映画「RUN ラン」
原題:Run
制作年:2020年 制作国:アメリカ 上映時間:90分
映画好きのブロ友ユキ太郎さんの紹介で興味を持った作品.
TOHOシネマズおおたかの森で鑑賞したのは本年累積153本目.
パソコン画面上でドラマが展開するという新機軸で注目を集めた
サスペンススリラー「search サーチ」のアニーシュ・チャガンティ監督が、
母親の娘への歪んだ愛情の暴走を描いたサイコスリラー.
郊外の一軒家で暮らすクロエは、生まれつきの慢性の病気により、
車椅子生活を余儀なくされていた.しかし、前向きで好奇心旺盛な
彼女は地元の大学への進学を望み、自立しようとしていた.
ある日、クロエは自分の体調や食事を管理し、進学の夢も後押しして
くれている母親ダイアンに不信感を抱き始める.そして、クロエの懸命な
調査により、ダイアンが新しい薬と称して差し出す緑色のカプセルが、
けっして人間が服用してはならない薬であるということが判明してしまう.
クロエ役をオーディションで抜擢された新人女優キーラ・アレン、
母ダイアン役をドラマシリーズの「アメリカン・ホラー・ストーリー」の
サラ・ポールソンがそれぞれ演じる.
以上は《映画.COM》から転載.
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前作の「search サーチ」は目の付け所が秀逸差に感心した.繫がることで
情報を得て進展していくドラマだった.本作は逆を付き、繫がらないことの
ハンデを描くことで進行していくドラマだ.
冒頭、ダイアン:サラ・ポールソンが病院で未熟児の娘を出産.
画面が暗転して、テキストで、肝疾患、腎臓疾患、喘息、下肢の麻痺… .
これらの症例は、ダイアンの出産から17年後、現在のクロエ:キーラ・アレン
が抱える病状であることが明らかになる.クロエは車椅子生活を余儀なく
されている.
これっでもかの病状でも、本人は頑張ってワシントン大学の 受験をして、
通知を待っている. ある日母から渡された薬に疑問を持ち、ネットや薬局を
使って その薬の正体を調べようとするが、母の妨害に逢う.
やっとたどり着いた答えは…下肢を麻痺させる毒薬だった.
毒親であることに気づいた娘のとる行動は一つ.
「Run」逃げ出すことだ.そこから娘VS母の壮絶な戦いが….
ダイアンとクロエの歪んだ危険な関係の本質は、端的に言えば、虐待の連鎖.
シャワーを浴びるダイアンの背中には無数の傷が見られる.おそらく幼少時に
親に虐待されたと観客に推定させる.そして虐待は連鎖する、形を変えて….
クロエが調べて行く内に、やがて驚愕の事実が判明する.
それはクロエの出生に関する秘密.
ダイアンはクロエが健常のまま大きくなったら、いずれ自立して手の届かない所
へ行ってしまうことを恐れる.それを防ぐには、クロエの体を薬物で弱らせて、
庇護する親と庇護される娘の関係を永続させればいいと考える.
穏やかに微笑んで見せるだけで観客の神経を逆撫でする恐怖を漂わせる
ダイアン役のサラ・ポールソンの演技が不気味で素晴らしい.
オーディションで本作に抜擢されたという新人キーラ・アレンが体当たりで
演じたクロエが、おおかたの観客の期待を裏切る結末がまた驚愕.
やられた感いっぱいの不快感に満ちた結末が上手い!
アニーシュ・チャガンティ監督、只者ではないと実感した好作品.
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