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映画「神と共に 第一章 罪と罰」 (DVD)…スケール、スピードある快作.


映画「神と共に 第一章 罪と罰」-1
原題:Along with the Gods: The Two Worlds 製作年:2018年
製作国:韓国 上映時間:140分



韓流作品棚から選んだのは、隠れた名作?の一環.冒険ファンタジーの種類
だろうか.本年度累積43本目はコミック原作の実写化韓国作品.
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韓国の人気ウェブコミックを実写映画化し、世界的ヒットを記録したファンタジー
アクション2部作の第1章.人間は死ぬと49日間に7つの地獄の裁判を受け
なければならず、すべてを無罪で通った者だけが現世に生まれ変わることが
できる.

ある日、死を迎えた消防士ジャホンの前に、冥界からの使者で地獄の裁判の
弁護と護衛を務めるヘウォンメクとドクチュン、カンニムが現れる.
生前の善行が認められ、19年ぶりの貴人として転生を確実視されるジャホン
だったが、裁判が進むにつれて地獄鬼や怨霊が出現し、冥界が揺らぎはじめる.

冥界の使者カンニムを「お嬢さん」のハ・ジョンウ、ヘウォンメクを「アシュラ」の
チュ・ジフンが演じるほか、共演にも「猟奇的な彼女」のチャ・テヒョン、
「新しき世界」のイ・ジョンジェら豪華キャストが集結.
「ミスターGO!」のキム・ヨンファ監督がメガホンを取る.

以上は《映画.COM》から転載.
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救助活動中に命を落とした消防士ジャホンの:チャ・テヒョンの前に、彼を
弁護するという3人の使者が現れる.彼らが言うには、死者は閻魔大王に
よる七つの裁判を受けねばならず、その結果によって生まれ変わるのか
地獄に落ちるのか決まるのだという.善人であるジャホンは余裕で勝訴
出来ると思われていたのだが、そんな彼が何故か〈地獄鬼〉という怪物
に狙われる…と言う物語.

四十九日で行われる閻魔大王の大岡裁きを法廷劇にする…これはなかなか
フレッシュな発想、韓国コミックが原作だそう.おもしろい設定だし、VFX満載の
映像は、上出来でお金がかかっている印象.


映画「神と共に 第一章 罪と罰」-2


それにしても、死後、極楽(天国)へ行くというストーリーではなく、地獄へ行き
裁判を受け、裁判を通過できたら、生まれ変わることができるというのは、
韓国独特の死後観なのだろうか? それとも原作コミックの創作??

ストーリーに関しても導入から非常に見やすく、何より主人公がイケてない男子で、
いい人過ぎるオーラ全開で始まる.19年ぶりの貴人(生前に善行を積んだ善人)
なので、七つの地獄での裁判(殺人・怠惰・ウソ・不義・裏切り・暴力・天倫)を
楽にパスできるかと思いきや、同僚を見殺しにした罪とか、親を亡くした子への
嘘の手紙とか…一見すると怠惰・ウソの罪かと思われ窮地に立つ事となる.


映画「神と共に 第一章 罪と罰」-4


完全無欠な貴人なんて存在は生きていく上に不可能ではないかと思わせるが、
3人の使者の機転できる抜けることが出来る. ところが、最後の天倫地獄
(親不孝の罪を問う)で、大きく待ったがかかる.

昼夜を問わず働き、人を救ってきたのは何の理由かと問われ、正直に「金のためだ」
と答えてしまう.15年前に病気の母を殺して、弟とも無理心中しようとして履行できず、
その後15年間一度も母親の所に帰っていないという事実も露見する.

その過去の経緯については、母側にも秘密があり、うまく、親子の絆にからめて、
終盤の母と息子の絆が涙をそそる名シーンと繫がっていく.
いかにも儒教の教えが根強い東アジア国家的な展開で超ベタなのだけど、
登場キャラクターたちに涙まで流させてしまうのはやり過ぎであろう.
これはちょっと味付けが甘すぎると思った.

第二章が存在する.今回の主人公ジャホンの弟スホンは今回無念の死を遂げ、
怨霊と化してしまうのだが、3人の使者達が彼に最後の審判を受けさせるという
別仕立ての物語らしい.本作のラストにちょい顔出しするマ・ドンソクに期待して
しまうなぁ.あまり間を空けずに第二章も観賞する予定.

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開館50周年記念展 “ベルナール・ビュフェ 偉才の行方 ”@ベルナール・ビュフェ美術館


ビュフェ美術館20240220-01



ポーラ美術館から約25kmの距離、車で40分の静岡県長泉町のクレマチスの丘へ.
昨年秋からクレマチスガーデンやヴァンジ彫刻庭園美術館は閉館してしまっている.
どうやら借地権をめぐって静岡県とやり合っていたが、引き上げた模様.和食レストラン
やイタリア料理屋も撤退.残ったのは町営の井上靖文学館と、静岡銀行がバックアップ
しているこのベルナール・ビュフェ美術館だけになってしまった.


ビュフェ美術館20240220-02


スタッフを引き取ったのか付属のレストラン「TREEHOUSE」のメニュウがやたら
豪華になったのは嬉しいのだが、人気は一段と減った印象.

——————以下は同館HPから転載———————


ベルナール・ビュフェ(1928-1999)は、黒い輪郭線とモノトーンに近い色づかいで、
1940年代後半に独自のスタイルを確立しました.彼の絵画は、見る人に驚き、不安、
ショックを与えるだけでなく、第二次世界大戦で疲弊したフランス人の心を見事に
映し出していると称賛されました.

