも知れないし、無いかも知れない.
死に逝く美に魅せられた作家たち.
不可思議で、不気味で、だがユーモラスな、夢とも現実ともつかない世界.

この映画の耽美に惹きこまれてやまない.夢幻の世界から目が離せなくなり、
絶対に観ることを止められなくなる自分に気がつく.
名匠による映画の魅力の提示、しかと受け止めた感がある.

.

今週のランチ事情(2024年第21週)



徐々に夏日が増えてきた5月.
そんなの中でのランチ状況を以下に.

今回も先週の土曜からの記録.
土日月火木は内食、水金は外食.

-----------------

土曜は自宅で内食.

パスタを茹でた.

“アスパラミートソースパスタとポテトサラダ”


ランチ20240518-1


紫玉ネギとアスパラガスを
オリーブオイルで炒めて、
塩胡椒で味付け.
6分茹でたdeccheco#11を投入.

ソースは市販ママー製.
温玉を乗せて.

パルメザンチーズとパセリを
たっぷり掛けて.

デザートはヨーカドー製の
“ロールケーキと苺”


ランチ20240518-2


エスプレッソを合わせて.

合わせて約840KCal、材料費380円.

――――――――――

日曜も自宅で内食.

西友のPBブランドの
レトルトカレーを温めた.

ランチ20240519-3

一番辛めのバターチキンカレー.

“カレーとポテトトマトサラダ”


ランチ20240519-1


ご飯は十穀米を炊いてみた.
辛いカレーに良く合う.

自家製ポテトサラダと
竜ヶ崎製ファーストトマトを
ふんだんに配して.
ドレッシングはキューピーの
ペイザンヌドレッシングで.

食後のデザートは出始めた
“カットスイカ”.


ランチ20240519-2


十分に甘くて美味しい.

合わせて約950Kcal、材料費498円也.

――――――――――――――

月曜も自宅で内食.

あいもかわらず中国製の
冷凍安物うなぎを温めた.

“鰻飯と新じゃが甘辛煮、そして長イモのわさび漬け”


ランチ20250520-1


ご飯は白米150g、
鰻はチンしてからオーブントースターで
4分間ベイクしてみる.
タレ、粉山椒をたっぷり掛けて.

冷凍しておいた新じゃがと
朝作った長芋のわさび漬けで.
わさびの香りが食欲を誘う!!

松茸のお吸い物はインスタント.

デザートは、鹿児島産の
“甘夏”


ランチ20240520-2


甘く、夏の訪れを感じさせる
美味しさ… ♪.

合わせて870KCal、材料費420円也.

-------------------

火曜も自宅で内食.

北海道製の袋麺
ラーメンを作った.


ランチ20240521-1


「月見軒」の醤油ラーメン.

“もやしたっぷりの醤油ラーメン”


ランチ20240521-2


モヤシに長ネギ、シメジ、ジャコ天
を加えて胡麻油で炒める.塩胡椒で味付け.

藤原製麺製の乾麺は4分半茹で.
温玉とチャーシュー、コーンを乗せて.

きちんとした醤油スープはコクが
あって、味わい深い…♪

デザートはオーストラリア産の
“レッド・キィウイ”


ランチ20240521-3


酸味と甘みのマッチングが美味しい.

合わせて約720KCal、材料費380円也.

-------------------

水曜は出先で外食.

映画館へ行ったついでの
柏の「Teshi」にて.

“しょうが焼きとチキンカツ定食”


ランチ20240522-1


定番の定食メニュウ.
ボリュームたっぷりなのだ.
ご飯は半ライス、100g ー50円引きだね.

漬け物、中華スープ付き.

プライスレスのソフトドリンク
は、ホットのブラック珈琲.


ランチ20240522-2


約850KCal、980円也.


―――――――――――――――


木曜は自宅で内食.

Web健康記事のレシピで
作ってみた.

“長芋のさっぱり豚肉ロール”


ランチ20240523-1


長イモにもはまってしまった(笑).
長イモと梅肉と大葉を豚ロース
で巻いて焼いたもの.

