原題:THE GHOST WRITER 製作年度:2010年
製作国・地域:フランス/ドイツ/イギリス 上映時間: 128分
土曜はけっこう忙しい、普段ご無沙汰の循環器や歯医者へ行き、
銀行に行き、自宅の日用品の買い出し….
土曜の夜はいつものお約束の父との食事.老人は上高地行以来やけに元気だ.
そんな時間の合間を縫って、しっかり映画は観ている.
本年96本目は本日ロードショーの仏独英作品.
「チャイナタウン」「戦場のピアニスト」の名匠ロマン・ポランスキー監督が、
ロバート・ハリスの同名ベストセラーをユアン・マクレガー主演で映画化.
自叙伝を発表する元英国首相にゴーストライターとして雇われた主人公が、
国家を揺るがす危険な秘密に迫ったばかりに、恐るべき陰謀に巻き込まれていくさまを描き出す.
共演はピアース・ブロスナン、キム・キャトラル、オリヴィア・ウィリアムズ.
元英国首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自叙伝執筆を依頼された
ゴーストライター(ユアン・マクレガー).ラングが滞在するアメリカ東海岸にある孤島に赴き、
取材をしながら原稿を書き進めるうちに、ラング自身の過去に違和感を覚えるようになる.
やがてそれは前任者の不可解な死に対する疑問となり、その謎を追いかけることで
国家を揺るがす恐ろしい秘密に触れてしまう.さらにラングの妻ルース(オリヴィア・ウィリアムズ)
と専属秘書アメリア・ブライ(キム・キャトラル)とともに巨大な渦にはまってゆく….
ゴースト・ライター…対象を素早く理解し、その人間の口調や文体を使って
洒脱な文章を書く.だが決して本物の作家にはなれない.
そんな性向を全て背負ってしまったように主人公マクレガーは、
今ひとつ冴えない行動に終始する.パッとしないのだ.
優しい顔つきとソフトな語り口が一層、その役柄に合っている気がする.
転じて、ピアース・ブロスナン演ずる元首相アダム・ラングは型通りの政治家.
あきらかに先の英国ブレア首相を想像させる、押し出しと頭の回転の速さ、
そして人を欺く演技力(これは今の政治家には大事な部分だ).
あの007のブロスナンの押しの強い部分が全面的に出ていて好演.
トホホなマクレガーの主人公と強気バンバンの元首相ブロスナンの好対照と
どう展開するか判らないスト―リーの組合せが見事に絡み合う.
彼らを取り巻く女性陣、ラングの専属秘書アメリア・ブライ(キム・キャトラル)と
妻ルース(オリヴィア・ウィリアムズ)の知的かつセクシーな演技も見逃せない.
この二人の対立…妻と妻よりも元首相の行動、考えを詳しく知る秘書の女の闘い
が一見して見物.だが、この背景にはもっと恐ろしい事が待ち受けていて…、
ラストシーンであっと言わせる.これは見事なポランスキーの手腕.
元首相が閉じこもる米の孤島のシーン.鉛色の空と海、強く吹く風.
冬の小島の寂寞(せきばく)とした風景表現が秀逸.エンドクレジットによると
フランスの海岸での収録のよう.音楽も良くシーンに合っている.
役者たちのキャラクターが実に魅力的で、ストーリー展開は謎だらけだけど
鑑賞中はドキドキが止まらない.最終段で結末が見えたかと思いきや、ラストで….
思いっきり、ポランスキー節を満喫.良かった….
おそらく副長の今年の好きな作品の五本指に入ると確信.
ラストシーンの余韻が極上….
(トップ中央の写真がラストシーン)
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