ビュフェはピカソに比肩する逸材と評され、その人気と名声は、1950年代末に
ピークを迎えることになります.しかし1960年代になるとビュフェの評価は一変.
俗っぽい題材の選択や、時流に逆行する具象絵画へのこだわりが非難の的となり、
彼はパリの美術界から排除されていきました.

しかし1980年代になると、ビュフェの才能を称賛する声がふたたび聞こえ始めます.
彼の芸術の真価を問い直そうとする動きが出てきたのです.そして2016年、長らく
封印されていた全生涯にわたる回顧展がパリで開催されました。2020年代の今は、
まさに「ビュフェ・リバイバルの時代」となっているのです.

開館50周年を記念する本展では、1940年代から最晩年にいたるビュフェ作品を
通して、20世紀最大のフランス人画家のひとりと言われたビュフェの偉才を再考します.

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極端に少ない観客体制での観賞は至極の環境.たっぷり他人に気兼ねすることなく
作品を堪能出来るのはこの上なく喜ばしい.

今回もの凄くつまらない事だが、ベルナール・ビュフェと私が同じ誕生日であることに
気が付いた(笑). あと、本美術館はビュフェの作品を2000点も所蔵する、本国を
しのぐ屈指のビュフェ専門美術館なのだが、その所蔵数ゆえなかなかお目当ての
作品にめぐり逢うのは至難の業なのだ.

今回、久しぶりに私自身がビュフェと初めてめぐり逢った記念すべき作品が
展示されていた.懐かしさひしひしを味わった.


ビュフェ美術館20240219-03
Bernard Buffe《ピエロの顔》1961年


今をさかのぼる30年前、自宅の近所に「カオル」という名のパティスリーが
出来た.その店の入口にデンと飾ってあったのがこの画のポスターであった.

洋菓子店にしては、インパクトありすぎ(笑). 御主人薫さんの趣味だそう.

全てを見透かすような、笑っていないピエロの顔を正面から描き切っている.
赤黒のバックには細かい引っ掻き傷、金釘流の堂々たる自著と制作年も
正面きっての表現だ.驚くと同時に惹かれた….

当時フランスから帰任したばかりの頃、恥ずかしながら在仏時はビュフェの
名前さえ知らなかった.一時は隆盛を誇った画家だが、私の在仏当時は、
閑古鳥の時期だったのだろうか.

とにかく、この時から私のビュフェ好きは始まった.静岡県に専門の美術館
ベルナール・ブュフェ美術館の存在を知ったのもそのあとすぐだ.
会社の裾野事業所の直ぐ近くであった.


この美術館も創設50周年を迎え、ビュフェの代表作を中心の展示は、その
特徴を知るにはかっこうの展覧会だ.冒頭の《ピエロの顔》が出展されたのも
ビュフェの代表作の一つであるからであろう.

以下にその代表作の幾つかを.


Screenshot_2024-02-21 開館50周年記念展ベルナール・ビュフェ 偉才の行方 ベルナール・ビュフェ美術館 Bernard Buffet Museum
Bernard Buffe《アトリエ》1947年


Screenshot_2024-02-22 開館50周年記念展ベルナール・ビュフェ 偉才の行方 ベルナール・ビュフェ美術館 Bernard Buffet Museum
Bernard Buffe《キリストの十字架からの降架》1948年


Screenshot_2024-02-21 開館50周年記念展ベルナール・ビュフェ 偉才の行方 ベルナール・ビュフェ美術館 Bernard Buffet Museum(1)
Bernard Buffe《ニューヨーク:マンハッタン》1958年


Screenshot_2024-02-21 開館50周年記念展ベルナール・ビュフェ 偉才の行方 ベルナール・ビュフェ美術館 Bernard Buffet Museum(2)
Bernard Buffe《小さいミミズク》1963年


Screenshot_2024-02-21 開館50周年記念展ベルナール・ビュフェ 偉才の行方 ベルナール・ビュフェ美術館 Bernard Buffet Museum(3)
Bernard Buffe《コーヒーポットを頭にのせたピエロ》1995年


Screenshot_2024-02-21 開館50周年記念展ベルナール・ビュフェ 偉才の行方 ベルナール・ビュフェ美術館 Bernard Buffet Museum(4)
Bernard Buffe《相撲:睨み合い》1987年


最後に、ビュフェの静物画が好きな副長の選りすぐりの3作.


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Bernard Buffe《二輪の百合》1955年

ビュフェ美術館20240219-05
Bernard Buffe《赤い花》1964年

ビュフェ美術館20240219-06
Bernard Buffe《青いあじさい》1971年


同展は年内開催ゆえ、もう今年は訪れないかも….
また来年だね.

映画「イノセンツ」(DVD)…秀逸な子供の心理描写と成長譚


映画「イノセンツ」(DVD) -1
原題:De uskyldige 製作年:2021年 上映時間:117分
製作国:ノルウェー・デンマーク・フィンランド・スウェーデン合作 



昨年夏の公開時はあっと言う間に上映が終わってしまい観落とした作品.
口惜しかったのだけど、DVDレンタル化が始まり、早速観賞.
本年度累積42本目の鑑賞は北欧製のスリラー作品.
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退屈な夏休みに不思議な力に目覚めた子どもたちの遊びが、次第に狂気へ
と変わっていく姿を、美しくも不気味に描いたノルウェー製のサイキックスリラー.

