本年47本目の鑑賞は残業をしない夜に観た久々のアニメーション.
『人狼 JIN-ROH』で注目を集めた沖浦啓之監督が、
7年の製作期間をかけて完成させた長編アニメーション.
父が残した一通の手紙を胸に、瀬戸内海の島へと移り住んだ少女が
体験する驚きに満ちた日々を生き生きと描き出す.
作画監督に『千と千尋の神隠し』の安藤雅司があたり、
作画を 『AKIRA』の井上俊之や『猫の恩返し』の井上鋭らが担当する.
声の出演は美山加恋、優香、西田敏行.
小学6年生の内気な女の子ももは、母に連れられ瀬戸内の島に移り住む.
彼女は、仲直りしないまま亡くなってしまった父が遺した“ももへ”とだけ
記された書きかけの手紙のことが頭から離れない.
父が何を伝えたかったのかを考えてばかりの日々を送っている.
一方しっかり者の母は、いつも明るく元気に忙しい毎日を送っていた.
そんなある日、彼女は不思議な妖怪3人組イワ、カワ、マメと出会う.
食いしん坊でわがままな彼らに振り回されながらも、
次第に打ち解けていくももだった….
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なんだろう?.
全体としては画調も含めて高畑調の印象である.
ストーリーは妖怪の描き方も含めて宮崎駿調である.
きっちりとした“沖浦”調というのが伝わってこなっかた感がある.
古きよき日本の風情を残す瀬戸内の自然の描写は素晴らしい.
人間の姿や表情の表現も自然だ.反して妖怪たちの描き方は
デフォルメされすぎていて、その距離感が面白いを通り越して
違和感にまで繋がってくる….
ストーリーはよく書けている.
心にもない言葉を浴びせてしまった別れが父との最期になってしまう….
伝えられなかった想いを残し、少女ももにのしかかる自責の念.
心を閉ざし母との関係はぎくしゃくして、お互いの心情が交差する.
「ももへ」…娘宛ての書き出しだけが綴られた父の手紙が、
小さな胸を締めつける.「このあと、何を書きたかったのだろう…?」
帰省先の瀬戸内の古民家には“そら”と呼ばれる屋根裏部屋がある.
そこに住む妖怪たちとの交流の舞台となるのだが、実はもう一つの
“そら”が存在する.
この“そら”の存在が主人公、ももの心のたがを解き放ち、
再び母との和解や父の想いを知ることとなるのだが、
これ以上はネタばれになっちゃう.
声優の美山加恋、優香の母子は極めて自然な声の演技.
西田敏行はいつもの暴走モードは控えているので、
いかにも普通の妖怪らしさで収まっている.
エンディングチューンは『ウルワシマホロバ ~美しき場所~』 .
原 由子の声は瀬戸内ののどかな風景に好くマッチする.
独特の個性は感じられなかったけど、
丁寧に作られた感のある良質なアニメ作品.
大人の鑑賞に十分たえる一品.
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