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DVD「スタートレック・ディスカバリー シーズン2」“義弟”、“ニュー・エデン”


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ここのところ、息が詰まるような邦画ばかり観てきて飽きてきた.
本来好きなSFで、一息つくこととする.幸い昨年から発掘?したスタートレックの
最新版ディスカバリーのシーズン2のDVDレンタルが始まった.
さっそくエピソード1、2を観てみた.

エピソード1:「義弟」
エンタープライズのパイク船長が、ディスカバリーの船長として転任.
突如宇宙に出現した謎の信号の調査を始めるが、マイケルは義弟スポックが
それに関係する調査を既に行っていたことに気づく.

エピソード2:「ニューエデン」
スポックの現状を知り愕然とするマイケル.一方、再び出現した信号を調査する
ディスカバリーは、宇宙の果ての惑星に辿り着く.そこには赤い天使に導かれ
200年前に地球の核戦争を逃れて来た人々の子孫がいた….

以上は《Paramount Pictures HP》から転載.
―――――――――――――――――――――――


シーズン1はクリンゴンとの開戦から、その戦いの最中に鏡宇宙の存在が
あきらかになり、その中でU.S.S.ディスカバリーのロルカ艦長の裏切りを
乗り越えて、現宇宙へ戻って来たところで終わった.

しーズン2では、連邦とクリンゴンは停戦協約を結び、平和状態になっている.
そして2257年連邦は謎の赤い7つの信号源を探知する.これを巡る旅が
クリストファー・パイク新艦長の指揮下で始まる.

相変わらず主役はヒロイン、マイケル・バーナム中佐:ソネクア・マーティン=グリーン.
U.S.S.ディスカバリーの副長にして科学士官を務める.

新規参入はパイク艦長:アンソン・マウント、行動力がある有能なリーダーで、
ユーモアもあり真面目で責任感のある人物を演ずる.機能不全に陥った
U.S.S.エンタープライズからU.S.S.ディスカバリー艦長に転任する.

エンタープライズといえば、科学士官に、あのミスター・スポックが居る.
ヒロインマイケルとスポックは義兄弟の関係.ある事件により不仲になっている
らしい.パイク艦長によると、現時点でスポックはエンタープライズに乗船して
いないという.

マイケルはスポックの去ったエンタープライズで弟の日誌を見る.
そのタブレットにはなんと7つの信号源の存在が発現する2年前に記されていた.
それを聞いたパイク艦長はスポックが精神病棟にいることを教える….

どうやら、この後はスポックを訪ねる旅になりそう.7つの赤い信号源もミステリー
じみている.2つはその信号源を追い求めると消失し、但しそこには人類(地球人)
が危機に面している場面が待ち受けている.

まるで赤い信号はディスカバリーを人類救済に招いているよう….

シーズン2は全14エピソードで構成されている.
エピ1,2はなかなかの出来と感じた.またまた一気観しちゃおうかな?





コロナ禍の危ない副作用


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英フィナンシャル・タイムズ紙に、実に的確な指摘の記事が載っていたので
ここにほぼ全文を転載してみる.

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経営コンサルタントの大前研一氏がグローバル時代を論じた「ボーダレス・ワールド」を
著したのは、ベルリンの壁が崩壊した翌年の1990年だった.
今、ボーダー(国境)がすさまじい勢いで復活しつつある.

引き金は新型コロナウイルスだ.
このウイルスの世界的な大流行が終息すれば、極端な移動制限は解除されるだろう.
しかし国民国家が復活しつつあり、ウイルス発生前のグローバルな世界に完全に戻る
可能性は低い.

理由は主に3つある.

一つは緊急事態下では人々は国民国家に頼ろうとすることだ.
国民国家にはグローバル機関にはない財政的、組織的な強みがあり、
人々の感情に訴える力も強い.

二つ目はグローバルなサプライチェーンが脆弱だとわかったことだ.
大国が人の命に関わる医薬品の大半を輸入に頼らざるを得ない状況を放置する
とは考えにくい.

三つ目は危機の発生前から顕著だった保護主義や生産の自国回帰、国境管理
の厳格化を求める声がより高まったことだ. 危険なのは国民国家の復活で
制御不能な国家主義が頭をもたげ、世界貿易の 急減や国際協力の有名無実化に
つながることだ.

最悪のシナリオでは欧州連合 (EU)が崩壊したり、米中関係が断絶し、
ことによると戦争にエスカレートしたり する事態も考えられる.

