映画「愛を積むひと」…大切なひとへ残したいものは?
制作年:2015年 制作国:日本 上映時間:125分
日曜の夜に溜まったポイントで川崎シネコンでタダ観した本年80本目.
エドワード・ムーニー・Jr.の『石を積むひと』を佐藤浩市、樋口可南子主演で
映画化したヒューマン・ドラマ.北海道美瑛町を舞台に、亡き妻から届く手紙に
導かれ、周囲の人々の人生に関わっていくことで自らも立ち直っていく男の姿を綴る.
共演は北川景子、野村周平、杉咲花、吉田羊、柄本明.
監督は「釣りバカ日誌」シリーズ、「武士の献立」の朝原雄三.
東京下町の工場をたたみ、大自然に囲まれた北海道美瑛町に移り住んだ夫婦、
篤史と良子.外国人が 住んでいた洋館で第二の人生を満喫する良子に対し、
仕事一筋だった篤史は手持ちぶさたで時間を持て余してしまう.
見かねた良子の提案で、篤史は家を囲む石塀作りを始めることに.
そんなある日、良子が以前から患っていた心臓病を悪化させ、この世を去ってしまう.
悲しみに暮れる篤史は、やがて良子が自分宛に手紙を残してくれていたこと
を知るが….
以上は<allcinema>から転載.
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樋口可南子がしっとりと綺麗….
年齢的には我々と同じ位だろうか、美しく歳をとった人の印象.
そのヒロインも作中半ばで逝ってしまう.
秋の北海道美瑛町の森を散歩する中で逝ってしまうシーンは
はかなく、美しくて、悲惨さよりも儚さが漂う上手い撮り方だ.
監督と撮影の趣味の良さありあり、感心してしまった.
「日本で最も美しい村」に認定された北海道美瑛町の色鮮やかな丘陵や
雄大な十勝岳など、大自然の四季の表現も美しくて、思わずこんな土地に
住みたくなってしまう.
丘の上にポツンと建てられた洋風の家、その周囲に積み上げる石垣が
作の中心エピソード.佐藤浩市と野村修平が作業するシーンが多い.
一つずつ、それなりに大きい石を形を選びながら積み上げていく作業は
かなりの重労働.後半では友人となった柄本明も手伝いながら、作中で
石垣は完成する.地道に気長に撮った作品の証となる石垣だ.
石を積み上げて行く行為に人と人の交情の在り方を重ねる….
時に石を積み替え、定規を当て高さを合わせ、小石を隙間に差し込み
全体を安定させる.その小石のような行為が佐藤と樋口、そしてその娘の
北川景子との間でやり取りされる様が淡々と描かれる.
好きではなかった女優だが、北川景子は好演.若気のいたりで不倫したり、
子連れのやもめに惚れちゃったりと波瀾万丈の恋愛事情を、いたって真っ当な
両親から、叱られながらも愛をもって見守られている….
綺麗な美瑛のシーンとは対極的な、東京蒲田の町工場シーンに親しみを覚える.
なにせ今住んでいる地域がそんな感じだからね.ゴチャゴチャで雑駁な世界.
ナットキングコールの“スマイル”が効果的に使われる.美瑛の洋館に置かれた
アナログ・プレーヤーから流れる、ゆたやかな唄声…エンディングロールを
見て、気づいたのだけど、この曲の作者はチャーリー・チャップリンだったんだね.
またその偉大さを実感.ヘンな所で涙してしまった.
ベタな内容だけど、丹念に撮られていることと主役の二人の演技が自然で
好印象の一作.しとどに涙してしまいました.
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