ノルウェー郊外の住宅団地.夏休みに友人同士になった4人の子どもたちが、
親たちの目の届かないところで隠れた力に目覚める.子どもたちは近所の庭や
遊び場で新しい力を試すが、やがてその無邪気な遊びが影を落とし、奇妙な
ことが起こりはじめる.

監督は、「わたしは最悪。」でアカデミー脚本賞にノミネートされたエスキル・
フォクト.ヨアキム・トリアー監督の右腕として、同監督の「母の残像」「テルマ」
「わたしは最悪。」で共同脚本を務めてきたフォクトにとって、自身の監督作は
これが2作目となる.
撮影を「アナザーラウンド」「ハートストーン」など北欧映画の話題作を多数
手がけるシュトゥルラ・ブラント・グロブレンが担当.

以上は《映画.COM》から転載.
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北欧合作のこの作品、最初から静かなシーンに始まり、最期は一見するとやはり
静かなシーンで終わる.北欧から届く映画には、日常を別の角度から、あるいは
内側から提示するものが多い.

本作も子供たちのサイキックスリラーといえばそれまでだが、描写の端々に
一筋縄ではいかない感覚が溢れ、序盤の「つねる」という子供ながらの小さな
悪意を起点として、まだ右も左も分からない主人公たちの感情がいかに
振り切れていくのか、期待させるし不安にもさせる.

それぞれの事情を抱えた子供たち、イーダはまだ幼く甘えたい盛りにも
かかわらず両親は自閉症の姉につきっきりで、その寂しさを紛らわすためか
または姉への嫉妬からか細かな嫌がらせをしたり、虫を殺したりしている.


映画「イノセンツ」(DVD) -2


ベンはアラブ系移民のように見える.母子家庭で体にあざがあることから
母親から虐待を受けているようである.アイシャはソマリア難民の母親が夫を
亡くしたばかりで情緒不安定.そしてイーダの姉の自閉症のアナ.

それぞれの子供達に、移民とかヤングケアラー、親の精神病、ネグレクト、
虐待、いじめなどの社会的問題の背景も含めて4人にそれぞれの明確な
ポジションの様なものが設定されているのが優れているし、それぞれの
子役が的確に演技できているところが素晴らしいと感じた.


映画「イノセンツ」(DVD) -3


自閉症のお姉ちゃんアナが無垢がゆえに最も良心的な位置付け.次にアナ
とテレパシーがあるアイシャ、主人公イーダは中立からやや悪寄りからスタート.
ベンが1番悪く、ダークサイドに近いと言う感じ.

そんな問題を抱える四人がひと夏をともに過ごす.
当初は四人は無二の親友になれるかと思われた.


映画「イノセンツ」(DVD) -4


ベンはテレキネシスが使え、アイシャにはテレパシー能力がある.自閉症の姉アナ
もアイシャとは精神感応ができるよう.当初は何も能力がない普通の少女が主人公
イーダであったが、最後半で様相はすこし変化する.

当初はあそび仲間だったベンはサイコパス気質があり、能力をつかって動物や人を
傷つけるようになったので女子3人達と対立するようになってくる.
道徳倫理や社会通念のない子供が凶悪な能力をもっていることが、大変危険であり、
見ていてすごくはらはらさせられる息詰まる映画なのに、一見は静かな映画なのだ.

主人公イーダがが悪方向に寄ってている状態で物語スタートなのが秀逸.
彼女が子供特有の残酷さを持ち合わせていながら、自分で考え、悪と自分の
責任を認識し、邪魔だと思っていた姉と手を繋いで戦う一夏の成長物語に
なっているのが素晴らしい.

この映画の中に大人は出てくるけど子供達に介入せず、ただただ背景として
存在するのみで「子供の世界」を馬鹿にすることなく尊厳を持って、クールな
目線で捉えているのが素晴らしい表現だと感じた.

超能力の正体的はなんなのかと考えてみても、超常現象とゆうよりは大人への
成長過程で忘れてしまった子供の感性や想像力による不思議なもの…みたいな
解釈ができるかもしれない.

母親の命を奪ってしまったベンは歯止めが利かなくなり三人に対しても牙をむく.
そんなベンに三人が立ち向かう.自閉症のアナは唯一の理解者アイーシャを
奪われてベンと対峙する.互角の能力を持つ二人だが、そこに最期にきて、
同じく能力に目覚めたイーダが加勢して二人対一人の闘いが繰り広げられる.

この最期のシーンが秀逸.団地内の小さな沼の両岸に離れて立つ二人と一人.
さざなみが起き、地面が沸き立つ.犬や動物や赤子は気付いて泣き始める.
一部の少年少女が団地のベランダから乗り出して食い入るように見ている…、
彼らもサイキックなのであろう.

極めて一見して静かな戦いはアナとイーダの勝利に終わる.
ベンは崩れ落ちるようにタイヤで作ったブランコに倒れる.
救急車は駆け付けたようだが、無駄に終わった….

この経験で少しだけ成長し、イーダとアナの絆は深まった.
そしてお絵描きボードにただ殴り書きをしていたアナの手が止まるラストカット、
彼女の何かしらの進歩をうかがわせるシーンに見えた.

幼少期の忘れえぬ甘酸っぱい成長譚とサイキックスリラーを足したような作品.
子供たち同士の心理変化とその戦い.子供たちの繊細な心理描写がとても
上手く描けているし、子役達は皆んな魅力的だったのが印象的.