国民国家への回帰の動きは特に欧州で目立つ.ドイツのメルケル首相は18日、
国民に向けて緊急のテレビ演説をした際、EUのことには一度も触れなかった.
企業や失業者への経済的支援の多くはEUではなく欧州各国が負担している.

実際、ポーランドやイタリア、スペインの著名な政治家は、EUは結束を強化する
と いう約束を果たしていないと批判している.

■抗生物質の97%を中国に頼る米国

米中間の確執はもっとわかりやすい.トランプ米大統領が新型コロナを
「中国ウイルス」 と呼ぶのは、相手を中傷し自身は責任逃れをする
お決まりの政治手法だ.

もっとも、きっかけは中国政府の高官がウイルスは米軍が持ち込んだもの
かもしれないと 示唆したことだ.中国事情に詳しい米ジャーナリストの
ビル・ビショップ氏は 「過去40年間の米中関係でこれほど危険な時はなかった」
と評した.

コロナ危機はかねて国際的なサプライチェーンを解体し、生産拠点を自国に
戻したがっていた米政権内の保護主義者を勢いづかせてもいる.
ナバロ大統領補佐官が代表格で、世界的な公衆衛生の非常時に米国は他国を
あてにできないことが明らかになったとみている.

国内の抗生物質の97%が中国から の輸入品という現状が続くことは
もはやないように思える. 感染拡大をきっかけとする反グローバル化は、最初は
保護主義者や安全保障の タカ派が主導するだろう.

だがやがて、飛行機の利用を「飛び恥」と呼んで批判する 環境活動家や、
反移民を掲げ国境への壁の建設を声高に叫ぶ右派も加わり、 太い流れに
なるはずだ.

彼らは最善の解決策を持ち合わせない.感染症の拡大はまさに世界的な問題であり、
最終的には何らかの国際的な統治が必要になる. 各国が自給自足に動けば
世界経済の再生も一段と難しくなる.

国内ではトイレットペーパーや牛乳の買い占めに誰もが眉をひそめる.
あらゆる国や地域がそのような行動に出たらどうなるか.
我々はその答えを見つけようとしているのかもしれない.

By Gideon Rachman (2020年3月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 


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映画「タロウのバカ」 (DVD観賞)


映画タロウのバカ-01
制作年:2019年 制作国:日本 上映時間:119分



ロードショー時に何度かは予告を観たのだが、その危険な香りにおののいて、
パスしていた.まぁ家で観るのはしょうがない? とうとう観ちゃったの感有り.

「さよなら渓谷」「日日是好日」の大森立嗣が監督・脚本を手がけ、刹那的に
生きる3人の少年の過激な日常を描いた青春ドラマ.

主人公タロウ役には、本作が俳優デビューとなるモデルのYOSHIを抜てきし、
タロウと行動をともにするエージを菅田将暉、スギオを仲野太賀がそれぞれ演じる.

戸籍も持たず、一度も学校に通ったことのない少年タロウには、エージとスギオと
いう高校生の仲間がいる.エージとスギオはそれぞれ悩みを抱えていたが、
タロウとつるんでいる時だけはなぜか心を解き放たれるのだった.

空虚なほどだだっ広い町をあてどなく走り回り、その奔放な日々に自由を感じる
3人だったが、偶然にも1丁の拳銃を手に入れたことから、それまで目を背けてきた
過酷な現実に向き合うこととなる.

以上は《映画.COM》から転載.
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大好きな監督:大森立嗣の作品であるが、ずいぶんと若い頃に書いた脚本らしい.
雑で荒々しいこと極まりない内容である.これは好みが分かれるであろうなぁ.
観ていて痛々しい部分が極めて多い.

冒頭から、衝撃的な隔離された障害者施設が登場する.1人当たり3千万円で
姥捨て山みたいに投げ入れられた施設.面倒を見る?ヤクザの吉岡:奥野瑛太
は、障害者たちにみな尊い命なんか無いと差別的な発言をする.

どこか聞いた論理と思えば、あの忌まわしい相模原障害者大量殺人事件の
犯人と全く同じだ.こいつ作中で死ぬなと予感したが、やはり最期の方で、
自らの銃でタロウに無様に撃ち殺された.

タロウ: Yoshiというのは実名ではない.エージ:菅田将暉とスギオ:仲野太賀に
初めて出会ったとき、名乗らなかった為に「名前のない奴はタロウだ」と付けられた名.
要はふたりは名付け親だ.そのふたりに導かれてタロウは生きていく.

