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映画「アルフィー(2004)」(DVD観賞)…若きジュード・ロウ大熱演!


映画「アルフィー(2004)」(DVD観賞) -3
原題:Alfie 製作年:2004年
製作国:アメリカ 上映時間:105分



映画音楽の雄バート・バカラックの訃報を聞いて、名曲「アルフィー」を想い出した.
レンタル屋でふと見た背表紙が「アルフィー」.さっそく借りだしてきたきたものの、
なんと2004年版で、音楽はミック・ジャガーだった.やっちまった(笑).
でも主役は大好きなジュード・ロウなので気を取り直して本年度累積45本目に観賞.
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マイケル・ケイン主演で1966年にヒットした同名コメディを、「クローサー」の
ジュード・ロウ主演でリメイク.都会の女性たちを相手に次々と恋を楽しむ英国人
プレイボーイのお気楽な独身生活を、コミカルかつシニカルに描く.

共演に、マリサ・トメイ、ジェーン・クラコウスキー、スーザン・サランドン.
新進女優シエナ・ミラーは本作での共演がきっかけで、ジュード・ロウと婚約した.

以上は《映画.COM》から転載.
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本作の音楽はアメリカ映画なのに、ミック・ジャガーが担当.「アルフィー」の
1966年版はイギリス映画なのに、なぜか音楽はソニー・ロリンズと不可思議な
設定.本作は2004年版なれど、バカラックに敬意を表してか、タイトル前に
1小節とラスト・チューンがちゃんとバカラック曲、ハル・デヴィッド詞の「アルフィー」
が演奏されて、これだけでもう大満足 ♪

中学時代に初めてLPレコードを買ったのが、映画音楽.フランシス・レイと
バート・バカラックのオムニバス・アルバムだった.それこそ擦り切れるほど
聴いたし、未だに自宅に保存している.バカラックの洗練された音楽性と
相棒だったハル・デヴィッドの詞の卓越したセンスが大好きだった.

バカラックの代表曲といえば、やはり「明日に向かって撃て」(1969)の
「雨にぬれても」とか「007カジノロワイヤル」(1967)の「恋の面影」
あたりだろうか.私はマイナーだけど「Alfie」や「Promise、Promises」が
大好き.去る2/8に老衰による自然死だったそう.了年94歳、合掌.


映画「アルフィー(2004)」(DVD観賞) -1


さて、本作は主人公アルフィー:ジュード・ロウがカメラに向かって心境を吐露
する私小説風スタイルの、恋愛映画と云うより、身勝手な男の生き方を憐れみ、
反省を促す男性映画.1966年版も主人公がマイケル・ケインで全く同じ内容.

アルフィー・エルキンス:ジュード・ロウは、極上の女性たちとの出会いを求めて
イギリスからNYにやってきたプレイボーイ.リムジンの運転手をしながらリッチな
人々をマンハッタンに連れて行き、ときには寂しい女性客とのメイク・ラブを楽しむ.

19年前のジュード・ロウがとにもかくにも若いっ! 髪もいっぱいあるし(笑)、
顔付きに少年のようなあどけなさもあって、もう魅力爆発の印象だ.
そんなジュード・ロウが、若い女性や、人妻、はたまた友人の恋人、そして
キャリア豊かなビジネス・ウーマン…と20代から50代までの女性たちの
お相手をせっせと務める姿は、微笑ましいを通り越して、滑稽でもある.


映画「アルフィー(2004)」(DVD観賞) -4


行動と結果が予測通り行かない現実を正視出来ない男の哀れさがあって面白い.
アルフィーを演じるジュード・ロウは役に嵌り、活き活きとして演じているのが印象的.
脚本的には女性との関係の深入りを拒み棄てる男が、寂しさに負けて女性に言い寄り、
今度は自分が棄てられて傷つくという至極当然のストーリーで分かり易い.
そんなジュード・ロウの独白のおちゃらけがいかにも効果的なのだ.

DVDの特別特典で、1966年版の映像や女性陣の姿が拝見できるのだが、
もうあまりにも古くさくて、見るに耐えない.2004年版を偶然ではあるが選んで
良かったと自らの幸運をたたえたい.

ラストのJoss Stone の“Alfie”は間違いなくバート.バカラックの曲で、
ハル.デヴィッドの詞だった.余韻に酔えたのは言うまでもない.


映画「Sin Clock」…表現はスタイリッシュなノワール作品.


映画「Sin Clock」-2
製作年:2023年 製作国:日本 上映時間:94分


気になる俳優窪塚洋介が18年ぶりの主演をするという作品を
白内障の診断ついでに近所のシネコンで観賞.
本年度累積44本目は日本製ノワールな作品.
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窪塚洋介が18年ぶりに邦画長編映画単独主演を務め、どん底の
日々を送る男が偶然に導かれ人生逆転計画に挑む姿を描いた
サスペンスノワール.

理不尽な理由で会社をクビになり、妻子からも別れを突きつけられた
高木は、タクシー運転手として働きながら冴えない毎日を過ごしていた.

そんなある日、タクシーに乗せた政治家・大谷が、数億円もの価値を
持つ幻の絵画につながる手がかりを漏らす.高木は驚異的な記憶力
を持つ番場や裏社会に通じる賭博狂の坂口ら、「3」という数字に
奇妙な共通点を持つ同僚たちと手を組んで絵画強奪計画に乗り出す.

しかし想定外の出来事が連鎖し、事態は思わぬ方向へと転がっていく.

「ちはやふる」シリーズの坂口涼太郎が番場、「君は永遠にそいつら
より若い」の葵揚が坂口を演じる.監督・脚本は長編第1作「唾と密」
で注目を集め、本作が商業映画デビュー作となる牧賢治.