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先週の朝食(2024年第08週)


先週の朝食状況.

旅に出たりして少しイレギュラーか.


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先ずは、月曜から.


総菜パンで.



オギノぱんのねじりウインナーパン.

スクランブルエッグで.

6品目サラダには玉ネギドレッシングで.


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火曜は、箱根の定宿の和朝食.



エボダイの日干し焼き.

温めてサーブして欲しいなぁ….



代わりに、練り物(さつま揚げ)を

固定燃料で加熱するのは面白い.



デザートは、ヨーグルトにフルーツ類.

そしてブラック珈琲.



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水曜は自宅に戻って、サンドイッチ.



厚手食パンにツナ・マヨを挟んで.

繋ぎはCouserのツナマヨペースト.

軽くトーストするのが好き.


6品目サラダには胡麻風味ドレッシング.


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木曜も、サンドイッチ.



焼き上げたヒレカツサンド.

オムレツにはケチャップ少々.


ツナ・サラダには和風ドレッシングで.


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金曜は、前日の残り物、おでん.



朝から十六穀米を炊いてみる.

漬け物が切れたので、ラッキョを.


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土曜は、朝からスパニッシュオムレツを焼いてみた.



ジャガイモと玉ネギだけのプレーン.

芋とネギの分散具合が申し分ない出来上がり♪



これ位がフワフワで美味しいのだ.



焦がした、ツナサンドイッチ.

6品目サラダにはKAKDIの旨辛ドレッシングで.


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金曜は、ヒレカツサンド.



朝寒いとスープが欲しくなる.

クノール製ポタージュスープで温まる.


スパニッシュオムレツ1/4とヒレカツサンド.

6品目サラダには和風ドレッシングで.



1週間、ごちそうさまでした.


“モダン・タイムス・イン・パリ 1925 ”@ポーラ美術館


Screenshot_2024-02-20 モダン・タイムス・イン・パリ 1925 ― 機械時代のアートとデザイン 展覧会 ポーラ美術館




暖かい雨の降る中、箱根のポーラ美術館へ.
機械時代のアートとデザインの世界を覗く.

ポーラ美術館20240219-14


ポーラ美術館20240219-01


-------------以下は同館のHPから------------

1920年代、フランスの首都パリをはじめとした欧米の都市では、
第一次世界大戦からの復興によって工業化が進み、「機械時代」
(マシン・エイジ)と呼ばれる華やかでダイナミックな時代を迎えました.
 
本展覧会は、1920ー1930年代のパリを中心に、ヨーロッパやアメリカ、
日本における機械と人間との関係をめぐる様相を紹介します.
特にパリ現代産業装飾芸術国際博覧会(アール・デコ博)が開催された
1925年は、変容する価値観の分水嶺となり、工業生産品と調和する
幾何学的な「アール・デコ」様式の流行が絶頂を迎えました.
 
日本では1923年(大正12)に起きた関東大震災以降、東京を中心に
急速に「モダン」な都市へと再構築が進むなど、世界は戦間期における
繁栄と閉塞を経験し、機械や合理性をめぐる人々の価値観が変化して
いきました.
 
コンピューターやインターネットが高度に発達し、AI(人工知能)が人々の
生活を大きく変えようとする現代において、本展覧会は約100年前の
機械と人間との様々な関係性を問いかけます.

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全体の構成は4章とエピローグで構成される.

第1章 機械と人間:近代性のユートピア
第2章 装う機械:アール・デコと博覧会の夢
第3章 役に立たない機械:ダダとシュルレアリスム
第4章 モダン都市東京:アール・デコと機械美の受容と展開
エピローグ 21世紀のモダン・タイムス

副長は、大学では機械工学の専攻、会社でもメカ中心で生きてきた.
根っからのメカ好きおじさん(笑).本展の入口に飾ってあったブガティに
やられてしまった.フレンチブルーをまとった妖精のようなきしゃな姿に
ノックアウトとされてしまった.

ポーラ美術館20240219-02
Ettore Buggatti《Bugatti Type52(Baby)》1920s

ポーラ美術館20240219-03


なんと優雅なスタイリングであろう.美しくて速い….
フランスの古車の雄、ヴォアザンのポスターも美しい.


ポーラ美術館20240219-04
ルネ・ヴァンサン《ポスター ヴォワザン》1925年

その他にキリコやダリの画などもあったのだが、意外な面白さは
パリでなく、その頃の大正時代の日本に存在していた.

日本では1923年(大正12)に発生した関東大震災からの復興により、
急速に近代化が推し進められた.
日本のモダンデザインのパイオニアである杉浦非水は、1922年
(大正11)からのヨーロッパ遊学を経てアール・デコ様式を昇華させ、
明快で力強いデザインによってビルや地下鉄が彩るモダン都市・東京
を表現した.

ポーラ美術館20240219-05
杉浦非水《ポスター東洋唯一の地下鉄道》1930年

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杉浦非水《ポスター帝都復興と東京地下鉄道》1930年

また古賀春江や河辺昌久といった前衛的な芸術家が活躍したのもこの時代.
機械的なモティーフを採り入れ、新しい時代の高揚感と不安とが交錯する
ような絵画作品が多数生み出された.


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古賀春江《現実線を切る主智的表情》1931年


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空山基《Untitled_Sexy Robot 》2022年



意外な日本のモダニズム…モダン都市を彩るアール・デコと機械美 も
また面白いと思った.