「好き」の意味が全くわからないタロウ.学校にも行ってないから、倫理、常識、物事の
善悪など全く知らずに無軌道に荒れていく.仲良くなった高校生のエージやスギオも
似たように挫折感を抱えているので、タロウがバカをやっても拍車をかけるだけ.

出てくるのは、ネグレクト、無戸籍児、教師による体罰、援交…という、
今の日本が抱える諸問題.そんな目をそむけたくなるような環境の中で生きる、
エージ、スギオ、タロウ3人の若者たち.

高校生であるエージとスギオには彼等なりの葛藤があり、それが行動に現れる.
対してタロウの純粋さは無だ.エージはそこに魅せられ、スギオはそれを恐れる.

タロウは常に“愛”を求める.ところよりなく人を捕まえては「好きってなに?」と問いかける.
また、河原に常時居る精神薄弱児ふたりが儚い「好き」をタロウに教えようとするが、
それもかなわない.が、その一人が川で溺死したことから、“好きな者”を失う感情を
知ることとなる.

主人公を演ずるYOSHIはモデル出身らしいが、まさに適役.一貫性のない行動の演技
はともかくとして、うつろな得体のしれない視線の演技は見ものである.

金髪の高校生エージを演ずる菅田将暉はあいもかわらずの天才的演技を魅せる.
大森立嗣監督とは名作「セトウツミ」があるが、あれ以来いくつになっても高校生が
演じられる資質には驚いてしまう.

仲野太賀は少しとうが経った高校生の感があるが、S的なエージに比してM的な
スギオを演ずる.好きな女子高生洋子:植田紗々が縁交するのを止められず、
悲観して、放棄して、ヤクザ吉岡から奪った銃で頭を撃ち抜いて死んでしまう.

鏡の中で揺れ動く感情の波に揺さぶられ、最期には笑って自分の頭を
撃ってしまう演技の迫真さには舌を巻く.

残されたエージとタロウ、エージも吉岡達ちとの争いで鉄パイプで頭を殴られた
後遺症で川辺で眠るように逝ってしまう.物語の最後でタロウは「死」に直面し、
泣き叫ぶ….“好き”の喪失を知ったタロウの行末は誰にも分からない.

とにもかくにも、観てこんなに心が痛む作品は類がない.
観なければ良かったかもしれない罪作りな作品.






映画「メランコリック」 (DVD観賞)


映画メランコリック-01
制作年:2018年 制作国:日本 上映時間:114分



2018、19年ってかなり邦画の当たり年なのだろうか、観ても観てもDVDがかなり
出てくる….そろそろ洋画も観たくなってきたぞ(笑).
と言いながらも、またもマイナー邦画を観てしまった.

深夜に殺人が行われる銭湯を舞台に、ひょんなことから人生が大きく動き出して
しまう人々の人間模様を、サプライズ満載の変幻自在なストーリー展開で描いた
サスペンスコメディ.

東京大学を卒業後、アルバイトを転々とし、うだつの上がらない生活を送っていた和彦.
ある日、偶然訪れた銭湯で高校時代の同級生・百合と再会した彼は、そこで一緒に
働かせてもらうことに.

やがて和彦は、その銭湯が閉店後の深夜に浴場を「人を殺す場所」として貸し出して
いることを知る.さらに、同僚の松本が殺し屋であることが明らかになり…….

新人監督・田中征爾の長編デビュー作で、第31回東京国際映画祭「日本映画
スプラッシュ」部門で監督賞を受賞(武正晴監督の「銃」と同時受賞).

和彦役の皆川暢二、松本役の磯崎義知、田中監督による映画製作ユニット
「One Goose」の映画製作第1弾作品.

以上は《映画.COM》から転載.
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無名の役者ばかりの小作りな作品.すっと始まり、直ぐにその物語の中に
入り込める素直さがある.深夜の銭湯が殺しの現場だなんてショッキングな設定.
ただ単に、死体の始末と掃除が楽だから…という理屈がブラック(笑).

血が簡単に洗い流せるかとか、死体をボイラーで焼いてしまうのだけど、
火力が足りないんじゃないかとか、骨だらけになっちゃうんじゃないかとか
つっこみたい所は山ほど…(笑).気にしないで観ないといけない.

映画メランコリック-02


殺しの場面は少なく、スプラッターも無いから、それほど気にならない.
何よりも主人公2人の和彦役の皆川暢二、松本役の磯崎義知のキャラが
好ましい.