以上は《映画.COM》から転載.
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商業映画では初デビューという牧賢治監督、その表現はスタイリッシュだ.
オープニングから格好いい感じで始まる….オシャレでもない、派手でもない、
芸術的でもない、文学的でもないが、どこかクールで突き放した印象だ.

場面転換が短いシーンで繋がれていく.それぞれのシーンはフェードアウト
を多用した演出で、シーンとシーンの間で観客に味合わせる余韻を与えて
くれる作りで、結局は尺が短く済んでいるのは嬉しい誤算?


映画「Sin Clock」-1


以前の仕事がそれぞれに理不尽な状況に追いやられ、辞めざるをえない
状況になり、タクシー会社に入ったものの、存在感のないルーティンの
仕事に閉塞感の中であえぐ主人公達.

たまたま情報を得た事をキッカケに、窪塚洋介、坂口涼太郎、葵揚、の3人
はそれぞれの特技を屈指、絵画強奪計画を企てる.


映画「Sin Clock」-3


自分が原因でもなく、会社から首になり、転びこんだのはタクシー会社.
そんな不運な男を窪塚洋介が演じる.受け身でのようでもあり、不遜な
表情の下にんあいを考えているか分からないような印象を与える.

毎日タクシーの客から空気の様な存在扱いをされる中、ある日乗せた
客:大物政治家のエピソードと同期の知識が繋がり、一攫千金のチャンスを
思いつく.

不運な連続な人生で一発逆転を狙えるのか?人生は地味に毎日を生きるか?
または、奇跡が起きると信じる毎日かどちらかしかないような人生.
偶然と偶然な重なり合いで起きる好奇心.3人は悪事を決行する.

こうして計画が動き出すまでに半分以上も尺を使っており、少しまどろこっしい.
後半にスピード感はあるものの、今度はダイジェスト気味で不十分な印象.
特に突然の裏社会側の人物の介入は立ち位置や関係性が明示されておらず、
混乱せざるを得ない.明らかに説明不足だ.

どんなに完璧な計画でも、どこで誰が聞いているかはわからない.
結果は何になるかもわからない.結果の結果も何が起きるかはわからない.
もしかしたら、起きたことが不全で望まない形でも、ラッキーかもしれない.

窪塚以外の脇役達が意外と切れの良い演技を見せてくれて楽しめる.
本来信じていいはずの人間が狂気を見せるし、ラストのどんでん返し
を含めて、そこそこ面白かったノワール作品.



映画「別れる決心」…ビターな大人の恋の物語.


映画「別れる決心」-1
原題:Decision to Leave 製作年:2022年
製作国:韓国 上映時間:138分




お昼に柏の葉で中国映画を観て、そのままおおたかの森へ行き、
韓国映画を観る.この日はアジアン・ディだね ♪
カンヌで監督賞を獲った作品をTOHOシネマズおおたかの森で
本年度43本目に観賞.
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「オールド・ボーイ」「お嬢さん」のパク・チャヌク監督が、殺人事件を
追う刑事とその容疑者である被害者の妻が対峙しながらも
ひかれあう姿を描いたサスペンスドラマ.

男性が山頂から転落死する事件が発生.事故ではなく殺人の可能性
が高いと考える刑事ヘジュンは、被害者の妻であるミステリアスな
女性ソレを疑うが、彼女にはアリバイがあった.

取り調べを進めるうちに、いつしかヘジュンはソレにひかれ、ソレも
またヘジュンに特別な感情を抱くように.
やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに見えたが…….

「殺人の追憶」のパク・ヘイルがヘジュン、「ラスト、コーション」の
タン・ウェイがソレを演じ、「新感染半島 ファイナル・ステージ」の
イ・ジョンヒョン、「コインロッカーの女」のコ・ギョンピョが共演.
2022年・第75回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞.

以上は《映画.COM》から転載.
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ストーリーの軸を担うのは、2人の男女…岩山の頂から転落した男の事件
を追う刑事ヘジュン:パク・ヘイルと、被害者の妻ソレ:タン・ウェイだ.
ヘジュンは、ソレを容疑者として監視するうちに、特別な感情を抱くように
なっていく.

取り調べが進むなかで互いの視線は交差し、距離は縮まっていく.
やがて事件解決の糸口が見つかる.しかし、相手への想い、疑念が
深まっていくうちに、予想もしえない結末へと向かっていく….


映画「別れる決心」-2


刑事が容疑者に惚れていくパターンって、たいていはその容疑者は
ファム・ファタール(=男を破滅させる魔性の女)と相場が決まっている.
本作のヒロイン・ソレも最初のパートではそう見える.
最初の事件ではそう見えて完結するかの様相をみえるのだが、中盤から
後半の第2の事件が起きて、ソレは通常の魔性の女では無いことが明らか
になっていく.


映画「別れる決心」-3


このパク・チュヌク監督は小物使いが実に上手い.後半でソレが着用して
いるワンピースが、人によっては緑に見えたり、青に見えたりする.
これは、ソレという女性は、どういう人間なのか=ファム・ファタールなのか?
あるいは、単にヘジュンを愛する女性なのか…を比喩的に現す小道具なのだ.

また、今時だからのスマホの道具としての使い方も上手いと感じた.
第1の殺人のアリバイとしてのスマホや、そのアリバイ崩しのキーとなった
スマホの万歩計機能とか.

アリバイだけでなく、愛の道具としてもスマホが使われる.
それはスマホの翻訳アプリ.韓国人ヘジュンと中国人ソレの架け橋となる存在.
流暢に韓国語を話すソレだが、重要な事柄は中国語で伝えたい.そこでスマホ
の翻訳アプリに話しかける.

