映画「シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢」
原題:L'Incroyable histoire du Facteur Cheval
制作年:2018年 制作国:フランス 上映時間:105分
所定内定休日の前日はもはや週末気分.仕事を終えて柏へ向かう.
公開時見落していた仏作品をキネマ旬報シネマで本年24本目の鑑賞.
フランスに実在する建築物で、ひとりの郵便配達員の男が33年もの歳月を
かけ、たった1人で完成させた手作りの宮殿「シュバルの理想宮」の実話を
映画化したヒューマンドラマ.
フランス南東部の自然豊かな田舎町.寡黙で空想好きの郵便配達員
シュバルは、変わった形の石につまずいたことをきっかけに、愛娘アリスの
ために「おとぎの国の宮殿」を建てることを思いつく.
さまざまな苦境に直面し、周囲の人々にバカにされながらも、来る日も来る日も
たった1人で石を運んでは積み上げ続けるシュバル.そんな彼に、過酷な運命が
容赦なく襲いかかる.
「グレート デイズ! 夢に挑んだ父と子」の監督ニルス・タベルニエと主演ジャック・
ガンブランが再タッグを組み、「ゲンズブールと女たち」のレティシア・カスタが
主人公の妻役を演じる.
ほぼ全編を通し、現存する理想宮で撮影を敢行した。「フランス映画祭2019横浜」
(19年6月20~23日)では、「アイディアル・パレス シュヴァルの理想宮(仮題)」
のタイトルで上映.
以上は≪映画.COM≫から転載.
-------------------------------------
フランスで4年も暮らしていたけれど、この理想宮のことは聞いたことも無かった.
近年掘り出された話題なのだろうか?出来上がった宮殿もさることながら、
ここは そのプロセスが主なるテーマであろう.
主人公のシュヴァルは寡黙、というより極端に無口.頑固一徹というか、他人の言うこと
を聞く耳をいっさいもたない….こんなふうに内面を上手く表現できない性格は周囲から
誤解されやすく、とかくこの世でとにかく生きにくい.
何を考えているのか表情からも伝わらないし、最低限言わなければならないことも
口にできないほど不器用で人付き合いの苦手な彼は尚更だ.
日常的に感情を表さない分、次々と起こる家族の死に面して全身で嘆く姿は胸に
突き刺さる. 次々と家族に先立たれてしまうかなり不運な人生なのだが、奇想天外な
宮殿造りは娘Aliceとの思い出が詰まった現実逃避先となってしまう.
生きていくためには難物と思われた宮殿造りも、子に先立たれた夫婦の心の支えにも
なり、尚一層の宮殿造りに励むこととなる.10時間もの本業…郵便配達をしながら、
帰宅後、尚も10時間の宮殿造りに従事したいうから…唖然としてしまう.
ジャック・ ガンブランが30代から88歳までを見事に演じ切る.典型的な中部フランス人の
顔付きは一徹さを表すには最適と言える.妻役(後妻)のレティシア・カスタも唯一の
シュヴァルの理解者として、共に生きる姿をたくましく演じてくれる.
一人の一徹な男の立派な業績として、この宮殿を観に行ってみたいものだ.
.