和彦は東大卒なのに勤めたこともなく、バイトでぶらぶらしている.
家族は理解があり、朝夕食を一緒に食べるシーンでは、地味な食事風景ながら
決して不仲な家族ではないことを示している.

松本は金髪の軽めの性格、銭湯のバイトをしながらも、その実は凄腕の殺し屋.
和彦がこの人はなんで殺される羽目になったのか気にするのを尻目に、ただ
仕事だから…とクールに処理していく.

この二人が付かず離れず、一緒に銭湯で掃除し、飲み屋で食い(松本は下戸)、
そして死体の始末を淡々としていく.そんな中、ヤクザの田中が和彦の存在に気付き、
ちゃんと殺し屋に育てるか、さもなくば殺せと銭湯の主に迫ることから話が急展開していく.

危険だからと和彦は恋人百合:吉田芽吹と無理矢理別れさせられ、銃の撃ち方
を松本に教えてもらう.そして、松本と和彦は、醜悪の根源のヤクザ田中の殺害を
計画するが…、果たしてその結果は?

ラスチューンは、洋楽の借り物 John Lingered の “Deer In A Headlight”.
軽妙なサザンロック調の曲で、好印象.

和彦、松本、百合、そして銭湯の主の東らがとにかく魅力的に描かれているのが
本作のキモであろう.


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映画「旅のおわり世界のはじまり」(DVD観賞)


映画旅のおわり世界のはじまり01
制作年:2019年 制作国:日本・ウズベキスタン・カタール合作 上映時間:120分



昨年公開時、観賞の二の足を踏んだのはヒロインの前田敦子が苦手だから.
気楽に?家で流すように観るならよいかとDVDをチョイス.

カンヌ国際映画祭で受賞を果たした「岸辺の旅」など国内外で高い評価を受ける
黒沢清監督が、「散歩する侵略者」「Seventh Code」でもタッグを組んだ
前田敦子を主演に迎え、シルクロードを舞台に、日本とウズベキスタンの合作で
製作したロードムービー.

取材のためにウズベキスタンを訪れたテレビ番組のレポーターが、番組クルーと
ともにシルクロードを旅する中で成長していく姿を、現地でのオールロケで描いた.

いつか舞台で歌を歌うことという夢を胸に秘めたテレビ番組レポーターの葉子は、
巨大な湖に潜む幻の怪魚を探すという番組制作のため、かつてシルクロードの
中心として栄えた地を訪れる.

早速、番組収録を始めた葉子たちだったが、思うようにいかない異国の地での
ロケに、番組クルーたちもいらだちを募らせていく.

そんなある日、撮影が終わり、ひとり町に出た葉子は、かすかな歌声に導かれ、
美しい装飾の施された劇場に迷い込むが…….

葉子と行動をともにする番組クルーたちに、加瀬亮、染谷将太、柄本時生と
実力派が集結.

以上は《映画.COM》から転載.
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AKB48時代から在る比率の人たちから嫌われている前田敦子.
これという理由は判らないのだけど、副長も苦手な人.
くせのある顔付き、決して上手いとは言えない演技力あたりか?

それでも過去何本かは作品を観ている.「もらとりあるタマ子」とか
「マネジメント」、「さよなら歌舞伎町」、「モヒカン故郷に帰る」….
なんだずいぶん観てるね(笑).

で、番組レポーター役のヒロインを務める前田敦子だ.
監督兼カメラの加瀬亮、ADに染谷将太、スタッフに柄本時生.
脇が凄く豪華なのだが、脇役でしかない.あくまでもヒロイン一人を
追いかける映像に終始している.

計4人でのロケ隊、通訳もいれて5人のロードムービー、
旅するのはウズベキスタン.なにから何まで自分たちでやらなければならない
のは本当に大変そう.撮影地での交渉、撮影の準備、衣装の準備、
メイクアップ、そして急場の脚本によるセリフ覚えなんて撮影直前だ.

それでも葉子:前田敦子はプロ意識剥き出しでカメラに向かって行く.
それはONの状態の時だけで、OFFになると憂うつそうな表情に陥る.
仕事もうまくいっている、日本に残した彼氏との関係も良好だ.だけど、
本当にやりたいことからは遠ざかっているよなジレンマに苛まされている.

時に、ウズベキスタンの町の中を冒険したり、バザールを彷徨ったり….
心のよりどころを求めているかのように動き回る葉子.