ソレがあえて中国語を話す時は、とても言いたいことがあり、気持ちが切迫し、
興奮しているような状態に見える.それは表情を見ていればわかる.そんな時に
ソルはスマホに対して中国語で話しかける…ヘジュンは、一体、何を話している
のだろう、と感じる.そして、その全容がわかるまで待たなければならないという
もどかしさが生じる.そんなもどかしさに、ヘジュンは“待ってでもわかりたい”と
思うのだ.男と女の関係に生ずる“もどかしさ”の表現にうってつけの道具と感じた.

その他にも、指輪や靴、食べ物、ハンドクリームといったアイテムを用いて
互いの心情を繊細に紡ぎ出し、ヘジュンとソレの愛憎をクールに描き出す
そのアイディアと手腕には唸らされるばかりだ.

脚本もパク・チャヌク自身によるもの.冒頭の山岳転落事件は中盤で一応の
解決を迎えるが、そこから1年後に更に物語は意外な方向へと向かい、
物語は二転三転する内容で、捻りの利かせ方でグイグイと引っ張っていく.
その中でヘジュンとソレの密かな恋慕が切なく静かに盛り上げられていて、
観てて胸が苦しくなるほどだった.

たしかに殺人のからむサスペンス・ドラマの形は取るものの、追う者と
追われる者、見る者と見られる者、ヘジュンとソレの立場を巧みに
交錯させながらスリリングなメロドラマに転じていくのは見事な手腕だ.

これは大人のための映画だ.喪失の物語を悲劇的なものとして語るの
ではなく、繊細さとエレガンスとユーモアをもって表現した、
“大人の恋の物語”に仕上がっている.

今のところ、今年観た45本の中では、ベストだ….


.

今週のランチ事情(2023年第08週)




2月ももう第4週に突入.あっと言う間だね.
そんな中での今週のランチ模様を.

今週も土曜からの記録.

土日水は内食、月火木金は外食.

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土曜は自宅で内食.

パスタを茹でた.

“挽肉と赤唐辛子のピリ辛スパゲティ”


ランチ20230218-1


いつものレシピに玉ネギを追加.
ネギの甘さとピリ辛のマッチを狙う.
大根おろしの量も倍増ししてみた.

硬めのパスタはφ1.8の80gだ.

8品目サラダにはKALDIの旨辛ドレッシングで.
スペイン産の白ワインも供に.

デザートはヨーカドー製の
ロールケーキ.


ランチ20230218-2


これは充分に甘いなぁ.
クリーム以外にハチミツも入っている.

約850KCal、材料費320円也.

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日曜も自宅で内食.

冷凍しておいたお手製カレーと
鶏肉ハンバーグを解凍した.

“ハンバーグカレーとサラダ”


ランチ20230219-1


じゃがいも、レンコンの入った
スープカレーといつ作ったかも
しれない鶏肉ハンバーグ(笑).

味はけっこういけるのだ ♪

5品目サラダにはKALDIの
旨辛ドレッシングで.


ランチ20230219-2


デザートはロールケーキの残りと
とちおとめ 1粒(笑).

合わせて約880KCal、材料費380円也.

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月曜は出先で外食.

ららぽーと柏の葉内の
「大戸屋」にて

“さばの竜田揚げ定食”


ランチ20230220


もろみ醤油の香味ねぎソース掛け.
と謳っているが、このソースの味が
濃すぎる.最近大戸屋の味付けは
みな濃い気がする.私の舌には
あわないなぁ….

ご飯は五穀米の少なめ、100g、20円引き.
味噌汁と新香付き.

822KCal、870円也.

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火曜も出先で外食.

AEONモールつくば内の
ファミレス「サイゼリア」にて.

“ビーフハンバーグの玉ネギソースランチ”


ランチ20230221


玉ネギソースがのかけ具合が少ない.
よって、もっさりの味のビーフハンバーグ
になってしまう.ここ数日外ればかりだ.

ご飯はスモールで100g.50円引き.
不味いスープとポテサラ風コールスロー付き

約850KCal、600円也.

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水曜は自宅で内食.

不味い外食が続くと、
自分で作りたくもなるよね(笑).

いつもの笠原将弘のおかず道場
のレシピから作ってみた.

“サーモンのパン粉焼き”


ランチ20230222-1


サーモンにパン粉と粉チーズ
を混ぜたものをまぶして焼いてみた.

ソースは自家製バルサミコ風?
ハチミツを入れるのがキモかな.

このソースだけじゃもの足りないので
2匹目はタルタルソースで.


ランチ20230222-2


煮物も午前中からコトコト煮てみた.
季節のグリンピースご飯も炊いてみた.

約850KCal、材料費420円也.

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木曜は出先で外食.

祝日だが、この日公開の映画もあり、
近所のシネコンへ.そのついでに、
「餃子の王将」にて.

“醤油焼きそばと餃子”


ランチ20230223


好きな醤油味の焼きそば.
王将は焼きそばだけでも4種、
選び放題だけど、これが一番好き.

キャベツ中心に木耳や玉ネギ、モヤシ、
ニラと野菜たっぷりなのだ.豚肉も少々.

定評の餃子はちょうどの焼き具合.
それにしても、餃子のタレと酢だけで、
醤油もラー油も七味も無いのは
いかがなものか??
自由勝手に食べさせて欲しいっ!!!

合わせて約900KCal、760円也.

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金曜も出先で外食.



午前中は循環器の定期健診.
その腹いせに(笑)、近所の
トンカツ屋「かざま」にて.

Cランチ“ロースかつ定食”



ランチ20230224-2


定番のロースカツ、今日は何故か大きい.
160gくらいか? 結局薄かったけどね(笑).
ソースに和辛子もつけて.

キャベツは超大盛り.
ご飯は超少なめ、100gだね.
味噌汁、漬け物付き.