地下3階の常設コーナーではいつもの作品以外に、
ゲルハルト・リヒターのコーナーが新設.


ポーラ美術館20240219-10
ゲルハルト・リヒター《ストリップ(926-3)》2012年



あとは、藤田嗣治のあまり展示されない3点がお目見え.
眼福に酔った.


ポーラ美術館20240219-11
藤田嗣治《座る女》1921年

ポーラ美術館20240219-12
藤田嗣治《イヴォンヌ・ド・プレモン・ダルスの肖像》1927年

ポーラ美術館20240219-13
藤田嗣治《ベッドの上の裸婦と犬》1921年




意外に収穫が多かった本展次会.
勢いづいて、もう一つ美術館を訪ねる.
後日掲載.



映画「キス・オブ・ザ・ドラゴン」(DVD)…ジェット・リーの魅力爆発!


映画「キス・オブ・ザ・ドラゴン」-1
原題:Kiss of the Dragon 製作年:2001年
製作国:アメリカ・フランス合作 上映時間:98分



名作を探る一環.大好きなジェット・リーの主演作.ハリウッド進出しても
パットしなかったジェット・リーをリュック・ベンソンが拾ってくれて
資本と脚本と監督を与えて作った作品.本年度累積41本目の鑑賞.
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中国とフランスで麻薬密売を企てる中国人ギャングを追ってパリに来た
エリート捜査官リュウ(リー).現地警察の警部(カリョ)は非協力的だが、
組織の娼婦(フォンダ)と出会ったリュウは、事件に巻き込まれていく.

映画初挑戦する監督クリス・ナオンはCMやMTVで活躍のフランス生まれ
の32歳.脚本はベッソンと「フィフス・エレメント」のロバート・マーク・ケイメン.
撮影は全ベッソン作を務める、ティエリー・アルボガスト.

以上は《映画.COM》から転載.
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本作の貢献者はプロデューサーのリュック・ベンソンであろう.
彼はリーが暖めてきたストーリーを元にこの作品の製作を決定、資金を
集め監督に新人のナオンを起用する一方、アクション監督にはリーと
香港時代から縁の深いコーリー・ユエンを招き、香港スタイルの撮影に
よってたった3カ月で完成させたそう.

内容は麻薬捜査でパリに訪れたリュウことジェット・リーが地元警察に
ハメられて、殺人事件の犯人に仕立てあげられる.身の潔白を証明する為に、
娼婦の女:ブリジット・フォンダにギャーギャー言われながらも一網打尽に
してしまうという如何にもリュック・ベンソン流(笑).


映画「キス・オブ・ザ・ドラゴン」-2


序盤の麻薬取引のホテルから、中盤のすごい筋肉の黒人とのタイマン、
クライマックスの道場での1対多、双子との戦いは、ハリウッドに行って
からのジェット・リーのアクションの中では完成度が高い.

ワイヤーやCGを極力排し、リーの肉体による体術が全面に出たアクションが
展開し、子持ちの娼婦というブリジット・フォンダの役柄設定も、リーの孤独に
花を添えるものになったている.

仲間だろうが通行人だろうが関係なく惨殺する鬼畜系刑事リチャード:
チェッキー・カリョの演技は見所の一つ.悪役はこれくらい悪く無いとね.
パリ市警の酷さを表すものとしては、「レオン」におけるゲイリー・オールドマン
のそれと肩を並べるほどのものと思う.

そうして出来上がった作品は、「レオン」を彷彿とさせるストイックなヒーローの
物語に仕上がったといえるし、リーの魅力が最大限に生かされていることは
間違いない.

フランス人がハリウッドのために撮った香港映画(笑).

今週のランチ事情(2024年第08週)




三寒四温とは良く言ったもの.
寒さがぶり返したり、暖かくなったり…
そんなの中でのランチ状況を以下に.

今回も先週の土曜からの記録.
土日水木は内食、月火は外食、金は中食.

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土曜は自宅で内食.

北海道物産展で購入の
インスタント袋麺を作ってみた.

“オホーツクの塩ラーメン”


ランチ20240217-1


“野菜たっぷりの濃厚塩ラーメン”


ランチ20240217-2


オホーツクの海水を使った
濃厚なタイプの塩スープ.
麺は半生タイプの6分茹で.

モヤシパックに、インゲン、
ニンジン、豚コマ、玉ネギを
サラダ油で炒め、塩胡椒.
これらを乗せて黒故障を
たっぷり掛けてみる.

茹で玉子も一緒に.

デザートはヨーカドー製の
“胡麻団子”


ランチ20240217-3


冷緑茶と供に.

合わせて約850Kcal、材料費330円也.

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日曜も自宅で内食.

無印のレトルトカレーを温めた.

“スパイシー・チキン”


ランチ20240218-1


少し辛めの設定だね.

“スパイシーチキンカレーとグリーンサラダ”


ランチ20240218-2


ブラックペッパーと赤唐辛子の
辛味が効いている.ガラムマサラ
の香りも添えて….

ご飯は白米200g.

グリーンサラダにはポテサラ乗せ.
ニンジンドレッシングで.

デザートはAEONモール購入の
“バター香るマドレーヌベルギチョコ掛け”


ランチ20240218-3


エスプレッソと供に.

合わせて約950Kcal、材料費470円也.

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月曜は旅先で外食.

小田原の名店「だるま料理店」にて
11:30着でも既に行列が…(汗).