つけ合わせはファーストトマトの
バジル・チーズ・ドレッシング掛け.

出汁巻き玉子と長イモのわさび漬け
も付けて ♪

ご飯はグリンピース炊き込みご飯.
味噌汁は、ワカメのインスタント.

デザートは、ヨーカドーで購入の
“クリーム・ロール・ケーキ”


ランチ20240523-2


エスプレッソを合わせて.

合わせて約860KCal、材料費380円.

―――――――――――――――


金曜は出先で外食.

朝から循環器の定期健診.
無事終わって映画館に向かう
途中の手打ち蕎麦「野麦」にて.

“日替わり定食”


ランチ20240524


タヌキ蕎麦とおかず(温玉に煮物)
とご飯のセット、炭水化物ばかりだね(笑).

タヌキ蕎麦はコシがあって、
香りも高い逸品.

ご飯は小盛、100g.
漬け物付き.

約850KCal、1050円也.


――――――――――――――――


今週もバラエティに富んだランチ.

体重は横ばい.
来週も頑張るぞぉ!!

今週もご馳走様.



.

映画「オマージュ」(DVD)…これは女性による映画愛の表現.


映画「オマージュ」(DVD)-5
原題:Hommage 製作年:2021年
製作国:韓国 上映時間:108分

ちょい前の作品なれど、昨年春の日本公開だった作品.埋もれていた名品を
探し出した気分.本年度累積112本目の観賞は映画愛に溢れた韓国作品.
———————————————————————

映画の修復プロジェクトに携わることになった女性映画監督が、フィルムの
修復作業を通して自分の人生と向き合い、新たな一歩を踏み出す姿を
描いた韓国の人間ドラマ.

ヒット作に恵まれず、新作を撮る目処が立たない映画監督の女性ジワンは、
60年代に活動した女性監督ホン・ジェウォンが残した映画「女判事」の
修復プロジェクトの仕事を引き受ける.

作業を進めているとフィルムの一部が失われていることがわかり、ジワンは
ホン監督の家族や関係者を訪ね、失われたフィルムの真相を探っていく.
その過程で彼女は、今よりもずっと女性が活躍することが困難だった時代の
真実を知り、フィルムの修復が進むにつれて自分自身の人生も見つめ
直していくことになる.

主人公ジワン役は、「パラサイト 半地下の家族」で高台の豪邸に暮らす
社長一家の家政婦を演じたイ・ジョンウン.共演に「あなたの顔の前に」の
クォン・ヘヒョ、「愛の不時着」のタン・ジュンサンら.
2021年・第34回東京国際映画祭コンペティション部門出品.

i以上は《映画.COM》から転載.
————————————————————————-


まぁ、華のないヒロインだこと(笑).「パラサイト 半地下の家族」(2019)で、
高台の豪邸の社長一家の家政婦を演じたイ・ジョンウンの初主演作品.

彼女が演じるのは、映画監督としてのキャリアも、妻、母親としても中途
半端なジワン.監督作品の上映館は閑古鳥が鳴き、息子にはつまらない、
監督を辞めればと言われてしまうほど.


映画「オマージュ」(DVD)-1


次回作を撮る目途も立たず、生活費にも困りはじめた時、アルバイトの話
が舞い込むのだが、それは1960年代に韓国で活動した女性映画監督
ホン・ジェウォンが残した映画の修復だった.

映画のタイトルは「女判事」.モデルは韓国初の女性判事.監督は韓国初
の女性映画監督:ホン・ジェウォン.渡されたフィルムノ中盤以降音がない.
修復の手がかりを求め、まるでそのジェウォン監督に導かれるように、
ジワンは「女判事」に関わった人々に会いに行く….

本作の特徴は、物語や登場人物などが二重三重の構造になっていること.
現代の女性監督が60年代の女性監督が手掛けた韓国初の女性判事
の映画の修復を行うという設定であるし、本作自体ののシン・スウォン
監督も女性である.キーポイントとなるのは“女性”であるのだ.

