製作年度:2013年 製作国:日本 上映時間:139分
日曜の午後、“邦画を1000円で楽しむ会”のブロ友:めーちゃん。と
観たのは芥川賞作家・宮本輝の同名ベストセラーを、「八日目の蝉」の
成島出監督、佐藤浩市主演で映画化したドラマ.本年30本目の鑑賞.
心に傷を負い人生に迷った大人たちが、母親に捨てられた一人の少年との
出会いによって再生していく姿を優しく見つめる.
共演は西村雅彦、吉瀬美智子、小池栄子、貞光奏風.
長年連れ添った妻と離婚し、年頃の娘と2人暮らしの営業マン、遠間憲太郎(佐藤浩市).
50歳を過ぎ人生に疲れた彼に、思いがけない3つの転機が訪れる.
ひとつは、 ひょんなことから取引先の社長・富樫(西村雅彦)に“親友になってくれ”と頼まれ、
戸惑いつつも仕事抜きの付き合いが始まったこと.
もうひとつは、独りで陶器店を切り盛りする女主人篠原貴志子(吉瀬美智子)と出会い、
淡い恋心が芽生えたこと.
そして3つめは、娘の弥生が母親(小池栄子)に虐待されていた4歳の少年圭輔(貞光奏風)
を連れ帰り、しばらく家で面倒を見るようになったこと.
すっかり心を閉ざしてしまい口もきけない圭輔だったが、遠間たちとの触れあいを通じて
少しずつ変化を見せ始めていく.
やがて圭輔の将来を案じるようになった遠間は、彼を連れて世界最後の桃源郷と呼ばれる
パキスタンのフンザへと向かう.そしてその旅には、富樫と貴志子も同行するのだが….
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ありそうでなさそうで、やっぱりどの事象をとってもあり得ないような脚本.
50歳にもなって、面と向かって「親友になってくれ」なんてねぇ.
タクシーから見かけた美人を追いかけて、その店まで追い求めるなんてねぇ.
縁もゆかりも無い子供を引き取って養子にまでしちゃおうなんてねぇ….
そんなフワフワ感でいっぱいの非現実的な話しに唯一現実感を与えてくれるのは
子供を捨ててしまう母親役の小池栄子.もう怪演の一言に尽きる.
最初の出だしがスッピン.どこの誰かと思うほどの地味目の顔で登場.
311で肉親を亡くした子達がどうのこうのと、訳のわからない同情心を
振りまきながら、涙をあふれさせる….子供を引き取りたいと主張する.
その後に表れた時は、いつもの化粧バッチリの顔(笑).
別人のように自己チューの世界に入りきり、子供を捨てるとキッパリ….
この変幻自在な演技力、この世の理不尽さと悪女ぶりをこれでもかと見せてくれる.
良い人ばかりの登場人物ばかりのなかで、悪役を一気に背負ってくれる貴重な役柄.
ほんとに、小池はなにか宗教がかった役どころを上手く演ずる貴重な役者になった.
反して、吉瀬美智子は良心派の美人を演ずる.きっと40,50代の男性に
圧倒的な人気があるんだろうなぁ.適当ないやらしさ、いや色気もあるしね.
でも、なにか引きずったものを感じさせる役どころ.
物語中程で「(物事を)難しくしているのは自分だった」というセリフを吐くが、
思わず、その通りっと指さしてしまった(笑).
『風の谷のナウシカ』のモデルという説もあるロケ地フンザ.パキスタンの首都イスラマバード
から約30時間もバスに揺られてやっとたどり着けるらしい.そんな広大な砂漠でのクライマックスは
少しは心を揺さぶってくれる….
広大な砂漠に感化されて、主人公達はしがらみや悩みにケリをつける.
富樫(西村雅彦)は会社の抱える問題に結論をくだすし、遠間(佐藤浩市)は
50歳を過ぎて新しい未来を構築しようとする.そして貴志子(吉瀬美智子)も
重大な決心をして、遠間へ打ち明ける….
確かな未来なんてないし、そんなことは誰もわからない.
でも、仮にうまくいかなくなったとしても、遠間たちはフンザで人生の再スタートを切る.
そこで流れるエンディング曲は GLAYの“真昼の月の静けさに”.
内容にふさわしい、ろうろうとした曲かなと思う.
観終わって、なにか実体感が薄い印象.
絵空事みたい…だ.
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