約850Kcal、940円也.



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今週もバラエティに富んだランチ.

体重は微減.
元にゆっくり戻っている.

来週も頑張るぞぉ!!

今週もご馳走様.





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映画「崖上のスパイ」…当局の意向が強すぎて…(汗).


映画「崖上のスパイ」-1
原題:懸崖之上 Cliff Walkers 製作年:2021年
製作国:中国 上映時間:120分


チャン・イーモウはその美しい映像表現で好きな部類の監督.
スパイものは初ということで、期待半分、怖さ半分で観てみた.
本年度累積42本目はMovix柏の葉で観賞.
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中国の巨匠チャン・イーモウが、1930年代の満州を舞台に描いた
スパイサスペンス.

1934年、冬.ソ連で特殊訓練を受けた男女4人のスパイチームが、
極秘作戦「ウートラ計画」を実行するため満州国のハルビンに潜入する.

彼らの目的は、日本軍の秘密施設から脱走した証人を国外脱出させ、
同軍の蛮行を世界に知らせること.しかし仲間の裏切りによって天敵・
特務警察に計画内容が察知され、リーダーのチャン・シエンチェンが
捕まってしまう.

残された3人と彼らの協力者となったジョウ・イーは、どうにかピンチを
切り抜けるべく奔走するが…….

出演は「山河ノスタルジア」のチャン・イー、「わたしは潘金蓮じゃない」
のユー・ホーフェイ、「ドリアン ドリアン」のチン・ハイルー、「1950 鋼の
第7中隊」のチュー・ヤーウェン、「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」の
リウ・ハオツン.
2021年・第34回金鶏奨で監督賞、主演男優賞(チャン・イー)、
撮影賞を受賞した.

以上は《映画.COM》から転載.
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やはり、映像のチャン・イーモウ.誰(カメラマン)に撮らせてもその映像美は
徹底されている.初っ端の雪降る高原へのパラシュート落下のシーンの美しさ、
古式豊かなハルビン市内の再現具合、雪降る街中での迫力あるカーチェイス、
映像に関しては申し分ない出来だった.


映画「崖上のスパイ」-2


が、演出的には不満な点が満載.主人公たちスパイの任務が日本軍の蛮行を
白日の下にさらすのが目的ならば、日本軍収容所での残虐行為を作品冒頭で
見せるべきだろう.日本市場を意識してかそういうシーンは無く、いたずらに
テロップだけで残虐と煽るだけ….制作配給会社が中華人民共和国の会社
ゆえ、共産党万歳の姿勢しか見えない.

その割には、劇中で出てくる悪役は特殊機関に属する中国人で、同胞(はらから)
を殺戮したり、スパイを残虐な拷問にかけたりするが、日本人は一切出てこない.
こんな矛盾だらけの演出がいらつかせられる.

自民党右翼層でもなければ、たいていのまっとうな日本人は、満州で行われた
旧日本陸軍の非道や中国大陸で行われた虐殺の存在は理解していると
信じたい.そこを変な偏向で描かずに展開していくから、面白くない作品に
成り下がるのだ.

推察するに、そういう作り方をした作品を中国当局の検閲で、過激なテロップ
だけが追加されたのでは、と感じた.最後のテロップでも「中国共産党こそ正義」
「偉大なこの先人のおかげで今がある」といった調子で、今の中国共産党へ
の配慮や自国や周辺国へのプロパガンダを強く感じてしまい、興ざめの極致.

脚本的にはストレートなのだが、中国人同士の闘い、敵と味方の服のデザイン
がほぼ同じなために、夜の乱戦になると、なにがなんだか判らない様相に
なってしまうのが難と感じた.

諜報活動の常であるが、騙し騙され、裏切り、裏切られと忙しい部分の表現や
特殊警察の中に潜入している中国共産党の周と、特殊警察を仕切る高科長との
緊迫感溢れるやり取り、騙し合いのシーンなどは面白かった.

泣かせのシーンもちゃんと盛り込まれていて、なんと主人公の4人のスパイに
夫婦カップルが居て、訓練の為にハルピンに幼き子二人を残してきていた.
総ての事を終えた母親・王郁:チン・ハイルーの元に、幼き息子と娘が駆け
寄るも躊躇する中、王郁が二人をシッカリ抱きしめるシーンは、涙ものだった.

拾いものとしては、主人公たちの一人若手の小蘭:リオ・ハオツンが印象的.
可愛らしい顔して、特殊警察員を絞め殺したり、アクションもこなす女優さん.


映画「崖上のスパイ」-3


こんな若手女優の将来は楽しみだ.

チャン・イーモウも中国本土で撮る限りはこんな作品しか撮れないのだろうな
という残念な気持ちと、限られた制約の中でのスパイ映画としてのクオリティ
はそれなりに楽しめた.


映画「BLUE GIANT」…圧倒的JAZZ世界への誘い


映画「BLUE GIANT」-1
製作年:2023年 製作国:日本 上映時間:120分


コミックが評判だったのは知っていた.が無視して見てなかった.
音が無いコミックの世界でJAZZを描いてどうする、との想いから.

やっと映画化された.実画でなくて良かった.音楽は上原ひろみが
担当しているという.これは本物だと期待した.本年度累積41本目
は日本製のJAZZを描いた作品をTOHOシネマズ柏で観賞.
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2013年から小学館「ビッグコミック」にて連載開始した石塚真一の
人気ジャズ漫画「BLUE GIANT」をアニメ映画化.

仙台に暮らす高校生・宮本大はジャズに魅了され、毎日ひとり
河原でテナーサックスを吹き続けてきた.卒業と同時に上京した彼は、
高校の同級生・玉田俊二のアパートに転がり込む.

