原題:RETURN TO MONTAUK
制作年:2017年 制作国:ドイツ/フランス/アイルランド 上映時間:106分
日曜の朝は早出で柏のキネマ旬報シネマへ.観たかったドイツ作品を朝一番に観る.
本年累積87本目の鑑賞.
「ブリキの太鼓」「パリよ、永遠に」の名匠フォルカー・シュレンドルフ監督が、
スウェーデンの名優ステラン・スカルスガルドと「東ベルリンから来た女」の
ニーナ・ホスを主演に迎え、ニューヨークで撮り上げた大人の愛の物語.
新作を携え、ニューヨークを訪れた作家が、忘れられないかつての恋人のもとを訪れ、
やがて2人で思い出の岬へ小さな旅へと向かう中で、静かに露わとなる男と女のすれ違い
の行方を切ないタッチで綴る.
新作のプロモーションのためにベルリンからニューヨークにやって来た人気作家のマックスは、
17年前にこの地で恋に落ちたかつての恋人レベッカのことが忘れられず、弁護士として
成功していた彼女のもとを訪ねることに.
しかしレベッカは戸惑うばかりで、すげなく追い返されてしまう.ところが後日、レベッカの
ほうからモントーク岬への旅に誘ってきた.そこは2人にとっての思い出の場所.
未練を断ち切れないマックスはにわかに期待が高まるのだったが….
以上は<allcinema>から転載.
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配給会社名“Goument”を見て懐かしさがこみ上げてきた.
仏の配給社で、フランス在住の時アパートのすぐ近くにGoumentの映画館があった.
当時は、仏語のレベルに問題があり、吹替えの仏語が理解出来ない為、あんなに
映画好きなのに、1回も観に行かなかった.4年間映画を観なかった時期が存在する
のはそのせい.そんな想いでの“Goument”なのだ.
さて、NYが舞台なのだけど在欧あるいは出生が欧州の役者の演技、監督が欧州出身
のためか、とにかくヨーロッパの香りがする作品.特に主役ステラン・スカルスガルドの
衣装ったら…あか抜けないこと極まりなく、欧州の田舎者の匂いプンプン.
あまりにひどいので.作中でマネージメント・エージェントが手伝ってブティックで洋服を
買いそろえる始末.でも、あか抜けないのは着る人側の問題か?
主人公は父から教わったことで、“やってしまって後悔することより、やらずに終わって
しまった事の後悔の方が大きい…”という言葉が忘れられないでいる.
そのことは彼が書いた小説にも告白するように書いてある.
想いを遂げられなかった女性との想い出が綴られていて、
それをNYでも朗読の会を催しに来て滞在している.
そこで旧知の知人を通じてその女性の勤め先、住所を探しだしストーカーまがいの行為に
走ってしまうのは、出来なかったことへの後悔のなせる業か?
NYで企業向け弁護士を営むレベッカ役にニーナ・ホス…最初の登場の姿が印象的.
NY高層ビルに在る事務所からEVで降り立って、セキュリティ・ゲイトを通り抜けるその姿!
黒のタイトなスーツにスリットが大胆なスカート…知的さ、セクシーさ申し分なしのレディ.
ステラン・スカルスガルドじゃなくても、“忘れられない”女性を見事に演じている.
その後の彼女のスカルスガルドに対するツンツンの態度、明らかに避けているのだけど…、
どこかに彼を懐かしむ雰囲気を醸し出している.このあたりのニーナ・ホスの演技は秀逸.
NY滞在も残り少なくなったある日、突然彼女からロングアイランドの先端へ行かないか、
とのお誘いがくる.そこって、二人の想いでの土地「モンターク岬」を指し示す.
つんつんがデレデレに変わった動機を疑心暗鬼ながらも、彼女の車に同乗する.
そこで彼女の車がメルセデスのGLC300.知的でハイソな雰囲気で、しかも
ブルジョアさを感じさせないSUVだね、製作者のセンスの良さが光るチョイスだ.
往路の車中で繰り広げられる過去の悔いの話しに、イラつく彼女.
モンターク岬に着き、乱暴に砂浜に車を乗り入れ狂ったように走る…4MATIC仕様なのに
スタックして動かなくなる.
加えてその岬で訪ねる予定の別荘も翌日にしか開かないことで
岬のモーテルで一泊することになってしまう.そこで発生する男と女の営み.
それでも、男の執拗な新しい生活への提案を女は拒み続ける.
男は過去に引きずられて、女は過去を捨て明日に生きる….
未練を引きずるステラン・スカルスガルドの演技に冴えや切れはない.
転じてニーナ・ホスの美しいこと….
外観もそうだけど内面からくる美しさが演技できてるところが凄い.
捨てられたステラン・スカルスガルドが向かう先は元の女のところ.
が、彼女だって彼を見きっている….
男って愚かでかわいいねぇ(苦笑).
アラフォー、アラフィフ世代の大人の恋の描き方が素敵な作品.
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