原題: J. EDGAR 製作年度:2011年 製作国:アメリカ 上映時間:137分
土曜日は通いの歯医者で歯石を取ってもらって、夕方は父と夕食.
翌日、柏駅まで出かけて大きな本屋へ行くという.
まだチバラキは雪がいっぱい残っていて、陽が射さない道は滑る.
危なくてしょうがないので、夕食後に本屋に付き合った.
時代小説の文庫を数冊と、直木賞を取った葉室 麟も買うという.
「あんたミーハーだねぇ…」とは思ったが、口には出さなかった.
そう、副長はこの手の賞を取ったなんだが大嫌い.
当然、映画においても世間がさわぐアカデミー賞なんぞもくそくらえ.
米国内の商業主義、権威主義での選出以外の何ものでもないし、
選ばれた作品、役者の質が必ずしも高いわけではない、と思っている.
ベネチアもベルリンもカンヌもみんなそう、ブランド主義と同じで
モノ、事の本質を見抜く力のない輩が拝賞にはしる…、
なんて、アルコール入ると表現が過激だなぁ(これ夜中に打ち込んでマス).
さて、まくらはこれくらいで、今夜見た映画はアカデミー賞にまたも(笑)
かすりもしなかったデカプリオの主演作品.本年13本目の鑑賞.
初代FBI長官ジョン・エドガー・フーバーの生涯を、クリント・イーストウッド監督、
レオナルド・ディカプリオ主演で映画化した伝記ドラマ.
20代でFBIの前身組織の長官となって以来、死ぬまでFBIのトップに君臨し続け、
歴代の大統領さえ手出しできない強大な権力を築き上げていく一方、
私生活では ごく一部の人間以外には決して心を許さず、
秘密主義を貫いた男の実像を丁寧な筆致で描き出していく.
共演は、フーバーの秘書役にナオミ・ワッツ、公私を共にした側近に
『ソーシャル・ネットワーク』のアーミー・ハマー、母親役にはジュディ・デンチ.
ジョン・エドガー・フーバー…アメリカではヒーローだったのだろう.
名前は知っていても、その実態をよく知らないまま本作品を観てしまった.
FBIの創始者にして米の正義の守護者の真実の姿を赤裸々に描いている.
まず、マザコン.そしてそのコンプレックスの裏返しの正義の正体.
あからさまな表現は無かったが、同性愛者の嗜好.
女性との結婚も数回試みようとするが、生涯独身を貫き、同僚のクライドと暮らす.
FBI創設期の大事件リンドバーグ長男の誘拐事件を通じて、
自分の考える“正義”の推し進め方や科学捜査の導入が描かれる.
相前後して.50代や70代のシーンや相棒、愛人?のクライドとの痴話げんか
が描かれて、その複雑な内面表現に魅了されてしまった.
デカプリオはフーバーの20代から70代までを巧みなメーキャップで演ずる.
マザコン、同性愛、権力者、自らの“正義”のためには偽装までおこなってしまうフーバー、
を見事に演ずるデカプリオに感心.好きではないが、純粋に好い役者と思う.
「女の恰好をする男は私が殺してやる」とまで言い切った母を亡くして
その遺品を身にまとうフーバーを演ずるデカプリオはおぞましくも、
哀しいマザコン男の中年姿を見事に表していた.忘れられないシーンだ.
いいぞぉ、デカプリオっ!
なんとか賞なんて取れなくたって、こういう役者や監督は
コツコツとマイペースで作品を作り続けて欲しい.
こちらもコツコツ観るからさぁ….
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