迷った先にたどり着いた劇場で、ほんとうにやりたいこと…歌ってしまう.
歌った幻想を見たのかもしれない.ウズベキスタン交響楽団をバックに
エデイット・ピアフの「愛の賛歌」を熱唱する.あっ、元歌手だものね(笑).

映画旅のおわり世界のはじまり02


巨大な湖の風景、町の片隅、巨大なバザール、モスク、そして標高2400mの
高地からの俯瞰風景…と異国情緒溢れた映像もまた魅力の一つだ.

ラストはその2400mの頂上で、またも「愛の賛歌」をアカペラで歌う葉子:
前田敦子で締められる.空気のうすい場での熱唱、うまくはないが心はこもっていた.

本作品後、前田敦子は結婚、出産している.
自らの立場に照らし合わせたような役柄だったのかもしれないと思った.
苦手だった前田敦子がすこし身近に思えるようになったかも?





映画「見栄を張る」


映画見栄を張る-01
制作年:2016年 制作国:日本 上映時間:93分


レンタル屋の棚上でも、一目でメージャーかマイナーかは判別できる.
このDVDは明らかにマイナーの顔をしていた(笑).

葬儀で参列者の涙を誘う「泣き屋」の仕事に就いた女性の奮闘を描いた人間ドラマ.
28歳の売れない女優・絵梨子のもとに、疎遠にしていた姉の訃報が届く.

葬儀に出席するため和歌山に帰郷した絵梨子は、姉が女手ひとつで育てていた
息子・和馬を引き取ることを決意.そして和馬との生活のため、姉がやっていた
「泣き屋」の仕事を、絵梨子も始めるのだが…….

CMやテレビドラマを中心に活躍する女優・久保陽香が主演を務める.
監督は本作が長編デビューとなる藤村明世.

大阪を映像文化の創造・発展拠点にすることを目指して映画制作者の人材発掘・
育成を行なう団体「シネアスト・オーガニゼーション大阪(CO2)」の第12回助成
3作品の1作.

以上は《映画.COM》から転載.
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地の演技なのだろうか、出だしの大根女優の演技?にはあ然としてしまう.
その後観ていても、闊達な演技はいっさい観られない.
うーん、ヒロインミスキャストの感あり.

急死した姉の一人息子を引き取ろうとする動機が見えない.脚本がひとりよがり
の気がする.葬式の「泣き屋」の商売は昔は居たと聞いていたが、今だ現存する
地方も有るのだなとビックリ.和歌山が舞台なのだが….

泣き屋は逝った人があの世へ行くかけはしなのだと壮大に語る泣き屋社長の
言葉には吹いてしまった.ヒロイン絵梨子は泣き屋家業でも、泣きの演技が
出来ずに叱責されてしまう….

序盤の女優業でのオーディションで、後輩が「泣くなんて女優業の基本の基じゃない」
というセリフがずっと頭の中に残っていて、ヒロインの泣きの演技ばかりに着目して
しまう.わざとなのか、地なのか、本当に泣くのが下手な女優さんなのだ(苦笑).

姉の息子の世話からも解放され、泣き屋も首になり、ある意味ホッとした気持ちで
東京に帰る列車の座席がラストシーン.

ラストチューンの「恋する団地」(ay tokiO)が流れる中、ヒロインのほほを伝わる
涙の意味は、開放感?それとも苦恨?それとも安堵? 
やっと真面目な泣きの演技を最期に観られた気がする….




映画「おいしい家族」(DVD観賞)


映画おいしい家族-01
制作年:2019年 制作国:日本 上映時間:95分



一度だけ予告を観たのだけど、板尾創路の女装におののき、
観賞に腰が引けていた(笑).もうやけっぱちの気分で挑んだDVD観賞.

映画監督のほか小説家としても活躍する新鋭ふくだももこ監督が、
かつて自身が手がけた短編映画「父の結婚」を長編化.

妻を亡くした父親が再婚するまでの親子の日々を描いた原作短編映画から、
舞台を離島に移し、エピソードやキャラクターを追加して家族の絆とそれに
向き合う主人公の心境をより深く描き出した.

銀座のコスメショップで働く橙花は、母の三回忌に実家のある離島へ帰るが、
そこでなぜか父・青治が母の服を着て生活している姿を目撃する.

驚く娘を意に介さず、青治は「この人と家族になる」と居候の男性・和生を紹介する.
テレビドラマ版「この世界の片隅に」やauのCMなどで注目を集める松本穂香が
主人公の橙花に扮し、長編映画で初主演を飾った.

