原題:HHhH
制作年:2017年 制作国:フランス/イギリス/ベルギー 上映時間:120分
火曜の夜、仕事を終えて向かうは柏のキネマ旬報シネマ.
観たかったナチスものを本年度累積55本目に鑑賞.
ナチス幹部ラインハルト・ハイドリヒの暗殺計画“エンスラポイド作戦”を描いた
ローラン・ビネのベストセラー『HHhH プラハ、1942年』を映画化した戦争サスペンス.
ヒトラー、ヒムラーに次ぐ実力者としてナチス党内からも恐れられた男ハイドリヒ台頭の
道のりと、英国政府とチェコスロバキア亡命政府によって立案・実行された暗殺計画の
行方をスリリングに描き出す.
出演はジェイソン・クラーク、ロザムンド・パイク、ジャック・オコンネル、
ジャック・レイナー、ミア・ワシコウスカ.
監督は「マルセイユ・コネクション」のセドリック・ヒメネス.
ヒトラー率いるナチス党が躍進する中、海軍を不名誉除隊させられた
インハルト・ハイドリヒ.婚約者でナチ党信奉者のリナに励まされ、ナチス党親衛隊(SS)
指導者ハインリヒ・ヒムラーに自分を売り込み、ナチ党に入党するや出世街道を突き進む.
そしていつしかSSでヒムラーに次ぐ実力者となっていく.やがてハイドリヒがチェコの統治に
乗り出すと、危機感を募らせた英国政府とチェコスロバキア亡命政府は、ハイドリヒ
暗殺計画、コードネーム“エンスラポイド(類人猿)作戦”を立案、ヤン・クビシュ、
ヨゼフ・ガブチークらチェコスロバキア亡命軍の若者を選抜し、チェコ領内へと
送り込むのだったが….
以上は<allcinema>から転載.
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2年前の作品「ハイドリヒを撃て!」とかなりダブルのだけど、違うのは
ハイドリヒの育ちとナチス党員になりのし上がっていく様が描かれていること.
そういう意味で、前半と後半は主語が異なり、若干の違和感がある.
ラインハルト・ハイドリヒ、良家に生まれ、幼い頃から音楽に親しむ.
に バイオリンは得意で、その後成年してからも良く弾きもするし、結婚後息子の
ピアノの練習に立ち会うシーンも、その音楽性の高さを見せてくれる.
さて、その結婚の相手がロザムンド・パイク演ずるリナ.ハイソなダンス パーティで
ハイドリヒを見初めるガチガチのナチス党員.社会的意識も高いのだけど、
その愛国意識からのヒトラーへの傾倒は激しく、結婚を餌にハイドリヒに
ナチス入党を勧める.
当時のドイツ国内においてこういう層の人間がナチス支持をしていたのだと実感.
なにも狂気はヒトラーのみに非ず.結局はドイツ国民がヒトラーを選んだことを
忘れてはならない.
この気丈な妻に尻を叩かれながらも、ハイドリヒはめきめきとナチス内で頭角を
表していく.もともと諜報活動に一言持っていた彼は、ナチス内でも秘密警察の
業務に長けていた.これがヒトラーやヒムラーに気に入られること となる.
侵攻したポーランドにおける彼の非道、残虐ぶりには目を覆うばかりの有様.
正規軍の大将に疎まれもするが、色事で陥れ、味方につけてしまう悪どさで、
ドイツ内での地位を確固たるものにしてしまう.
占領したポーランドの副総領事に付く頃には、もう妻の言うことも聞かないほどの、
ワンマン亭主になっていた.地位立場は色々な意味で“人を育てる” ものと認識した次第.
さて、後半はモンスター化したハイドリヒを撃つべく、英国とポーランド地下組織の
粛々とした準備とその顛末を描く.
これは過去作「ハイドリヒを 撃て!」と全く同じ展開なので新味はないのだけど、
ここでも二人の派遣された 暗殺者と地下組織に務める女性たちとのロマンスが描かれ、
涙を誘う.
単にナチスの残虐だけを描くでなく、それが生まれるに至ったプロセスをも
描いた所にアドバンテージがある作品と位置付けたい.
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