ある日、ライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト・沢辺雪祈と
出会った大は彼をバンドに誘い、大に感化されてドラムを
始めた玉田も加わり3人組バンド「JASS」を結成.

楽譜も読めずただひたすらに全力で吹いてきた大と、幼い頃
からジャズに全てを捧げてきた雪祈、そして初心者の玉田は、
日本最高のジャズクラブに出演して日本のジャズシーンを
変えることを目標に、必死に活動を続けていく.

主人公・宮本大の声を人気俳優の山田裕貴が担当し、沢辺雪祈
を間宮祥太朗、玉田俊二を岡山天音が演じる.
「名探偵コナンゼロの執行人」の立川譲が監督、原作の担当編集者
でストーリーディレクターも務めるNUMBER 8が脚本を手がけ、
「幼女戦記」シリーズのNUTがアニメーション制作を担当.

世界的ピアニストの上原ひろみが音楽を手がけ、劇中曲の演奏も
担当した.

以上は《映画.COM》から転載.
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原作コミックは現在1部~3部まであるようで、映画は1部(全10巻)
を描いているそう.

どうしてもアニメの短い2時間の中で、あっという間に成功していくから
多少の違和感はあるのだが、内容よりもとにかく演奏シーンが圧巻.
しっかりJAZZしている.その音に圧倒的な感動がある.

音楽にかける主人公宮本大(声:山田裕貴)の情熱、そこから生まれる
友情が熱い.もうそれだけで胸がいっぱいになるほどなのに、そこに
これでもかというほどの熱すぎる演奏が加わるから胸が熱くなる.


映画「BLUE GIANT」-2


とにかく宮本大のJAZZにかける熱量とその真っすぐさが素晴らしい.
それに雪祈(声:間宮祥太朗)や玉田(声:岡山天音)がぐいぐいと
飲み込まれていく.そして、彼らの演奏を聴く観客も、それを劇場で
見る我々も、あっという間に飲み込まれていく.


映画「BLUE GIANT」-3

映画「BLUE GIANT」-4


声優のキャスティングは成功している.上手い下手より勢いが伝わる.
そして肝心の3人のグループ:JASSの演奏、サックスは馬場智章、
ドラムは石若駿、そしてピアノは音楽総監修の上原ひろみが担当.

上原ひろみのCDは初期の数枚は持っている.20年前の鮮烈なデビュー
はついこの前のような気がするが、今や世界を代表するJAZZピアニスト
に成ってしまった.本作ではほぼオリジナルを演奏する.

クールでもない、ビバップでもない、かといってフリージャズでもない、
それでもいかにもJAZZでございますという演奏を聴かせてくれる.
眼前に広がる大スクリーン、整った音響設備、劇場ならではの没入感
のおかげで、本物のライブに勝るとも劣らぬ臨場感を味わえる.

夢の日本一のJAZZ SPOTとして青山“BLUE NOTE”が名を変えて
出てくるが、夢を成してその場で演奏する3人の演奏には、
恥ずかしながら涙が出てしまった.アニメで泣くのは久しぶりだ(苦笑).

過去に十数回通っている“BLUE NOTE”の再現も良く出来ていた.
入口から降りていく階段のシーンや待ち合い場の雰囲気、そして
会場の座席の配置、なんと照明まできちんと表現できていたのには
感心してしまった.またJAZZを聴きに行きたくなってしまった.

本作、脚本と音楽は申し分なかったが、映像的には質が落ちる.
CGの表情や服装などがツルツルしていて質感が異様.演奏パートの
3D−CGも稚拙で抽象的表現に走ってしまうのは残念な部分だ.

それでも有り余る音楽の迫力を味わうのに劇場環境は必須であろう.
ちまちま家で観るもの聴くものでは決して無い.

さて、オーラスで主人公・宮本大が空港で向かうのは…本場NYかと
思いきや、なんとミュンヘン行きではないか!! 次の活躍の場は
ヨーロピアン・ジャズなのだね….

次作に期待、ただし作画にもっと金をかけて欲しい.


映画「シャイロックの子供たち」…銀行の内幕と人の欲を描く.


映画「シャイロックの子供たち」 -4
製作年:2023年 製作国:日本 上映時間:122分



予告の出来は酷いのだけど、好きな役者の安部サダヲを観に
公開初日にTOHOシネマズ柏で観賞.本年度40本目.
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テレビドラマ化もされた池井戸潤の同名ベストセラー小説を、
阿部サダヲ主演、池井戸原作の「空飛ぶタイヤ」を手がけた
本木克英監督のメガホンで映画化.

小説版、ドラマ版にはない独自のキャラクターが登場し、
映画版オリジナルストーリーが展開する.

東京第一銀行・長原支店で現金紛失事件が発生した.ベテラン
お客様係の西木雅博は、同じ支店に勤務する北川愛理、
田端洋司とともに、事件の裏側を探っていく.

西木たちは事件に隠されたある事実にたどりつくが、それは
メガバンクを揺るがす不祥事の始まりにすぎなかった.

西木役を阿部、北川役を上戸彩、田端役を玉森裕太がそれぞれ
演じるほか、柳葉敏郎、杉本哲太、佐藤隆太、柄本明、橋爪功、
佐々木蔵之介らが顔をそろえる.

以上は《映画.COM》から転載.
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原作は未読、TVドラマも観ていない、WOWOWだものね.
舞台は東京第一銀行長原支店.長原の駅前は知っているが、
こんな銀行は存在しないような…、名前を借用しただけ?(汗).

行員達は営業成績向上に躍起になっているが結果が伴わず、
支店長代理古川:杉本哲太に叱咤される日々が続いていた.
そんな状況の中で、100万円紛失事件が発生する.