父・青治役は原作短編映画でも同じ役どころを演じた板尾創路、
青治のパートナーでお調子者の居候・和生を「在日ファンク」のボーカルで
個性派俳優としても活躍する浜野謙太が演じる.

以上は《映画.COM》から転載.
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ヒロイン橙花:松本穂香は、仕事にも夫婦生活にも停滞感いっぱいの状況で、
亡くなった母の3回忌の為、故郷の離島へ向かう.むろん夫は多忙を理由に
同行はしない…と燈花が自ら決断した.

実家に戻ると、驚天動地の状況が待ち受けていた.母の服を着た父親、
実家に居座り、夕食を供にする赤の他人の親娘.父は“母になりたい”と言う.

亡くなった母は料理上手であったのであろう.父は、亡き妻に近づきたいという
思いで料理の修業を重ねた.数々の妻の得意料理をマスターしたが、“おはぎ”
だけはその味にならない.ある日妻の服を着て料理したら、その味に到達したと.

父の真意は、亡き妻に近づきたいという思いに加え、血のつながらない他者を
家族として迎え入れること.福島からこの離島に流れ着いた和生:浜野謙太と
その娘ダリア:モトーラ世理奈を居候におき、しかも和生と結婚するという.

驚くべきは、燈花以外の周囲の人々は、すべてこの状況を違和感無く
受け止めているということ.なんと父・青治:板尾創路は高校の校長で、
高校にも女装のまま通勤し、学生達も平然と受け止めている.

女装とか同性婚といったジェンダー的な要素が本作のテーマであろうか.
シリアス過ぎず、かといってユーモア溢れる雰囲気で流すでも無く、淡々と
優しい世界観の中で描かれているのは安心して観ていられる.

脚本も兼ねるふくだももこ監督は、自身が養子だったことをインタビューで
明かしており、実体験として確信する「血縁に依らない家族の愛」が彼女の
訴えるところなのであろう.

映画おいしい家族-02


かたくなに父の有り様を否定する燈花も徐々にその父の心情をくみ取っていく.
愛で繫がった小規模なコミュニティ“家族”の在り方を反すうしていく….
そして自らの結婚に別れを決めてしまう.

コスメティシャンを生業とする燈花、花嫁衣装の父に化粧を施す横顔には、
落ち着きと安堵の表情が….

エンディングチューンは、yonige の 「みたいなこと」.
意味深な歌詞に乗せた軽妙なポップンロック、上手い造りの曲だ.

荒削りだけど、新鮮な印象の手腕の新鋭女流監督とみた.
次作が楽しみ♪







映画「こどもしょくどう」(DVD観賞)


映画こどもしょくどう-01
制作年:2019年 制作国:日本 上映時間:93分



昨年見落とした邦画を中心にDVD観賞している.

本作もロードショー規模が極小で、観られなかった作品.

藤本哉汰と鈴木梨央のダブル主演で、子どもの目線から
現代社会の貧困問題を描いたドラマ.
「火垂るの墓」「爆心 長崎の空」の日向寺太郎が監督を務め、
脚本には「百円の恋」「14の夜」の足立紳が参加している.

小学5年生の高野ユウトは食堂を営む両親、妹とともに何不自由ないおだやかな
毎日を過ごしていた. 幼なじみのタカシの家は母子家庭で、タカシの母はわずかな
お金を置いたままほとんど家に戻ってくることはなかった.

そんなタカシを心配したユウトの両親は食堂に招き、頻繁に夕食をごちそうしていた.
ある日、ユウトたちは河原で父親と車上生活をしているミチルとヒカルの姉妹に出会う.

彼女たちの境遇を気の毒に思ったユウトは実家の食堂に姉妹を連れて行き、
2人にも食事を出してほしいと両親に願い出る.そして数日後、姉妹の父親が姿を消し、
ミチルたちは行き場をなくしてしまう.

ユウト役を藤本、ミチル役を鈴木が、食堂を営むユウトの両親役を吉岡秀隆、
常盤貴子がそれぞれ演じる.

以上は《映画.COM》から転載.
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「こどもしょくどう」というと、乏しい知識では地域コミュニティで無料で子供達に
食事をまかなう活動…くらいの認識しかなかった.そんな姿を描いているのかと、
勝手に想像して観始めたら、全く違った.

最終的には一つの“こどもしょくどう”に繫がるのだが、それは単なる結果でしかない.
ここに提起する問題の解であるかもわからない.

