原題:PROMETHEUS 製作年度:2012年 製作国:アメリカ 上映時間:124分
火曜日は通いのシネコンの会員割引デー、さてなにを観ようかと悩んだ.
邦画では「闇金ウシジマ…」、洋画では…やっぱり「プロメテウス」の3D版.
一度は観たけど、後者を選んでしまった.本年101本目.
『ブレードランナー』『グラディエーター』などのヒット作や名作を数多く手掛けてきた
名匠リドリー・スコットが、自身のアイデアをベースに壮大なスケールで放つSF巨編.
主演は「ミレニアム」シリーズのノオミ・ラパス、共演にマイケル・ファスベンダー、
シャーリーズ・セロン.
人類が長年にわたって追い続けている、人類の起源にまつわる謎.
地球で発見された古代遺跡から、その答えがあるかもしれない未知の惑星の存在が浮かび上がる.
科学者たちを中心に編成された調査チームは、宇宙船プロメテウス号に乗り込んで
問題の惑星へと向かう.惑星にたどり着いた彼らは、人類のあらゆる文明や常識を
完全に覆す世界を目の当たりにして息をのむ.
誰も到達できなかった人類誕生の真実を知ろうとチームの面々が探査に没頭する中、
思いも寄らない事態が迫ろうとしていた….
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3Dで観たら別な感動があるかとも思ったが、
2Dでも十分な映像パフォーマンスは味わえると実感.
余分に払って、メガネまで掛ける必要は無いと思う.
あえて言うなら、異星人の航法システムのシーン、
三次元ホログラムで星域マップがアンドロイド:デビッドを包み込む所
の映像(トップ写真)は3Dならではの臨場感が溢れて見ごたえがあった.
もう公開されたし、他の観賞記事もあふれているようだから、
今回はネタばれもしながら、深く?突っ込んで書いてみたい.
まだ未見の方はスルーして下さい.
2回目の観賞ともなると、落ち着いて?観られるせいか
ずいぶんと物語の解釈も異なってきた.
前回の感想は、「エーリアン」の前憚の印象と書いた.
「エーリアン」はたしかにキーとなる生物で、
巨人異星人の獰猛なる最強の道具(兵器?)ではあるのだが、
観点としては、結局その道具に滅ぼされる境遇になってしまっていること.
飼い犬に命を奪われる…滑稽なアイロニー充満が根底にある.
転じて、人間の存在を考える.
冒頭のシーンで、巨人異星人が地球環境における生物の創造主で
あることは示されている.それが知性を持つ人間にまで成長した時点で
巨人異星人は「エーリアン」を用いて地球を滅ぼす事を計画する.
スクラップ&リビルドである.完璧に破壊したうえでもう一度作り直す….
なぜ、巨人異星人は人間の破壊に思い立ったのか…それを問う為に
主人公エリザベス(ノオミ・ラパス)はアンドロイド;デビッド(マイケル・ファスベンダー)
と再び旅立つところでこの作品は終わる.
人間の存在はかくも卑しき破壊すべき存在なのか?
創造主のきまぐれの産物なのか?
人間にとっての、神の存在とは?
主人公もプロメテウスのパトロンウェイランド社の社長も末期の際、同じセリフを述べた
「我々は間違っていた…」.間違ったのは、創造主への期待? 人類の生き方?
創造主への期待や神の存在を裏切られた、とも思えるその発言の重みを感じた.
宇宙における地球人の存在意義をも問う深遠なテーマともとれる.
一方、主人公の首から下がったクロスの意味にも興味深いテーマがみられる.
父から譲り受けたとされる、そのクロス.父の死を看取ったというデビッドとの
会話の端に、彼女は「自ら彼の死を招いた…」ような発言もしている.
この父と娘の関係が彼女を人類の起源探しに立ち向かわせる原動力となっている
気がしてならない.後作で明らかになるだろうか、興味深いテーマだ.
もう一つの父と娘の関係も意味深長だ.ウェイランド社の社長は結局プロメテウス号に
密かに乗船していた…死も間近い超高齢の身にもかかわらずだ.
そして彼は監督官シャーリーズ・セロンの父親であった.
不老不死を求めて遙かかなたの異星にまで赴いた父親に
ひざまずいて愛を乞う娘…が、彼は何も与えず、何も話さない.
巨人異星人に襲われ、社長の命こときれるさまをモニターで見る娘の横顔….
冷たくもあり、哀しくもあり、無言でみている.
この父娘の関係もまた一つのドラマを形成している.
もうひとつ、アンドロイドについて.
ここでも創造主(人間)と子(アンドロイド)の特異な?関係が描かれている.
ウェイランド社の社長に絶対服従するアンドロイド;デビッド、その死により
解放されるわけなのだが、俄然その時自らも傷を負うが“意志”を持ち始める.
あらかじめ、父(社長)を巨人異星人に引き合わせれば、起きること(社長の死)を
予測していたのではないかとも思われる.子は父を殺すことは出来ないが、
必然的な死をもたらす場に行くことを止めない事は…出来る.
親殺しをするアンドロイド、そこに人間と巨人異星人との関係をも
当てはめてしまうのは想像の暴走だろうか….
興味尽きないテーマを与えてくれているような気がしてならない.
最後にエーリアンについて.悪しき存在、類まれなる生命力、繁殖力を
もつ生物が種々のパターンで登場する.巨人異星人がこれらを兵器に開発するに
あたり、危険過ぎて自星ではなく、辺境の異星で開発・培養していたのは明らか.
その生命のみなぎる力がまた一つの物語の主人公となっていくのだが、
その物語の端緒を描いたという意味でも本作品は貴重な立ち位置を占めると思う.
圧倒的な映像の魅力ばかりが目立つ本作品だけれど、その持つテーマの
神秘性や個々のエピソードの因果性など、ストーリー自体にも興味が持てると思う.
本年だけでなく、今後の映画作品の中でも光を放つ名作と思う.
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