3作撮ったものの、鳴かず飛ばずのジワン監督.精神的にも落ち込み、
肉体的にも子宮筋腫が肥大していて緊急手術の目にも.
そんな所に持ち込まれた韓国初の女性監督が撮ったという作品の
修復.しかもその内容は韓国初の女性判事を扱った内容.

近頃の企業や社会での女性の地位評価の浸透度の国別結果が
報道されたが、先進国の中では日本はビリから2番目であった.
実はビリは韓国…日本も酷いがそれ以下に韓国も男尊女卑の
社会であるのだ.

そんな社会の風潮の中で、葛藤する女性“監督”や女性“判事”が
描かれる.ジワン監督はかつての韓国初の女性監督:ホン・ジェウォン
の足取りを追うが、それはやはり女性としての苦闘の歴史を遡る
ことになる.

行きつけの喫茶店で脚本を書きなぐって苦悩する姿や、一緒に
働いたフィルム編集者の言動から、当時の女性蔑視の中で、
もがくホン・ジェウォン監督の姿が判ってくる.

後半になると、ジワンの妄想なのだけどトレンチコートを着て、帽子を
深々と被ったホン・ジェウォン監督が登場する.さびしくタバコを吸って
いたり、街角にハンディタイプのカメラを向けたり…印象的なシーンだ.

映画「女判事」の失われたフィルムを探して訪れた廃墟寸前の映画館
のシーンが素敵だった.電気は止められ予備電源で映写機を駆動して
ピンク映画を上映して営業していたのだ.

当時は映画館がフィルム買取する仕組みであったよう.ジワンは
「女判事」のフィルムを偶然発見する.これを朽ち果てそうな映画館
で見るシーンは素晴らしいものであった.色んな意味での映画愛の
発露のシーンであった.


映画「オマージュ」(DVD)-3


フィルムはなんと帽子の飾りとしてフィルムが巻き付けられていた….
ホン・ジェウォン監督の元同僚のフィルム編集者に、バラバラのフィルム
をつなぎ合わせてもらい、二人で観るシーンはクライマックスだ.


映画「オマージュ」(DVD)-2


それは、女判事が海岸でタバコを吸うシーン.当時女性がタバコを吸う
というだけで、検閲にかかりカットされたことが判った…失われたフィルム
までが、女性蔑視の証しだったとは…皮肉な結論なのだが、ジワンは
何かしら納得の表情を見せる.


映画「オマージュ」(DVD)-4


そして、ラストシーンは映画祭でちゃんと「女判事」が上映されている
模様で終わる.ジワンはそれなりの決着をみせたのであろう.

本作の脚本も手掛けたスウォン監督は、いつもこれが最後の映画に
なるのではないかと思い悩みながら監督業を続けているそう.
映画を撮ることを諦めないジワンに自身を投影させた感が見え隠れする.

映画は記録であり、なおかつ幻想でもある.いろんな理不尽がありながら、
映画には人を魅了する力がある、その本質の一端を見せてくれる作品.
女性目線の映画愛に溢れる佳作であった.

映画「ミッシング」…石原さとみ大熱演そして狂演.


映画「ミッシング」-1
製作年:2024年 製作国:日本 上映時間:119分



興味有る監督吉田恵輔の新作を観賞.劇場で予告をさんざ見せられたしね.
本年度累積111本目は、重い人間ドラマ.
——————————————————

「空白」「ヒメアノ~ル」の吉田恵輔監督が、石原さとみを主演に迎えて
オリジナル脚本で撮りあげたヒューマンドラマ.幼女失踪事件を軸に、
失ってしまった大切なものを取り戻していく人々の姿をリアルかつ繊細
に描き出す.

沙織里の娘・美羽が突然いなくなった.懸命な捜索も虚しく3カ月が過ぎ、
沙織里は世間の関心が薄れていくことに焦りを感じていた.夫の豊とは
事件に対する温度差からケンカが絶えず、唯一取材を続けてくれる
地元テレビ局の記者・砂田を頼る日々.