ここに描かれるのは、子供虐待、ネグレクトの世界.それも主役達の子供目線から
の告発だ.詳しい経緯は描かれないが、家庭が崩壊して、親に育児、教育を放棄
された子供達が彷徨う姿が描かれるのを観るのは果てしなく辛い.

そんな崩壊した家庭の子供と、通りすがりにすぎないながらも援けの手を差し伸べる
小学生ユウト:藤本哉汰とその家族の交流が、物語の主軸である.
ユウトの両親:吉岡秀隆、常盤貴子は食堂を経営していて、そんな子供達を招き
寄せては食事をさせることで、癒やそうとする.

映画こどもしょくどう-02


主役の子供たちはみなセリフは少ないのだが、目で演技するのがうまい.特に親に
捨てられたミチル役の鈴木梨央だろうか.幸せだった頃の演技と全く別人のような
暗い、目だけで訴える演技はリアルで心揺さぶられる.

理想の社会は、ミチルとヒカルのような姉妹が親と一緒に暮らせて、学校に行き、
美味しいご飯が食べられる社会なのだけど、それは現実とはほど遠い.

だからせめて“こどもしょくどう”で美味しいものをお腹いっぱい食べて欲しい….
吉岡秀隆、常盤貴子は食堂の一部を小学生以下は無料の“こどもしょくどう”に
する、それがせめてものエンディングだ.

エンデイング・チューンは俵万智作詞、谷川公子作曲の 「こどもしょくどう」.
その中で歌われる詞が以下.

「食べることは、いのち」 「食べることはつながり」
「食べることは、いのち」 「食べることはぬくもり」
「一緒だったら、もっと楽しい…」


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映画「ブルーアワーにぶっ飛ばす」 (DVD観賞)


映画ブルーアワーにぶっ飛ばす-01
制作年:2019年 制作国:日本 上映時間:92分


借りてきたDVDのロックを外し忘れていて、開けられない(笑).またレンタル屋に
行って、ロックを外す.その外し機?の機構にまた感心しちゃう技術屋魂(笑).

さて、次は気になる女優:夏帆とあの「新聞記者」のシム・ウンギョンの出演作.
大嫌いな地元:茨城というのも気にかかり観賞した.

若手映像作家の発掘を目的とした「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2016」
で審査員特別賞を受賞した企画の映画化で、夏帆とシム・ウンギョンという日韓の
実力派女優が共演したオリジナルストーリー.監督に箱田優子.

30歳でCMディレクターをしている砂田は、東京で日々仕事に明け暮れ、理解ある
優しい夫もいて、充実した人生を送っているように見える.しかし最近は、口を開けば
毒づいてばかりで、すっかり心が荒んでしまっていた.

そんなある日、病気の祖母を見舞うため、親友の清浦とともに大嫌いな地元の茨城に
帰ることになった砂田は、いつものように清浦と他愛ない会話をしながら茨城に向かうが、
実は今回の帰省に清浦がついてくるのには、ある理由があった.

以上は《映画.COM》から転載.
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日の出前と日の入り後、空が濃い“青”に染まるひと時を「ブルーアワー」と言うそう.
そのどっちにもつかないあやふやな時間帯のような人生の立ち位置のヒロインを
夏帆が演ずる.30代前後の等身大の夏帆の演技が面白い.

理解のある夫を持つCMディレクター・砂田:夏帆が、病気の祖母を見舞うため、
親友の清浦:シム・ウンギョンとともに大嫌いな地元の茨城に帰る、というのが
本筋のストーリー.

帰郷の道具立てに、清浦のマイカー、FIAT PANDAのキャンバストップ.邦画に
人気の車種だよね、これで3度目のお目見えだ.

帰郷と自分探しというテーマだと高畑勲監督の「おもひでぽろぽろ」を連想するが、
都会に疲れたから田舎で本当の自分が見つかるという単純な話ではない.

都会にいても仕事もどん詰まり、田舎に帰ってきても生活も過去もどん詰まり、
それでも人生は続いていく.そんな鬱積と怒りをかみ殺して生きていく砂田を
夏帆が脱力感いっぱいの演技を見せてくれる.

夏帆の脱力感、シム・ウンギョンの軽いノリが絡み合う他愛のない会話が楽しい.
地元・茨城で待ち受ける洗礼には、地元に住む副長には“あるある”の連続で、
笑えるというより、苦笑の連続.

カッパの像の脱力感、田舎のスナックのカラオケ風景、何を話しているのか判別
出来ない会話.自分を「おれ」と名乗る女性群…あぁ、あるある(笑).

