映画「テノール! 人生はハーモニー」…ラップは捨て、オペラに走る ♪
原題:Tenor 製作年:2022年
製作国:フランス 上映時間:101分
フランス映画が続く.ハリウッド作品に嫌気がさしてるからね(笑).
最近フランス映画に多い、立身出世もの、今回は声楽編だ.
本年度累積137本目はMovixつくばまで遠征して観賞.
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パリ・オペラ座を舞台に、類まれな美声を持つラッパーと一流オペラ教師
の運命的な出会いを描いたヒューマンドラマ.
寿司の配達のためオペラ座ガルニエ宮を訪れたラップ好きのフリーター
青年アントワーヌ.ふとしたことからオペラの歌真似をした彼は、偶然その場
に居あわせた一流オペラ教師マリーに才能を見込まれてスカウトされる.
自分とは住む世界が違うと考えながらもマリーと2人で秘密のレッスンを
始めたアントワーヌは、次第にオペラに熱中していくが…….
音楽オーディション番組「THE VOICE」で注目されたビートボクサーの
MB14が主演を務め、自らオペラ歌唱にも挑戦.
「100歳の少年と12通の手紙」のミシェル・ラロックがオペラ教師マリー
を演じ、世界的テノール歌手ロベルト・アラーニャが本人役で出演.
以上は《映画.COM》から転載.
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主人公である青年アントワーヌを演じるのは、今月、日本版の地上波放送
も始まった大人気オーディション番組「THE VOICE」でそのカリスマ性を
爆発させて準優勝した、ビートボクサーMB14.よくぞこんな才能を見つけて
きたなぁと感心.
ラップの出来は知らぬが、劇中すべてのオペラ歌唱は吹き替え無しで、
自ら挑戦しているらしい.劇中でも「蝶々夫人」「椿姫」「トゥーランドット」など
オペラの名曲を歌い上げ、天才的な歌の才能を惜しみなく披露する.
極めて私見だが、ラップを音楽とは認めていない.ある文化を形成して
いるのは判るが、音楽の範疇には決して入るものではないと思っている.
そんなクソみたいなラップの世界からオペラに飛び込んでしまう主人公
には共感しかない.音楽としての次元、世界が違いすぎるのだ.
そのままでは、観客に本作がラップ否定と取られては困るので、
なんとかというラッパーのCDをオペラ教師マリー:ミシェル・ラロックに
手渡して、『良かったわー』と無理矢理言わせるのは滑稽すぎる.
世界的なテノール歌手のロベルト・アラーニャも本人役で出演.
アントワーヌ:MB14と共演させてしまうのもご愛敬だ.
パリ・オペラ座が舞台の本作は、多くのシーンが実際にオペラ座内部で
撮影されている.そんな場で本物のオペラ歌手の声が聴けるのも耳福である.
絢爛豪華な吹き抜けの間や、ベルサイユ宮殿の鏡の間を思わせる
グラン・ホワイエ(大広間)での練習場風景、舞台から見上げる
有名なシャガールの天井画も素晴らしい.私事だがオペラ座で音楽は
聴いたことは無いが、このシャガールの天井画だけは観に行ったことが
ある.遠目でもその鮮やかさ、素晴らしさは記憶に留めている.
アントワークヌは、寿司のデリバリーをバイトにしていたり、賭け格闘で
捕まった兄が牢屋で、日本のポスターをバックに出張中だと母親に
ビデオ電話する様など、日本趣味との親和性が高くてクスッと笑わせ
られる.今時のパリでは日本風はざらに転がっているのだね.
アントワーヌはオペラ一流教師・マリーからもらったオペラのCDに衝撃を
受けて、マリーの門を叩きオペラ歌唱に励む.当然その両極にあるラップ
からは遠ざかっていく.
兄からのプレッシャーや仲間を捨てても、夢を掴もうとする姿には
見ている観客も夢中になるし、マリーとアントワーヌの師弟の絆にもグッとくる.
完全予定調和のシンデレラボーイストーリーではあるが、泣いて、笑って、
オペラの名曲に酔いしれる楽しさは極上だ.
ラストのMB14の「誰も寝てはならぬ」を聴きながら、壮麗なオペラ座を
スクリーン越しでも見られるのはフランス映画ならではの楽しみだ.
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