そんな中、沙織里が娘の失踪時にアイドルのライブに行っていたことが
知られ、ネット上で育児放棄だと誹謗中傷の標的になってしまう.
世間の好奇の目にさらされ続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、
いつしかメディアが求める“悲劇の母”を演じるように.

一方、砂田は視聴率獲得を狙う局上層部の意向により、沙織里や彼女の
弟・圭吾に対する世間の関心を煽るような取材を命じられてしまう.

愛する娘の失踪により徐々に心を失くしていく沙織里を石原が体当たり
で熱演し、記者・砂田を中村倫也、沙織里の夫・豊を青木崇高、沙織里の
弟・圭吾を森優作が演じる.

以上は《映画.COM》から転載.
————————————————————


第一印象は、ヒロイン石原さとみの大熱演.彼女の代表作となり得る演技、
狂演にも感じられた. 失った娘に対する愛情…自分以外に娘を思っている
人間はいない、という強い想いの行動、感情表現が過激にも思えるよう.

自分が追っかけているバンドのライブに出かけていた際の行方不明事件
ゆえ、その反省?負い目の気持ちを容赦ないWeb民の攻撃に晒され、
切れまくる.

加えて手がかりが得られないまま世間が忘れていくことに焦り、また憤る.
街頭でビラを配り、テレビの取材を受け、必死に情報提供を呼びかける.
自分と同じテンションで娘を案じてくれない夫に、娘を預けたのに目を
離してしまった弟に、移り気なメディアに、無神経で無責任なネット民に、
そしてすべての自分以外の他人に対して牙を剝き、暴言を吐く.

はなから綺麗な女優とは思っていなかった、特に化粧の仕方や顔の角度
で、唇がタラコのように映る瞬間があって気になっていた. ところが本作では
そのタラコ唇顔のオンパレード.ほとんどノーメイクに近いし、映され方に
気にしてないし、吉田恵輔監督も容赦なく女優石原さとみの素顔を晒し
まくる.

周囲にとっては迷惑でしかない存在のような行動もとる.同じ地域で起きた
似たような年齢の女子の誘拐事件に我が子の事情も重ねてしまい、
その子の捜索願いビラまで自費で制作して配るのには、吉田監督らしい
苦笑ネタの挿入であった.


映画「ミッシング」-3


転じて、戸惑いながらもそんな妻に引き回される夫豊を演ずる青木宗高は
落ち着いた演技で観客の同情を一心に集める.従来の不気味さを演ずる
上手さは封じて、落ち着いた演技を見せてくれる.最後半に誹謗中傷を
繰り返すWeb民を訴訟して見せたのは喝采もの、唯一すっきりしたエピで
あった.


映画「ミッシング」-4


地方TV局の記者・砂田:中村倫也が上司の求める視聴率と被害者への
寄り添いを両立できない事への葛藤を延々と最後まで演じ切っていたのも
従来の彼のイメージとは違う演技で好感が持てた.マスゴミの描き方は
他作品と同じようで新規感はないのだが、その在り方に悩む直接関係者
の描き方は視点の変化を感じた.

まぁ暴れ狂うのは一人の役者で十分で、他の役者の落ち着いた演技で
バランスがとれようというもの.結果としてどちらも引き立つのだから.
吉田監督の作品「ヒメアノール」「空白」「犬猿」…の終わり方から、
本作も、行方不明の娘は決して見つからないのだろうと言うことは予想
がついた.案の上の結末は、或る意味予定調和かも.

さて、本作で一皮剥けた石原さとみ、次の作品の役が難しかろうな….


映画「碁盤斬り」…予定調和でも面白い.


映画「碁盤斬り」-6
製作年:2024年 製作国:日本 上映時間:129分



白石和彌監督、草彅剛主役という前情報だけで公開初日に観に行ってしまった.
観たら大好きな清原果耶や斉藤工は出ているはで狂喜乱舞視してしまった.
本年度累積110本目の鑑賞は珍しく時代劇を選んでみた.
———————————————————

「孤狼の血」「凶悪」の白石和彌監督が初めて時代劇のメガホンをとり、
「ミッドナイトスワン」の草なぎ剛を主演に迎えて描いたヒューマンドラマ.
古典落語の演目「柳田格之進」を基に、冤罪事件によって娘と引き裂かれた
男が武士の誇りをかけて復讐に臨む姿を描く.

