原題:LINCOLN 製作年度:2012年 製作国:アメリカ 上映時間:150分
毎土曜恒例の父親の様子見がてらの夕食を済ませて、帰りの首都高混雑を
避けるために、シネコン柏の葉で待望の大作を鑑賞.本年52本目.
巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督が、“アメリカ史上最も愛された大統領”
エイブラハム・リンカー ンの偉大な足跡を映画化した感動の伝記ドラマ.
国が大きく分断された過酷な状況において、リンカーンはいかにして奴隷解放と
いう大いなる目的を達成するに至ったのか、その知られざる政治の舞台裏を、
理想のリーダー像という視点から丁寧に描き出していく.
主演は本作の演技で「マイ・レフトフット」「ゼア・ ウィル・ビー・ブラッド」に続いて、
みごと3度目のアカデミー主演男優賞に輝いた名優ダニエル・デイ=ルイス.
共演はサリー・フィールド、ジョセフ・ゴー ドン=レヴィット、トミー・リー・ジョーンズ.
南北戦争末期.国を二分した激しい戦いは既に4年目に入り、
戦況は北軍に傾きつつあったが、いま だ多くの若者の血が流れ続けていた.
再選を果たし、任期2期目を迎えた大統領エイブラハム・リンカーンは、奴隷制度の撤廃を
定めた合衆国憲法修正第13条の成立に向け、いよいよ本格的な多数派工作に乗り出す.
しかし修正案の成立にこだわれば、戦争の終結は先延ばししなければならなくなってしまう.
一方家庭でも、子どもの死などで心に傷を抱える妻メアリーとの口論は絶えず、
正義感あふれる長男ロバートの北軍入隊を、自らの願いとは裏腹に黙って見届けること
しかできない歯がゆさにも苦悩を深めていく.
そんな中、あらゆる手を尽くして反対派議員の切り崩しに奔走するリンカーンだったが….
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先日観た作品「声をかくす人」の前日譚に映ってしまった.
そう、この作品の最後リンカーンが亡くなるシーンに続いて
「声をかくす人」は亡くなるシーンから始まった.
その偉大さを逆回しにたどる想いで観たこの作品.
まず、印象的なのはダニエル・デイ=ルイスの演技.
終始こわばったような表情で、ちょい猫背で見せる演技は
淡々としているが、そのリンカーンの威厳と偉大さを十分に表している.
これはもう何とかカデミー主演賞に相応しい演技を実感.素晴らしい….
話し的には…戦争映画でもなく政争映画でもない.奴隷制度廃止に向けて
穏やかに、でも精力的に尽くすその姿を見せると共に、一方では
良き家庭における父の役目を演じてみせる.
長男を亡くし、次男は親の気持ちとは裏腹に南北戦争への参加を主張する.
そこでヒステリックな妻の演技を見せるサリー・フィールドにまた驚き.
あんなに可愛かった女優さんがもうヒス感たっぷりのお婆ちゃん役だ.
穏やかなリンカーンに喰ってかかるその姿は、あさはかな女の姿そのもの.
ちなみに「声をかくす人」においても、亡くなったリンカーンに泣き叫ぶ妻を
司法長官が冷たく「あの女を遠ざけろ…」というセリフが記憶に残っている.
そんなサリー・フィールドの演技と共に感心したのはスティーブンス下院議員役の
トミー・リー・ジョーンズ.奴隷制廃止の鍵を握る下院の重鎮役.野党である民主党の
所属ながらも、ある事情から与党と同じ票を寄せる役柄.苦み走った顔付きと
家庭で見せる顔付きの相反さの演技に感心した.
脚本的には大きな山谷があるわけではないが、静々と巧みな役者達の演技で
話しは進んでいく.時には冗長で眠くなる部分も無いではないが、必然のシーン
であろう.
アメリカ史上最も愛された…事実をしっかり受け止められる内容で、
役者達の演技に酔いしれた一作.スピルバーグの正統力作と思う.
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