だるま料理店外観


此処に来たら8割方の客は天丼なのだ.

“海老と野菜6種の天丼”


ランチ20240219-2


レンコン、茄子、シシトウ、舞茸、
カボチャ、ニンジン玉ネギのかき揚げの6種と
プリプリッの海老が1本.

濃いタレがこれでもかとご飯にも ♪

菜の花のお吸い物と漬け物付き.

約850KCal、2400円也.

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火曜も旅先で外食.

静岡県ベルナール・ビュフェ美術館脇の
レストラン・カフェ「TREE HOUSE」にて.


TREEHOUSE看板


クエマチスの丘閉店に伴い、伊料理店
chaochaoのスタッフが移動してきた模様.
メニュウが凄く充実していた ♪

“キッシュとベーコン、ソーセージのカスレ”


ランチ20240220-1


サラダ・スープセットを付けて.
キッシュはベーコンとほうれん草.
暖かければもっと美味しかったかも?


ランチ20240220-2


懐かしいカスレ.フランスの郷土料理.
白インゲン豆とベーコン、玉ネギをトマトベースで
煮込む.仏会社に勤めていた時、食堂で良く
食べた懐かしい味.

自家製ベーコンと、ぶっ太いソーセージ1本.
濃い目の味をガーリックしたバゲットで.

水4杯も飲んじゃった(笑).

合わせて約860KCal、1950円也.

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水曜は自宅で内食.

コトコトとおでんを煮てみた.

“おでんとグリンピースご飯”


ランチ20240221-1


大根だけは昆布と供に
下煮1時間ほど.
厚揚げとさつま揚げは欠かさない.

冷凍しておいたグリンピースご飯を
解凍して、150gだね.

デザートはみかん1個のみ(笑).


ランチ20240221-2


合わせて約750KCal、材料費320円也.

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木曜も自宅で内食.

ワンプレート料理で、
ドライカレーのオムライスを.

“オムライスとハンバーグ”


ランチ20240222-1


ニッスイノドライカレーに上に
トロトロ玉子を乗せて….

ハンバーグはセブン製の冷凍食品.
サラダにはニンジンドレッシングで.

ミネストローネスープは無印良品の
フリーズドライ製.

デザートは、「ヤマザキ」の
“チョコ入りカヌレ”


ランチ20240222-2


エスプレッソと供に.

合わせて約820KCal、材料費490円也.


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金曜は娘宅で中食.

途中のセブンイレブンで
購入の冷凍食品で.


“ナポリタンとコールスローサラダ”




ランチ20240223


コールスローは定番の味.
でも、三浦で採れた野菜らしい.
ナポリタンは熱々に加熱して、
タバスコを掛けて….

飲み物は艦長が煎れたほうじ茶.

デザートはこの後イチゴ狩りへ(笑).

約820Kcal、618円也.

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今週もバラエティに富んだランチ.

体重は横ばい.
来週も頑張るぞぉ!!

今週もご馳走様.




先週の朝食(2024年第07週)


先週の月曜から日曜までの

朝食の具合.


日曜夜に鍋のことが多く、ついつい

月曜朝へ〆の雑炊が持ち越される(笑).


月曜は寄せ鍋の雑炊.



ついつい牡蠣を残して、

牡蠣雑炊になってしまう.



グリーンサラダとラッキョを付けて.

けっこうヘルシーかも(笑).


火曜は、総菜パンで.



ウインナーパンをトースターで5分焼.

スクランブルエッグとグリーンサラダ.

ドレッシングは香味胡麻.


水曜も、総菜パンで.



ベーコンポテトパン.

ジャーマンポテトを炒めた.

サラダにはKALDIの旨タレドレッシングで.


木曜は、ニューカマーの登場.



成城石井期間限定品の“アップルシナモンジャム”

信州製のりんごで、中に干しブドウも.

シナモンが効いた美味しいジャム ♪



デニッシュにたっぷり塗って….


木曜は、デニッシュとジャーマンポテト.



グリーンサラダには、和風ドレッシングで.


金曜は、ご飯モノ.



冷凍しておいた“肉豆腐”と

前日作成の“よだれ豚”、

グリンピースご飯とフリーズドライの

茄子のお味噌汁.


おかずガッチリの朝食だね.


土曜は、サンドイッチ.



イングリッシュ・ブレッドに

ロースハムとチーズを挟む.

バインドは、ツナマヨネーズペースト.


作り置きのジャーマンポテトも.


林檎はサンフジから王林へ変更.


日曜は、総菜コロッケを使って.



イングリッシュブレッドにピザソースを塗り、

大きめのコロッケを乗せて6分焼き.

目玉焼きを乗せてみた.


5品目サラダにはフレンチ・ドレッシングで.



一週間、ごちそうさま!




映画「帰れない山」 (DVD)…人生を山登りにたとえて.


映画「帰れない山」 (DVD) -2
原題:Le otto montagne 製作年:2022年
製作国:イタリア・ベルギー・フランス合作 上映時間:147分


作年春の公開時には山岳ものかと敬遠していたが、その実は人生の機微を
描いた青春ドラマであった.本年度累積40本目にDVDで観たのは伊製の作品.
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イタリアの作家パオロ・コニェッティの世界的ベストセラー小説を映画化し、
2022年・第75回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した大人の青春映画.