ダラダラとした帰省にうんざりし、人生こんなはずじゃなかったと感じていても、
病床の祖母の何気ない一言で少し救わたり、嫌でたまらない田舎にちょっと
感謝?したり、ブルー・アワーのどっちもつかずの世界に生きる砂田:夏帆….

大半は女流監督:箱田優子の自叙伝なのであろう.最後に明かされる秘密、
茨城行は単独で、親友:清浦はセルフ・リフレクション…自身の反映、理想の友人
として存在していたと判る.

ならば、清浦へのシム・ウンギョンの起用もうなずける.たどたどしい日本語、妙な
明るさの性格、実体感のない生活…素直に最後にうなずける結末.

エンデイング・チューンは松崎ナオの 「清く、ただしく」.
妙に内容に一致した歌詞に、微笑まずにいられない軽快なロック♪

歳に相応した夏帆の演技、存在感のあるシム・ウンギョンの演技が
十二分に楽しめた一作.





映画「パラダイス・ネクスト」(DVD観賞)


映画パラダイスネクスト-01
制作年:2019年 制作国:日本・台湾合作 上映時間:100分

非常事態宣言が全国レベルになり、いよいよ映画館での観賞が完全に不能になった.
しかたなく不本意ながら、家中でのDVD観賞で済ますことにした.
とりあえず、最近の見落とした邦画から始める.小屋での観賞をカウントにしているので
家での観賞は累積本数には加えない.今年は63本で休止に入る.

さて、台湾資本の邦画から始める.

妻夫木聡と豊川悦司がダブル主演し、孤独な男たちの運命が交錯していく様子を
全編台湾ロケで描いたノワールサスペンス.

世間から身を隠すように台北でひっそりと暮らすヤクザの島の前に、お調子者で
なれなれしい牧野が現れる.牧野は初対面のはずの島の名前を知っており、
島が台湾に来るきっかけになった事件の真相についてほのめかす.

得体の知れない牧野をいぶかしく思う島だったが、牧野が何者かに命を狙われて
いると知り、一緒に台湾東海岸の町・花蓮へと向かう.そこで出会った女性シャオエン
の存在により、牧野と島の閉ざされた過去が明らかになっていく.

2人の運命の女性であるシャオエンを、「黒衣の刺客」でも妻夫木と共演した
台湾の人気女優ニッキー・シエが演じる.共演に「目撃者 闇の中の瞳」の
カイザー・チュアン.

ホウ・シャオシェン、ジャ・ジャンクーといった名匠たちの作品の映画音楽で
知られる半野喜弘が監督・脚本を手がけ、坂本龍一がテーマ曲を担当.

以上は《映画.COM》から転載.
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トヨエツに妻夫木、そして興味有る台湾ロケ…観たい要因いっぱいなのに、
なんでロードショー時見落としたのだろう?あまりに公開が微少だった??
半野監督の持ち込み企画を台湾資本で…の作品.

台北と東海岸の町・花蓮が舞台.思わず日本の風景かと思いたくなるような
田園風景、海辺の風景.カメラワークは多少稚拙さを感じる.大学同好会みたいな
カメラ割りとコマの連続.

されど台湾の風景は美しい.漆黒の夜と夜明けの隙間の曙を映したシーンは
限りなく美しい.大きなスクリーンで観たかった…(泣).

豊川悦司は相変わらずの寡黙な影のある役柄がよく似合う.比して妻夫木聡は
チャラいチンピラの役、この二人のバディぶりはピッタリだ.陰と陽とは言えない.
というのは妻夫木も影の部分を持っているから….

二人を繋ぐヒロインにシャオエン:ニッキー・シエは母が日本に暮らすゆえ、日本語が
出来る役柄、理知的で笑顔の素敵な役者さんだ.妻夫木は日本のヤクザ:加藤に
命を狙われていて、トヨエツと一緒に東海岸の町・花蓮へ逃避行をして、そこで
シャオエンと出遭う.

映画パラダイスネクスト-02


彼女にうり二つのシンルーを亡くしてしまったことが、二人の腐れ縁をつなぐ
いきさつが徐々に見えてくる.そして、シャオエンも含めた三人に追っ手が….

音楽は坂本龍一とされているが、テーマ曲作成だけだろう.音楽全体の構成は
かなり陳腐だ.こういう名前の使われ方は不本意であろう.

俯瞰するなら、トヨエツと妻夫木の演技の上手さと、ニッキー・シエの活きの良さ
だけの作品かも.