父が銀行員の端くれだったので、普段残業をしない父が遅れて
帰宅した時は、必ずその支店での収支が合わない時だった.
1円でも合わないと、血眼でその原因調査と差額捜査するのだ.

そんな銀行環境で100万円も紛失するなんて…、そのつじつまを
支店長:柳葉敏郎が無理矢理合わせてしまうところからもう怪しい
世界が広がっていく….

お客様係の西木課長代理:阿部サダヲは、この事件に疑念を抱き、
仲間の支店行員、北川:上戸彩、田端:玉森裕太と協力して、
事件の真相を究明していく.そして、重大な真実に辿り着く….


映画「シャイロックの子供たち」 -1


銀行の融資を巡る、支店行員達を中心にした群像劇であり、
虚々実々の騙し合い劇が展開する.赤裸々で生々しい人間ドラマ.
人の弱みに付け込む悪党達の巧妙な手口が際立つ.
札束を束ねる帯封が物語のキーアイテムになっている.
金の魔力=悪の魔力の象徴としての帯封なのだ.

西木が物語の道先案内人であり、事件の真相への決着のリーダ
になっている.西木役の阿部サダヲが程よいおおげさでないキャラを
演じて好印象.悪役のベテラン俳優達…柳葉敏郎、柄本明、橋爪功、
佐々木蔵之介らの怪演も加わって、シリアスになり過ぎない程良い
あんばいのエンタメ作品の印象.予告で使われる「倍返し」の意味は
全く不明で意味を成していない.

金に人生を翻弄される支店行員・滝野:佐藤隆太のエピソードが主軸.
金の誘惑に負け弱みを握られ、その弱みに付け込まれ悪に手を染める、
といという転落の人生を辿っていく.

全ての真実を知って呆然とする滝野に西木が放つセリフ、
「自分の人生は自分で決める」が本作のキモのテーマであろう.
滝野は悪と決別し、自首する.

売り上げ至上主義の太鼓持ちパワハラ支店長代理とか、同僚を
蹴落とそうとするやさぐれ行員、ノルマに追われ心を病む人まで、
あるあるのエピソード満載で、銀行内部の実態がよく判る.

蛇足だが、私のこずかいは中学生の頃から口座振り込みだった(笑).
口座獲得ノルマの為に息子の口座開設をした銀行員の父の苦肉の
策の一つであったのだろう.

もう一つの蛇足.偽の印鑑証明であることをベテラン行員西木:安部
サダヲは見つけ出すが.それがコピーを取ると自動的に下地に“複写”
と出てこないことからのエピがある.今時の複写機は公式文書や紙幣
をコピーしようとすると、“複写”と表示したり、真っ黒にコピーしたり
する機能があるのだ.偽造防止機能は複写機の重要な機能だ.
これは私の元の職業から来る知識(笑).

様々なエピソードを絡めつつ展開していき、そこに現金紛失、巨額な
融資詐欺だと上手く繫げていてとても面白く観られた.

本作は、欲得、出世、保身、不正な手段での巻き返し…と人間の醜さ
がふんだんに描かれたエンタメ作品ではあるが、「人生は自己責任」
であることが強く心に刻まれる上手い脚本に成り立つ作品である.



“エゴン・シーレ展” @東京都美術館 上野


エゴン・シーレ展-01



右眼の白内障手術も無事終えて、視覚環境が一新された.
左眼のガーゼを取り、診察を終えたら、もう一目散にその足で
上野の東京都美術館へ(笑).

その朝Web予約しておいた“エゴン・シーレ展”を観賞してみた.

以下は同館のHPから転載.

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エゴン・シーレ(1890-1918)は、世紀末を経て芸術の爛熟期を
迎えたウィーンに生き、28年という短い生涯を駆け抜けました.

シーレは最年少でウィーンの美術学校に入学するも、保守的な教育
に満足せず退学し、若い仲間たちと新たな芸術集団を立ち上げます.
しかし、その当時の常識にとらわれない創作活動により逮捕されるなど、
生涯は波乱に満ちたものでした.

孤独と苦悩を抱えた画家は、ナイーヴな感受性をもって自己を深く洞察し、
ときに暴力的なまでの表現で人間の内面や性を生々しく描き出しました.
表現性豊かな線描と不安定なフォルム、鮮烈な色彩は、自分は何者か
を問い続けた画家の葛藤にも重なります.

本展は、エゴン・シーレ作品の世界有数のコレクションで知られる
ウィーンのレオポルド美術館の所蔵作品を中心に、シーレの油彩画、
ドローイングなど合わせて50点を通して、画家の生涯と作品を振り返ります.

加えて、クリムト、ココシュカ、ゲルストルをはじめとする同時代作家たちの
作品もあわせた約120点の作品を紹介します.

夭折の天才エゴン・シーレをめぐるウィーン世紀末美術を展観する
大規模展です.

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ウィーン世紀末の画家をクリムト嫌いゆえ十把一絡げに嫌っていた.
ところが今回の展覧会のポスターの画に魅せられてしまった.
エイゴン・シーレはクリムトの亜流なんて愚かに思ってしまったのは
間違いではないかと考えて、今回ウィーンのレオポルド美術館からの
50点を観てみようと考えた.


エゴン・シーレ展-11
エゴン・シーレ《ほおずきの実のある自画像》1912年 

この作品のポスターで一気にその世界に引き込まれた.
シーレの自画像のなかでもっともよく知られた作品.

シーレのまなざしは挑発的にも、いぶかしげにも、あるいは
何かに怯えているようにも見える.
青白い顔には赤、青、緑の絵具が、まるで血管のように、
すばやい筆致で施されている.

左側に寄せたほおずきとそのツタが織りなす構図がまた秀逸.
シーレの傾いた肩と斜めの横顔とほおずきの位置関係が
この画の緊張感を一層盛り上げていると感じた.

