映画「グランド・ジャーニー」 (DVD観賞)
原題;Donne-moi des ailes
制作年:2019年 制作国:フランス・ノルウェー合作 上映時間:113分
昨年春のコロナ禍のごたごたで観落したフランス作品をDVDで鑑賞.
本年度累積19本目.投稿が前後してます.
「ベル&セバスチャン」「狩人と犬、最後の旅」のニコラ・バニエ監督が、
ジャック・ペラン監督のドキュメンタリー映画「WATARIDORI」の制作にも
参加した鳥類研究家で気象学者のクリスチャン・ムレクが、息子とともに
実際に挑んだ超軽量飛行機でのノルウェーからフランスまでの旅を映画化.
雁の研究をしている一風変わった気象学者クリスチャンは、超軽量飛行機
を使って絶滅危惧種の渡り鳥に安全な飛行ルートを教えるという、誰もが
呆れるプロジェクトに夢中になっていた.
一方、息子のトマはオンラインゲームに夢中で、電波も届かない大自然の中
で過ごすことに興味はない.しかし、ある出来事をきっかけに父親の無謀な
プロジェクトに協力することとなったトマは、クリスチャンや渡り鳥たちとともに
冒険の旅をスタートさせる.
脚本にもムレク本人が参加している
以上は《映画.COM》から転載.
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北欧・南欧間で渡りをする雁が、環境悪化で従来の渡りのルートが危険に
なったことから絶滅危惧種になる.そこで鳥類研究家のクリスチャンは、
刷り込みの習性を利用して雁のヒナに自分を親だと思い込ませ、超軽量
飛行機で安全なルートを先導して教えることを計画する.
主役たちは3人.一人は気象学者クリスチャンのひとり息子:トマである.
トマは自然豊かな場所にある離婚した父親の家に夏休みに放り込まれる.
つまらなくてうんざりしていたが次第に雁を育てることにハマっていく.
そして父親と雁渡りの手助けの旅に出ることとなる.
もう一つの主役は、ウルトラ・ライト・プレーン.芝刈り機のエンジンに
プロペラを付けたお手製のハングライダー.雁の飛ぶ速度に丁度の
飛行速度をもつ、優れもの.
最後の主役は、12羽の雁たちだ.卵から孵化した時に最初に見た者を
親と刷り込んでしまうらしい.たまたま立ち会ったトマを親と信じ込み、
以降行動を供にする愛すべき鳥たち.
何よりも映像のダイナミックさが素晴らしい.北欧ラップランドから南仏カマルグ
まで、その雄大な景色が刻々と移りゆく様を、超軽量飛行機ごしに望めるのは
何ものにも代えがたい贅沢.惜しむらくは劇場の大画面で観たかった….
雁と供に湖を飛び立つシーンなどは、CG無しのダイレクト映像であろう.
12羽の雁と並んで飛ぶ超軽量飛行機の姿は頼りないのだけど、
雁たちと 支え合って飛んでいるように観えて微笑ましい.
本作の良い部分は鳥だけでなく家族の成長を描いた物語でもあるということ.
親が子へ一方的に飛び方を教えていたかと思えば、子どもはいつしか自力で
飛び上がり、その躍動感あふれる姿に何かを教わるのはむしろ親の方だった
りする.
また少年が冒険を続けることで、それを目撃する人たちのエールの道がSNS
やYoutubeを通じてヨーロッパを縦断するように出来上がっていく.
そんな人間の“繋ぎあい、讃えあう”行動に観ている側も元気がもらえてしまう.
絶滅危惧種の雁の再生と、湿地の保全、そして家族の再生までやり抜いて
しまう脚本なのだけど、気になる部分も多々ある.
この父子は実は けっこうの自己チュー.目的の為にはどんな手を使っても、
の面が見える. 父は務めている博物館の飛行計画の許可が降りない為に
文書偽造の ルール違反を犯してしまうし.ノルウェーに着いてからも、離さない
と約束した雁を離してしまい、雁はすべてノルウェー当局に没収されそうになる.
雁たちを救おうと頑張ってきた純真なトマはそんなことは我慢できない.
超軽量飛行機でガンと飛び立ってしまう.ここからガンとの旅になるのだが、
旅の途中でガソリンを盗んだり、食物を盗んだり…と違法行為し放題….
この少年も父親も二人ともじぶんがやるべきだと感じたらルールを破って
突っ走しってしまう.大切なことのためにならルールを時に破ったっていいんだ
っていう青臭いメッセージが根底に見え隠れする.
結果オーライなら全て許されるというのが私には“否”なのだ.
少しイリーガル過敏症だろうか?(苦笑).
法や決まり事、約束は守って欲しい、切にそう思うのである.
そうは言っても、押しなべて観るなら、家族愛も描かれ、自然との共存、
環境保全というメッセージと共に、思春期の少年がたくましく成長して
ゆく姿も描かれている佳作だ.
なにより画像が美しい.
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