北イタリア、モンテ・ローザ山麓の小さな村.山を愛する両親と休暇を過ごしに
来た都会育ちの繊細な少年ピエトロは、同じ年の牛飼いの少年ブルーノと出会い、
一緒に大自然の中を駆け巡る中で親交を深めていく.

しかし思春期に突入したピエトロは父に反抗し、家族や山と距離を置いてしまう.
時は流れ、父の悲報を受けて村を訪れたピエトロは、ブルーノと再会を果たす.

「マーティン・エデン」のルカ・マリネッリが主人公ピエトロ、「ザ・プレイス 運命の
交差点」のアレッサンドロ・ボルギが親友ブルーノを演じた.
メガホンをとったのは「ビューティフル・ボーイ」で知られるベルギーの俊英
フェリックス・バン・ヒュルーニンゲンと、「オーバー・ザ・ブルースカイ」などで
脚本も務める俳優のシャルロッテ・ファンデルメールシュ.
実生活で夫婦でもある2人が共同で監督・脚本を務めた.

以上は《映画.COM》から転載.
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原作はもちろん未読.都会育ちの少年、ピエトロが、山を愛する両親と共に
過ごした北イタリアのモンテ・ローザ山麓で出会った牛飼いの少年、ブルーノ
との交流を振り返る形で物語は進む.

2人は同い年で性格もまるで違うが、各々が歩んだ人生には誰もが思い当たる
根本的な生き方の違いが反映されていて、思わず気持ちを動かされる.
人生には大まかに言うと2つの選択肢がある.留まるか、動くか、そのどちらか.

ピエトロが山麓を離れてから世界中の山々を制覇し、作家としての地位も
固めていくのに対して、ブルーノは故郷の山に止まって貧しいながら牧畜業に
専念する決意を固める.


映画「帰れない山」 (DVD) -1


北イタリアをメインに、大自然の美しさと残酷さ、そして、時の流れに翻弄され、
それでも旧友を思いやる男たちの変わらぬ友情を描いた本作は、果たして自分
の人生はどうだったかと言う問いを我々に投げかけてくる.
でも、後悔したところで時間は戻らない.鑑賞後に残る複雑な余韻は格別なものだ.

二人の若者の友情を基に描いてはいるが、それぞれの父との確執をも描いている.
北イタリアの別荘で知り合った自然児ブルーノに、父親ジョヴァンニをとられた
ジェラシーのような感情をピエトロは抱いたようにも見える.

本作の序盤で亡くなってしまう父親とは一緒に登ったモンテローザの山々の記憶
が残っただけ.死の直前まで仕事に追われていたピエトロの父親、そして出稼ぎに
行ったっきり劇中全く姿を現さないブルーノの父親.

そうなりたくなかった反面教師としての父親の代わりにピエトロとブルーノは、
ジョヴァンニが我が子のように愛した“山”そのものを理想の父親像として
愛するようになったのかもしれない.

それでも亡くなったピエトロの父の遺言に従い、愛されたブルーノはモンテ・
ローザ山麓の廃屋を建て直して、ピエトロとブルーノの共有住居とした.
建て直しの後半は、ピエトロも手伝うことで父への贖罪を担っているように
も見えた.以降この家は二人の関係をつなぎ止める貴重なものとなっていく.


映画「帰れない山」 (DVD) -4


本作の原題は“Le otto montagne ”.拙い私のイタリア語の知識でも判る.
“8つの山”がその意味.ピエトロが作中でチベットを彷徨いその山々を登って
居た時、地元のシェルパに、世界には8つの山が存在し、その中心に“須弥山”
が存在すると説明されることからに発している.エベレストのことだろうか?

古代インドのジャイナ教や仏教の世界観に基づいたこの思想は、「一番高い山
を目指す者と8つの山を巡る者では、どちらが多くのことを学べると思う?」と
いう問いに繫がってくる.

定職にもつかず作家の真似事のようなことをしているピエトロは“8つの山”を、
山の民が本職だと信じているブルーノは“須弥山”を父性の理想型として、
対照的な生き方を選択する.

しかし山から一歩も出ようとしないブルーノは、あくまでも生活優先の奥さん
と子供に家を出ていかれてしまう.山の生活は家族を養っていけるほど利益を
生まなうのである.それに金銭面にまるで興味をもとうとしないブルーノであった.

さらに自分の殻に閉じ籠るブルーノをピエトロはなんとか救い出そうとするが….、
結局、須弥山を極めようとしたブルーノも、8つの山を探し出そうとしたピエトロも、
目的を果たせないまま“山”から退場させられてしまう.

原題のシンプルさに比し、邦題の“帰れない山”は意味深長だ.
人生における“帰れない山”とは一体なにを意味しているのか?
探しても探しても見つからない人生の“山”.
理想的な生き方なんてそもそもどこにも存在しないのかもしれない.
されどそれを追い求めるのが我々人間の悲しい性(さが)なのかも.

蛇足だが、本作の北イタリアのモンテローザ山麓辺りは1995年頃、
何度も訪れた.フランスから帰国後、イタリアの名門Olivetti社との
合弁事業に従事していたので、北イタリアは何回も訪れていた.

長期出張が多かったので、週末はミラノやベネツィアを良く訪ねたし、
モンテローザ(標高3500m)にも登った.もちろんケーブルカーでだが.

モンテローザ199506-1


モンテローザ199506-2


写真は6月だったはずだが、当然頂上はまだ雪だらけ….軽装でえらく
寒い思いをしたのを覚えている.ヨーロッパ・アルプスに連なる高山に
感動したものだった.