この一作で彼が天才であることを証明していると感じた.



エゴン・シーレ展-12
エゴン・シーレ《母と子》1912年


キリスト教絵画の伝統的な聖母子像を思わせる構図に
収められた母と子.
しかし、目と口をしっかりと閉じた母親の表情は、世界と
の断絶を感じさせる.
一方、目を見開いたこどもは恐怖心をあらわにしているように見える.

この母子像は、平和や愛情の象徴というよりむしろ、死や不安を
ほのめかす印象を与える.これも衝撃的な一作だ.



エゴン・シーレ展-16
エゴン・シーレ《小さな街Ⅲ》1914年

モルダウ河畔のクルマウが描かれている.
クルマウ(現チェコのチェスキー・クルムロフ)は、シーレの母親の
故郷であり、彼自身も何度か訪れた町.

個性的な人物画で知られるシーレだが、風景画も数多く描いている.
本作では高い視点から、家々がひしめく町全体が平面的に描かれている.
小さな窓やアーチのある壁に、帽子のような屋根を頂く家並みは、
中世の風景を思わせる風情がある.

シーレの風景は押しなべて静謐で、暗い色調の作品が多いなか、
本作は構図や色彩にリズムがあり、おとぎの国のような雰囲気が漂う.




エゴン・シーレ展-13
エゴン・シーレ《縞模様のドレスを着て座るエディート・シーレ》1915年

この年1915年まで、5年間一緒に暮らしたヴァリー・ノイツェルに別れを
告げて、上流階級からエディートを妻にめとった.その肖像画.

肌に透ける緑や赤が施され、初々しさの中にしたたかさをも秘めた女
を見事に表現している.大胆なストライプのドレスの選択も彼女自身
によるものだろうか.推測を楽しめる一作品.
彼女はこの3年後スペイン風邪で命を落としてしまうが、その3日後
エゴン・シーレも同じくスペイン風邪で後を追うように亡くなるのだ.


エゴン・シーレ展-15
エゴン・シーレ《カール・グリュンヴァルトの肖像》1917年豊田市美術館蔵

意外なことなのだが、エゴン・シーレは1917年に兵役に就いている.
当時もう名をはせた存在だった彼は前戦へは配置されず、後方で
画を描く時間と場所も与えられたらしい.

本作は、当時の上司を描いた作品.彼はシーレを贔屓し、パトロンとも
なったらしい.軍人らしいいかつい体躯と厳しい生き方を好む姿勢が
見事に描ききってある.



エゴン・シーレ展-14
エゴン・シーレ《第49回ウィーン分離派展のポスター》1918年宮城県美術館蔵

早くからエゴン・シーレはウィーン分離派から離脱しているが、
この前年にクリムトが亡くなっている為、追悼の意味でポスター
を描いている.一番奥にはシーレが座り、手前の空席はクリムトの席.

クリムトの金箔を使った作品が大嫌いで、シーレもその一派と
勘違いしていた.シーレが師事したのは一時期だけだったようで、
50点の今回の出品の中でそれらしき作品は1つだけだった.
金ではなく銀箔であったが…(汗).

どちらにしても、早くからクリムトから逸脱したのは大正解であろう.


シーレ以外にもクリムト含めウィーン世紀末の代表画家たちの作品にも
観るべきものが沢山在ったが、此処では省く.

今回の戦利品はいくばくかの絵はがきと、又もTシャツ….


エゴン・シーレ展-7


着る暇が無いほど増えてきた…(笑).


映画「バニシング 未解決事件」(DVD観賞)…臓器売買の恐ろしさを描く.


映画「バニシング 未解決事件」-4
原題:Vanishing 製作年:2021年
製作国:フランス/韓国 上映時間:88分



レンタル屋で見つけたのは、オルガ・キュリレンコと韓国人俳優のコラボ作品.
昨年春の公開時には気付きもしなかった作品だが、フランスと韓国の合作
とはかなり珍しい取り合わせだと思う.興味本位での観賞.本年度39本目.
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ドラマ「賢い医師生活」や映画「スティール・レイン」「ニューイヤー・ブルース」
などで活躍するユ・ヨンソクと、「007 慰めの報酬」「オブリビオン」のオルガ・
キュリレンコが共演した、フランスと韓国の合作によるアクションサスペンス.

韓国・ソウルで、身元不明の遺体が発見される.遺体は指紋が失われ、全身
が傷だらけの状態だった.刑事のジノは事件解決の手がかりを求めて、
シンポジウムのため来韓していた国際法医学者のアリスに協力を要請.

遺体の身元特定は容易ではなく、臓器が違法な手術によって抜き取られて
いることを知った2人は、事件の背後にうごめく組織を追い詰めるべく捜査
を進めるが…….

ユ・ヨンソクが刑事ジノ、オルガ・キュリレンコがアリスを演じているほか、
「へウォンの恋愛日記」「色男ホセク」のイェ・ジウォン、ドラマ「刑務所の
ルールブック」のチェ・ムソンら韓国の実力派俳優が共演.
監督は「譜めくりの女」のドゥニ・デルクール.

以上は《映画.COM》から転載.
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原作小説は未読.スコットランド出身の作家ピーター・メイによる
“チャイナ・スリラーズ”シリーズの第3作「The Killing Room」(2001年).
同シリーズは北京の刑事と米国人女性の法医学者が協力して難事件を
解決するというもの.

「The Killing Room」の映画化は、フランスと韓国の共同製作、フランス人
監督の体制で進められることになった.脚色の段階で、原作通り中国を
舞台にするのは検閲の問題もあり断念して韓国の首都ソウルに置き換え、
主人公もソウルの刑事ジノ:ユ・ヨンソクとフランス人の法医学者アリス:
オルガ・キュリレンコに変更された.