身に覚えのない罪をきせられたうえに妻も失い、故郷の彦根藩を追われた
浪人の柳田格之進は、娘のお絹とふたり、江戸の貧乏長屋で暮らしていた.
実直な格之進は、かねて嗜む囲碁にもその人柄が表れ、嘘偽りない勝負を
心がけている.

そんなある日、旧知の藩士からかつての冤罪事件の真相を知らされた
格之進とお絹は復讐を決意.
お絹は仇討ち決行のため、自らが犠牲になる道を選ぶが…….



草なぎふんする格之進の娘・お絹を清原果耶が演じるほか、共演には
中川大志、奥野瑛太、音尾琢真、市村正親、斎藤工、小泉今日子、
國村隼ら豪華俳優陣が集結.
「凪待ち」「クライマーズ・ハイ」の加藤正人が脚本を手がけた.

以上は《映画.COM》から転載.
——————————————————————


萬屋源兵衛:國村隼と柳田格之進:草彅剛が碁に興じている時に
紛失した五十両を盗んだと疑われて、娘:清原果耶を吉原に預けて
五十両を工面する…というのが原案の落語の部分らしい.


映画「碁盤斬り」-2


オリジナル脚本はそれに格之進が藩を追い出されてしまったいわれの
パートと仇となる柴田兵庫:斉藤工との確執が追加されていて、きちん
とした物語が形成されていた.

2時間以上の比較的長めの尺なれど、飽きることなくそれぞれの役者の
演技を楽しませてくれた.前半の草彅剛の静の演技はしっとりと落ち着いて
いて好演であった.碁好きの浪人、訳あって藩を追われ江戸の長屋で
娘:清原果耶と二人暮らし.妻は自死してしまったらしい.


映画「碁盤斬り」-1


碁を通じて、両替商萬屋源兵衛:國村隼と知り合いになる.源兵衛は最初は
あこぎな碁の打ち手であったが、格之進の「正々堂々と打つ碁」に感銘を
受け、碁の教えを請う仲になる.悪から善という切り替えも納得させる貫禄の
演技を見せる.


映画「碁盤斬り」-3


娘お絹を演ずる清原果耶は前髪を上げて大奮闘.楚楚とした美人ゆえ、
日本髪も着物も姿勢良く似合っている.父をしかり飛ばす威勢良さも
持ち合わせる良妻賢母系の演技を楽しませてくれる.

敵役の斉藤工は憎々しく、されど藩内での格之進の“正々堂々”な仕事ぶり
の陰で、家禄を落としたり無くしたりで泣いている人々の存在も格之進に
訴える正義感をも訴えてみせる.口から出任せの感もなきにしもあらずだが、
格之進はそれを信じ、斉藤工の首をはねた後、それらへの人々への償いの
行動をとろうとする.


映画「碁盤斬り」-4


碁のルール、仕組みは良く知らないのだが、本作で主人公格之進が打つ碁の
正々堂々さというのはそれなりに表現されている気がした.観る者にそう感じさせる
演出と演技は“本物”を感じさせる.

最後の深川での兵庫と格之進の碁の一騎打ちのシーンは緊迫度マックス、
不利と見た兵庫の一太刀から始まる大格闘のシーンは大迫力であった.
草彅剛の、静から動への演技の切り替えも見事であった.


映画「碁盤斬り」-5


時代劇でも定番のものは嫌い.今上映中の「鬼平犯科帖」なんかその典型.
観る前から結末が見えてしまっているようなドラマは勘弁なのだ.
時代劇と言えども、行く末が見えないアンノウンなドラマが観たいのだ.
本作どうなることかワクワクさせながらも、とどのつまりはハッピーエンド.
こういのが好きなんだなぁ…(笑).

白石和彌監督、結局予定調和なのだけど、うまくまとめたと感心した次第.