その時は、“8つの山”のことなんか、思いもよらなかった…頃だ.
ただただ若かったなぁ…(遠い目つき).

.

映画「ボーはおそれている」…こんなやりたい放題許さぬ.


映画「ボーはおそれている」-1
原題:Beau Is Afraid 製作年:2023年 
製作国:アメリカ 上映時間:179分 R15+



さて、あのアリ・アスター監督とホアキン・フェニックスのコンビはどんな映像を
生み出してくれるのか興味津々で近所のシネコンで公開初日に観賞したのは
本年度累積39本目.
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「ミッドサマー」「ヘレディタリー 継承」の鬼才アリ・アスター監督と「ジョーカー」
「ナポレオン」の名優ホアキン・フェニックスがタッグを組み、怪死した母のもと
へ帰省しようとした男が奇想天外な旅に巻き込まれていく姿を描いたスリラー.

日常のささいなことでも不安になってしまう怖がりの男ボーは、つい先ほどまで
電話で会話していた母が突然、怪死したことを知る.母のもとへ駆けつけようと
アパートの玄関を出ると、そこはもう“いつもの日常”ではなかった.

その後も奇妙で予想外な出来事が次々と起こり、現実なのか妄想なのかも
分からないまま、ボーの里帰りはいつしか壮大な旅へと変貌していく.

共演は「プロデューサーズ」のネイサン・レイン、「ブリッジ・オブ・スパイ」の
エイミー・ライアン、「コロンバス」のパーカー・ポージー、「ドライビング・MISS・
デイジー」のパティ・ルポーン.

以上は《映画.COM》から転載.
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主人公ボーに怪優?フォアキン・フェニックス.Beauの発音は「ボウ」と表記する
のが正確で、名人松浦美奈の字幕もそうなっているのになぜタイトルはボー
なのだろう? またも配給会社の不真面目な仕事のせいか?

不安症の主人公ボウに次から次へと災難が降りかかり、母親の葬儀に出る
ための旅もトラブル続きでなかなか目的地にたどりつけない様子が3時間の
長尺のほとんどを占める.ホアキン・フェニックスによる不安と困惑と恐怖と苦痛
の演技を最後まで見せつけられる.これとっても苦痛だった.

3時間、理不尽でカオスな展開が続いていくからとにかく疑問符だらけの展開.
プロダクションA24が同プロダクション発展の基礎を築いたアリ・アスター監督に
金も時間も掛けて好き放題撮らせた結果の作品の感が強い.

ボウの身に起こることの一つ一つがあまりの変さにこの世界観がどうして成立して
いるのか、或いはこれはボウと私たちだけに見えているのか?と思えるほど、
主人公と観客が不思議な世界に同居している中、明らかに平常心でないのが
ボウだけという状況ガ延々と続く.


映画「ボーはおそれている」-3


そのきっかけきっかけでボウが気を失い、そして目が覚めるとまた状況が
一変しているという繰り返しなのなのだが、少しずつ展開のある物語はボウに
試練を与え、且つ解決せずにどんどんと山積みされていく….


映画「ボーはおそれている」-4


3時間を俯瞰して眺めるならば、ボウとその母親モナ:パティ・ルポーンとの
確執の他ならない.過去のシーンもときおり挟まれるのだが、若きボウ:アルメン・
ナハペシャンの視点から描かれる美しき母親モナ:ゾーイ・リスター=ジョーンズは
威圧的で絶対的な権力を持つ存在.ボウが不安症となってしまった理由も
そこにあったのでは思わせる.

母モナは全ての愛を注ぎ、いろいろな意味で自分の管理下に置こうしたことが、
ボウの親離れを妨げ、外の世界への恐怖を植えつけてしまったのではないだろうか.
モナにとってそれは、自分を汚す性器としか見えない夫への不満、出産の痛み、
育児の苦しさから、自分を癒す行為でもあったのかもしれない.

が、最後の方で実は生きていた母親の視点から描かれる過去は、ボウが
母親を苦しめる状況ばかりが描かれる.まさに愛憎表裏一体の事実関係に
驚かされる.個人的にはアリ・アスター監督と彼自身の母親との関係を
暗に提示しているのではと、げすの勘ぐり.

本作では、水がキーアイテムとして描かれているのに気付く.
水槽、ペットボトル、噴水、バスタブ。さらに姓の一部Wasserは独語で、
名前ボウ(Beau)のEauは仏語で、それぞれ水を意味する.

ペンキや壁紙、服や家具などには水色が効果的に使われる.
冒頭の出産シーンとモナ(Mona)の名が聖母マリアを指すことで、水=母の比喩
であり、いつも身近にあってボーを助け苦しめる存在となっている.

水は安心感と恐怖心をもたらす表裏一体のアイテムとして使われている.
そう考えると、ラストシーンの巨大プールのもつ意味もいろいろと解釈できる
かもしれない.母なる水に沈んでいくボウ….

全編通して、現実と妄想や幻覚、あるいは記憶とトラウマが複雑に絡み合った、
得体の知れない気持ち悪さが漂う. 観客の感じるこの感覚は、おそらく不安障害を
患うボーが味わっている感覚そのものだと思う.さてそれを味わえるか否か??

万人受けする作品ではないと思う.
「ヘレデタリー継承」、「ミッドサマー」と不快な作品を作り続けるアリ・アスター監督
ならではの極めつけの作品.これ以上やりたい放題させてはならぬと思った.