フランス人監督が撮る韓国を舞台のノワールというのが特色かも.韓国なら
バッサリ、きっかりまとめるところを、繊細な心理描写が入って、やはり仏韓の
ハイブリッド感が感じられる.


映画「バニシング 未解決事件」-1


韓国映画だが、シーンの多くが英語とフランス語で進められる.言語が違うと、
ソウルの街が違って見えるのが不思議.ハングルの喧騒がエキゾチズムに
変化するようである.ジノがアリスを連れて行く“眺めのよい所”の数々も
意外な韓国の素晴らしい風景であり、我々の目からも新鮮なのだ.

ソウルで指紋が奪われた身元不明の遺体が発見される.刑事のジノ:ユ・
ヨンソクはシンポジウムのため来韓していた法医学者のアリス:オルガ・
キュリレンコに協力を要請し、指紋判読の手を借りる.

遺体の臓器が違法手術により抜き取られていたことを知った2人は、
背後にうごめく組織を追い詰めるべく捜査に挑む….

法医学者のアリスが抱えている彼女自身の心の闇を、余計な説明を
排して直接的に映像で表現しているところはやはりフレンチだ.
臓器移植シーンをかなり詳細に見せているところが衝撃的だし、
臓器売買に携わる連中が野菜でも売り買いするように淡々と仕事を
する非情さは上手く描かれている.

臓器や胎盤を摘出する対象として、中国から出稼ぎに来ている若い女性
ばかりが狙われるというプロットも、原作の名残なのだろう.
正規の国際的な臓器移植ネットワークのシステムをハッキングしたり、
出稼ぎの中国人女性を家政婦として派遣する業者がいたりと、相当な
大がかりな闇組織が動いていそうな割には、本作で捕まるメンバーが5人
ぐらいしかいないとか、もっと中ボス、大ボスまでの表現が欲しかったかも.


映画「バニシング 未解決事件」-3


オルガ・キュリレンコは6ヶ国語を話す才媛で、ウクライナ出身.本作の
撮影時の2020年には祖国がそんな事になるとは思いもよらなかった
のだろう.インタビューを観ても、当時のコロナ禍での撮影での苦労しか
言及していなかった.彼女はお手の物のように、本作内で韓国語も
話すシーンが見られる.

本作は臓器売買という悪行が実際に横行していることを知らせるとともに、
臓器移植の是非について改めて問題を提起したという点で、サスペンス
以上の価値は有ると思う.尺が短いのも救いだった.


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映画「タンゴ・レッスン」(DVD観賞)…極上のタンゴダンスを味わう.


映画「タンゴ・レッスン」(DVD観賞)-1
原題:The Tango Lesson 製作年:1997年
製作国:イギリス・フランス合作 上映時間:102分



観落とした名作シリーズの一環.レンタル屋から借りてきたのは
官能的なダンスのタンゴをめぐる女流映画監督と著名な男性
ダンサーの物語.本年度累積38本目は英仏合作の作品.
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「耳に残るは君の歌声」「オルランド」などで知られるイギリスの
女性監督サリー・ポッターが自身の経験をもとに、有名タンゴ・
ダンサーとの愛の物語をつづった大人のラブストーリー.

新作映画の脚本を執筆中の映画監督サリーは、気分転換に
出かけたパリの街でタンゴの舞台を見る.

そこで出会ったアルゼンチンの有名ダンサー、パブロ・ベロン
の情熱的なダンスに心を奪われたサリーは、パブロから1度
だけレッスンを受けてタンゴの魅力にとりつかれ、自ら
ブエノスアイレスを訪れてレッスンを重ねていく.

やがてサリーと再会したパブロは、彼女が見違えるほど上達
していることに驚き、本格的なレッスンを続けながらダンスの
パートナーとしてステージで踊ることを提案.

レッスンを通してパブロへの思いをますます募らせていく
サリーに対し、あくまでもプロとしてのダンスを求めるパブロは
2人の関係に境界線を引こうとする.

ポッター監督と本作が映画デビューとなるパブロ・ベロンが
それぞれ本人役を演じた.
97年製作・公開.16年、デジタルリマスター版でリバイバル公開.

以上は《映画.COM》から転載.
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感覚的で、官能的で、芸術的な作品.
モノクロームで描かれたほぼ全編の中で、映画監督サリー・ポッターの
頭の中のイメージだけが、鮮烈なカラーで描かれ、映画監督であること
を位置づけ、顕示する.

ポッターがパリに於いて一見しただけでタンゴの魅力に取り付かれてしまう.
判る気がする…情炎を絡ませ体を密着させて踊るタンゴ.

強く相手を惹き付けたかと思うと、次の瞬間その相手を突き放す.そしてまた
寄りそう様にまとわりつく…. こんなにも遠くて近い、男と女のディスタンスを
タンゴは踊る.

寄りかかったように体重を預けながら、その勢いでターンをし、また自立する.
時に宙に持ち上げられ、また落とされ、それでもまとわりつく…まるで男と女
の関係そのものではないか.


映画「タンゴ・レッスン」(DVD観賞)-3


“私は貴方、私は一つ、一つは二つ…” と最後にはサリー・ポッター自らが歌う
曲がもの悲しく、その詩は本作全体を示すような内容を提示する.
素敵なラストだ.

狂おしくも心揺さぶるタンゴの曲の数々に酔いしれた.
ほぼ全編に散りばめられたダンスシーン、部屋で、路上で、空港で、場所を
選ばずに、ふたり手を繋いで踊り出してしまう.

愛と人生をタンゴに捧げることで、自らのアイデンティティを表現した作品.
極上のタンゴダンスに酔いしれた一作.